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天空に輝き我々を見下ろす真っ赤に血塗られたあの眼球(つき)を見ろ
そして思い出せその男の名を
その男の伝説(レジェンド)を
時は満ちる 語るべきは未来(フューチャー)へ続くその軌跡のみ






#1.HERO REBORN



 (どこかの町。棺桶に入れられて運ばれてくる死体。それを見て騒ぐ男たち)

男「保安官ー!」


 (そんな中やって来たのは・・・・サングラスをかけ十字架を背負った黒衣の巡回牧師二コラス・D・ウルフウッド)
 (だが、彼には眼もくれず人々は騒いでいる。我先にとバスに乗ろうとしているのだ)

客1「乗せてくれ!!金なら払える」「せめてトナリ街まで……」
客2「こうしている間にもあの男がこの街に乗り込んでくるかも知れねえ!!」
  「おまえら俺たちを見殺しにする気か!?」

 (そんな騒ぎを尻目にし、ウルフウッドは酒場に入る)
 (入った端から客に睨まれるウルフウッド)

ウルフウッド「エライ緊張感の街やな」「マスター何か喰えるもんを」
酒場のマスター「見ない顔だ」「今のバスで来たのかね」
ウルフウッド「うん」
マスター「…気の毒に…」
ウルフウッド「!?」
マスター「あんた…」「もう ここを出るコトはできないよ」

 ズドバゴドゴン!!!
 (話の最中に響き渡る轟音)

ウルフウッド「・・・・な!?」
マスター「この街は今 伝説のガンマン ヴァッシュ・ザ・スタンピードの率いる郎党に囲まれている」
「交渉に出向いた保安官達も鉛玉で体重を2割増やして戻ってきた」「入れば2度と戻れぬクモの巣の街さ」
ウルフウッド「伝説のガンマンねえ・・・」「怪しいな 本物なんかそれ」
マスター「フッ あんたもそう思うかね」「ヴァッシュ・ザ・スタンピード・・・くだらない三文記事に皆躍らされすぎてる」
「いわく7都市のひとつを灰に変えた悪魔の使い」「600億$$の賞金首として手配されたのち人類初の局地災害指定」
「関わる事件は200を超え被害総額は20兆$$オーバー」
「そして2年前のフィフス・ムーン事件を境に姿を消すー」「あの月の大穴まで奴の仕業だってんだぜ」
「真に受ける方がどうかしてるのさ」
ウルフウッド「まあでも今 伝説の真偽に関係なくこの街は脅威にさらされてるって訳や」
マスター「その通り」「ところで・・・・・・あんたのそれは・・・・・・十字架!?」
ウルフウッド「・・・・・・・・・ニコラス・D・ウルフウッド 大陸を流しながら神に仕える巡回牧師をやってる」
マスター「丁度よかった」「略式でいい葬式を手伝ってくれ」「この間 牧師もやられちまったんでね」

 (二人が話し込んでいる間に店を訪れたのは、金髪の長髪眼鏡男と彼に掴まれた少女)

少女「ちょっと!! なんのつもり!?」
客「なんだリィナか」
リィナ「なんだじゃないわよ」「エリクスも離して!!」「マスターごめん!! 例のアルコールを!!」
マスター「何あわててんだリィナ ばあさんの具合はいいのか?」
リィナ「ゴメンなさい早くして マスターのためなの」
エリクス「リィナはやりすぎなんだよ 少しからかわれたくらいでさあ・・・」
リィナ「殴られて当然よあのロリコン!!」
エリクス「連中に尻さわられて・・・・・・あうっ」

 (言ったとたんリィナに蹴りを入れられるエリクス)

リィナ「ベラベラ喋るなぁ!!」
マスター「・・・・・・!?」「てことは・・・何?!」
リィナ「そうなの この店に入ったのは見られてないと思うんだけど・・・」

 (そうこう言ってる間に右腕を銃にした小男がやってきて一撃をぶっぱなす)

 ガゴ!!(店の壁に穴が開いた)

ウルフウッド「・・・・・・チッ」「どうしてくれんねんこの料理」

 (破壊の衝撃で埃をかぶった料理を前に愚痴るウルフウッド)

小男「・・・ボク様の・・・このラブリーなオカオにカカトくれた小娘は何処だ!?」

 (大勢の仲間を引き連れてすごむ小男。その額には見事な足型がついている)

ウルフウッド(なる程キレイに入ってんな スジええであのガキ)
客「・・・・・・おいあの男」「アレがそうなのか?」

 (小男の後方で偉そうにしているのは、見覚えのあるコートと金髪)

