富 江 アナザフェイス |
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(登場人物の1人・美紀によるナレーション) クラスメイトの富江が 死んでしまいました それから1週間── 富江を殺した犯人は まだ見つかっていません |
私たちは2ヶ月前まで恋人同士でした そこに富江が現れて 私から高志君を奪っていったのです |
突然現れた富江は 幽霊なんかじゃなく 生身の 本物の富江でした 学校中が大騒ぎになって 保健の先生がちゃんと調べたので 間違いありません |
そして高志君は 堰を切ったように話し始めました 2週間前 つまり 富江が殺されたと大騒ぎになった日の前日 高志君はいきなり富江に 別れ話を持ちかけられたそうです |
回想── 閑散とした放課後の運動場。1人でバスケの練習をしている高志のもとへ、富江が現れる。 高志「話って何だよ?」 富江「もう別れたいの」 高志「……何で急にそんなことを言うんだよ? 俺から離れないで……」 高志が富江を抱こうとする。 富江「触らないでよ! 気持ち悪いわねぇ……」 高志「頼むよ……やり直させてくれ……何で嫌いになったんだよ?」 富江「馬鹿じゃないの? 嫌いになったから嫌いなのよ」 高志「……別の男ができたんだろ?」 富江「アハハ! アハハ! そういう馬鹿なところが嫌いなのよ。別の男なら、あんたと付き合ってる最中もずっといたわ。フフフ……アハハ!」 富江が高志に背を向け、嘲笑い続ける。 高志がズボンのベルトを抜く。 高志「駄目だよ……富江は……」 富江の首に、高志のベルトが巻きつけられる。 高志「ずっと僕だけのものなんだ!」 富江「う……う……う?」 高志「絶対……誰にも渡さないよ」 やがて富江が倒れ、その体の動きが止まる……。 |
そして高志君は富江を殺し 死体をゴミ捨て場に隠した…… というのです |
私には高志君の話は信じられませんでした たった今 富江を突き飛ばしてしまったショックで わけがわからなくなっているんだ── 私はそう思いました 高志君が怯えている分 なぜか私は冷静でした 私が高志君を助けてあげなきゃ── そう思いました |
こうして私たちは 2人だけの秘密を作りました とても恐ろしい秘密なのに なぜか私の心は満ち足りていました |