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焼きたて!! ジャぱんの第1話
中世ヨーロッパ。
そこで戦いが繰り広げられていた。
そして剣がなぜかフランスパンに変わった。
ナレーション「中世。ヨーロッパ種族が宗教や民族の違いで争った戦乱の時代。人々は自らの主食・パンにすら治国の名前をつけ、戦意高揚を破壊。イギリスパン、ドイツパン、フランスパンなど国名を関したパンが生まれてきた。そして21世紀、アジアの小さな島にここ日本での独自のパンを作ろうとする少年がいた。しかしそのためには」
主人公・東和馬がオーブンの蓋をあける。
東「よっしゃ、遂に完成じゃ」
ナレーション「太陽の手が必要だった」
東「じいちゃんばあちゃん、食ってくれ。最新号の……あれ? 皆どこ行ったんじゃ!?」
その時、何者かが東の顔を絞める。
東「ど、泥棒じゃ。助けてぇ〜〜〜〜っ!!」
それはなんと姉の稲穂だった。
稲穂「和馬、パンなんか焼いてる場合じゃないでしょ!? 新幹線に乗り遅れるわよ」
東「ね、姉ちゃん。おお、そうじゃった。俺、今日、東京行くんじゃった」
稲穂「―ったく、世話の焼けるね」
こうして稲穂は東をバイクに乗せて駅に向かうのだが。
東「うわあぁ〜〜〜〜っ。パンが、俺のパンが!! おい」
稲穂「ちょい近道するからね。しっかりつかまってな」
バイクは田んぼの細い道を通る。
そして森に入り、道路に出る。
東「死ぬ〜〜〜〜〜!!」
新潟駅。
稲穂「お待たせ」
馬太郎「おお、来たか」
稗子「こんな時に何やってたの!?」
稲穂「のんびりパン焼いてたのよ、こいつ」
東「何とか生きてる。皆、焼きたてじゃ。食ってくれ」
馬太郎「おお、新作か!?」
稗子「普通のアンパンに見えるけどね」
4人は早速食べてみるが。
4人「うま〜〜〜〜い!!」
馬太郎「うまい。54号よりうまくなっとる」
東「婆ちゃんが煮てくれた小豆を特製のパン生地で包み込んだんじゃ」
馬太郎「うむ。小麦が持つ本来の甘さがあんこの甘さと上品に融合しとる」
稲穂「私、一瞬日本が見えた」
東「そりゃそうじゃ。俺が作るパンは日本のパン・ジャぱん。これがジャぱん55号じゃ」
ナレーション「イギリスパン、フランスパン、ドイツパンはあるけど、日本のパン・ジャぱんはない。ならば、これから作るしかない。この物語は熱き父親の取る「太陽の手」を持つ少年・東和馬が世界に誇れる日本人の日本人による日本人のためのパン・ジャぱんを作っていく一台抒情詩である」
来たぞっ!!
太陽の手を持つ少年!
東「じゃあ行くよ」
稗子「本当に行っちまうんだね」
馬太郎「中学卒業してすぐパン屋になろうとは物好きな孫じゃ」
稲穂「でも、まさか日本でも一義を争う超有名なパン屋さんに採用されちゃうなんて凄いよ、うん。弱音吐いて戻ってきたらぶっ飛ばす」
東「お、おう」
婆ちゃん「和馬。これ、おばあちゃんから」
東「サンキュー、婆ちゃん」
婆ちゃん「ほんと、このあったけぇ手ともお別れじゃのぉ」
東の乗る新幹線は出発する。
稲穂「早いものね。ウチの朝ごはんがパンになってもう10年になるのよね」
東「そう、あれは10年前のことじゃ。この俺東和馬がまだ6歳のときじゃった」
10年前・東家。
稲穂「ママ」
稗子「お母ちゃんとお呼び。気色悪い」
稲穂「お母ちゃん、わたhしたまにはパンがいい」
馬次郎「バカモンが! このせいかぶれぬすっとこどっこい!!」
稲穂「そんな事言ってるのウチだけだよ。クラスの真奈美ちゃんちも一家揃って朝食はパンだよ!?」
婆ちゃん「あそこは小麦も作ってるからね」
馬太郎「そういう問題か、婆ちゃん。のォ和馬、おめぇどう思う!?」
東「俺はウチで取れた米が好きじゃ。パンなんかパサパサして嫌いじゃ」
稲穂「へぇー」
東「おい、死ぬ! 姉ちゃん、死んじゃうよ」
東が稲穂に縛られて自転車で走らされていた。
