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ジャンボーグAの第1回


草原の中の飛行場。
主人公・立花ナオキが、古びたセスナ機を修理している。
そこへ、ナオキの勤める大利根航空の伴野社長が、大荷物を抱えてやって来る。

伴野「おいナオキ、まだ故障直らんのか?」
ナオキ「見ればわかるでしょう、社長〜」
伴野「グズ! ノロマ! 丸安デパートの方から『早く宣伝ビラを撒け』って、催促の電話が鳴りっぱなしだ!」
ナオキ「俺に文句言ったって仕方ないっすよ。こんなオンボロ飛行機を使う社長が悪いんじゃないっすか」
伴野「こんのぉ〜クビだ! 貴様のような奴はクビにしてやる」
ナオキ「えぇ、結構ですよ? でも社長、自慢じゃないが我が大利根航空は、社長1人にパイロット1人の貧乏会社。俺をクビにしたら、誰がこの飛行機飛ばすんですか?」

減らず口に溜まりかねた伴野が拳を振り上げる。
すかさずナオキがそれをかわし、拳骨はセスナに命中。
その衝撃か、セスナのプロペラが回り始める。

ナオキ「どうなってんだ!?」
伴野「早く行くんだよ!」
ナオキ「わかってますよぉ!」

セスナに乗り込むナオキ。

伴野「おぉい、道草食うんじゃねぇぞ!」

ナオキのセスナが飛び立つ。


宇宙空間。

侵略者・グロース星人の宇宙船が地球に迫る。
その中で司令官のアンチゴーネが不適に笑う。

アンチゴーネ「地球人よ、我々グロース星人の戦いの合言葉を教えてやろう。『殺せ! 奪え! 焼き尽くせ!』『殺せ! 奪え! 焼き尽くせ!』だ! 地球を我々のものにするのだ!」


エメラルド星人からの
贈り物


エメラルド星人
ジャンボーグA
アンチゴーネ
キングジャイグラス
登場


その頃 地球パトロール隊の隊長・立花信也の家には
爽やかな日曜の朝が訪れていた


ベッドにもぐっているナオキを、立花信也の息子・和也が叩き起こす。

和也「ナオキさん、もう8時だよ。起きないと仕事に遅れるよ」
ナオキ「待ってくれよ、もう少し……な、頼む! あと10分!」
和也「よぉし……」

机の上のナオキのトランペットを和也が手にし、布団の中に突っ込み、けたたましい音を思い切り吹き鳴らす。
たまらずにナオキが飛び起きる。

ダイニングで朝食をとるナオキの兄・立花信也、妻の茂子。
和也とナオキが追いかけっこしながら現れる。

ナオキ「こらっ! 待たんか、この野郎! おい和也!」
立花「ナオキ、静かにしないか」
ナオキ「や、兄さんも義姉さんも、おはようございます!」
茂子「おはようナオキさん。食事の支度できてるわよ」
ナオキ「すんません」

食卓についてナオキが朝食に伸ばした手を、立花がひっぱたく。

立花「こら! お前、顔洗ったか?」

決まり悪そうにナオキが洗面所へ向かう。

ナオキ「ごめんなさい……」
茂子「ふふっ。和也、パパがねぇ、釣りに連れてって下さるって」
和也「本当、パパ!?」
立花「あぁ」
和也「わぁい! でも……大丈夫かな」
立花「何がだ?」
和也「だってさ、また地球パトロール隊から電話がかかってきてさ。『事件だからすぐ来い』って」

