電人ザボーガーの第1話
科学力を駆使して悪事を重ねる秘密殺人強盗機関Σが
エジプト黄金展の会場から12時に黄金の仮面を盗み出すと予告してきた
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美術館のエジプト黄金展会場。
大勢の警備員が、美術品の警護にあたっている。
町外れにある、秘密殺人強盗機関Σのアジト。
ボスの悪之宮博士が、着々と作戦を進めている。
悪之宮「ミスボーグ、作動開始」
「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1」
カウントダウンとともに、美術館内の彫像の中から、Σ団の女性型サイボーグ・ミスボーグが出現。
驚く警備員たちを根こそぎねじ伏せ、悠々と黄金の仮面を手にする。
ミスボーグが、Σ団のアジトの帰還。
車椅子に乗った悪之宮博士が迎える。
ミスボーグ「ただいま戻りました。計画はすべて、予定通りに運びました」
悪之宮「フフフ…… ミスボーグ、よくやったぞ。世界中の宝物という宝物が、我がΣ団のものとなる日も近いぞ」
一方、羽田空港。
羽田空港へ降り立った1人の青年 この青年が 秘密刑事・大門豊である
彼は地中海に浮かぶコルタ島で 秘密刑事としての訓練を終えて帰国したのだ
彼が秘密刑事であることを知っている者は 警視総監と新田警部の2人だけである
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羽田に降り立った主人公・大門豊を、警視庁の新田大五郎警部、娘の美代、その弟の浩が迎える。
美代・浩「お帰りなさい、大門さん」「大門さん!」
豊「よぉ! 美代ちゃん、美人になったなぁ」
美代「やだわ、大門さんたら、大きな声で」
大門「ハハハ。浩くんも、でっかくなったなぁ!」
浩「うん! 外国での話、聞かせてくれよ」
美代と浩が、豊の荷物を運んで行く。
新田「お帰り」
豊「ただいま。一家総出でお迎えいただけるとは、思いませんでしたよ」
新田「秘密刑事を出迎えるためのカムフラージュ作戦。ちょいと、家庭的にしたんだ」
豊「なるほどね」
新田「大門、近頃のΣ団の脅威は、目に余るものがある。正直言って、警視庁でも手を焼いてるんだよ。実は……」
豊「実は?」
新田「君のお父さんの研究所を襲って、大門博士を殺害したのも、どうやらΣ団らしいんだよ」
豊「Σ団……!?」
新田「お父さんから預かったものだ」
新田が大門に、1通の手紙と鍵を手渡す。
『遺言 もし私が死んだら この鍵を形見と思いなさい 豊へ 父』
紙面にはこの文面のみで、あとは不自然に広い余白が広がっている。
新田「ずいぶん、余白が多いな」
大門「……あっ!」
大門がライターを取り出し、手紙の裏に火をともすと、あぶり出しで「山手台の教会へ行け」と字が浮かび上がる。
そのとき、突然の銃声。
大門たち「危ない!」「伏せろ!」
物陰に隠れる大門たち。銃を構えた黒服の者が逃げていき、大門が追いかける。
銃撃をかわしつつ、大門が黒服を追いつめ、飛び蹴りを見舞い、締め上げる。
大門「誰に頼まれた!? 言え!」
別の銃撃音。大門が身をかわし、黒服がハチの巣となって倒れる。
銃を持った別の黒服が、大門を狙っていたのだ。
さらに銃撃が大門を狙うが、背後から新田の狙撃を受け、黒服が倒れる。
大門「新田さん!」
さらに、10人近くの黒服の者たちが現れ、棍棒をふるって大門たちに殴りかかる。
大門は果敢に応戦。瞬く間に、黒服全員を1人で叩きのめす。
豊が車を飛ばし、遺言状に示されていた教会にやって来る。
豊「これが、父の遺言状にあった教会か……」
教会の中に入ると、地下室へと続く階段。
豊「この教会に、こんな地下室があったのか……」
地下室の扉を、遺言状に添えられていた鍵で開く。
壁面に、豊の父・大門博士の映像が映し出される。
父「待っていたぞ、豊」
豊「父さん!」
父「私がお前のために造った犯罪捜査用ロボット、電人ザボーガーを見せよう」
壁面が開き、人間と同程度の大きさのロボット、電人ザボーガーが現れる。
豊「電人ザボーガー……!」
父「このロボットは、悪之宮博士のΣ団の悪を暴くために造ったものだ。豊よ、電人ザボーガーとスクラムを組んで、Σ団と戦ってくれ」
