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幻想のアルテミスのエンディング (三香原さらさ)


(……それは、まったく息を飲むステージだった。世界がさらさにクギづけになった瞬間だ。)
(あれだけの事件の直後にも関わらず、落ち着き払った舞台運びは、さらさのプロ意識の成せるワザか……)
(イメージクイーンの大役をみごとこなしきった彼女に、業界の注目が集まることは約束されていた。)
(一方……あおいは、良子の言ったとおり、ホール内でつかまっていた。)
(彼女もある意味、大人の身勝手の犠牲になった被害者だ……そのことを忘れてはいけない。)
(それにしても、この事件はオレにとっても極めて意義深いものになった。単に探偵としてのキャリア以上のものを俺にもたらしたんだ。)
(そう……オレは、人生で最も大切なものを見つけたんだ。)


さらさ「あら、日下部さんじゃない。こんなところで何してるの?」
恭一「あっ、さらさ……よかった、ここにくれば会えると思ってたんだ……」
さらさ「クスッ……何よ、変な人。」
恭一「い、いや、その……実はね、オレ……急な事情ができて、今日にもこの学園を去らなければいけなくなったんだ。」
さらさ「えっ……?」
恭一「だから……その前にどうしても君に話しておきたいことがあって……」
さらさ「……」
恭一「オレ……本当に短い間だったけど、さらさと知り合えてとっても楽しかった…… もちろん、最初のうちは君がトップアイドルだから特別な気持ちで見ていたかも知れない。だけど、君のことをもっと知っていくうちに…… アイドルなんかじゃない、普通の、一人の女の子としてのさらさがオレにとって大事な存在になってきたんだ…… だから、その……オレ……」
さらさ「……日下部……さん……?」
恭一「好きなんだ! さらさのことが……もうお別れなんて、そんなの耐えられないよ!! こんなオレだけど、ずっとつき合ってもらえないかな。その…… 正式な……恋人として……」
さらさ「……」


■ バッドエンド

さらさ「ちょっと、なにかカンちがいしてない? どうしていきなりアタシになんか告白するわけ? だってアンタ、ずっと他の女の子のこと、追いかけてたんじゃないの? それとも……私に近づくために彼女を利用してたってことかしら? そういう男ってサイテーよね。もう話すことなんてないわ。さようなら……」


■ グッドエンド

さらさ「な……何よ、そんなにあらたまって。聞いてるこっちの方が恥ずかしくなるじゃない…… ……本当のことを言うとアタシも、アンタのこと、ずっと気になってたの。初めて会った時からね…… 何て言えばいいのかしら。そう……アンタの側にいると、気分が落ち着くというか、本当のアタシにもどれるという感じがして…… だから時には、キツくあたったりもしたけど……あれはアタシの甘えなの。きっと、アンタなら受けとめてくれると思ったから…… もちろん、返事ならオッケーよ。フフッ……ありがとう。」


舞台の控え室。

さらさ「ちょっと、こっちの衣装じゃないでしょ? 8番と12番て言ったじゃない!」
恭一「そんな、いちどに言いつけられたってムリだってば!」
さらさ「やれやれ……そんなコトじゃ、アタシの付き人としてついてこれるのは当分先ね。」
(なんだい、自分から『付き人になってくれ』って言ってきたクセに……)
さらさ「何か言った?」
恭一「べ、別に…… ……なんか、オレたちの関係って出会ったころと全然変わってないみたいだね。」
さらさ「…… プッ! あははは、ホントそうねえ。でも、ふたりきりの時は『恭一』って呼んであげてるでしょ? 大進歩だわ。」
恭一「その程度でイバられても…… だいたい、こっちはずっと『さらさ』じゃないか。不公平だよ……」
さらさ「フフフ、すねてるの? じゃ、こうしましょうか。アタシネ、本名は佐藤裕子っていうの。」
恭一「えっ? じゃあ、三香原さらさ、っていうのは……」
さらさ「アタシが勝手に考えた芸名。この学校に入るときには、もうこの名前でとおっていたから…… この世界中で、アタシのことを『裕子』って呼んでいいのは、家族とあなただけにしておくわ。覚えておいて。この名前は、アタシとあなたをつなぐ暗号……わかった?」


《スタッフロール》


■ 後日談

さらさ「ねえ、恭一さん……」
恭一「ん? なんだい、さ……」

外国の街角のベンチ。
さらさの方を振り向いた恭一の唇を、さらさの唇が塞ぐ。

恭一「○△■☆!? お、おい、さらさ! ここは……」
さらさ「芸術と恋の都、パリよ。そしてアタシはあなたといっしょにここにいる。あのパリ・コレクションに出演するためにね……」
恭一「だ、だからそうじゃなくって……」
さらさ「いいじゃない、ここは日本じゃないんだから。それにいまはプライベートの時間よ。アタシね、とっても幸せな気分なの。夢はかなったし、理想の男性がいつも隣にいてくれる……」
恭一「あ、ありがとう。でも……キミはトップモデルだし、もしカメラマンにでも撮られたりしたら……」
さらさ「その時はその時。盛大に発表するわ。日下部恭一さんがアタシの恋人です、ってね。それとも、アタシの恋人って言われるのが、そんなにイヤ?」
恭一「そ、そんなまさか……」
さらさ「だったらいいでしょ。しばらくこのままで、お願い……ね?」
恭一「さ、さら……ん〜〜〜!」
さらさ「Je t'aime, mon amant……フフ!」
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