苦笑しつつ立花が和也の頭を撫でる。
バッドタイミングで電話が鳴る。

茂子「はい、橘でございます。……あ、少々お待ち下さい。あなた、本部からお電話」
立花「もしもし。あぁ、岸君か。え? 奥多摩上空に怪しい飛行物体が!?」

地球パトロール隊PATの本部。
チーフの岸が立花に電話をかけている。

岸「えぇ。せっかくの日曜日にすみませんが、すぐ本部へ来て下さい。お願いします。浜田、熊井、スクランブルだ!」
浜田「了解!」
熊井「OK、チーフ!」

岸に呼ばれた隊員の浜田と熊井が出撃準備。
格納庫でPAT戦闘機ジェットコンドルがスタンバイする。

「ジェットコンドル発進」


立花の車に便乗して出勤のナオキ。
車を降り、腕時計を見る。

ナオキ「ちぇっ、また止まってやがらぁ。頭に来るな、もう」
立花「おい。これ、お前にやるよ」

立花が自分の腕時計をナオキに差し出す。

ナオキ「え? いいのかい、そんな高い物もらっちまって」
立花「お前はパイロットだ。正確な時間を知っておかないと、思わぬ事故を起こすからな」
ナオキ「さっすがぁ! じゃ、遠慮なく貰っとくよ」
立花「あぁ」
ナオキ「じゃあな、兄さん。……綺麗な奥さんや、可愛い和也君のためにも、命だけは大事にしろよ」
立花「こいつぅ、殊勝なこと言いやがって! 俺は殺されたって死ぬような男じゃないぞ」
ナオキ「じゃ、気をつけて!」


ジェットコンドルの浜田と熊井が、グロース星人の宇宙船に追いつく。

熊井「おっ!?」
浜田「隊長、目標を発見。ロボットの形をした巨大な飛行物体です」

本部に到着した立花が通信を受ける。

立花「何、ロボット型の?」

宇宙船がジェットコンドル目掛けて光線を撃つ。

熊井「くそぉ!」

ジェットコンドルが宇宙船に砲撃を浴びせる。
宇宙船が火を噴きつつ、雲の中へと消えてゆく。


立花「そうか、見失ったのか……」
浜田「はい、申し訳ありません」

通信を切った立花が、岸、PAT紅一点の野村を呼ぶ。

立花「よし、我々も直ちに出動だ」
岸「了解」
野村「はい」


宇宙船が奥多摩ダムのそばに着陸。
アンチゴーネが現れ、地面を這っていたトカゲに魔力を浴びせる。
たちまちトカゲが巨大化し、怪獣となる。

アンチゴーネ「行け、怪獣キングジャイグラス! ダムを叩き壊し、東京を水浸しにするのだ!」


立花たちがPAT戦闘機ファイティングスターで浜田たちのジェットコンドルに合流。
奥多摩上空で捜索を続ける。

岸「畜生……ロボットの化け物め、どこへ消えちまったんだ」
野村「あっ! 隊長、見て下さい!」
立花「どうした、野村君」
野村「怪獣がダムに向かっています!」
立花「何ぃ!?」

怪獣キングジャイグラスがダムに迫り、人々が逃げ惑う。

立花「浜田、熊井、お前たちは空から攻撃しろ。我々は地上から攻撃を加える」
浜田「了解!」

立花たちが地上に降り立つ。

立花「行くぞ!」
野村「はい!」

ジェットコンドルが怪獣に砲撃を浴びせる。

立花「岸君!」

立花たちが怪獣目掛けて銃撃を浴びせるが、効果がない。

立花「やむを得ん、一旦後退するんだ」
岸「でも隊長!」
立花「行くんだ!」
岸「はい……」

ダムのふもと、怪獣の近くで幼い少女が1人、逃げ惑っている。

少女「恐いよぉ! 恐いよぉ、恐いよぉ、ママァ!」
立花「危ない! あんなところに子供が!」
岸「隊長!」

立花が少女の方へと降りてゆく。

岸「隊長、待って下さい!」
野村「隊長、降りると危険です!」
岸「隊長!」
野村「待って下さい、隊長!」
岸「隊長!」

怪獣が火を吹いて暴れる中、立花が少女に追いつく。

立花「大丈夫か!?」

怪獣がダムを砕き、立花たち目掛けて瓦礫と岩が降り注ぐ。

野村「隊長!」
岸「隊長!」

立花は必死に自分を盾にし、少女を守る。
落石がやみ、岸と野村が血だらけの隊長に駆け寄る。

岸「隊長!」
野村「隊長!」
岸「しっかりして下さい、隊長!」

野村が少女を助け起こす。

野村「もう大丈夫よ」
立花「岸……子供は……大丈夫か」
岸「はい、かすり傷ひとつ負ってません」
立花「よ……良かった」

少女の無事を見届け、事切れる立花。

岸「隊長!?」
野村「隊長!」
岸「立花隊長!!」


飛行場。
大利根航空の事務所に駆け込んでくるナオキ。
伴野社長は悲痛な表情で窓の外を見詰めている。

ナオキ「すんません社長、珍しく東京の空が綺麗なもんで、つい……社長?」
伴野「早く……帰ってやれ」
ナオキ「……どうしてです!?」
伴野「早く帰れと言っとるんだ!」
ナオキ「……まさか……まさか兄貴が!? そうなんですね、社長!?」

