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逮捕しちゃうぞ @


― FILE1 怖い物知らずの爆風婦人(レディース)警官 ―


違法駐車の車が、ずら〜っと並んだ道路…
一台のミニパトがやってくる。
『この付近は駐車禁止になっていますっ。
移動がない場合は、レッカー移動します。』
マイクを握る運転席のショートカットの婦人警官、小早川美幸。
「美幸がやっても、全然効果がないじゃない。」
助手席に座っているのは、ボブヘアーの婦人警官、辻本夏美。
「じゃあ夏美やってみなよぉ。」
「やってみせましょう。」
『足立○ 27−○○のRX−7の持ち主の方ーっ、
あなたが現在駐車中の場所は、砂倉組の組長が
いつも止めています。
移動のない場合、車の安全は保障しかねますっ。』
とたんに、バタバタと喫茶店から走り出てくる男。
「ほら、どいたよ。」 満足そうな夏美。
「ま…別にいいけどね…よく考えたら、
もともとあたしに押しつけたんじゃないの?」
「お?」 窓の外を見る夏美。
「こらこら、ごまかすんじゃないっ。」
「なんだ、あれ?」
曲がり角から、少し頭を出した状態で、外車が止まっている。
ミニパトから降りる二人。
「うーん、こりゃもう何考えてんだか…」
「わかりませんねーっ。」
マイクを握る夏美。
『BMW635osiの運転手の方、ここは暴走族の通り道です。
早く移動しないと、燃えないゴミになりますよーっ!』
しーーーーーーん
『あっ暴走族ですっ!パリラリラリグォンオンウォン
ワンワンガオガオガォン
あーっ危ないBMW!!』
…しかし、やっぱり誰も来ない。
「よーし、そんじゃあ。」 夏美、指をバキボキして…
「こーだっ!」 ガシッ!と、車を持ち上げ…
「うおおりゃああ〜、だあっ!はあっ!どおっ!」
「勝手にやっててよね…」 美幸は無視。
ずるずる…と車をさげる夏美。 「へへっ、ざまあみろい!!」
そこへ…
「わしの車に何しとんじゃい。」
夏美の背後にぬうっと現れたのは、黒服にサングラスの男。
…かなりデカい。
一瞬、「ぎく!」の夏美…しかし…
「キズでもつけたら、ただじゃすまんぞ。」
その言葉に、ソイツを睨み返す。
「こんなとこ止めといて、その言い草はなんだ?」
すると、その男…
「そーゆーえらそーな口をきいとってーっ!」
バキッ! 道路標識を殴って折り、
「こーなっちまっても、しんねーぞっ!」
それを見た夏美は…
「ほほう。」 不敵な笑いを浮かべ、傍らのポストを肘でこんこん…
「ほ!」 めこっ!ヒジテツ一発!で、ポストをへこませた!
「こーだ!」 ドカ!「そんならこーだ!」 バキ!グシャ…
美幸は、呆れ顔…
(このままでは、街は2人に破壊しつくされてしまう!
あーゆーのあいつの大好物だもんなー)
BMWのボンネットとそっと開け、ぴん…と何かを抜き、
ぷちぷち…っと何かして…ばん!「よし。」
そして、男のそばへ行き、
「ごめんなさーい。このコ少し短気だから。
さー帰りましょうっ!」
「ちょ…ちょっと。」
納得できない表情の2人に有無を言わせず、
夏美をミニパトに押し込む美幸。

「なんで止めたのよぉーっ。」 不服そうな夏美。
「あの車ね、ブレーキきかなくしたの。
ちょっとブレーキパイプ切ってさ…簡単だった。
今頃はガケ下かなんかに…どっか〜ん?♪♪」
ニッコリ笑う美幸…
夏美、汗… (こえー女だなー…)