客「ヴァッシュ・ザ・スタンピーーード!」
小男「・・・・・・この男が店に入るのを見たって!!」「ガセだったらおワビに今ここでシメ殺すわ」

 (目撃者らしき男を締め上げてすごむ小男)
 (と、その時、誰かが酒場から出てきた・・・)

リィナ「ちょっちょっと待ってよエリクス!!」
エリクス「いやホント済まなかったなあ 冗談が通じなくてさ」「何ぶんまだ12歳の女の子だ 大目にみてやってく」

 ド!(喋る途中で地面が爆発)

小男「・・・・・・ガキの方を出しな」
エリクス「そりゃできない だってあんたたち殺すってツラしてるもん」
「タダとはいわねえよ」「これで・・・カンベンしてもらえねーか」

 (土下座するエリクス。そんな彼の姿を悲痛な表情で見るリィナ)

ヴァッシュ「・・・・・・・・・よく分かった」
小男「!!リーダー!!」
ヴァッシュ「だがこのヴァッシュ・ザ・スタンピード おまえさんのいうとおりタダで帰るわけにもいかん」
「そうだな 裸になって犬の真似をしてもらおうか」

 (その言葉にエリクスは・・・・)

エリクス「本当だな? 約束守れよ?」
リィナ「やめてーーーーーーーーーーッ」
エリクス「リィナ 頭ひっこめてろ」

 (そう言って服を脱ぎ捨てるエリクス。その体は全身傷だらけだ)

客「あの体は・・・・」
エリクス「わんわんわん へっへっへっ」

 (犬の真似をするエリクス。妙に芸が細かい)

小男「どうします!? リーダー!?」
ヴァッシュ「・・・・・・・フン・・・行くぞ」

 (部下たちを引き連れて去っていくヴァッシュ・・・・と思いきや・・・・)

 ドドドドドド!!!(突然発泡したヴァッシュ。その弾はエリクスに命中)

リィナ「エリクーーーーーーース!!」

 (叫び駆け寄ろうとするリィナだが、ヴァッシュの部下に攫われてしまう)

リィナ「エリイイイイイッスススス!!!」




 (倒れたエリクスが担ぎ込まれたのは病院)

ドクター「何じゃ何じゃ おおエリクスじゃないか」
客「弾は貫通してないみたいなんだ頼むぜ先生」

 (ヴァッシュの脅威からとりあえず逃れた人々)

男1「プライドと命と天秤にかけてよ どっち取る?」
男2「裸で犬の真似かよ よくやるぜ全く」
ウルフウッド「その裸踊りのおかげで命ひろったんは誰なんじゃコラ」
男たち「らわわわわわわわ」

 (すごむウルフウッドの迫力に押される男たち)

男「どうすんだよ実際 見殺しにするのかリィナを」

 (エリクスの治療そしているドクター。何か異変に気づく)

ドクター「?お??」「何じゃ何じゃ 何かオカシイと思ったら・・・」
助手「どうしたよ先生ッ」
ドクター「押し出されて外に出とるぞ弾・・・」
助手「・・・ええっ!?・・・・・・」

 (そうこうしている内に、杖を付いた老婆が入ってくる)

老婆「エリクス!!」
男「おお!!シェイルばあさんか」「済まねえリィナが・・・」
ドクター「ホ 何じゃ何じゃシェイルかい」
シェイル「先生・・・!!」
ドクター「大丈夫じゃよ エリクスは運の強い奴じゃ深手をひとつも負っとらん」
「今晩いっぱいはここで預かろう」
男1「ふう まずは一安心か」
男2「ばあさん 良かったじゃないか」
シェイル「………っ」

 (涙をこぼすシィエル)

シィエル「全く・・・!!」「伝説のガンマンだかなんだか知らないけどさ……!!」
「この年寄りから小さな家族まで奪う権利をそいつは持ってるというのかね!?」「ええっ!? 畜生っ!?」

 (壁にかけてあった銃を手に取るシェイル)

男「あっオイばあさん」「やめろよそんな体で」
シェイル「うるさいッ 放しなっ」「じゃあ代わりにあんたたちが行ってくれるとでもいうのかい!?」
男「………………!!」
シェイル「ほら見ろ とんだ腰抜けたちだ あたしに意見しようなんて十年早いよ」
男「殺されちまうっていってんだよクソババア!!」

 (その様子を眺めていたウルフウッド。おもむろに移動する)

ドクター「何じゃ何じゃ牧師の出番じゃないぞ」
ウルフウッド「しっ」「このまま病室へドクター」

 (エリクスが眠る病室に移動したウルフウッド、ドクター、看護士)

ドクター「………」
ウルフウッド「フウ…ウラッ 起きろッ」

 ばぢん!!(派手な音をさせてエリクスにビンタをかますウルフウッド)

