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世界忍者戦ジライヤの第1話



磁雷矢 vs 妖魔一族



とあるマンションの一室に設けられた、戸隠流忍法道場・武神館。
戸隠流宗家の山地哲山(てつざん)と、息子である主人公・山地闘破(とうは)が稽古に励んでいる。

見学している山地家の末っ子・学の前で、闘破が哲山にしたたかに投げ飛ばされる。

闘破「痛ぁっ!」
学「しっかりしてよぉ、お兄ちゃん」
闘破「近ごろ親父、どうかしてんじゃないの? これじゃあ稽古じゃなくって、シゴキじゃないの」
哲山「闘破、何をグズグズ言ってるんだ! さぁ、立て!」
闘破「はぁい…… わかった! ここんとこ入門者がないんで、カリカリしてんだろ?」
学「そんなこと言ってると、また投げられちゃうぞ」

闘破の妹、ケイが現れる。

ケイ「ただいま!」
哲山「お帰り、ケイ。見るのも稽古のうちだ。さぁ、入んなさい」
ケイ「はぁい。闘破、少しはいいとこ見せなきゃ。ねぇ?」
闘破「どう、この違い? ケイには優しく、俺には厳しい。やっぱ血が繋がってんのと無いのでは、愛情に差があんのかなぁ?」

ケイに笑顔を見せる哲山を、闘破が背後から攻めようとするが、あっさりと投げ飛ばされる。

そんな道場の様子を、悪の忍者・妖魔一族の下忍であるカラス天狗が、窓の外から密かに監視している。
気配を感じた哲山。立ち向かってきた闘破を投げ飛ばす。

闘破「痛っ! 骨の髄まで響く……」

続けざまに、哲山が手裏剣を放つ。慌てて避ける闘破。

闘破「親父!? やり過ぎだよ!」

手裏剣が闘破をかすめ、外のカラス天狗に命中。カラス天狗が退散して行く。


稽古の後。闘破が食事の準備をする傍ら、ケイはのんびりテレビゲームを楽しんでいる。

闘破「あ〜あ。せっかくの日曜、あんな目に遭うくらいなら、いいバイトの口あったんだ」
ケイ「そうだ、闘破。ベージュ色のブラウス、アイロンかけといてくれた?」
闘破「あっ、忘れてた!」
ケイ「ひっどぉい! あれほど頼んどいたのにぃ!」
闘破「お前、たまには自分でやれよ」
ケイ「あー、おなかへった。早朝テニスで汗流したせいかな? 闘破、ご飯まだ?」
闘破「怒るぞ、この性格ブス!」
ケイ「べーだ!」

そのとき。棚に置かれた壷が、淡い緑色の光を放ち始める。

闘破「なんだ、ありゃ? 親父もよく言うよな。これがうちの家宝なんて、冗談だろ? それにしても、えらく凝った室内装飾だな」
哲山「黙りなさい!」
闘破「おぉ、怖……」
哲山「昼食が済んだら、同場に集まりなさい。話して聞かすことがある」
ケイ・学「はい」

闘破 (なんだ? なんなんだ、この光は? しかし俺はこの光を、懐かしいものでも見るような……そんな思いにとらわれた)


食事後。道場に集まった闘破たちに、哲山が古文書の巻物を広げて見せる。

哲山「家宝の壷、妖しく輝くとき、パコを守れ」
闘破「家宝の壷、妖しく輝くとき、パコを守れ…… 『パコを守れ』? なんだ、『パコ』って?」
哲山「パコは、地球より何千年も進歩した星から、大昔に送られたタイムカプセルなのだ。しかし人々は、神様の落し物として敬い恐れ、神の使いが取りに現れる日まで、守ることを誓い合った。ある日、パコは大地震のために地中深く埋まり、嘆き悲しんだ人々は、その場所を刻み込んだ粘土板(ボード)を後の世に遺した。この謎を解き明かした聖徳太子は、考えた末に、一旦掘り出したパコを再び地の底に戻し、志能便(しのび)、後の忍者にボードのガードを命じた」
闘破「親父、ところでどうなったんだ? パコの在処を示す、えっと……」
哲山「そのボードは戸隠流に引き継がれ、代々守られてきたが、今はその半分を私、第34代宗家・山地哲山が守っている」
闘破「残りの半分はどこにあるんだ?」
哲山「毒斎が持っている」
闘破「毒斎?」