きしゅるるるるる…
「あれー?」 暗くなっても走り出せないBMW…

美幸 「ほんとはプラグコード抜いただけ。」


― FILE1 おわり ―

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

― FILE2 反則キップは破らないで ―


交差点
夏美と美幸のミニパトが止まっている。
「あーっ、終わった終わったっ。
美幸、これから予定ある?」
助手席の夏美が、尋ねた。
「ディスコなら行かないわよ。あんたと行くと、
6時間踊りっぱなしに…」
ハンドルを握った美幸がそこまで言った時…
一台のベンツが、目の前で!
「あーっ、指定方向外進行禁止違反!」
「んなのいーからディスコ行こーよっ。」
夏美の言葉は無視、キュキュキュ〜ッ!
タイヤを鳴らして、その車を追いかける美幸。
「信号無視!……あっ!歩行者横断妨害!…次から次と…」
「ディスコ行こ〜!」 夏美はまだ言ってる…
マイクを握る美幸、 「そこのベンツ300SL、左に寄せなさい。」
フルオープンのその車は、散々違反をしてきた割に、
おとなしく言うことをきいて、左に寄せ止まった。
ミニパトを降りて、ベンツに近づく美幸。
「免許証を見せてください!!」
運転していたのは、薄ら笑いを浮かべた若い女だった。
「はい、どーぞ。」 まるで、こバカにしたような表情の女…
(昭和41年6月18日、まーっ、こいつ私より2つ下じゃないのっ。
そのくせにロードスターなんかに乗ってお嬢様ヅラして…
公務員の給料は安いんだぞ…)
免許証を見ながら、美幸はブツブツ…。
「もう、いいかしらっ?あたしこれから東名使って
箱根の
別荘まで行くから、急いでんのよ!!」
美幸、ムカッ!
「はいっ、赤キップだから免許証は預からせていただきますっ。」
美幸は、女の目の前に赤キップを突き出した。
「ふんっ。」 ぐしゃ! 女、赤キップを丸めてポイッ。
「私の父は代議士なのよ、黒田英夫…聞いたことあるでしょ。
こんなもの簡単に握りつぶせるのよっ。
これにこりて…」
「わたしの父は…」 いつの間にかそこにいた夏美、
空き缶を手に…
「プロレスラーのイントニオ阿乃木なのよっ。
こんなものいくらでも握りつぶせるわっ。」
ぐきしゃぐきしゃ!空き缶を両手でつぶしてポイッ!
そして、車のボディーに腕を掛け、女をひとにらみし
「おたかくとまってんじゃねーよっ。」
女、ギクッ!
「黒田英夫の娘ってことで、
世間じゃちやほやされるかも知れないけど、」
話しながら夏美は、そっと美幸に合図。
合図を受けた美幸が、ロードスターの下にもぐり込み、オイルを抜く…。
話しを続ける夏美。
「あんたの父親に地位があるだけであって、
あんたには、まるで関係ない話だろ。
もっとも、たとえ代議士であっても、容赦しないけど。」
「私に説教する人も珍しいわね、
お名前うかがってもいいかしら?」
女は、挑戦的に尋ねた。
「辻本夏美。」 「と、小早川美幸でーす。」
「夏美と美幸ね、一応覚えておくわよ。」
ボボォボォ…走り去る女。
「どうだった?」
夏美の問いに、ニッコリ答える美幸。
「ミッションオイル全部抜いてやった。
しばらくは走れると思うけど、ちょうど高速に乗ってから…」
すると、夏美もニッコリ…フックのついたテグスのような糸を持って
「へへっ、あたしもやったんだ♪」

ガガガガガガ…
「あれ?」 車の調子がおかしいことに気付いた女。
(なんだ?) ガチャッ!ドアを開けて車を降りた…と!!
ピン!…バリバリバリバリ!!!
夏美の張ったテグスに引っ張られ、
女の服が破け…て…!!!
「きゃああああああっ!」
周りの車の注目を集めて、うずくまる女。
(くそーっ、あいつらの仕業だな、
おぼえてなさいよっ…)

翌朝…
「昨日の夜、東名高速が大渋滞だったんだと。」
寝ぼけまなこで、新聞を読む美幸…
結局、6時間踊らされたらしい。
夏美は歯ブラシをくわえて…「ほーっ。」


― FILE2 おわり ―

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