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電脳警察サイバーコップの第1話


とあるライブハウス、人気ロックバンド・ZACSのステージ。
メンバーは北条明、毛利亮一、西園寺治、上杉智子の4人。

通信音。ドラムを叩く北条のもと、小型通信機に女性の顔が映る。

通信『ZACに出動指令です』
北条「何ぃ!? ざけんじゃねぇぜ! 休暇届け、出てんだろうが」

別の女性が通信に出る。

通信『北条くん!』
北条「やべ!」
通信『特別公務員条例第198条『緊急時における休暇の権利の剥奪』をご存知?』

苛立った北条がシンバルを叩きつけ、驚いたメンバーが演奏を中断する。

北条「てめぇら、出動だ」

大勢のファンに追われつつ、4人がライブハウスを駆け出す。

「すぐ戻って来るからね!」「待ってててね!」

主人公の青年・武田真也が道端で彼らを見送る。


最強の刑事!
 ジュピター登場


多くのパトカーが、ある建物を包囲し、警官が呼びかける。

「君たちは包囲されている。ムダな抵抗をやめて出て来なさい」
「犯人たちに告ぐ! 武器を捨て、おとなしく出て来なさい! 君たち、お母さんが泣いてるよ。お母さんを悲しませるようなことは、しちゃいけない」

バズーカ砲を手にした犯人が顔を出す。

「あいにく俺たちゃ試験管ベビーでねぇ! ベイビー!」」

砲撃でパトカーの1台が炎上し、慌てて警官たちが下がる。
建物の中では数人の武装犯により、人質が捕えられている。

「ははっ、ちょろいもんだぜ! 刑事(コップ)のヤツらなんか、俺たちに手を出せるもんか!」

そこへ特別警察機構・ZACの特殊車が到着。
砲撃音。建物に大穴が開き、犯人も、人質も、警官たちも震え上がる。

特殊装甲・ビットスーツに身を包んだZACSの男性メンバー3人が降り立つ。
北条明ことマーズ、毛利亮一ことサターン。西園寺治ことマーキュリー。
そして上杉が犯人に呼びかける。

上杉「犯人に告げる。30秒以内に投降しなさい。従わない場合は都市防衛条例第99条により、攻撃を加える」
犯人「何言ってんだい……」
マーズ「面倒だ。今すぐスイカ頭をブッ飛ばしてやる」
警官「いやぁ! ちょ、ちょっと待って! なな、中には人質がいるんだよ」
マーズ「どきな」
サターン「マーズ、犯人は壊れた壁の裏側に固まってる」
マーズ「よし。いくら隠れたつもりでも、丸見えだぜ!」
犯人「わかったぁ!」

壁の大穴から、犯人の1人が両手を上げて現れる。

サターン「武器反応! 背後の犯人2名!」
犯人「食らえ!」

その犯人の背後から、銃を手にした犯人2人が飛び出す。
しかし銃撃よりも早く、マーキュリーが彼らの銃を吹き飛ばす。
マーズとジュピターがあっという間に犯人たちを捕え、警官たちに引き渡す。


別のビルの屋上。
謎の人物・バロン影山が、双眼鏡でその様子を見ている。

バロン「あれは……!」


一同が演奏していたライブハウス。観客たちはすでに1人もいない。
床に投げ捨てられていたドラムスティックを、誰かが拾い上げる。

北条たちが戻って来る。

毛利「あ〜ぁ、俺の女の子たちはどこ行っちゃったんでしょうねぇ〜」
北条「やっぱりブッ飛ばしとくべきだったな、あの犯人ども!」
西園寺「先輩、過激ですよ」
上杉「次のライブもまたフルハウスにしようよ」

ドラム演奏の音。見ると、武田がドラムを叩いている。
見事な演奏に上杉が拍手を送る。

上杉「ブラボー!」
北条「俺の楽器だ!」
武田「あ、すまなかった。でも、スティックが泣いてたよ」

武田が北条にスティックを返し、荷物を抱えて立ち去る。

北条「なんだ? あいつは」


1990年代後半に入ると 都市犯罪は一層凶悪化・武装化していった
それに対抗するため 政府は警視庁直属の特別警察機構「ZAC」を編成した

ZACの本部は 警視庁地下に設けられ
組織は最新科学の粋を集めて強化された刑事たちにより編成されている
彼らは「サイバーコップ」と呼ばれた


ZAC本部に北条たちが帰還する。
隊員の朝倉美穂、矢沢大介、隊長代行の島津瑞恵が彼らを迎える。

浅倉「お帰りなさい!」
毛利「見た見た見た見た? 俺の活躍! あ、そうだ。ねぇねぇねぇねぇ、女の子からの電話、入ってるだろ?」
浅倉「はい、入ってますよ」
毛利「女子大生? 女子高生、それとも…… くくっ、人妻?」
浅倉「矢沢くん、教えてあげて」
矢沢「市民から59件、マスコミから11件、あと警察、政府直属の監視委員から続々と抗議の電話が」
毛利「ウソ……」
島津「織田キャップが留守だからって、羽、伸ばしすぎじゃないの? 世間の噂よ。『ZACはブチ壊し屋だ』って」
毛利「……やれやれ。ちょっとハデにやりすぎたかね、北条ちゃん?」
北条「ヤワなポリスと一緒にされちゃ、迷惑だな」