妖魔一族の頭領・毒斎が、帰還したカラス天狗から報告を受け取る。

毒斎「そうか、腕の立つのは鉄山1人か」
カラス天狗「へい、あとは子供だけでヤンス」
毒斎「今こそ襲撃のチャンス…… 戻ったか、烈牙?」

妖魔一族の青年忍者・列牙が現れる。

毒斎「どうだ、世界の忍者は動き出したか?」
烈牙「鉄山がボードを持っていると聞かされて、目を輝かさぬ者はおりません。奴らはみなパコ欲しさに、次々と日本へやって来るでしょう。城忍(じょうにん)フクロウ男爵などは、ただちに駆けつけて頭領・毒斎様に手を貸したいと申しておりました」
毒斎「用意はできたか? 紅牙!」

毒斎の1人娘の女忍者、蝶忍・紅牙が、数人のカラス天狗を引き連れて現れる。

紅牙「はい! すべて整いました」
カラス天狗「我らもすべて」「整ってるでヤンス」
毒斎「出撃だぁ!」

烈牙と紅牙はハンググライダーで、カラス天狗たちは空中を泳ぐように空を飛び、山地家のマンションを目指す。


やがて、烈牙たちがマンションに到着。

カラス天狗「到着でヤンス〜」

哲山「とうとうやって来たな…… さぁ、2人とも隠れていなさい」

哲山が道場の壁の奥の隠し部屋に、ケイと学を隠す。
闘破は壷と古文書をケイに預ける。

闘破「ケイ、これを頼む」
ケイ「闘破は?」
闘破「俺はやるぞ。隠れていろ」

哲山「よく見ておきなさい。ボードの残り半分の持ち主の腕前を!」
闘破「そういうことなら拝見するか。親父のお手並みを」

窓を突き破ってカラス天狗が道場に飛び込み、続いて毒斎たちが現れる。

毒斎「久しぶりだな、鉄山」
哲山「間違いなく、毒斎だな。その声は」

睨み合う2人。毒斎が刀を抜き、斬りかかる。
哲山は棒術で応戦。互いの技の応酬の末、毒斎の刀が弾け飛ぶ。

哲山「野望を捨てろ、毒斎!」

烈牙が斬りかかる。

ケイ「危ない!」

咄嗟に隠し部屋からケイが飛び出し、烈牙と斬り結ぶ。
哲山が気をとられた隙に、毒斎が刀を取り戻し、哲山の足を斬りつける。

闘破「親父!?」

カラス天狗たちがケイを取り押さえる。

ケイ「きゃあっ!?」
毒斎「例の物を頂くまで、娘は預かる!」
ケイ「離してぇ! 闘破ぁ!」
闘破「ケイ!」
ケイ「闘破、助けて! 闘破ぁ!」
カラス天狗「さらばでヤンス〜」

毒斎たちが道場から飛び去る。


手傷を負った哲山を、闘破が手当てする。

闘破「毒斎って、いったい誰なんだ?」
哲山「裏切った奴だ。だが、今は話す時間がない。ケイが心配だ。」

窓ガラスを割って、矢文が撃ち込まれる。

『娘を返してほしければ、ボードを持って宝登山へ来い』

闘破「なんだと!?」

哲山が壁のスイッチを操作する。
天井の隠し扉が開き、闘破たちが見たこともない。真っ赤な忍者装束が現れる。

哲山「今は余裕はない。闘破、これを来て戦え。そして、磁雷矢(ジライヤ)と名乗るのだ」
闘破「磁雷矢……!」

闘破が家を出る。学が追う。

学「1人で行く気じゃないだろうな、兄ちゃん? 弟の俺を、置いてくつもりじゃないだろうな?」
闘破「学、怪我した親父の面倒は誰が見るんだ?」
学「そりゃそうだけど……」
闘破「お前、実の親を見捨てて俺について来るつもりか? そんな親不孝者とは、一生口きかねぇぞ」
学「……」
闘破「わかったな?」

