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超光戦士シャンゼリオンの第1話



第1話
 ヒーロー!! 俺?



都会の雑踏。
平穏な日常を送り、行き交う人々を、何者かの目が虎視眈々と狙う。

地下道へ続く階段を、「輪」のようなものが転がり落ち、階段の途中でひとりでに止まる。
「輪」の中の空間が歪み、異形の手が現れ、床にイヤリングを落とす。

そして空間の中から、異形の人影が現れる……。


とあるビルの中。
主人公の私立探偵・涼村(すずむら)(あきら)と、パートナーの橘朱美が、銃を手にして何者かを捜す。

暁「油断するな」

ドアを開け、2人が注意深く、静まり返った室内へ。
物音。
すかさず暁が銃を撃つ。銃口から網が放たれ、現れた犬を捕える。

暁「アッハッハ! お前ねぇ、迷子になったの、これで8回目なんだよ? 気をつけろよ、な?」
朱美「任務完了〜」

朱美が銃口から火を灯す。銃型のライターである。


暁の営む、涼村探偵事務所。

朱美「どうもありがとうございました。またご利用下さい」

無事に犬を引き取った依頼客が帰って行き、朱美が暁に資料を差し出す。

朱美「はい、今月分」
暁「どうせ赤字でしょ〜」
朱美「違うわよ。私のバイト代、払って」
暁「あのね、うちは赤字事務所なの。それがどうだよ? 来る仕事というのはさぁ、行方不明の犬やら猫やらの探索ばっかだ」
朱美「まーたそんなこと言って。世の中どうにだってなるわよ。ね、本当に困ったら私と結婚すればいいでしょ? それでもって、私の実家の事業継げばぁ……」
暁「ちぇっ、な〜にが事業だ。おまえんち、岩手で民宿やってんだろ?」
朱美「そうよ」
暁「あれか? 俺を養子にしてコキ使って、自分は遊んで暮そうってわけ?」
朱美「わかる?」
暁「わかる。いいかぁ? なら、俺が養子に行くぐらいだったら、最低でもゴルフコース付きの家で、美人のメイドが5・6人」
朱美「ふ〜ん……」
暁「うちはね、先祖代々名・門・探・偵・家! なの。そう簡単には辞めないぜ」
朱美「そ?」
暁「そ!」

ノックの音。

暁「仕事だ!」

すかさず暁が電話を取っているふりをし、朱美はデスクへ。

暁「どうぞ」

若い女性と、初老の男性が現れる。

暁「えぇ、ですからその件はまた後日ということで……何かと今、仕事が立てこんでおりまして。それじゃ、失礼します。──すいません、お待たせしました。どうぞ。いやぁ、うちのように一流どころになりますと、仕事が忙しくて。コホン! で、ご用件は?」
男性「捜してください、お願いです! どうか…… お願いします!」
暁「はぁ…… 犬ですか、猫ですか?」
男性「実は……」

男性が差し出した何枚かの写真には、どれも小学生らしき子供が写っている。

暁「これが何か?」
男性「あ、申し遅れました。私、神谷小学校の校長をしております。こちらは、いずみ先生」

小学校校長を名乗る男性が、事情を説明する。

暁「なるほど、3か月に5人の生徒が行方不明? となると、確かに異常ですね」
校長「お願いできますか? 生徒の行方と、背後関係の究明を」
暁「……橘くん、仕事のスケジュールは?」
朱美「はい」

デスクのパソコンに表示されたスケジュール表は、がら空き。

朱美「一杯です」
校長「謝礼なら、いくらでも!」
暁「お引き受け致しましょう」


神谷小学校。暁が不調気味の愛車で到着する。

暁「大丈夫か? この車」


教師の名目で校内に入り込んだ暁が、教鞭を振るう。

暁「この問題はね、ここがXでしょ? だからXに4をかけて〜」
生徒たち「先生! そこ、違ってます」「根本的に違うわよ! だって……」「バッカじゃないの、先生」

休憩時間。廊下で顔を洗っている暁のもとに、教頭が現れ、ハンカチを差し出す。

教頭「ご苦労様です。私、本校の教頭をしてる者ですが……」
暁「いや、結構です」
教頭「いかがでしょう。何かお気づきの点でも?」
暁「え? まだ、別に」
教頭「それから、あの、言いにくいんですが…… 6年生の授業は無理なようなんで、変えましょう。学年」
暁「すいませ〜ん」