豊「わかりました」
豊が早速、鍵をザボーガーに差し込んでみるが、ザボーガーはまったく動かない。
父「電人ザボーガーを初めて作動させるためには、豊よ、お前の体内からほとばしる怒りの電流が必要なのだ」
豊「怒りの電流ですって?」
父「悪之宮博士を倒したいと思う、怒りの電気だ!」
教会の外で、ミスボーグが豊の車を奪う。
豊が地上に現れると同時に、車が走り去る。
大門「あっ、待て! しまった…… タクシー!」
豊がタクシーを拾い、車を追った末、町外れの建物へとやって来る。
大門「ここがヤツらのアジトか」
建物の中に入る豊。室内には、ミスボーグが逃げもせずに待ち構えている。
ミスボーグ「ようこそ。首領がお待ちかねですわ」
豊「何ぃ?」
ミスボーグ「アハハハハ! 私はあなたの案内役よ」
車椅子に乗った悪之宮が現れる。
悪之宮「ようこそ、大門くん」
豊「あなたが悪之宮博士!?」
悪之宮「左様。君の父、大門博士とはライバル同士であった」
豊「あなたがΣ団のリーダーなのか!?」
悪之宮「フフフフフ」
豊「じゃあ、父さんを殺したのは……!?」
悪之宮「わしは大門博士が発明した、ダイモニウムが欲しかった。そこで、Σ団に入ることを勧めたのだ」
豊「父さんは拒否した!」
悪之宮「フフフ。だから殺した」
豊「悪之宮博士……! 貴様を、この手で殺してやる!」
豊が悪之宮に飛びかるが、目に見えない壁に阻まれる。
悪之宮「見たか、バリヤーの威力を!」
悪之宮が車椅子を操作すると、車椅子に仕込まれた銃が火を吹く。
とっさに豊がかわすものの、1発の銃弾を足に受けてしまう。
豊「ぐわぁ!」
さらに車椅子から何本ものナイフが飛び出し、豊は壁面に張りつけとなる。
悪之宮「ハハハハ、おとなしくしていれば死なずに済むものを。君のお父さんが発明したダイモニウムは、まったくすばらしい。どのような者でも、サイボーグにして生き返らせることができるのだ。今からその作品をお目にかけよう」
壁面が開き、アリのような頭部を持つロボットが現れる。
悪之宮「アリザイラー。お前の力を、その青年に見せてやりなさい」
アリザイラーと呼ばれたロボットが、容赦なく豊を痛めつける。
豊「ぐわぁぁ……!」
その夜、新田家の前にトラックがやって来て、荷台から豊を落とし、走り去る。
新田たちが飛び出すと、豊は傷だらけで気を失っている。
一同「大門くん!」「大門さん!」「しっかりしろ!」
ただちに豊は病院へ運ばれ、手術が開始される。
しかし手術の後、医師は静かに、豊の顔に白い布をかぶせる。
医師「お気の毒です……」
美代が豊にすがりついて泣き出し、浩も涙をこぼす。
そのとき。豊の胸に顔を埋めた美代の耳に、心臓の鼓動音が響く。
美代「生きてるわ……!? 生きてます!」
後日の病室。
意識を取り戻した豊を、美代と新田が見舞う。
美代「良かったわ、元気になって」
豊「新田さん。父はやはり、Σ団に殺されたんです」
新田「やっぱり、そうか」
豊「きっと…… 父の仇を討ちます!」
新田「しばらく安静にしとれ。俺は、お前の親父に頼まれたんだよ。だから、あんまり無茶させたくねぇんだ。気持ちはわかるがな」
そこへ医師が、レントゲン写真を携えてやって来る。
医師「大門さん、この影は何でしょうな? 左右の胸にあるんですがね」
豊の胸を写したレントゲン写真には、両胸に小さな機械のようなものが見える。
豊「電極回路です」
医師「電極回路?」
豊「えぇ、6歳のときでした。車にはねられて、死にかけたことがあるんです。そのとき、父が埋め込んでくれたんです。心臓の動きを助けるために」
医師「なるほど。それで、あなたが不死身である理由がわかりましたよ。では、お大事に」
そのとき、病室の電話が鳴る。
美代「もしもし。──はい、お父さん。山田刑事さんから」
新田「俺だ。──何だって!? あぁ、すぐ行く」
豊「事件ですか!?」
新田「あぁ。Σ団が、今度は黄金の仏像を盗むと言ってきたんだ。国宝だぜ」
豊「悪之宮……!」
美代「ダメよ、寝てなきゃ」
新田「無茶しちゃいかんぞ」
豊が、父が遺言状に添えて遺した鍵を見つめる。
豊 (悪之宮を許してはいけない…… Σ団を放ってはおけない!)