警報が鳴り響く。

矢沢「高速道に爆発物反応、移動中」
北条「都市ゲリラか。毛利!」
毛利「おぅ!」
北条「2人は待機だ」
毛利「女子供は、休んでな」
西園寺「そんな、先輩!」
上杉「待って! 同時多発ゲリラに備えるのは常識でしょ?」

上杉と西園寺を残し、北条と毛利が出動する。

どこかのビルの一室の、バロン影山。

バロン「フューラー……」

彼の操作するパソコン画面に、不気味な顔が現れる。

バロン「コンピューター網を撹乱し、東京をブラックアウトします。機械に頼りきった人間たちは大混乱に陥るでしょう」
フューラー「興味のある問題だな。三博士の中から、パートナーを選ぶがいい」

異形の3人の人物、デューウィン、エインシュタイン、プロイドの3人が映し出される。

デューウィン「私の力が必要でしょう?」
エインシュタイン「当然、私と」
プロイド「……」
バロン「デューウィン女史。あなたの力をお借りしましょう
デューウィン「バロン影山、私のかわいい子供を使うがいい。エナ・ハルコス──目覚めの時が来たのです!」
バロン「東京は歴史に残る。我々が地上に第一歩を記した土地として……」


ZAC本部。

矢沢「インテリジェンスビルに爆発物反応!」
島津「そのビルには、東京中心部のビルの制御コンピューターが配置されているわ」
上杉「上杉!」
西園寺「西園寺!」
上杉「出動します!」


インテリジェンスビル。
警備室へ赴いた上杉と西園寺が、パソコンを用意して機器に接続する。

上杉「西園寺くん、警備システムと接続して」
警備員「何を?」
上杉「爆発物反応をチェックします ──13階だわ」
警備員「中央制御室です。不吉な数字だからねぇ」
上杉「じゃ、誰もいないんですね?」
警備員「ちょっと待ってよ。──あぁ、今日は一般見学があるなぁ。近所の小学校の子供たちだな」
上杉「まずいわ」


一方、マーズとサターンは高速道の爆発物反応を追っている。
サターンのレーダーが、路上の車を捉える。

サターン「来た! ガンメタのワンボックスカーだ。先行くぜ!」

風のように道路を駆けたサターンが、その車のそばへ降り立つ。

サターン「あれだ!」

その車にサターンが飛びつき、パンチ連打。しかし、車体も窓ガラスもビクともしない。

サターン「なんだよ、これ。歯が立たねぇ! マーズ、ブラックチェンバーだ!」
マーズ「よし、ブラックチェンバーの出番だ!」

マーズがそばの公衆電話に、専用カードを挿入。
それを受信し、ZAC本部地下倉庫のシステムが作動する。

Cyber arm, Slash caliber, Standing by ....

マーズのそばに地面が開き、黒いトランクが飛び出す。
トランク内から取り出された大型ブレード・スラッシュキャリバーを腕に装着する。

マーズ「セット・アーム!」

サターン「マーズ、車は第3地点へ向かった。頼む!」

マーズが車の前に降り立つ。
迫りくる車を目掛け、スラッシュキュリバーを一閃。車が真っ二つに両断され、左右に転がる。

マーズ「爆弾は詰まれていない……」
サターン「マーズ!」
マーズ「囮を掴んだ」
サターン「それじゃ、本命はどこかな?」
通信「インテリジェンスビルに、破壊活動が!」