3年生の授業に移された暁。

暁「この問題はなぁ、分母と分子がだなぁ〜」
生徒たち「先生、違います!」「先生、違います!」「廊下に立ってなさい!」
暁「へ……?」

1年生の授業に移された暁。

暁「さいた、さいた、さくらがさいた!」
生徒たち「さいた、さいた、さくらがさいた」
暁「いいねぇ、その調子!」
生徒たち「いいね、そのちょうし」
暁「は……?」

昼休み。校庭の水場の淵に掛けて一休みしている暁。

暁「やれやれ。しかし、最近のガキどもっていうのは……」

飛んできたボールが水場に落ち、しぶきが暁にかかる。
生徒たちと遊んでいた、いずみ先生が駆けて来る。

暁「冷てぇ〜!」
いずみ「あ、ごめんなさい! すいません、濡れました?」
暁「えぇ、濡れました」
いずみ「ごめんなさい……」
暁「いずみさんでしたっけ? ひょっとして、あなたの実家はゴルフコース付きの家で、美人のメイドが5・6人いませんか?」
いずみ「は? 民宿やってますけど。茨木で」
暁「へ、民宿? あ…… そうですか (なんだよ、うちの朱美と一緒じゃねぇかよ……)」
いずみ「あの、お願いします。行方不明の子供たちのこと」
暁「あ? ……はいはい! ボールを」
いずみ「ありがとう」