その感情に呼応するように、手にした鍵に火花が飛び散る。
豊「電流だ! これが怒りの電流なのだ!」
再び、山の手の教会の地下室へやって来た豊。
ザボーガーに鍵を差し込むと、体内の回路が作動し始める。
豊「体内の電極回路とシンクロするように仕組んであったのか!」
壁面にザボーガーの設計図が表示される。ザボーガーの変形システムが示されている。
豊「そうか、電人ザボーガーはオートバイにもなるのか…… 偵察用ミニヘリコプター、出動!」「スペシャルカー、出動せよ!」
指令を受け、ザボーガーの体から小型ヘリコプター、小型車両が偵察のために出動する。
豊「チェンジ! マシーンザボーガー!」
さらにザボーガーが、オートバイ形態のマシーンザボーガーに変形。
豊がそれに乗り、Σ団の犯行現場を目指す。
一方、Σ団の犯行現場。
アリザイラーとミスボーグが寺を襲撃して黄金の仏像を盗み出す。
新田や警官たちが彼らを包囲して取り押さえようとするが、到底かなわない。
そこへマシーンザボーガーに乗った大門が到着する。
豊「電人ザボーガー、ゴー!」
ザボーガーがバイク形態からロボット形態へ変形し、アリザイラーへ立ち向かう。
大門も自らミスボーグに挑むが、ミスボーグは大門をはねのけ、ガスをふりまく。
豊「毒ガスだ!」
新田「ガスだ、逃げろ!」
ようやくガスが晴れると、すでにアリザイラーとミスボーグの姿はない。
豊「電人ザボーガー、追うんだ!」
現場から逃走するアリザイラーにザボーガーが追いつき、再び戦闘となる。
豊も追いつき、ミスボーグに挑む。
ザボーガーのパンチ、キック、投げ技が次々にアリザイラーに決まる。
豊「電人ザボーガー、チェーンパ──ンチ!」
鎖分銅のごとく発射したザボーガーのパンチが、アリザイラーに炸裂。
豊「必殺、ブーメランカッタ──!」
ザボーガーの耳の突起がカッターとなって飛行、アリザイラーの首を切り落とす。
豊「速射破壊銃!!」
とどめにザボーガーの口から放たれた破壊銃の連射を浴び、アリザイラーが大爆発。
豊「飛竜三段蹴り!!」
豊の必殺の空手技が、ミスボーグに炸裂。
ミスボーグが退散してゆく。
勝利をおさめた豊が、Σ団のアジトに乗り込む。
しかし、アジトはもぬけの空。
豊「悪之宮博士、どこにいる!? 出て来ぉい!!」
どこからか、悪之宮博士の声が響く。
『大門豊、秘密殺人強盗機関Σは、世界中に前線基地がある。この基地も、お前の墓場にくれてやる。ハハハハハ!』
時間を刻む音。
豊「爆破装置だ……!」
咄嗟に豊が、窓ガラスを突き破って外へ飛び出す。
間一髪、アジトが大爆発。豊は辛くも命拾いした。
豊「いくらアジトを変えても悪之宮博士、俺はあきらめんぞ! お前を必ず、この手で倒す! 必ずだ!!」
(続く)