闘破が愛車で出動。

学「兄ちゃん、頼んだぞ!」


宝登山に到着した闘破が、ロープウェイで山の上を目指す。
反対側からのゴンドラが降りて来て、闘破のゴンドラの隣で止まる。中には烈牙が。

烈牙「持って来たか!?」
闘破「これだ! いらないのか!? さぁ、妹が無事な姿を見せてもらおうか」

闘破が布袋を見せる。
烈牙たちのゴンドラの底部が開き、ロープで吊り下げられたケイが現れる。

烈牙「ボードを投げろ!」
闘破「妹を降ろせ。それからだ」
烈牙「言う通りにしないなら、こうだ。いいか!?」

烈牙が、ケイを繋いでいるロープに刀を突きつける。

ケイ「闘破、渡さないで! お父さんが命懸けで守ってきたものよ!」
闘破「あいにくだけど、俺は親父と違って頭の構造が柔軟にできてるんだ。ボードとケイの命を量りにかけりゃ、ケイのほうが重たい。どうしてもと言うんなら、好きにしても構わねぇよ」
烈牙「何ぃ!?」
闘破「そいつとは血が繋がってねぇし、その上、お姫様気取りで炊事、洗濯、掃除、みんな俺に押しつける性格ブスなんだ」

ムッとするケイ。

闘破「ホント、好きにしなよ。だけど、ボードは手に入らないぜ」
烈牙「逃げ切れると思うのかぁ! それぃ!」

闘破のゴンドラの上に、カラス天狗たちが現れる。

烈牙「逆らうとこいつはもちろん、お前まで命を失うことになるのだ!」
闘破「いいのか、粉々にしても!?」

カラス天狗たちがゴンドラ内に乗り込んで、布袋を奪おうとする。
闘破がゴンドラの上へ飛び移り、さらにはロープを伝ってカラス天狗たちと応戦する。

地上に飛び降りた闘破が、カラス天狗に囲まれる。
闘破が布袋を思い切り振り上げ、地面に叩きつける仕草を見せ付ける。

闘破「いいのか!? 妹を降ろさねぇと、本当に……」
烈牙「待てぇ! わかった、娘を降ろす!」
ケイ「闘破、渡しちゃダメ! 闘破!」

ケイを吊り下げたロープが、するすると地面へ降りて行く。
闘破はケイが解放されたことを確かめると、布袋を力任せに遠くへ放り投げる。

カラス天狗「追うでヤンス!」

近くを歩いている占い師・ヘンリー楽珍の頭に、布袋が命中。

楽珍「アタッ! 当たったぁ! 僕の占いはよく当たるんだ…… 当たる方角は、こっちかな?」

布袋を追って走って来たカラス天狗が、楽珍に衝突して転倒する。

楽珍「わぁ、また当たった! なんだぁ…… わぁぁっ!? バケモンだぁ!」

さらにもう1人のカラス天狗が楽珍に激突。

楽珍「わぁ、また当たったぁ!」


闘破がケイを連れて走り去る。

ケイ「さっきは随分、好きなこと言ってくれたわね!」
闘破「お前を助けるためじゃないか。敵味方欺くのも忍術の極意!」
ケイ「おっと、でも騙されてる気分!」
闘破「そ、騙しもテクニック!」
ケイ「フン!」
闘破「行くぞ」