いずみが暁からボールを受け取り、生徒たちのもとへ戻って行く。

暁「いやぁ、いずみ先生っていいなぁ!」


廊下の水飲み場。どの蛇口も水が出しっぱなしになっている。
通りかかった少女が、水道を止める。

「だーれだ、こんなイタズラするの。本当にもう」

その様子を教頭が覗き、不気味に笑う……。


夜。

科学者・宗方猛の研究所。
ものものしい警備陣に囲まれ、トラックで何かが運び出されようとしている。

運転手「出発します!」
宗方「頼むぞ。何としても、これを本部まで届けるんだ。我々のプロジェクトのために」
運転手「はっ!」


特務機関SAIDOC。
機関に所属する速水克彦青年が、紅一点の南エリのもと、様々な検査を受けている。

エリ「速水、すべてOKよ。今日は素晴らしい日になるわ!」


暁は学校の前に停めた愛車の中で、見張りを続けている。

暁「今日のところは何も起こらずか……やれやれ。しかし退屈だなぁ」

女生徒が1人やって来て、校内へ入って行く。

暁「忘れもんでも取りに来たか? ちょっと見てみるか、ね」

暁も夜の学校の中へ。

「きゃあ──っ!」

突然の叫び声を追い、暁が理科室へ。

暁「何だ……? あの女の子、どこ行っちゃったんだよ!?」

女生徒の姿はなく、冒頭に登場した「輪」がある。

暁「何、これ!?」

突如、その「輪」の中の空間が歪み、暁の手が吸い込まれる。

暁「あ……!? あ、あぁっ!?」

ついには、手どころか体ごと取り込まれてしまう。

暁「うわぁ──っ!? わああぁ──っ!」

どこかへと投げ出される暁。

暁「痛ったぁ…… え…… どこだ、ここは?」

そこは真っ暗な謎の空間。
身長ほどの大きさの、岩のような奇妙な物体が3つ並んでいる。

暁「おいおい、なんかとんでもないところに来ちまったぜ!?」

さらに、布で包まれた何かがある。その形は、あたかも人間が包まれているかのよう。

暁「まさかな……?」

足元に、先ほどの女生徒のランドセルが落ちている。

暁「このランドセルは……もしかして?」

布包みを解く。まさしく中身は、先ほどの女生徒。

暁「うわ! この子は!?」

突如、女生徒らを捕えている布包みから、3つの物体目掛けて光が注がれる。

暁「うわあぁ──っ!? え……!?」

さらに暁が目に見えない力で持ち上げられ、吹き飛ばされる。

暁「うわあぁ──っ!?」

地面に叩きつけられる暁。そこはなぜか、校庭の前に停めた愛車の下。

暁「痛っ! 痛ってぇ…… 痛てぇよ、おい!」


一方、宗方研究所を発ったトラック。
奇声とともに何者かが、護衛のバイクの前を横切る。

「うわっ!?」

バイクが転倒。
何者かの異形の手が、トラックの窓ガラスを突き破る。

「ダークザイド!?」

そこへ偶然にもやって来る暁の車。
トラックが制御を失い、バイクを跳ね飛ばし、暁の方へと走って来る。

暁「おい、どうなってんだよ!?」

慌てて車を降りる暁。車がどんどん迫り、暁が必死に逃げ出す。
いつしか、崖淵まで追い詰められてしまう。

暁「うわぁぁ!?」

暁が崖淵から滑り落ち、トラックも崖淵を落ちて行く。
トラックが爆発。

コンテナの中で何かが弾け飛び、無数の光の粒子となって暁へと降り注ぐ。

暁「あ……!? あぁ…… うぅっ…… ああぁぁ──っ!」

気を失う暁。

もうもうと立ち上る煙の中から、異形の怪人が現れる。
暁のもとへと降り立ち、首を締め上げる。

そのとき、暁の体が光に包まれ、光が装甲となって暁の体を覆う。

暁「わぁ──っ!」

無意識に暁の振るった拳が、怪人を吹き飛ばす。
元の姿に戻った暁。苦痛に喘ぎつつ、携帯電話を手にする。

暁「はぁ、はぁ……朱美……朱美ぃ!」


病院。
ベッドの上の暁に、朱美が寄り添っている。

朱美「ねぇ、暁……気がついてよ。暁……」

暁が目覚める。

暁「ここは……?」
朱美「気がついたの!? 良かったぁ…… でも、一体なにがあったの? 昨日からずっと意識を失ってたんだよ」

暁が昨晩の奇妙な出来事を思い出し、飛び起きる。

朱美「どうしたの!?」
暁「確かめたいんだよ! 何がどうなってんのかを」
朱美「暁ぁ! 大丈夫なの!?」


車を飛ばす暁。目の前に、別の車が割り込む。

暁「危ねぇな!」

その車の中には宗方、速水、エリが。

エリ「間違いありません、エネルギー反応です! あの男よ」

暁が車を降り、宗方たちも車を降りる。

暁「何なの、あんたら?」
速水「どこへ行くつもりだ? ちょっと話がある」
暁「誰だか知らねぇけどさ、どうせ話したって信用しないでしょ?」
速水「お前何か知ってんのか? ダークザイドについて」
暁「ダークザイド?」
宗方「そう。君が夕べ戦った、怪物どものことだ」
暁「ちょっと待て。一体何なんだ、あんたら? どうしてヤツらのこと知ってるわけ?」
宗方「我々はもう何年も前から、ヤツらのことを追いかけてきた。ダークザイドは、生命の始まりにおいて、我々とは異なった進化を辿った高等生物…… そして、我々の天敵だ!」


神谷小学校。
教頭が、昨日目をつけていた女生徒に迫る。おずおずと後ずさりする女生徒。

「きゃあっ! 誰か、助けて!」

その声を聞きつけ、いずみ先生が現れる。

いずみ「教頭先生!?」

教頭がいずみを殴り飛ばし、女生徒を捕まえる。

「離してぇ! お願い!」

駆けつけた暁が、教頭を取り押さえる。

暁「何やってんだ、おっさん!? 逃げろ! いずみ先生、生徒を早く!」
いずみ「はい! 早く!」

いずみが女生徒を連れて逃げ、暁が教頭を殴り飛ばす。
宗方たちもやって来る。

暁「痛ってぇ…… おい、この男がダークザイドとかってヤツ?」
宗方「違うな、この男は。人間だ」
エリ「闇生物の反応がないわ」
教頭「うぅっ…… 好きだったんだ、あの子が……」
宗方「変質者かもしれないが、ダークザイドではない。この学校にダークザイドが潜んでいるなら、別のヤツだ」

別室へ逃げ込んだ、いずみ先生と女生徒。

「先生……?」

いずみ先生の口に牙が現れ、女生徒に襲い掛かる。

「やめて! やめて、先生! 先生、やめて!」
「きゃあっ! やめて! 先生、やめて!」

ついに女生徒の首筋に、牙が突き刺さる。

「きゃあっ!」

いずみ先生が口を宙に向けると、女生徒から吸い取った生命力が、空間を超えてどこかへと注がれてゆく。
そこへ駆けつけた暁が、いずみを跳ね飛ばす。

暁「やめろよ! 何てこった…… あんたが? 子供好きのあんたが?」

宗方たちも駆けつける。

いずみ「フン。子供は大切にしなければ。我々のエサだ」
暁「何!?」
いずみ「人間どもの生体エネルギー『ラーム』を受けて、最後の幹部たちももうすぐ眠りから覚めるだろう。聖幹部復活の後、我々の本当の戦いが始まる。闇次元よりも住みやすいこの地球を征服するのだ」
暁「そんなバカな?」
宗方「現実だ。すでに多くのダークザイドが、人間の姿を借りてこの世界に潜入している!」
いずみ「いずれにせよ貴様は殺さねばならん。我々の脅威となる可能性がある」
暁「何言ってんの?」

