Another Time Another Leaf〜鏡の中の探偵〜・エンディング
(これまでのあらすじ)
高校進学前に最愛の母を亡くした主人公・桜音楓が母の形見の手鏡を開いた時、鏡の中のもう一人の自分、朱葉が現れることとなった。
過去の時間へと遡る力「時遷(ときめぐり)」の能力を使える朱葉、そして現在の時間で事件を調査する楓の2人で、St.モンフォール学院に入学して以来楓たちの周りに起きる事件を解決していく事になる。
事件を解決する日々や、入学して知り合ったクラスメートとの交流、そして朱葉とのふれあいを通じて、楓は徐々に母を亡くした悲しみから立ち直っていく。
舞台は交流のため訪れる事となった外国の修道院、そして校長の白川菊乃のはからいで行く事となった南の島へと向かう豪華客船にも及び、その度に楓と朱葉は力を合わせ、事件を解決していく。
そして、最後の事件を解決したその日の夜の事…
(本文)
客船のデッキ。楓のクラスメイト・水品昂が待っていた。
月が照らす中、デッキにて話す楓と昂。
昂「君のおかげでみんな助かった。
ぼくからも御礼を言わせてもらうよ。
……ありがとう。」
楓「え、いや、そんな御礼なんて……。
だって、私1人の力じゃないし、それに…私、ほら、捜査委員長だから。
みんなの役に立って、よかったな〜ってそんな感じです、はは……。」
昂「ハハハ、君はいつも変わらないよね。
刑事顔負けの仕事をしておきながら、謙虚で控えめだ。」
楓「うわぁ〜、誉めすぎですそれ……。
な、なにがあったんです?」
昂「南の島に着いたらお別れだから、その前にせめて御礼を、と思って。」
楓「お別れ?? どうして?」
昂「ぼくは戻らなくちゃいけないんだ。……もうぼくは必要ないから。
だって君には、強いきずなを持った人がいつもそばについている。
それがわかったからね。」
楓「昂君……。」
満月を背にして立つ昂。
昂「ぼくは、君を見守るために来た。
それが、昔、君のお母さんに命を助けてもらった祖父からの遺言なんだ。
もし君のお母さんに何かあれば、どんなことがあっても助けに行けと。」
楓「……それじゃ昂君、お母さんの事を知っているの!?」
昂「祖父から聞いて知っている。鏡の秘密も、その力も……。」
楓「そうなんだ……。それじゃ、なぜ黙っていたの?」
昂「う〜ん、なぜだろう……。君と出会って驚いたからかな?
祖父から聞いていた鏡の中の女性と、君がうり二つだったから。
おしとやかで芯が強く、ほがらかな女性だったと聞いている。
ちょうど今の君のように……。
君のお母さんと鏡の中の女性は、ぼくの憧れの人だったんだ。
いつの日か2人に会うこと、それがぼくの夢だった……。
そしてそれが叶ったんだ……。」
島に着いたら、大きなクルーザーが昂君を待ち受けていた。
そして彼は去っていった。『また会おう』という言葉を残して。
もう一つ、驚いたことがある。
それは彼の祖父が、有名な実業家で、誰もがその名を知る人だったこと。
そして翌朝、デッキの上。
朱葉「あらら〜、昂を引き止めなくていいのかな〜?」
楓「え? どうして?
だって向こうの学校を休学してこっちに来ていたわけだし。
きっとお父さんやお母さんも心配していたと思うよ。」
朱葉「だってさ、お邪魔だったから、私出しゃばらなかったんだけど……。
昨日の夜の昂の発言をそばで聞いていたらさ……。
あれはぜ〜ったい、そうだと思うんだけど……。」
楓「も〜う、じれったい!いったい何が言いたいの!?」
朱葉「あれって、楓にラブってこと伝えていたんじゃないの?」
楓「そ、それは…ちょっと……、考えすぎだと思う。
だって昂君、好きも何も言ってなかったし……。」
朱葉「どうしてこんな鈍感な人を好きになっちゃったのかしら。
はぁ〜、可哀想……。」
楓「また会えるからいいじゃない。
それに私はいまそんなことには、興味がないんですけど。」
朱葉「へ〜、そうなんだ?
じゃぁ、何に興味があるの?」
そして客船内のホールにて。
警備員に囲まれて、
孫静初が楓の前にやってきた。
静初「あ〜あ、失敗しちゃった……。
こんなの初めて……。だって頭脳と計画と行動力。
言っておくけど、全てにおいて私たちが勝っていたわ。
私たちが負けることなんてなかったはずなのよ。
どんな刑事もライバルたちも、私たちには、勝てなかった。
ぜ〜んぶ、勝ってきたのよ。
でも今回だけは失敗……。
どうしてなのかしら?
君たちが持っていて、私たちが無いものと言えば……。
アハハハハ、…きずな…友情??
