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超忍者隊イナズマ!!
SPARK
(
スパーク
)
のオープニング
風の吹きすさぶ荒野。超忍者隊イナズマの新ヒロイン・飛燕が、敵忍者たちを次々に斬り倒す。
最後に敵の頭領が現れる。敵の繰り出す忍法をかわし、飛燕が岩陰に隠れ──そして、なかなか出てこない。
声「カット、カット、カット! カットぉ!」
西暦2077年。ここはテレビ局・マジカルTVの特撮番組収録スタジオ。監督の
倉田宮
(
くらたのみや
)
敬直
(
たかなお
)
の怒号が飛ぶ。
倉田宮「素顔のヒーローはどうした!? 変身解除後ぉ! どこ行った? あれか、おしっこか!?」
声「あ、私だぁ! ここでぇ〜す!」
主演女優・三島つばめがスタッフの中に混じり、岩の上で籠を振り、雪に見立てた紙吹雪を撒いている。
倉田宮「そんなとこで何やってんだ!? お前はここにいて」
倉田宮が、岩陰から飛び出してポーズを決めてみせる。
倉田宮「こうだ、こう!」
つばめ「すいません、監督! 初めにそこにいたんですけど…… ふと見上げたら、昭和式雪ふらしのスタッフさんがあまりにも汗だくで、『ん〜、ほっとけな〜い!』って」
倉田宮「バカ! ほっとけっつうの!」
つばめ「ホントに、ホントに…… わぁっ!?」
岩の上でつばめがバランスを崩し、その拍子に紙吹雪の籠が倉田宮に命中する。
それを見て頭を抱えている、プロデューサーの寺田ジュン。
(ジュンのモノローグ)
はぁ…… この困ったちゃんは、三島つばめ。
『超忍者隊イナズマ!』に続く私のプロデュース第2弾『超忍者隊イナズマ!!SPARK』の、なんとヒロイン。
でも、見ての通り、困ってる人をほっとけなさ過ぎちゃう、困った子なのよねぇ……
倉田宮「こらっ、スカタン!」
つばめ「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」
ジュン「この作品、大丈夫なのかしら……?」
声「おはようございます!」「おはようございます!」
ジュン「あ!?」
倉田宮「一度ならず、二度ならず…… お前なんかなぁ、ジャッジメント! チ・チ・チ・チ・チ! デリート許可!」(※1)
ジュン「ちょっと、ちょっとぉ! 倉田宮くん、エマージェンシーよ! 局長よ!」(※1)
編集局長の三島が、撮影現場にやって来る。
スタッフたち「おはようございます!」「おはようございます!」
三島「はぁい、グッドモーニング、グッドモーニング。どうかね、現場の諸君! 元気でやっとるか!?」
つばめ「パパリ〜ン!」
三島「おぉ〜、つばめ。いい子でやっとるか?」
つばめ「まぁ、ね……」
倉田宮「……何が『パパリン』だ、このバカリンが」
三島「だがな、娘のお前に逢いに来たわけじゃないぞ。そんな親バカみたいなマネ、するもんか。大ヒットした『イナズマ』の続編でプレッシャーのあまり、寺田がドジ踏まないか、心配でな」
ジュン「わ、私!?」
三島「だが、心配するな。今まで撮り終わったところを役員会でちょっと見せたところ、これが大好評でなぁ!」
つばめ「ウッソぉ〜!? 本当ぉ!?」
三島「あぁ。ワッハッハッハ!」
倉田宮「編集前のを勝手に見せんなっつぅの……」
三島「倉ちゃん! 倉ちゃんの演出も、実にいい! 監督に転向させた俺の目に狂いはなかった! つばめに惚れ込んでるのがなぁ、画面からビシビシと伝わって来るんだ!」
倉田宮「ハ、ハハハ。はぁ……」
三島「それでな、ものは相談なんだが、つばめの取り方で2・3、相談があるんだよ」
倉田宮は三島に、スタジオの隅へと連れて行かれる。