ドクター「何するかーッ 絶対安静じゃぞ」
ウルフウッド「時間ないねん しゃあないねん」
看護士「先生 先生ッ!!」
エリクス「……」

 (恥ずかしそうに眼を開け、手を振るエリクス)

ドクター「何じゃ何じゃ 何でもう回復しちょるんじゃ!?」
ウルフウッド「よう 久しぶりやな」
エリクス「先生…悪い…少しはずしてくれないか?」
ドクター「あ? ああ」

 (ドクターと看護士が病室から出て行き、部屋には二人だけ)

ウルフウッド「……やっと見つけたでアホウが」「二年間も何しとったんや」「ヴァッシュ・ザ・スタンピード!!」

 (そう、町を襲っているのは真っ赤な偽物。エリクスこそが本物のヴァッシュなのだ・・・)

ウルフウッド「月をも貫く伝説のガンマンが…」
ヴァッシュ「止めてくれよ 何が伝説だ」「僕は……あの銃で地上をなぎ払っていたかも知れないんだ」
ウルフウッド「そのあまりの脅威を恐れ 隠居生活っちう事かい」
ヴァッシュ「ただ静かにくらしたかっただけだよ 名前も生き方も変えて…でも もう無理みたいだね」
「運命の犬は血と硝煙の臭いをかぎつけるのが得意らしい」

 (ベッドから起き上がろうとするヴァッシュに何かを差し出すウルフウッド)

ヴァッシュ「?」
ウルフウッド「届けもん 2年前に拾ったんや」

 (それは2年前まで使っていたヴァッシュの銃だった)

ヴァッシュ「………ヒドイなあ……本当に気に入ってたんだぜ………今の生活が」
ウルフウッド「しゃあないやろ 誰かが牙にならんと誰かが泣く事になるんや…」

 (2年ぶりに銃を手に取ったヴァッシュ)

男1「2人がいないぞ!! 書き置き!?」「『探さないでください リィナを取り返しに行ってきます』って…」「おい」
男2「たった2人でか?」




 (ゴロツキどものアジトの前に立つ2人。ウルフウッドは十字架銃パニッシャーを構える)

ヴァッシュ「おいっ殺すなよっ」
ウルフウッド「む ムチャな事ゆうな」
ヴァッシュ「”汝殺すなかれ”だ なんてえ聖職者だよ全く…」

 ドカアアアン (言い争っている2人の足元に撃ちこまれる銃弾)

ゴロツキ「ぶっ殺せーーーーーー」
ヴァッシュ&ウルフウッド「行くぞ!!」

 (不敵な笑みを浮かべて突撃する2人)

 (それからしばらくして・・・・アジトは瓦礫の山と化した。ゴロツキどもがあちこちに倒れている)
 (そんな中、ただひとり抵抗しているのは偽ヴァッシュ。リィナに銃を突きつけている)

ヴァッシュ「あっという間に決着つきましたねぇ」「ここらで打ち止めにしませんか俺達もうヘトヘト…」
偽者「うるせえ この俺をここまでコケにしやがるとはガマンならねえ」「確認させてやる 俺の名前を言ってみろ!!」
ヴァッシュ「ええっ!? 俺がいうの〜〜〜〜!?」
ウルフウッド「ぎゃははははははは」

 (かなり嫌そうなヴァッシュ。笑い転げているウルフウッド)

ヴァッシュ「……ヴァッシュ・ザ・スタンピード」
偽者「聞こえねえ」
ヴァッシュ「ヴァッシュ・ザ・スタンピード!!」
偽者「んーーーーーそうだったよなァ この名前が何を意味するか教えてやろう …銃を捨てな」
ヴァッシュ「………」

 (嫌そうな表情を隠さず銃を捨てるヴァッシュ)

偽者「つまり そいつが地面に着くまでにてめえの心臓にブチ込める腕ってことさ」

 (言いつつ発砲しようとする偽ヴァッシュ・・・だが、それよりも速くヴァッシュの銃が火を噴いた!)

偽者「ガッ!!ななななななぜえええええええ!」
ヴァッシュ「奇遇だね」「俺も同じ名前なんだ(6倍速いけど)」


 (開放されヴァッシュ泣きつくリィナ)

ヴァッシュ(あーあ これだけのケガ人どこに運びゃいいんだろう…)

「ヴァッシュ・ザ・スタンピード!!」
「そして再び歯車はまわりだす」「熱砂の荒野にはためく赤いコートの優しい死神」
「この星の歴史にその名が刻まれるのはまだ先の話」「今はただ見届けよう新たなる伝説のゆくすえを……」



#1.HERO REBORN/END

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