戻る TOPへ

闘将ダイモスの第1話


宇宙には 数知れない星がある
無論その中には 人間と同じような生物が住む惑星が
存在したとしても不思議ではない
我々もまだ知らない星 そしてそこに住む異星人
彼らは いつの日にか我々の住むこの地球に
侵略の手を手を伸ばしてくるかもしれない

木星の陰の深い暗闇に潜む不気味な天体
それは バーム星人の衛星であった
名づけて 小バーム
この巨大な人工衛星を 数千光年の彼方から
ここ木星軌道へと運ぶことのできる
恐るべき科学力を持った異星人
それが バーム星人であった


小バーム内、バーム星大元帥オルバンのもとに、若き提督リヒテルの地球からの通信が届く。

オルバン「何と! 地球前進基地がもはや完成したと!? でかしたぞ、リヒテル提督!」
リヒテル「ありがたきお言葉! つきましてはオルバン大元帥閣下、時を移さずこのリヒテル、蛮族どもの星・地球攻略のために打って出る所存にございます」
オルバン「うむ。成功を祈るぞ、リヒテル。このバーム星十億の民の運命は、そちの双肩にかかっておる」
リヒテル「ははぁっ!」

背中の翼をひらくリヒテル。羽毛が舞い散る。

リヒテル「いざっ! バームの戦士たちよ、大元帥オルバンの命は下った! これより地球に対する総攻撃を開始する!」



宿命の出あいは戦火の中



バーム星による地球侵略が開始された。
戦闘ロボ・ズバンザーの大群により都市のビルが砕かれ、街が戦火に包まれる。

攻撃を指揮する司令艦ガルンロール。
艦内にはリヒテルを始め、軍事司令官のバルバス、補佐役の女将軍ライザがいる。

バルバス「ワッハッハ! 何と他愛無いことよ。ご覧あれ、我がスバンザー軍団の前に、地球人第一の都市は早くも壊滅でございますぞ」
ライザ「おめでとうございます、リヒテル様。この分では地球人が我々の前にひれ伏すのは時間の問題でしょう。まずは、勝利の旨酒を」
リヒテル「たわけっ! ライザ、そちも我々の使命を知っていよう? 我々は何としてもこの地球、太陽系第3惑星を制服しなければならんのだ。祖国バームの十億に上る人民のため、アルゴール星と激突して失ったバーム星に代る第2の故郷をこの地球に建設する……私はやるぞ! やり遂げてみせる!」


国防軍本部。国防長官・三輪防人が、世界中の被害の報告に顔をしかめている。

「こちら国連! ニューヨークは今、謎のロボット軍の攻撃を受けている。救援を請う、救援を請う! こち……」
「し、司令、通信が途絶えました! 司令! ということは……」

三輪「むぅっ、ニューヨークが全滅か……では日本も間もなく……竜崎君、君の懸念していたことが、どうやら現実になったようだ。もはや望みの綱は、一矢君たちのスペースダイモビックだが……頼む、一刻も早く地球に戻ってくれ!」


宇宙空間。
主人公・竜崎一矢と夕月京四郎の乗る巨大宇宙船スペースダイモビックが、地球へと近づいている。

一矢「見ろよ、京四郎。地球だ! あんなにでっかく見えるぜ……俺たちの旅も、あと1時間で終わりだ」
京四郎「だがよ、一矢。地球に連中には、一体俺たちを歓迎しようっていう気があるのかね?」
一矢「決まってるじゃないか。俺たちは人類の夢だった新しいエネルギー、ダイモライトを探し当てて帰るんだぜ。考えてみろよ。これで、どんな未来が地球に開けるか!」
京四郎「へっ、地球の救世主ってわけか? しかし、これは一体どういうことなんだい、えぇ? さっきから俺は、地球に連絡をとり続けているが、全然返事がねぇ! ゲーテ曰く『去る者は日々に疎し』ってな」
一矢「また始まった、京四郎の格言が……おっ?」

前方から、小型宇宙船らしき影がいくつも接近してくる。

一矢「京四郎、心配無用! ほら、お迎えの到来だ。……!?」
京四郎「どうかしたか?」
一矢「変だ……こんなメカ、地球にはないぜ?」

それは地球ではなく、バーム星の攻撃機であった。
たちまちビームの雨がダイモビック目掛けて降り注ぐ。

京四郎「ど、どうなってるんだ!?」
一矢「やめろ! 攻撃をやめろ! こちら、国際宇宙機構派遣のスペースダイモビック! 勘違いするなぁ!」
乗組員「第2配電室に直撃弾を受けました!」
一矢「俺たちを……地球人と承知で攻撃してくるのか!?」
京四郎「しゃらくせぇ! ダイモビックを甘く見るなよ!」

