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スラムダンク

VOL.1 桜木君

― #1 桜木君 ―


「ゴメンなさい桜木君、あたし、バスケット部の小田君が好きなの。」
ズッコーン!!
ノッケから、フラれているのは、桜木花道…。
真っ赤なリーゼントがトレードマーク、ケンカ大好きの中学生。
「おおっ!」 それを見ていたワル仲間が、草むらから飛び出して来て…
「おめでとう花道!!中学3年間で、ついに『ゴメンなさい』50人達成!!」
「フラれつづけて50人!!」 「この快記録は誰にもやぶれねーぜ!!」
「これで、心おきなく卒業できるな!!」
――…グス…てめーら…
「うっ!!ギクッ」 殺気を感じるみんな。
全員に、ゴスゴス頭突きをかまし八つ当たりする花道、おでこからプスプス湯気を噴いて倒れる仲間…

4月 県立湘北高校――
1年7組の教室
中学からの花道のワル仲間達が、教室を覗き込んでいる。
「よう洋平どーだ、花道の様子は!?」
「まだ立ち直ってねーな、自分のカラにとじこもってるよ。」
「高校入ったら、立ち直ると思ったんだけどな…」
「どーもあいつは、性格が内向的なんだよな〜あんな赤い髪してるクセによ。」
窓際の席で、どよ〜んと外を眺めている花道…
『バスケット部の小田君が好きなの、ゴメンなさい』の言葉を思い出している。
「よ―花道、元気出せや、バスケット部がなんでぃ、バスケット部が!!」
ぴく!――次の瞬間、花道の頭突きの洗礼を受けて、おでこから湯気――の大楠君。
「ダメだよ大楠〜バスケットは今禁句なの禁句。」半分笑いながら、洋平。
「よーいいのかよ、休み時間にビスケットなんか食って?」 「うるせーなぁ(サクサク!)」
ぴくっ!バスケット?――なんの罪もない級友も、シューウウウウっとおでこから…
「昨日ビデオで、バクダッド・カフェって映画みてさー」 「ふうん」
ぴくくっ!バスケット・カフェ?――また一人おでこがシュゥゥ…
教室中に、シュウシュウ〜湯気が立ち昇る――「相当、神経過敏になってるな…」

廊下を歩く花道。
(ハァ…なにがバスケット部の小田君でい、バカヤロー、どーせつまんねー野郎に決まってるぜ…
バスケット部なんて、大きらいさ。世間は春だというのに、オレの心は冬のままか…フッ)
「あのう…スミマセン…バスケットはお好きですか…?」
ぴくっ!――瞳の奥にメラメラと炎を燃やしながら、拳を握り締めて花道が振り向くと!
「バスケットは…お好きですか?」
そう、命知らずな声の掛け方をしたのは、ちょーカワイイ女子生徒だった。
ガガ―――ン!!稲妻に打たれてカタマる花道。(モロ好みだ…!!!)
教室から、その様子を見ている花道のワル仲間――「……………」
花道の顔を見上げて…「背が高いですね、流川君とどっちが大きいかな…」
花道――目がテン…
花道の二の腕をにぎにぎして…「うわあ、スゴイ筋肉!!」
花道――どっきん!
花道の足をさわさわして…「まあ脚も…!スポーツマンなんですね!!」
花道――ぴくぴく…「イ…イエ、別に…」
あんぐり口を開いて、顔を見合わせる仲間。
「やっぱりスポーツマンの男の人って、ステキですよね。バスケットはお好きですか?」
大好きです、スポーツマンですから!」 きっぱり!答える花道。
「おお―っ、立ち直ったぞ!!」 駆け寄る仲間達。
花道、なぜか桜の花に囲まれて泣く。(春が来た!!このオレにも、ついに春が来たあ―っ!)
「赤木晴子と言います。(ニコッ!)」
(赤木晴子ちゃんか…なんてカワイイんだ…!ああ…!あの晴子ちゃんと一緒に登下校できたら!!
うおおお―っ、そしたら、もう死んでもいいぜ!!)
―― 彼の夢は、好きな娘と一緒に登下校することなのであった ――
「よかったな花道、高校生活に光が見えてきたな!」
「へへ…よせやい、てれるべ!」
「これが新たな大記録への第一歩だな!(フラレ記録…)」
「へへ…よせったら、てれるべ!」
いつの間にかTシャツ姿になって、鉄アレイを上げ下げしだす花道。
「おお〜〜っ、ノッてるな花道!!」