稲穂「あんなこと言うのは本当においしいパンを食べたことがないからよ。今から本物のパンを食べさせてやるから覚悟しな!!」
こうして東は稲穂に引っ張られてきたのだが。
そのパン屋の名はサンピエールと書かれていた。
東「あれ? こんな場所にこんなのあったっけ!?」
稲穂「ほら、さっさと立つ」
稲穂がドアを開けるとそこは凄いことになっていた。
東(風車じゃ、トナカイじゃ。まるでおもちゃ屋さんみたいじゃ)
おじさん「それは皆、食べられるんだよ。パンだからね」
稲穂「おはよう。おじさん」
おじさん「おはよう」
稲穂「ああ。こいつ、弟の和馬」
おじさん「いらっしゃいませ、和馬君」
東「お、おう(しかし驚いた。これ皆パンかよ)」
稲穂「おじさん、この食パンくださいな」
おじさん「毎度、ありがとうございます」
稲穂「和馬くーん、これが本物のパンの味だ!!」
稲穂は食パンを東の顔に押し付ける。
東はそれを食べ、稲穂の指も噛んでしまう。
稲穂「いたぁー!!」
東(うまぁー)
稲穂「いてぇ。わかったでしょ!? 私が朝食をパンにしたい理由」
東「こんなうめぇパン、どうやったらできんじゃろぉ!?」
おじさん「よかったらパンを作るところを見てみるかい!?」
稲穂「え? いいんですか!?」
おじさん「稲穂ちゃん、学校は!?」
稲穂「うわああ〜〜〜〜っ、遅刻しちゃう。こいつよろしくお願いします!!」
2人の目は点になる。
おじさん「見てく!?」
東「おお」
おじさん「いいかい!? 小麦粉と砂糖、塩、バター、イースト菌、水、脱脂粉に牛乳などを混ぜて作るんだ。始めはべたべただけど、5分ほどで空転ができて固まってくる。12分から15分こねてから記事を丸くしていく。これが倍の大きさに膨らむ程度まで発酵させるんだ」」
東「発酵って何!?」
おじさん「ちょっと難しくなるんだけど、酵母や菌などの微生物が有機物を分解するときに炭酸ガスを発生して膨らむことさ」
おじさんの説明に東はポカンとしている。
おじさん「ああ、えっと…よかったらここまでやってみるかい!?」
東「おう、やるぞ!!」
生地をこねる東。
おじさん「うん、なかなか筋がいいぞ。ところでお姉さんはパンが好きみたいだけど、和馬君は!?」
東「おう、さっき好きになったぞ。けど、そんでも俺はご飯の方がが好きじゃ」
おじさん「ハハハハ、はっきり言うボウヤだ」
東「俺は正直者じゃ」
おじさん「ああ、そうかそうか、悪かった。実はね、僕もご飯等なんだ。ご飯が大好きだ」
東「えーっ!? パン屋さんの癖に。じゃあ何でパン屋さんなんかやってんじゃ!?」
おじさん「そうだな、うーん。ご飯は食べてうまいけど、パンは作っていて面白い。日本人にとってはまだまだ主食としてご飯にパンは勝てないと思う。だがいつか味でもご飯を越えるパンを作ってイみたい。名づけて「ジャぱん」!! 世界に誇れる日本人のパン! それを作ることが僕の夢だ」
東(ご飯よりうめえパン(ジャぱん)食ってみてぇ)
おじさん「とは言ったものの、その夢を実現する前にこの店はなくなっちゃうかもしれないんだ」
東「えーっ!?」
おじさん「今までフランスでいろいろ修行して向こうではそれなりに職人としてうまくいってたんだ。けどね、ジャぱんの夢をかなえるためには日本に戻らなければいけない。その出発を自分の故郷にしようと思い立ち、ここに店を構えたまではいいんだけど、土地柄なのか、パンが売れない(涙)」
東(あんなにうめえのに売れねぇのか)
おじさん「まあ、こんなこと和馬君に言っても仕方ないんだけどね。何かジュースでも飲む?」
東「任せろ、俺に任せろ。俺がじいちゃんをパン好きにしてお客を増やしてやる。おじさんのパンを食わせてさ」
東は厨房を後にする。
おじさん「か、和馬君(お客か、気持ちは嬉しいけど、実はもうこの店は…おや? この生地、さっきまで和馬君がこねていた……まさか、あのこの手は!!)」