インテリジェンスビルの13階に、サングラスの怪しい男が降り立つ。
そうとは知らず、同じフロアでは小学校の子供たちの見学が行われている。

「こちらのコンピューターが、東京中心部のビルの制御を一手に引き受けているんですよ」

そこへ、上杉と西園寺が駆けつける。

上杉「みんな、すぐエレベーターに!」
子供「どうしたの?」
西園寺「都市ゲリラだ」
上杉「シッ! おしゃべり!」

あのサングラス男が現れ、ライフル銃を構える。

上杉「危ない! 伏せて!」

壁に銃撃が炸裂。
そこへ武田が現れ、キックで銃を吹き飛ばし、サングラス男の鳩尾にもキックを見舞う。

上杉「あの子は!?」
武田「子供たちを安全なところに!」

サングラス男が武田を羽交い絞めにし、取っ組み合いとなる。

武田「早くぅ!」
上杉「子供たちを!」
西園寺「あっちです、早く!」

西園寺が子供たちを逃し、上杉がサングラス男の腕を銃撃。
しかしその男は、平気な顔で逃げ出す。

武田「あいつは人間じゃない! 女は引っこんでろ!」
上杉「素人は引っこんでて!」

武田と上杉が、サングラス男を通路の奥へ追い詰める。

上杉「都市防衛条例第95条により、逮捕だ!」

サングラス男が、小さな装置を取り出す。時間を刻む音。

武田「時限爆弾!?」

すかさず上杉が銃撃。男が倒れ、時限爆弾は床に転がる。

武田「ほぉ〜」
上杉「私はこれでもZACの一員よ」

しかし、撃たれたはずの男がムクリと起き上がる。

武田「危ない!」

油断している上杉を武田がかばい、上杉に抱きつく形となる。
たまらず、上杉の平手打ちが武田の頬に飛ぶ。

上杉「何すんのよぉ!」

サングラス男の皮膚が膨れ上がり、裂ける。

武田「何だ、これは!?」

全身の皮膚が破れ、機械戦士であるエナ・ハルコスが正体を現す。
床に転がっている爆弾を、胸に収める。
エナ・ハルコスの口から、デューウィンの声が漏れる。

デューウィン「私の息子、エナ・ハルコスと戦ってみますか?」

上杉が銃を向ける。

武田「やめときな! そんなもんじゃ歯が立たねぇよ」
上杉「じゃ、あなたならどうすんのよ!?」
武田「当たって砕けろってね!」

果敢に挑んだ武田が、一気に屋上まで吹っ飛ばされる。
エナ・ハルコスが武田を追い、再び取っ組み合い。
彼らを追った上杉が銃撃。エナ・ハルコスが上杉に矛先を向ける。
武田が敵を止めようとするが、逆に吹き飛ばされて屋上から落ちかけ、咄嗟に上杉がその手をつかむ。

武田「た、助けてくれぇ!」
上杉「砕けてる場合!?」

眼下の地上から、2人を見上げる西園寺。マーズとサターンが駆けつける。

西園寺「先輩、上杉が大変です!」
サターン「ったく、世話の焼けるお嬢様だこと!」

再びサターンが、ブラックチェンバーを呼び出す。

サターン「ボルトワインダー、セットイン!」

ワイヤーユニットのボルトワインダーを、サターンが腕に装着。

サターン「セット・アーム!」

武田「最期に一つだけ聞くぜ」
上杉「え?」
武田「……テレフォンナンバー」
上杉「離すわよ!」
デューウィン「もう、いつまで仲良くしてるの!」

ハルコスが殴りつけ、武田と上杉が宙に放り出される。

武田「わぁぁっ!!」

すかさずサターンが、ボルトワインダーのワイヤーを撃ち出し、屋上へと引っ掛ける。
マーズがサターンに掴まり、サターンがワイヤーを巻き戻し、2人の体は一気に屋上へ。
空中を落下してゆく武田たちを、マーズたちが受け止め、そのまま地上へと無事に降り立つ。

上杉「ニュータイプの敵よ。相当クセありそう」
マーズ「心が躍るぜ!」

マーズが垂直な壁面を駆け上り、屋上を目指す。

サターン「ねぇねぇ。そいつ、オスメスどっち?」
上杉「声は女に近かった」
サターン「ラッキー!」
上杉「気をつけて。胸に時限爆弾が」
サターン「ハートの熱い女は好みだぜ」

屋上で睨み合うマーズとハルコス。そこへサターンも到着する。

サターン「やっぱり、趣味じゃねぇよ」
マーズ「贅沢言ってる場合か!」
サターン「胸に時限爆弾抱えてるぜ!」
マーズ「表に引きずり出すぞ!」
サターン「よし!」
マーズ「行くぞ!」

マーズとサターンが同時にキック。しかしハルコスには通じない。

デューウィン「お前たちのような下等な機械どもなど、私の息子の相手ではない」
サターン「下等な機械? マーズ、お前のこと言ってるぞ」
マーズ「お前のことだよ! サターン、足だ!」