そうかもね……。でも言っておいてあげる。
誰でもそういった幻想を持つ時期があるけど……、
結局、いつの日か無くなるの。
裏切り、仲間割れ……、時に友情は死を招くこともあるの。
とってもやっかいで私たちなら、絶対に追い求めない。
拓真……。あなたが好きだから忠告してあげる。
あなたの優しさは、いつの日か苦しみに変わるのよ。
それじゃ、みなさんつかの間のひと時を楽しんでね♪」
アイヴァン「はぁ〜、実にあっけない幕切れだったな。
計画はカンペキなはずだったんだけどね。
今回は不思議なことばかりだ。
君たちの信頼関係が生んだ、奇跡ってところか?
とんだ刺客がいたもんだ。やられたよ、お手上げだ。
だって、普通ありえるか?
まず人の心が読める女だ。そしてそれだけじゃない。
有り得ない早さで真実を解き明かしていく女。
こんな馬鹿げた能力の持ち主が同時に現れるなんてさ。
まあ運が悪かったと、牢屋の中で聖書でも読んでおくよ。」
メリンダ「いろいろお世話になりました。」
楓「いえ、私たちこそ、本当にお世話になりました。」
メリンダ「でも、これで楓ちゃんたちとお別れなんですね……。
いろいろとあったから、なんか寂しい……。」
楓「学校に遊びに来てください。待ってますから。
お仕事がお休みになったら、旅行みたいな感じで♪」
メリンダ「うん、絶対行きます!」
楓「寮もあるし、絶対先生たちも大歓迎だと思いますよ。
その時には、秋月さんとも、いろいろお話できたら…って。
今回は、秋月さんとはあまり喋られなかったから、
次はもっと……。
メリンダさん、どうかしたんですか?」
メリンダ「い、いえ…なんでも……。
わかりました、確かにそう伝えておきます。
みんな秋月さんに会いたいって言っていたよって。」
楓「…もう、ここには秋月さん、おられないんですか?」
メリンダ「みなさんが来られる前に、船を降りられました。
でも、心配しないで。
きっと、みんな、また会えると思います!」
楓「はい、そうですね!」
メリンダ「それじゃ、また!」
菊乃「さあさあ、着いた着いた!
う〜んと、楽しもうね、
楓ちゃ〜ん!」
楓「はい!」
菊乃「だけど、昂君冷たいな〜。
旅行だけでも一緒に居ればいいのに……。」
楓「私も…そう思います。」
菊乃「心配しないで楓ちゃん!この菊乃校長にまかせなさい!
旅行が終わったら、迎えに行ってやるんだから!」
楓「あはは…それって大丈夫なんですか?」
菊乃「大丈夫、ウソつくから。
我が校は途中で辞めたら、すごい罰金があるんですよって!」
楓「そうですね、それなら絶対、昂君、戻ってきますね!」
菊乃「うん、絶対にね♪」
一方男性客室。一人寝ていた山田、
山田「ん? みんなどこに……。
船が動いている……まだ着いてないのか?
ふっ…まさか……。」
そして南の島。菊乃、桃子の教師コンビと悠人、拓真、カグラが水着姿で並んでいる。
菊乃「暑いよ〜、楓ちゃん早くして下さ〜い。」
楓「もう少し待ってください!
こころちゃん、これでいいのかな?」
こころ「うん、それで大丈夫。」
拓真「お〜い、俺がやってやろうか?」
桃子「オマエがやると壊すほうに1000円。」
カグラ「私(わたくし)も1000円賭ける。」
拓真「んなわけないだろう……。あんなの誰でも操作できるって。」
悠人「ねえねえ、誰があの2人に操作させようって言ったの?」
桃子「菊乃こーちょう。」
カグラ「そう、菊乃校長。」
拓真「ハハハ、それじゃムリだ。」
桃子「オマエが言うな。」
菊乃「あっ、来た来た!!」
水着姿のこころが撮影のため並ぶ。
こころ「お待たせー!!」
楓「すみません、手間取って。」
水着姿の楓も撮影の列に並ぶ。
菊乃「イヤッホーー!!さぁみんな、写すよーーー!!」
カメラのピントが合わされる…が、いつまで経ってもシャッターが切られない。
カグラ「……音、止まったみたい。」
悠人「ホントだ……シャッター音もしないし。」
拓真「おいおい、頼むぜホント。」
楓「どうしちゃったんだろ?」
こころ「スイッチ間違った…かも?見に行こ楓ちゃん。」
楓とこころはカメラを見に向かう。
こころ「楓ちゃん、早くカメラ止めて!」
カグラ「早く早く!!」
楓「ちょ、ちょっと待ってーーーー!!」
その時シャッターが切られ、急ぎすぎて転んだ楓とこころの姿が写る事となってしまう。
(スタッフロール)
楓によく似た少女が何かを覗き込んでいる姿が見える。
それは楓の母親の若い日の姿なのか、それとも楓本人なのかは読んでいる皆さんの想像にお任せする。
泣かないで……。
いつかまたきっと会えるよ。
少女の目から涙がこぼれる。
君の心の中の私が消えない限り、
私は必ず戻ってくる。
それまでのちょっとしたお別れ。
ね、だから笑って。
それじゃ、バイバイ!
また会いましょうね……、
光溢れるその時の中で……。
そして光に包まれてゆく視界。
(Fin)