攻撃準備に移る京四郎。照準がバーム機を捉える。

京四郎「頂き、っと!」

ダイモビックの放ったビームが、バーム機の1機を撃ち落す。


一方、地球上の日本東海岸、竜神岬に築かれた和泉地下研究所。
所長の和泉博士、孫娘のナナ、ロボットのカイロ、研究所に勤める女性・おかねさんがレーダーに映るダイモビックの様子に見入る。

和泉「ふーむ、確かにスペースダイモビックだ。奴らの攻撃を受けていると見える」
ナナ「お爺ちゃん、一矢兄ちゃんを助けて! ねぇ、お願い」
和泉「それが、敵もなかなか手強いんでな……第一、彼等との連絡すらとることができん。恐らく強力な電波妨害で、地球を包囲しとるんじゃろう。」
おかね「和泉博士、何とかせんかい!ナナちゃんや私が可哀想だと思わんかい!? 一矢さんたちにもしものことがあったら、どうする!?」
和泉「無理なものは無理なんじゃ!」
おかね「その無理を何とかしてこそ、博士っちゅうもんじゃろうが!」
カイロ「暴力ハ・イケナイ・暴力ハ・イケナイ」

和泉に食って掛かるおかねの脚をカイロが払い、おかねが派手にひっくり返る。

おかね「やったねぇ〜!」
カイロ「暴力ハ・イケナイ・イケナイ」
おかね「やめて! ケンカしてる場合じゃないでしょ!?」


ダイモビックは依然、バーム機の攻撃を受け続けていた。

一矢「京四郎、何とかならんか!?」
京四郎「限界だね……どだい、このダイモビックは戦闘用にはできてねぇんだ! ……喰らえ!」

必死に反撃を続ける京四郎。そのとき、通信機から和泉の声が。

和泉「一矢くん、京四郎くん、聞こえるか!?」
一矢「和泉博士!」
和泉「地球は今、バーム星人の攻撃を受けている。君たちの持ち帰るダイモライトが、今すぐ必要になったのだ! 一矢くん、竜神岬の私の研究所に着陸させろ! 竜神岬だ!」
京四郎「バーム星人? 地球を攻撃?」
一矢「やろうぜ、京四郎! 竜神岬へ強行着陸だ!」
京四郎「よぉし!」
一矢「一気に大気圏へ突入するぜ! 乗組員全員に告ぐ! 本艦は間もなく大気圏に突入する! 所定位置につき、安全ベルトを着用せよ! 本艦は大気圏に突入する! ──よぉし、行くぜ!」

大気圏へ突入してゆくダイモビック。機体が次第に赤熱化する。
バーム機もそれを追う。

京四郎「一矢ぁ……!」
一矢「もう少しの辛抱だ……!」

地球圏より飛来する戦闘機群。

一矢「見ろ、京四郎! 地球連邦空軍のコスモファイターだ!」
京四郎「ふん、やっとお出ましかい!」

リヒテルが兵士から報告を受ける。

兵士「第三区上空で敵機と交戦中! なお敵大型宇宙船は、我が方の包囲を逃れました」
リヒテル「逃れた? 余の鉄壁の地球包囲網をか? フッ、あっぱれな奴よ。して、その宇宙船の向かった先は?」
兵士「はっ! ただ今追跡中ですが、日本東海岸を指しているものと思われます」
リヒテル「そうか。バルバス将軍に伝えよ! ただちにズバンザー戦隊を率いて、日本攻略に向かえと! 合わせてその宇宙船を捜し出し、叩き落すのだ! 小癪な地球人め……余に歯向かえると思っているのか!?」


和泉研究所では、ダイモビックの無事に皆が歓喜していた。

ナナ「ばんざぁい! お兄ちゃんが戻って来たぁ!」
和泉「ナナ、カイロ、すぐにドッキング準備スタンバイだ!」
2人「了解!」
ナナ「ドッキング準備OK!」
カイロ「電気回路・異常・ナシ」
和泉「よぉし、そんじゃあ行ってみるか!」

和泉の操作で、研究所が地下へと沈み、代ってドッキング装置を備えた巨大カタパルトが現れる。

ナナ「どうぞ! ドッキング装置がダイモビックを基地に接合します!」
一矢「うん、わかった!」

スペースダイモビックが着地、そのまま巨大基地ガードダイモビックとなる。
ダイモビック帰還の報告を受ける三輪長官。

三輪「そうか、一矢くんたちが無事に着陸したか!」
和泉「三輪長官、ありがとう! これも国防軍の援護のお陰だよ」
三輪「和泉くん、安心してはいかん! ロンドン、パリ、モスクワもバーム星人の攻撃を受けている。しかもモスクワを壊滅させた一隊が、日本に向かっているらしいぞ!」
和泉「日本に!?」
三輪「そうだ! もはや一刻の猶予もならん、すぐにもダイモスを始動させてくれ!」
和泉「……うむ!」


