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sh15uya(シブヤフィフティーン)の第1話 (漫画版)


とある街角。

木刀を手にした少女が、1人の少年を殴り続ける。

ブッ殺す! このド畜生がァ!!」
「やめなよ! アサギ!! それ以上やったら死んじゃうよ!」
死ィ

突如、その少女の額に奇妙な紋章が浮かび上がる。

「……!?」

呆然とした少女の手から、木刀が落ちる。

「アサギ…… アンタ……」「『紋章』が……」「……」


イッテキマス……
……イッテラッシャイ



Sh15uya Face.01


ゴミ捨て場。

「ん…… ん──」

路地裏のゴミ袋の山に埋もれて眠っていた少年が、目を覚ます。

「ん…… うわ! 臭ぇ──!! あ── 何でこんなとこで寝てんだ オレ? ん……」

目の前の壁に「シブヤを出ろ レヴ」と書かれている。

「何だ? こりゃ 『シブヤ』をでろォ? ん──ってことは ここはシブヤ……なのか……? はぁ……でも どの辺だろココ……さっぱりだ……」

再び壁に目をやると、さきほど書かれていた字が消えている。

「あれ……壁の字……消えてる? 疲れてんのかな 帰ってねるか……」
(……おい……ちょっと待てよ 帰るってドコに……!? それどころか……オレ…… 自分の名前も思い出せないぞ……オレは誰なんだ!?)

目の前に冒頭の少女、アサギが現れる。

「!? あの……ちょっと悪ぃんだけど……」

突如、何者かが現れてアサギを殴り飛ばす。

「!! (何だ……コイツ!?)」

アサギを殴った者は、首から下は人間だが、顔は怪物。右手は巨大な刃と化している。

(何が起こってるんだ? 一体何なんだコレ?)

怪物がアサギに迫る。

アサギ「キャッ」
少年 (何かの冗談か? こりゃ…… でも……)
アサギ「うぅ……」
少年 (コイツ……どう見てもヤバそうだ この目……間違いない……コイツ絶対…… 『殺そう』としている!!)

少年が踏み出し、怪物の肩に掴みかかる。

少年「やめろぉ!!

怪物が少年に殴りかかる。

少年「!?

瞬時に身を屈めてかわす少年。
さらに怪物が右手の刃を突き出す。

少年「うぉっと!」

その刃を少年がかわし、逆に怪物に殴り飛ばす。

少年 (あれ? 何か変だぞオレ…… 体が勝手に動いちまってる…… オイ…… オレ……こんなケンカ強かったのか?)

怪物が少年の襟首を掴みあげる。

少年「は……離せ……!!」
怪物「オ前ハ誰ダ 何者ダ?」
少年「…… (オレが知りてぇつーの!!)」

そのとき、空から何かが近づいて来る。
怪物が少年を放り出す。

少年「うわ!」
怪物「エマ!?」

消えろ……『ピース』!

少年「なっ 何だァァ!!?」

空の彼方からから何者かが怪物目掛けて突撃。
そばに停まっていた自動車ごと、怪物を吹っ飛ばす。
衝撃で少年も倒れる。

少年「あたた……どーなったんだ? 何がなんだか もう……」

もうもうと立ち上がる埃と煙の中、奇妙な戦闘スーツに身を包んだ少女が立っている。

少年「な…… (何か変なのがもう一体いる!!)」
怪物「『エマ』ァァ」
少年「お…… (女ぁ──!?)」

気を失っていたアサギが目を覚ます。

アサギ「う……」
少年「気がついたか? オイ 立てるか? ここから離れるぞ…… (あの() 車ごと あの男をふっ飛ばしたよな…… どこをどうすりゃ そんな事できるんだ……)」

エマと呼ばれた少女、ピースと呼ばれた怪物の戦いが始まる。
ピースが右手の刃を振りかざす。
エマも右腕の装甲を剣と化し、それをなぎ払う。

アサギ「あれは……『エマ』……」
少年「エマ? 知り合いなのか?」
アサギ「…… オマエふざけてるのか?」
少年「え?」
アサギ「エマの事くらい知ってるだろ!」
少年「いや……何っていうか……わかんない……」

アサギの振るう剣がピースを大きく吹き飛ばす。

少年「やった!」

思わず歓声を上げた少年に、エマが気づく。

少年「?」
エマ「ツヨシ……」
少年「危ない!

エマの背後から斬りかかるピース。
だがそのピースを、エマは一撃のもとに斬り捨てる。

エマの身を包んでいたスーツが蒸発するかの如く消え、その姿が普段着となる。
呆然とする少年に、エマが笑顔を見せる。

エマ「おかえりなさい……帰ってきてくれたんだね あなたなら きっと戻ってくるって信じてたよ」
少年「戻る? それに…… キミはオレを知っているのか?」

エマの顔から笑顔が消える。

少年「教えてくれないか オレは誰なんだ」
エマ「ふぅん……やっぱりこうなるんだ……あなたも他のみんなと同じだったんだね…… ちょっとは期待したんだけどな……」

エマが背を向ける。

少年「ちょ……ちょっと待ってくれよ!」
エマ「他の人が何て呼ぶかは知らないけど……私の知ってるあなたの名前は…… 『ツヨシ』よ……忘れないでね」

エマが立ち去る。

アサギ「なーんだアンタ エマと知り合いなんじゃん……?」
少年「ん── どうなんだろ わかんねぇや……オレ……自分の名前も憶えてないし……」
アサギ「何? アンタホント何も憶えてないわけ?」
少年「ああ」
アサギ「そっか……だからあんな余計な事を……」
少年「余計な事?」
アサギ「そう アンタ私を助けようとしたでしょ?」
少年「あ……」

アサギが自分の額の紋章を指す。

アサギ「この『紋章』が出たら『ピース』に殺される…… それが『決まり』……って本当に知らないのか?」
少年「ピース?」
アサギ「さっきエマと戦ってたろ」
少年「にしても……決まりねぇ……」
アサギ「何だよ」
少年「本当にそれでいいのかよ? そんな決まり事で殺されちまうなんてオレならごめんだけどな…… 本当は死にたくないんだろ?」
アサギ「…… あ゙ やめやめ まあ助かっちまったもんはしょうがないか! まったく……エマ以外でピースに殴りかかるヤツがいるとはね……」
少年「エマ……そういえばあの娘は何で……」

腹の虫が鳴る。

少年「腹減ってるみたい……」

呆れ顔のアサギ。

アサギ「しょーがないなー まあ……アタシの居候先の人に頼んで何か食わせてやるよ」
少年「おお」
アサギ「ところで……お前……帰るトコ憶えてんの?」
少年「あ゙──全っ然!」
アサギ「ハァ…… その辺もついでに頼んでみるか」
少年「おー!」

少年「あ……さっきの続きなんだけど……」
アサギ「ああ……エマ? 私も詳しい事情は知らないよ でも…… ピースがいる所には必ず現れるんだよね 気になる?」
少年「そりゃまあ……オレの事知ってるみたいだし……」
アサギ「ふーん」

少年「そうだ……名前聞いてなかったよね」
アサギ「うん アタシは『アサギ』 よろしくな」
少年「オレの名前はえっと…… くそ…… あ──」
アサギ「『ツヨシ』ってんでしょ?」
少年「ん── まあ……そうみたいだな……じゃあそう呼んでくれ!」


記憶を失ったオレが目覚めた
この『シブヤ』という街

『不思議な能力』を持ち
唯一オレの事を知っているらしい
エマ……

だけど彼女……
エマだけには不思議と
心を許せる気がした


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