烈牙が、闘破の投げ捨てた布袋を見つけ出す。
それを拾おうとした寸前、鞭が伸びてきて布袋を絡め取る。

布袋を奪ったのは、白馬に乗って現れたイギリスの忍者、フクロウ男爵。

烈牙「おぅ、フクロウ男爵! 我が一族の強力な助っ人!」

だがフクロウ男爵は、布袋を手にしたまま白馬で走り去る。

烈牙「フクロウ男爵、どこへ行く!? フクロウ男爵!」
フクロウ男爵「これは頂いた! It's mine!」
烈牙「何だと!? 我が妖魔一族に手を貸すと言ったのは、デタラメかぁ!?」
フクロウ男爵「世の中そううまく動かないものだ。Good luck !」

烈牙が必死にフクロウ男爵を追うが、なぜかフクロウ男爵が急に馬を止める。

フクロウ男爵「そんなに欲しけりゃ、くれてやろう。I am ニセモノなど no thank you !」

フクロウ男爵がボードを放り投げる。
烈牙が拾い上げると、へのへのもへじが書かれた偽物。

烈牙「こしゃくなマネをしおってぇっ!」


闘破「親父の仇を取ってやる!」

闘破が、哲山に託された忍者装束・ジライヤスーツを一瞬にして身につけ、磁雷矢となる。
烈牙やカラス天狗たちの前に、颯爽と現れる磁雷矢。

烈牙「貴様、誰だ!?」
磁雷矢「磁雷矢!」
烈牙「磁雷矢……?」
カラス天狗「やっつけるでヤンス!」
磁雷矢「行くぞ!」

カラス天狗たちが刀を振るい、襲いかかる。
磁雷矢も刀を抜き、カラス天狗たちを次々に蹴散らす。

刀を構える烈牙。磁雷矢と烈牙の一騎討ち。
2人の刀が、激しく火花を散らす。

烈牙が顔面に装着されている十字手裏剣を、空に放つ。
十字手裏剣が強烈な光を放ち、地面に落雷を撃ち出す。
たちまち煙が立ち込め、地上から火柱が立ち昇る。炎に囲まれて翻弄される磁雷矢。

烈牙「口ほどにもないヤツめ!」

駆けつけたケイが、戦いの様子を目にする。ケイの目には炎は映らない。

ケイ「闘破、何やってるの!? しっかりしなさい、戦うの! 闘破!」
磁雷矢「苦しいぃ……!」

苦しみ続ける磁雷矢に、烈牙が斬りかかる。

ケイ「その火は妖術よ! 闘破、惑わされちゃダメ!」
磁雷矢「そうか、奴の妖術に騙されるところだった! 行くぞ! 許さん!」

磁雷矢が刀を構え、精神を集中する。刀身が眩い光を放つ。

烈牙「うわっ!?」
磁雷矢「磁光真空剣(じこうしんくうけん)!!」

気合とともに、磁雷矢が手裏剣を真っ二つに斬り裂き、さらに烈牙を袈裟懸けに斬りつける。

烈牙「うわぁぁっっ!」

磁雷矢を苦しめていた火炎と煙が消え去る。

磁雷矢「術を破ったぞ!」

傷を押さえつつ、烈牙が退散して行く。

磁雷矢「勝てた!」


戦いの模様を密かに監視していた毒斎。

毒斎「見たこともない技だ! たかが子供と思っていたが…… しかしこんなことで、この毒斎様は引き下がりはせぬ」


初勝利をおさめた磁雷矢のもとへ、白馬に乗ったフクロウ男爵が現れる。
フクロウ男爵のかざす刀を、磁雷矢が刀で受け止める。

磁雷矢「何者だ!?」
フクロウ男爵「そのテクニック、戸隠流忍者か!」

白馬を駆りながらフクロウ男爵の振るう刀が、磁雷矢の刀とぶつかり合う。

フクロウ男爵「なかなかの腕前ダ! I remember you ! You know テツザン・ヤマジ?」
磁雷矢「俺の親父だ!」
フクロウ男爵「Oh, you are his son ! See you again !」

フクロウ男爵が剣を収め、走り去る。


ついに 山地闘破と妖魔一族 そして世界忍者との
戦いの火蓋は切って落とされた
だが 世界忍者の凄まじさを 闘破はまだ知らない


つづく
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