三島「──で、2・30カット、ポンポンポンと」
倉田宮「ちょっと待ってください、そういうわけにいかないっスよ。作品性っつうものがあるんスよ」
ジュン「あれじゃ、しばらく撮影中断ね。来て」
つばめ「はい?」
ジュンはつばめを、前作『超忍者隊イナズマ!!』でタイムトラベルに用いたテレポートルームへ招く。
つばめ「わぁ〜! テレポートルーム!」
ジュン「ダメよ、つばめちゃん。閉鎖中なんだから。こっち!」
前作とは別のテレポートルームに、2人が入る。
つばめ「えっ、ニュー・テレポートルームですか!? えぇ〜!」
ジュン「ここが一番静かだからね」
つばめ「テレビ局の人って、タイムトラベルし放題なんですよね! ジュンさんは過去世界ロケ、行ったことあるんですかぁ〜!?」
ジュン「つばめちゃん。今どういう状況か、わかってる?」
つばめ「……何かお叱りを受ける雰囲気かと」
ジュン「あのね、つばめちゃん。スタッフに対して優しくて思いやりがあるのはいいことだけど、あなたは『超忍者隊イナズマ!!SPARK』の主演女優なのよ!」
つばめ「はい……」
ジュン「だとしたら、あなたがやるべきことは何?」
つばめ「やるべきこと? ……」
ジュン「お芝居よ! オ・シ・バ・イ! 飛燕の決めゼリフ、言ってごらん!」
つばめ「はい! ……何でしたっけ〜?」
ジュン「あのね……」
つばめ「すいません、台本持って来ます!」
外へ飛び出そうとしたつばめが、したたかに物にぶつかる。
つばめ「痛ぁ〜! ツキ指したぁ!」
ジュン「いいよ、教えてあげる…… 『私が放つイナズマは、心のままに光ります! そして笑顔が光ります!!』」
決めゼリフと決めポーズを見事に披露するジュン。
つばめ「すっごぉ〜い! 完璧ですねぇ! そっかぁ、よし。『私が放つイナズマは』…… あれ? 『私が放つイナズマは』……」
ジュン「ダメだ、こりゃ。同じダメでも細松くんたちは、がんばって凄くなったのになぁ……」
何気なくジュンが、前作で行った細松たちの時代・1721年を思いつつ、操縦機器のボタンを「1721」となぞる。
ジュン「いっそ江戸時代へ行って、忍者の勉強でもする?」
つばめ「? えっ!?」
ジュン「あ、いいの。続けて」
つばめ「『私が放つイナズマは』……」
そこへ倉田宮が現れる。
倉田宮「ここにいたんスか、先輩!」
ジュン「倉田宮くん! もう終わったの!?」
倉田宮「終わんねぇよ! 未来永劫、終わんねぇっつぅの! なんとかしてくれよ、あのパパリンをよぉ!」
ジュン「ちょっとぉ!?」
つばめ「『私が放つイナズマは、心のままに光ります』」
倉田宮「シャキっとしろ、シャキッとぉ!」
倉田宮がつばめに罵声を残し、ジュンを連れて部屋を出る。室内で練習を繰り返すつばめ。
つばめ「『そして笑顔が』……『光ります』!」
思いきり決めポーズで腕を振り回した拍子に、手が操縦機器にぶつかる。
『セットした座標にテレポートを開始します』
つばめ「え、えっ!?」
『1721年に──』
ジュン「局長に一言ぐらい、ビシッと言いなよ。最近、甘えてない? 私に」
倉田宮「カッチ〜ン。頭きたね、こりゃ。じゃ、言わしてもらうけどね! 俺はプロデューサーとしての責任感を育ててやってんだよ!」
『テレポート開始10秒前』
倉田宮「え!?」
ジュン「ウソ!? つばめちゃん! つばめちゃぁん!」
『5・4・3・2・1──』
つばめ「どうなっちゃうの〜!? 私〜っ!」
(※1) スーパー戦隊シリーズ『特捜戦隊デカレンジャー』のパロディ。倉田宮役、ジュン役はそれぞれ『デカレンジャー』のレギュラー、載寧龍ニと菊地美香。詳細は「アニメ、漫画、特撮の最終回」の「た行」より『特捜戦隊デカレンジャー』をご覧ください。