翌朝。
東家のテーブルはパンや目玉焼きでいっぱいだった。
馬太郎「何じゃいこりゃぁ〜〜〜〜!? ご飯はどうしたご飯は!?」
稗子「和馬と稲穂がね。やられたわ」
東「じいちゃん」
稲穂「これがトーストよ。お願い、一度でいいから食べてみて。ぜったいおいしいから」
馬太郎「のう和馬、お前、稲穂にそそのかされたんじゃろ!? ほんとはご飯が好きじゃろのぉ!?」
東「食う!!」
馬太郎「(和馬に裏切られた)稗子さん、いつもの納豆と味噌汁遅れ」
2人「じいちゃん!!」
馬太郎「勘違いするな孫ども、トーストとやらは食うてやる。だがワシは毎朝の納豆と味噌汁だけは譲れんのじゃ」
馬太郎は納豆をかき混ぜ、トーストの上にかける。そしてそのトーストを食べるのだが。
馬太郎「合わん」
2人「当たり前じゃ!!」
馬太郎「トーストは夢のまた夢じゃのぉ」
2人「そんなぁ〜〜〜〜」
馬太郎「どうしてもトーストを朝食にして欲しくば納豆と味噌汁に合うトーストを持って来い!! 話はそれからじゃ」
サンピエール
稲穂「納豆と味噌汁に合うトーストなんて絶対無理だよなぁ」
東「じいちゃんは根っからの米好きなんじゃ。婆ちゃんが言ってた」
婆ちゃん「終戦後、アメリカ軍からの配給はうまくもない乾パンやコッペパンばかりでよォ、またいつかはらいっぺぇ食いてぇって、それがじいちゃんの願いじゃったんじゃよ。そんな想いがあったからじいちゃんの田んぼで取れる米があんなにおいしいんじゃよ」
東「そんなじいちゃんにパンを食わせるなんて」
稲穂「あーあ、納豆と味噌汁に合うトーストかぁ」
おじさん「無理じゃないかもしれないよ」
稲穂「ええっ!?」
東「できるの!?」
おじさん「そもそもパンというのはソーイと呼んで、どんな食材とも合わせられる可能性を秘めているんだ。アイデアとそして愛情が最高の隠し味になるのさ」
おじさん「和馬君、君がおじいちゃんのためにジャぱんを作るんだ」
東「俺がジャぱんを!?」
おじさん「うん。おじいちゃんのような人に認められてこそジャぱんだ。僕は自分のパンがどこまで通じるか試してみたい。でもそれには君の力が必要なんだ」
東「俺やるぞ」
稲穂「いいぞ和馬」
おじさん「ところで稲穂ちゃん、学校は!?」
稲穂「あ。また遅刻! おじさん、あとよろしく!!」
おじさん「小麦粉と砂糖、塩、卵、バター、イースト乳、水、脱脂粉乳、そして牛乳の代わりにこれを入れよう」
東「何それ?」
おじさん「ちょっとした隠し味さ。さあ和馬君、一生懸命こねるんだ」
東「おう!」
東は一生懸命生地をこねる。
おじさん「(やっぱり通常より発酵の速さが違う。間違いない、数馬君はあの手の持ち主なんだ。フランスの一流パン職人でも大変珍しいと呼ばれている魔法の手。あの手をこの子が)ほらほら、もっと腰を入れて」
東「おう」
おじさん「いいぞその調子だ」
2度目の発酵を終え
最終発酵
おじさんは生地をスライスする。
おじさん「この生地を4等分してそのケースに入れる。形を崩さないようにね。この状態で最終醗酵室のうち、220℃のオーブンで45分ほど焼いたら完成だ」
東「おお」
おじさん「見事だ和馬君。君にてならきっと奇跡を起こせる」
翌朝・今日もテーブルにトースト・納豆・味噌汁が置いてある。
馬太郎「何も変わっとりゃせんじゃないか。わしゃぁあんなまずい思いをするのはごめんじゃぞ。稗子さん、白いご飯を」
東「いいから食う!!」
馬太郎「よかろう、もし今回もまずくてワシが死ぬ思いをしたら一生この話はなしじゃ。二度とパンすら口にすることすら許さんから勝負!!」
東「おう!!」
馬太郎は昨日のように納豆をトーストにかける。
馬太郎「神様」
とうとう食べた。
すると馬太郎の様子がおかしくなった。
馬太郎「そ、そんなはずは……」
トーストを味噌汁と一緒に食べる馬太郎。
そして何かに気づく。
馬太郎「納豆食って納得!! 味噌汁のうまさを神のみぞ知る」