地球侵略前線基地として築かれたリヒテルの海底魔城。

兵士「リヒテル様、リヒテル様ぁ!」
リヒテル「何、エリカが行方不明に!?」
兵士「はい……治療隊に紛れて、負傷兵の看護にあたっておられた模様ですが、恐らくは戦闘に巻き込まれて……」
リヒテル「エリカが……エリカが!?」

そこへリヒテルとエリカの乳母、マルガレーテが駆けつけてくる。

マルガレーテ「リヒテル様! リヒテル様、本当でございますか!? お姫様が行方知れずになられたというのは!? あぁ、お可哀想なエリカ様……」
リヒテル「やめろ、マルガレーテ! 悲しむことはない! 余はエリカに看護兵の真似事をせよなどと命じた覚えはない! 勝手な行動をとった者に情けは無用!」
マルガレーテ「そのような冷たいお言葉……リヒテル様はお姫様の身が心配ではないのですか? たとえご命令がなかったとはいえ、医学生として兵士の身を案じ、それを助けようとなさったお優しい気持ちがなぜわかりませんか?」
リヒテル「たわけぇ! 良いか、妹エリカは地球攻撃軍司令官である余の命令が不服とした! そのような者を探すために、貴重な兵力と時間を費やす余裕はない!」


一方のガードダイモビック。
一矢たちがダイモビックに積んで運んできた新エネルギー・ダイモライトのカプセルが、地下研究所へと移送されていた。

和泉「気をつけてくれよ! 気をつけて急ぐんだ!」


ダイモライトは ニュートリノ反応によって生まれた
結晶化した光である
高重力下において凝固させられた光粒子は
互いに激しくぶつかり合い それによって
莫大なエネルギーを発散し続ける


一矢「すごいなぁ、博士。いつの間にこんな大きな地下研究所を作ったんです?」
和泉「驚くのはまだ早い。見たまえ、あれを」

研究所内で一矢と京四郎をさらに驚かせたのは、全長数十mはあろうかという巨大トレーラーであった。

一矢「博士! 一体何ですか、このバカでかいトレーラーは」
京四郎「おい、あれを見ろ!」

先ほど基地に移されたダイモライトが、トレーラーの中へと積み込まれてゆく。

一矢「ダイモライト……? そうかぁ! 俺たちが運んできたダイモライトは、このトレーラーに動力を与えるためのものだったんですね、博士」
和泉「そうだ!」
京四郎「すると、ダイモライトが人類の危機を救うというのは……」
一矢「これが地球を守るということだったんだ!」
和泉「その通り。名づけて『トランザー』。今は亡き君のお父さんと私が、協力して作り上げたものだ」
一矢「父と?」
和泉「そうだ! 竜崎博士は以前から本日の事態を予想していたのだ」
研究所員「博士! 南方300km洋上を、敵のロボット部隊が接近中です!」
和泉「来たかぁ!」
京四郎「博士……?」
和泉「むぅ、こりゃグズグズできんぞ! 来たまえ、一矢くん!」
一矢「わぁ〜!?」

和泉が一矢の腕を無理やり引っ張って走り出す。

和泉「いいか、これは君のお父さんの遺言だ! 君はこれからダイモスを操縦して、バーム星人と戦うんだ!」
一矢「ダイモスぅ!?」
和泉「ロボットのことじゃ!」

わけのわからないまま、一矢は戦闘服姿に着替えさせられる。

一矢「一体どうなってるんです!? さっぱりわけが……」
和泉「いいから乗れ!」
一矢「乗れって、どこに?」
和泉「えぇい、じれったい!」
一矢「わぁ〜っ!?」

力ずくで一矢を搭乗ハッチへ押し込める和泉。
一矢の体は操縦シートへと運ばれ、スポーツカー・トライパー75Sへと運ばれ、ダイモビックから飛び出して地上を走り出す。

「一矢……一矢……」

一矢「お父さん……? お父さんの声だ!」

一矢のもとに、死んだはずの父・竜崎勇の声が響く。

竜崎「よく聞け! 戦いの時が来た。さぁ、お前の声でトランザーのダイモライトのエネルギーを呼び覚ませ! 叫ぶんだ、一矢。『トランザー・ゴー』」
一矢「トランザー・ゴ──ッ!」