3年の校舎の廊下
「今年の1年はどーだ?」 「おお、ナマイキそーなのがいっぱいいるわ!」
ちょっとコワそうな3年男子が二人…。
「ほっほっほっほっ…」 ランニング姿で廊下をランニング?してくる花道。
「おい花道!!ここは、3年の校舎だぞ!」 「みっともねえからやめろって!!」
ゼーハーゼーハー追いかけてくる花道の仲間。
「腹筋!!」 フンフンフンフン…「だから、ローカでやるなっての!!」
花道の頭にこだまする『やっぱりスポーツマンってステキですよね』の言葉。
おまけに、ニッコリ微笑む晴子付き…。
フンフンフンフンフンフン…ますます腹筋に力が入る。
「しょ−がない、おいていこう」 仲間は、花道をほおって帰ってゆく。
「おい、そこの赤い髪、1年か、名前はなんてんだ…ん?」
「ス…スポーツマン桜木です!よろしく!」
そう言って振り向いた花道の腹を、膝で思い切りド突き上げる3年。
「放課後、屋上に来な」 「逃げんなよ」
「ゲホゴホ…(あ〜一瞬息がとまったぜ)」 そして、花道はスックと立ち上がり、
「おい…」と、二人の3年を呼び止めると…
「一瞬、息が止まったぞ、どーしてくれる!」 さっき花道に膝をいれた方の襟首を掴んで、
そのまま、そいつの体を持ち上げた!
「なんだコラァやんのかコラァ!!」 そう言うもう一人は無視。
「うぐぐ…ぐぉ…」 宙ぶらりんで苦しがっているヤツを、
「おめーの息も、とめてやる」と、なおさら絞め上げる花道。
「やめろ、てめえ!!ココをどこだと思ってんだ!!ああ!!?」と、言ってはみたものの、
「(ギロッ!)3年生の校舎」 そう答える花道の気迫に思わず 
「そのとーり!」 と、人差し指を立てて言ってしまう、もう一人の方。
「オラァ、放せよな、もういいだろ!!殺す気か、てめえ!!おーい、だれかーっ!」
放す様子はまったくない花道、ぐいぐい絞め続けている。
その時!
「あっ、桜木君!!」 晴子だ。
ぴくん!!――パッと手を放す花道…ほんわ〜〜っと笑顔。
「何してるんですか、こんなところで、3年生にお知り合いでも?」
「うん、と…友達なんだ。ハルコさんは?」
「あたしは3−6に兄がいるの。兄のお弁当届けに来たんだけど…
3年生の教室にくるのって何だかキンチョーする…」
「あーやっぱり?オ、オレも…」 「誰がや?」とツッこむ、さっきの3年。
「(お兄さんか…)ちょっとゴアイサツに――」 頭をなでつける花道。
「キャ――やめてえ!!兄妹ってテレくさいんだから!早く1年の教室に帰ろ!!」
「そ…そーすか…」
晴子に止められた花道の手には、いつの間にか『ひよこ』のお菓子の包みが…。
そして2人は、脚を渦巻きマークにしながら、走り去って行った…。
「おう、なんだ、何かあったのか、おめーら?」 「徳(のり)ちゃん!!」
そこへやってきた『徳ちゃん』と呼ばれるその男…すさまじく怖い顔…。
「ああ!?」 ゴッ!ガン!徳ちゃんにぶっ飛ばされるさっきの男2人―。
「バカが、1年坊にしょっぱなからナメられやがって!!赤い髪の桜木か…
ウワサだけは聞いたことあるがな…確か和光中の桜木花道…ウチに来てたのか。
おまえら、そいつにちゃんと呼び出しかけといたろうな。」
「うん…放課後、屋上来いって言ったぜ…」 「そうか…(ニヤリ)しょせんは中学レベルよ。」

放課後――
「桜木君、ちょっと時間ある?バスケット部の見学にいきません?」
「ハルコさん…!!」
「何か用事とかあるなら、あれだけど…」
「ない!ないっス!!ゼンゼン!!」 ブンブン首を横にふる花道。
その頃、屋上では…
徳ちゃんはじめ、3年生の皆さんが、指をバキボキいわせている。
「早く来い桜木!!」 「たのむよ徳ちゃん!」
「この堀田徳男が、湘北高のおそろしさをたっぷり教えてやる、ふっふっふ…」