サターンが真下に回りこみ、ハルコスの足をつかむ。
マーズがパンチ。さらにサターンも攻撃。連携攻撃が決まる。

デューウィン「うぅっ…… もう、容赦はしない!」

ハルコスがマーズとサターンを掴み上げ、隣のビルの屋上まで投げ飛ばす。
さらに2人を追い、次々に攻撃を加える。

西園寺「先輩、がんばって!」
上杉「何、人事言ってるの!? あなたも戦う!」
西園寺「え? 僕、体が弱いのに」

上杉が西園寺を車内に押し込めようとするが、それを武田が止め、自分が車内に。

武田「ちょっと、お化粧直しに使わせてもらうぜ」
上杉「あなた、何なの!?」
武田「いいからいいから!」
上杉「わ! 開けなさい、開けなさい! 公務執行妨害!」

武田が車内のブースに入り、機器を操作する。

Jupiter bit, Stand by ... Jupiter bit, Stand by ... Cyber cop Jupiter, go

光が走り、全身にビットスーツが装着される。


サターン「これでも食らえ!」

サターンがボルトワインダーで攻撃するが、ハルコスには通じない。
ハルコスに飛び掛ったマーズも吹き飛ばされ、さらにハルコスの腕が2人の頭を締め上げる。

サターン「や、やめろ! ヘルメットがギシギシ言ってやがる! 修理代は善良な市民の税金だぞ!」
マーズ「し、視界が……」

そこへビットスーツに身を包んだ武田こと、ジュピターが現れる。

デューウィン「まだいたのか!?」
サターン「知り合いか?」
マーズ「まさか!」
ジュピター「行くぞ!」

ジュピターの先制攻撃が、ハルコスを吹き飛ばす。
マーズも2人の戦いに加わろうとするが、サターンが制止する。

サターン「マーズ、やめとけ」

ジュピターとハルコスの激しい戦い。
ハルコスがジュピターを放り投げ、ジュピターは隣のビルを付き貫けて飛んでゆく。

ジュピター「わぁぁ──っ!」
デューウィン「時間がないわ」

ハルコスが元のビルの屋上へ降り立つが、ジュピターが舞い戻る。

デューウィン「しつこいヤツめ!」

ハルコスの攻撃が次々にジュピターに炸裂する。

デューウィン「所詮、私の息子の敵ではない!」
ジュピター「……許さねぇっ!!」

怒りに燃えるジュピター。背中のフィンが翼のように展開する。

デューウィン「何っ!?」

そしてジュピターの額のパーツが、角のように展開する。

ジュピター「サイバ──・ギルティ──!!」
サターン「あれは!?」

ジュピターの体から膨大なエネルギーが、嵐のように空へ立ち上り、空間を裂く。

ジュピター「サンダーア──ム!!」

空間が裂け、そこから篭手型武器のサンダーアームが現れ、ジュピターの右腕に装着される。
エナ・ハルコスがジュピターに飛び掛る。

ジュピター「ハイパー・アタ──ック!!」

サンダーアームによるジュピターの強烈パンチが、ハルコスに炸裂。

デューウィン「まさか!?」

ハルコスの首がちぎれ飛ぶ。

デューウィン「ああぁ──っ!?」

そして、ハルコスが大爆発。
もうもうと立ち上る爆煙を、どこかからバロン影山が複雑な面持ちで見ている。

バロン「なぜだ……?」


ZAC本部に帰還する北条たち。隊長の織田久義がいる。

織田「ご苦労だったな」
上杉「織田キャップ! いつ、パリから?」
島津「たった今よ。みんなの活躍ぶりは、お話ししておきましたから」
織田「好きにやっていたらしいな」
毛利「やっべぇ……」

そこへ、武田が現れる。

武田「よぉ!」
上杉「また、あなた!? 素人の入って来る場所じゃないのよ」
島津「インターポール特別訓練生、武田真也くん。一応、刑事見習い扱いとしてZACに参加してもらうことになりました」
織田「みんな、よろしく頼む」
武田「武田です。よろしく!」
上杉「なるほど、そういうわけ。上杉智子、よろしく!」
武田「よろしく」
西園寺「じゃ、あのアーマーは武田さんのですか?」
武田「うん。コードネームはジュピター」
西園寺「尊敬しちゃうなぁ! 西園寺修! これから武田さんのこと、先輩と呼ばせていただきます!」
毛利「あのさ、ドラムス以外に何かできないかな? ギターとかキーボードとか」
武田「あぁ、一通りできる」
毛利「合格っ!」

そっぽを向いている北条に、武田が気づく。

武田「よろしく」
北条「俺はお前をまだ、ZACの刑事とは認めていない」


新たなるZACの隊員・武田真也 しかし その全貌はまだ謎に包まれていた
謎のサイボーグ軍団は何を企んでいるのか 世紀末東京に危機迫る


(続く)
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