無言で伴野が頷く。
事務所を飛び出すナオキ。

ナオキ「嘘だ──! 嘘だぁ──っ!!」


奥多摩ダム上空、ジェットコンドルが旋回を続けている。

浜田「熊井、いい加減にしろ! 俺たちには怪獣の動きを見張る任務があるんだぞ」
熊井「わかってますよ! でも、涙の方が止まってくれないんでさぁ」
浜田「しっかりしろ! 隊長への餞は涙じゃない、怪獣をやっつけることだ! それしかないんだ、それしか……!」


その翌日 立花隊長の葬儀が
隊員列席のもとに おごそかに行われた


教会。

泣き崩れる息子の和也。
隣には母の茂子。伴野社長、PATの岸たちも列席している。

和也「パパ、どうして死んじゃったんだよ……パパァ……」
茂子「和也、あなた男の子でしょ? 泣くんじゃないのよ……」
岸「奥さん、許してください。私がついていながら、むざむざ立花さんを……」
茂子「いいえ、とんでもございません。主人は任務のために死んだんですもの。きっと満足してると思いますわ。きっと」
岸「では……」

岸たちが去る。

伴野「ところでナオキ君の行方はわかりましたか?」
茂子「いえ……」
伴野「仕方のない奴だ……兄の葬式に出席せんとは」

トランペットの音色が響く。

和也「あ! ナオキさんだ!」
伴野「あいつ、来てやがったのか……?」
茂子「私が参りますわ」


教会の外。ナオキが哀しげな音色でトランペットを吹き鳴らしている。
茂子が現れる。

茂子「ナオキさん……」

ナオキがトランペットをやめ、腕時計を見つめる。

ナオキ「この時計、兄さんから貰ったんだ……時計の針は、こうやってコチコチ動いてるだろ? コチコチって……でも兄さんの命は……そんなバカな話ってあるもんか! 畜生!」


一方、グロース星人・アンチゴーネ。

アンチゴーネ「フフフハハハ……地球パトロール隊の目は奥多摩ダムに集中している。よし、作戦を変えて東京を襲わせるのだ!」


茂子のもとへ岸が駆けてくる。

岸「奥さん! 実は今、東京湾に怪獣が現れたとの連絡が入りまして……」
ナオキ「!?」
岸「任務に戻らなくてはなりませんので、これで失礼します」

岸が駆け去る。

ナオキ「義姉さん、俺……ちょっと出かけてくるぜ」
茂子「どこへ行くの? ナオキさん!」

ナオキもどこかへ駆け去って行く。


東京湾で怪獣が暴れる。
PATのファイティングスター、ジェットコンドルが応戦する。

岸「畜生、ビクともせんぞ」
野村「あ! チーフ、セスナが!」
岸「何!?」

ナオキのセスナが飛来する。

ナオキ「怪獣め、兄貴の仇をとってやる。覚悟しろ!」

熊井「あのパイロットはナオキ君だ!」
浜田「体当たりする気らしいな。バカな、犬死にするだけだぞ」
熊井「おい、やめろ!!」
岸「ナオキ、やめろ!!」
野村「やめて!!」

PATの面々の制止を聞かずに怪獣に突っ込むナオキ。
怪獣が火を吹く。
セスナが炎に包まれ、墜落してゆく。

岸「ナオキッ!!」
ナオキ「わぁぁ──っっ!!」


ナオキが気付くと、そこは一面、霧に包まれた謎の空間。
目の前に、銀色の宇宙人が立っている。

「私は地球の兄弟星、エメラルド星から来たものだ。立花ナオキ。君たち兄弟は、地球侵略を企むグロース星人の手先である、怪獣と命を懸けて戦った。我々エメラルド星人は、勇敢な若者である君に、素晴らしい武器を与えよう。その名は、ジャンボーグA!!」