一矢の声に呼応し、研究所内からトランザーが無人で発車。
竜神岬の竜の口から飛び出し、トライパー75Sの前を走り出す。

竜崎「さぁ、乗り込め! コール・サインは『ジャスティーン』」
一矢「ジャスティーン……? ジャ──スティ──ン!」

トランザーの後部が展開してトライパー75Sを収容。
一矢を乗せたシートがそのまま、トランザーの前部へ移動し、操縦席となる。

竜崎「さぁ、最後のコールだ。『ダイモス・バトルターン』。戦う巨大な力、闘将ダイモスは今日からお前の分身となる!」
一矢「ダイモス・バトルタ──ン!!」

トランザーの装甲が展開して両腕が現れ、コンテナが伸長して脚となって変形。
巨大ロボ・ダイモスがここに完成した。

一矢「ダ──イモ──ス!!」

海の向こうから、司令官ガルンロールと、メカ戦士・ズバンダーの大群が飛来して来る。

一矢「父さん、俺はやるぜ! 来たなぁ……」
バルバス「なぁんだ、あのバカでかいロボットは!? へへっ、まぁ良い。たかが地球人のロボット、大したことはあるまい。一気に叩き落とせぃ!」

ズバンダーがビームをダイモスに浴びせる。

一矢「うわっ!」
和泉「ひるむな、一矢! それしきのビームにやられるダイモスじゃない!」
一矢「教えてくれ、博士! ロボットの武器は!?」
和泉「武器はいくらでもある。だが今は説明している暇はない! それよりも、君の得意の空手の技を使うんだ!」
一矢「空手……?」

ズバンダーたちがダイモスを取り囲み、さらに攻撃を加える。

一矢「うわっ!」
ナナ「一矢お兄ちゃん、しっかり!」
一矢「よぉし、何だかわからないが、行くぜぇ! とぉっ!」

一矢の体の動きに連動し、ダイモスがパンチを繰り出し、敵の1体を砕く。

バルバス「おぉ!?」
ナナ「やったぁ!」
一矢「ははっ、こいつは行けるぞ! よぉし、そうとわかりゃあ……とぉっ! てぇい!」
バルバス「手強いぞ、気をつけろ!」
一矢「どりゃあ! 真空回し蹴り!!」

空手技の前に、敵が次々に破壊されてゆく。
思わぬ戦力の前に、残党が怯み、退却しかける。

一矢「待てぇ! 一体も逃がさんぞ! ……おぉっ?」

見ると、岬の上に美しい少女がいる。

一矢「あれは……?」

ふらふらと力なく歩く少女。すぐ眼下は海。ダイモスが少女を救いに向かおうとする。

一矢「危ない!」
和泉「一矢くん、どこへ行くんだ!?」
バルバス「今だ! ズバンダー・アンカーを使え!」

ズバンダー群が次々に鎖を打ち出し、ダイモスを絡めとる。

一矢「うっ、うわっ!?」

岬の上で、少女が倒れる。

一矢「危ない! そんなところにいてはダメだぁ!」
バルバス「よぉし! あとはこのワシが料理してくれるわ!」

ガルンロールの機体から巨大ミサイルが現れる。

ナナ「嫌ぁ! やめてぇ!」
和泉「一矢、危ない! 逃げるんだぁ!」
一矢「くそぉ……こんな物! うぅっ……」
バルバス「ガハハ! もう遅いわ! ミサイル発射用意!」
和泉「そうだ! 一矢、ダブルブリザードを使え!」
一矢「ダブル……ブリザード?」
和泉「いいか、右手のパネルの真ん中のキーを押し、アームを水平にするんだ!」
一矢「わかった、やってみます! ダブルブリザ──ド!!」

ダイモスの胸部が展開、内部のファンから強烈な竜巻が噴出す。
ズバンダーが吹き飛ばされ、鎖が引きちぎれ、そのままズバンダーたちが空高く巻き上げられる。

一矢「必殺、烈風正拳突きぃ──っっ!!」

落下してくるズバンダーを、ダイモスの必殺の正拳が貫く。
ズバンダーたちが次々に大爆発。

和泉「やったぁ──っ!!」
ナナ「一矢お兄ちゃん、愛してるぅ!!」
バルバス「ズバンダー戦隊が全滅するとは……し、信じられん……」


初勝利を収めたダイモスが岬に近づき、倒れている少女を優しく掬い上げる。


竜崎一矢の心を捉えたこの美しい少女は
一体何者なのであろうか


(続く)
inserted by FC2 system