体育館
晴子と花道が来る。
「まだ、だれも来てないみたいですね…」
バスケットゴールの下に、ボールが一個落ちている。
「あっ、ボール。中学の時は、こんなふうにボールをコートに出しっぱなしにしてたら、
スゴイおこられたのよね〜あっ、あたし中学の時はバスケット部だったんですよ。」
頬を赤らめる花道…「スバラシイ」
ドリブルを始める晴子 「さあ、赤木晴子選手、カットインだっ!」
自分で実況しながら、ダムダムとゴールへ向かってゆく。
「レイアップシューとわっ、あうっ!」 つまずいて、思いっきりパンツを見せてコケる晴子。
!!!目玉が、飛び出しそうな花道…に、晴子がボールを投げた。
「桜木君やって!エヘヘ、実はあたし運動神経ないんです。だから、高校ではバスケット
やらないつもり。だけど、見てるのは好きなの…大好き!子供の頃からお兄ちゃんがやってるのを
ずっと見てたから…桜木君、ダンクって知ってる?」
戦車の絵を指し棒で指す花道――「それは、タンク」
はんてんに鉢巻で釘を咥えてトンテンカン…の花道――「それは、大工っ」
「…じゃなくてぇ、ダンクはバスケットボールの花形!!最もエキサイティングで、
最も観客がよろこぶプレイ!!とくにあのゴールがこわれるんじゃないかというほど
激しくたたきこむのを、スラムダンクっていうの。」
「スラムダンク…」
「中学時代、兄が試合でダンクを決めると、味方だけでなく敵の応援団まで大騒ぎで…
体育館中がドーッとなるの。スゴかったんですよ…あと、流川君のダンクもスゴかったな…」
「ルカワ…?」 花道は、何気なく、片手でボールを下向きに掴んでいる。
「わっ、桜木君ボールをつかめるの!?スゴイ!!」
「ん?イヤ〜このくらい、スポーツマンですから、ほらほら!」
ボールを持ったまま、腕をぐるぐる回す花道。
「スゴーイ!桜木君もしかして、ダンクできるんじゃない?背高いし…ジャンプ力ある!?」
「ス…スポーツマンですから!!――(はかったことないケド)」
「わーっ!やってみて、やってみて!」――わくわく♪瞳、キラキラ☆
がぜんやるき印の花道 「よおおし!!」
「うわー何だかドキドキしてきた!このリングの中にボールをたたきつけるのよ、桜木君!!
思いっきり跳んでねっ」
(よっぽどバスケットが好きなんだなハルコさんは、カワイイぜ…
スラムダンクか…やるからには、マジだぜ!!) キラン☆目が輝く。
「行きますよ――っハルコさん!!」 「OKーガンバッテ!」
どどどどどどどどどどどどど……
「げっ!ボール持ったまま、走ってる…」
そのままゴールにまっしぐらの花道 「行くぜっ!スラムダーンク!!とうっ!」
ものすごいジャンプ!!(リングのまん中にたたきつける…!) 「あれ?」
ガッ!(思いっきりおでこをゴールにぶつけた音) ドターン!(当然、そのまま落ちた音)
「す…す…スゴイわ桜木君!!シュートははずれたけど、すごいジャンプ力だわ。
桜木君、バスケット部に入るべきよ絶対!!!」
「そ…そーすか…?」 シュゥゥゥ…おでこから湯気噴いて倒れている花道。
「そーよ絶対よお!!」 キャーキャー興奮している晴子。
そこへ、花道の悪友どもが、花道のにおいをかぎつけて(?)やってきた。
「おお〜っ、何だよ花道、先帰ったと思ったら、こんな所にねてやがった。」
「何してんだ?」 「死んでるな―」 「おっ、君はハルコちゃん!」
「スゴイわ、スゴイのっ!」 まだ興奮気味の晴子。(救世主よ、救世主よお兄ちゃん!!)
「ハハーンわかった!だれもいない体育館に連れ込んで、ムリヤリ押し倒そうとしたが、
拒否されてカウンターの頭突きをくらった!アタリだろ、えっチガウ?」
(桜木君は、バスケット部の救世主になるわ…絶対よ!!)

その頃、屋上では…
コワい顔の徳ちゃんが―――「遅い!」


― #1 終わり ―


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