エメラルド星人が手を掲げると、銀色の巨人・ジャンボーグAが現れる。

「我々の科学の粋を集めて作り上げたジャンボーグAの操縦は、すべて君の手足の動きに連動し、君の思いのままに動かせる。我々はこのジャンボーグAを、君の愛用のセスナの形に変えて進呈する」

エメラルド星人が何やら装置を操作すると、たちまちジャンボーグAが、ナオキのセスナへと姿とかえる。

「ところで、君は兄さんの形見である腕時計をはめている。我々はその腕時計に、特別な仕掛けを加えておいた。すなわち、腕時計がエメラルド色に光るとき、グロース星人の悪巧みが起こっている知らせになる。そしてまた、そのときセスナを操作すれば、セスナをジャンボーグに変化させることができるのだ。さぁ行け! 戦え! 侵略者グロース星人を、君の手で打ち砕くのだ!!」

エメラルド星人の姿が消える。

「良いか、ジャンボーグAの操縦席は、目の奥にあるのだ──」


気付くと、そこはセスナの操縦席。

ナオキ「それにしても変な夢だ……でも変だぞ? 墜落したはずのセスナが、どうして!?」

ふと、ナオキが腕時計を見る。
エメラルド色の輝き。
ナオキの脳裏に、エメラルド星人の言葉が甦る。

(腕時計がエメラルド色に光るとき、セスナを操作すれば、ジャンボーグAに変わるのだ)

ナオキ「よぉし……夢かまことか、試してやるぞ」

腕時計が激しくエメラルド色の光を放つ。

ナオキ「ジャン・ファイト!!」

セスナが宙を舞う。
たちまちセスナが光に包まれ、銀色の巨人・ジャンボーグAへと姿を変える。

ジャンボーグの操縦席の中、戦闘服に身を包まれたナオキが立っている。

ナオキ「俺は今ジャンボーグAの中で操縦しているんだ……間違いないぞ! 俺は確かにエメラルド星人からジャンボーグAを貰ったんだ! よぉし、このジャンボーグAを使って、憎いグロース星人をやっつけ、兄さんの仇をとってやるぞ!」


怪獣に苦戦するPATの面々。

岸「だめだ……このままでは東京は全滅だ!……はっ、何だ!?」

彼方から飛来するジャンボーグA。
大地にジャンボーグが降り立ち、怪獣と対峙する。

ナオキ「来いっ!!」

凶暴な怪獣がナオキの目前に迫る。

ナオキ「くそ……何をビクついてんだ! しっかりしろ、立花ナオキ!!」」

ジャンボーグと怪獣の激闘が始まる。
ナオキの体の動きの通りにジャンボーグが稼動し、怪獣に立ち向かう。
怪獣の吐く炎を、ジャンボーグが軽やかにかわす。

ナオキ「フライング・キック!!」

ジャンボーグの飛び蹴りが命中。
ジャンボーグの細腕が、遥かに巨体の怪獣を軽々と投げ飛ばす。
怪獣の長い尻尾がジャンボーグを締め上げるが、細身に似合わぬジャンボーグの怪力が尻尾を引きちぎる。

ナオキ「ヘッディング・キラー!!」

ジャンボーグの体が宙を舞い、頭突きが怪獣に命中。
頭部の鋭い突起が怪獣を斬り裂く。


大爆発──


ナオキ「やった!! 遂に兄貴の仇をとったぜ、万歳!」


そのとき、地中から突然、アンチゴーネが現れる。
アンチゴーネが人間大の姿からたちまち巨大化し、ジャンボーグAと同等の大きさとなる。

ナオキ「何だお前は!?」
アンチゴーネ「おのれ、ジャンボーグAめ! だが我々グロース星人は諦めぬ! 次から次へ怪獣を送り込み、この地球を必ず、我々のものにしてみせる! 良いか、覚えておれ、ジャンボーグAよ」

再びアンチゴーネの体が小さくなり、地中へと姿を消してしまう。


ナオキ「フライト・リターン!」

ジャンボーグがセスナに姿を変える。

ナオキ「兄さん、俺はやるぜ……兄さんを殺したグロース星人の奴らを、コテンパンにやっつけてやる! 見ててくれ、兄さん!」


セスナが夕焼けの空へと飛び去ってゆく──


かくして ジャンボーグAとグロース星人の
死闘の幕は切って落とされた
戦え! ファイトだ! ジャンボーグA!!


(続く)
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