すると空から大量のトーストが2人の馬太郎のところに降ってくる。
そこから馬太郎が出てきた。
馬太郎「チェストォ――――!! トーストォ――――!!」
今度はお椀のサーフィンで味噌汁の海に乗ってサーフィンをする。
馬太郎「納豆、味噌汁、合っとるぞ!!」
やがて馬太郎は元に戻る。
馬太郎「行ける…行けるぞ!! 一体どうなっとるんじゃ!?」
2人「やったー! イエイ!!」
馬太郎「何でこんなにうまいんじゃ!?」
東「うまいに決まってんだろ!? そりゃじいちゃんのために作ったパンなんじゃから」
馬太郎「和馬……ワシの…ために…和馬……」
夕方。
おじさんが店の前に立っていた。
東「おじさ――――ん!!」
おじさん「やあ、和馬君。へえ、それはよかった。おじいちゃん、喜んでくれたんだね」
東「おう。ところでさ、牛乳の代わりに入れたあれって何だったんじゃ!?」
おじさん「ああ、あれは豆乳だよ」
東「豆乳!?」
おじさん「納豆も味噌汁も豆乳も元はみんな大豆からできている。だから、マッチングはバッチリだったんだよ」
東「へー」
おじさん「でもね、あの豆乳トーストのおいしさをあそこまで引き出せたのは君のその魔法の手「太陽の手」があったからだよ」
東「太陽の手!?」
おじさん「パンはね、暖かくしないと発酵しない。だから工房内の温度は30度前後に設定している。でもね、どんなに優れた空調設備で暖めても空調設備の温度は変わらない。だから、本場のフランスでは君のような暖かい手を「太陽の手」と呼んで叩いてるんだ」
東「ふーん」
おじさん「和馬君、僕は東京に行くことにしたよ」
東「ええーっ!?」
おじさん「ジャぱんを生み出し、日本中に広めるにはやはり東京でなくてはダメだ。フランスから寄稿したとき、正直、東京でやっていく自信がなくて、故郷に逃げたんだ。大切なものを置き去りにしてまでの帰国だったんでね。でも、今は違う。君が頑張る姿を見ていたら僕も負けて入られない。そう思った」
東「また、会える!?」
おじさん「そうだな、もしこの先君がパン屋を目指し、ずーっと君のジャパンを追い求め続けることができたら、またいつか会える日が来るかもしれないね」
東(あれから10年、正直、俺はあの人の顔も正確には覚えていない。けど、あの言葉だけは今もはっきり覚えている。そして俺はジャぱんを追い続けている。豆乳パン。俺のジャぱん試作品第1号。あれから思索を重ねていまや55号。この日本の真ん中東京で試作品56号からの俺の新のジャパン探しの戦いが始まる。完成まで何号かかろうと必ず作って見せるんじゃ)
そして東はパンタジアにやってきた。
東「うわっちゃー、でっけぇ店じゃ。ここが日本一のパン屋・パンタジアか。よし、こんちわー!! 今日からお世話になる東和馬じゃ!!」
黒柳「東和馬か? 5分の遅刻だ」
東「あ、いや…すまんすまん」
黒柳「5点減点」
東「は?」
「遅刻だって」「あいつ何もしないで半分だぜ」「終わったな」
河内(アホや)
諏訪原(ぶったるんどる)
月乃(せっかくいらっしたのに、お気の毒ですわ)
黒柳「いいか貴様、この試験は減点方式だ。最初の持ち点は10点。減点により点数が0になったら不合格とする。不合格となったら荷物をまとめて帰れ。わかったな!?」
東(何じゃ!?)
黒柳「それでは、パンタジア商店本店採用試験を開始する。全員横一列に並べ。何をしている!? もたもたするな、残り5点のお前!」
月乃「え!?」
黒柳「私は今回の試験を担当する黒柳亮だ。当パンタジア東京本店の採用者はこの後に行う試験で決定する。ただし、採用枠は35名中1名」
東「うっひゃー、大変じゃなあ、おい。でもまあ最後まで頑張るっきゃねぇ! おし!!」
月乃(あの輝きはもしかしてあの人、伝説の太陽の手を)
東「俺は負けねぇぞ、ジャぱんで勝負じゃ!!」
ナレーション「東和馬のジャぱんへの戦いが今、始まる」
(続く)