いずみが唸り声とともに姿を変え、昨晩暁を襲った怪人、闇生物ギンガーとなる。

暁「ぎょお〜っ!? わぁ、あんた俺の好みじゃねぇ!」

ギンガーが腕から暴風を放ち、暁たちに襲いかかる。

暁「ますます好みじゃねぇ! 来るなぁ!」

必死に外へ逃げ出す暁。 ようやく逃げ切ったかと思いきや、不意にギンガーが現れ、暁の首を締め上げる。

暁「わぁ! 離せぇ!」

ギンガーのパンチ。暁の体が数メートルも吹っ飛ぶ。

暁「痛ってぇ〜! マジかよ、お前!?」

そこへ宗方が駆けつけ、機械仕掛けのバイザーを差し出す。

宗方「燦然するんだ! 君は、我々が開発したクリスタルパワーを全身に浴びた。このシャンバイザーがあれば、君はそのパワーを制御することができるんだ!」
暁「……?」

そのとき、ギンガーの足元に、冒頭で暁が捜していた犬が。

暁「あ、あの犬?」

ギンガーが鬱陶しそうに犬を蹴飛ばす。

暁「てめぇ!?」

暁が犬を救い上げる。
ギンガーが迫り、必死に宗方が暁をかばう。

宗方「暁! 燦然するんだ!」
暁「ちょっと待てよ!?」
宗方「君は超光戦士シャンゼリオン!」

宗方がそのバイザー、シャンバイザーを暁にむりやりかぶせ、ゴーグルを下ろす。
暁の体が光に包まれ、光が装甲となって全身を覆い、暁は超光戦士シャンゼリオンとなる。


「燦然」──それは 涼村暁がクリスタルパワーを発現させ
超光戦士シャンゼリオンとなる現象である


宗方「シャンゼリオン……!」

ギンガーが襲い掛かってくる。
反射的にシャンゼリオンが拳を振るって殴りつけ、投げ飛ばす。

シャンゼリオン「これが…… これが俺の力?」

自分の力に驚くシャンゼリオンの隙をつき、ギンガーの攻撃が炸裂。

シャンゼリオン「うわぁ! 油断しちまったぜ!」

ギンガーがシャンゼリオンを捕え、高圧電流攻撃を浴びせる。

シャンゼリオン「うわぁぁ──っ!」
宗方「シャンゼリオン! 胸のディスクに手を当てるんだ!」
シャンゼリオン「何言ってんだ!? こっちは体が痺れてんだぜ!」
宗方「いいから胸に手を当てろ!」
シャンゼリオン「わかったよ! 当てりゃいいんだろ!?」

宗方の言う通りにすると、シャンゼリオンの手に長剣・シャイニングブレードが現れる。

シャンゼリオン「お、おぉ!?」

ギンガーを振りほどき、シャンゼリオンがブレードを構える。

シャンゼリオン「行くぜぇ! ひと振り!」

一太刀が見事にギンガーの腕を斬り落とす。

シャンゼリオン「決まりっ! これが俺の力!?」

なおもギンガーが襲い掛かる。

シャンゼリオン「おい、まだ立つか?」
宗方「シャイニングアタックと言え! 言うんだぁ!」
シャンゼリオン「え……? シャイニングアタック!」

その声に応じ、シャンゼリオンの胸からエネルギー体が飛び出す。

シャンゼリオン「わぁっ!?」

エネルギー体が矢のように撃ち出され、ギンガーの体を貫く。
ギンガーの体にぽっかりと風穴が開き、爆発四散。
超光戦士シャンゼリオンの初勝利である。

シャンゼリオン「俺のパワー…… これが!?」

速水とエリが宗方のもとへ駆けつける。

エリ「チーフ、子供たちは全員無事です」

シャンゼリオン「信じられねぇぜ! この俺が、こんなに強くなるなんてよぉ! これって…… これって、ひょっとして超ラッキー!? こんな力があれば、天下無敵! 退屈な人生とも、おさらばでぇ〜い! イェイ!」

その浮かれる様子に、宗方が唖然とする。

シャンゼリオン「あ〜っ、たまらんなぁ〜!」
速水「なんであんなヤツがシャンゼリオンに……? よりによって……」
シャンゼリオン「ハッピー! バラ色の人生、まっしぐらぁ!」

浮かれまくるシャンゼリオン。
その一方、昨晩の異空間では、ダークザイドの3幹部が復活を遂げていた……。


つづく
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