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最強ロボ ダイオージャの第1話


遥か宇宙── イプロン系にある一番大きな星・エドン星は エドン国と呼ばれ
周囲51の星々を平定し 支配下に治めていました
エドン国がイプロン系の要となって600年 今は大きな戦いもなく
イプロン系の平和は曲りなりにも保たれていました

このお話は そのエドン国で2年に一度開かれる国王会見の式典から始まる──


旅立て!
 銀河のミト王子


会見を前にしたエドン国の王城に、星系各国の大使たちが次々に到着する。

「ミケラン星大使グリッド様、ご到着!」「エテルナ星大使ボーグル様、ご到着!」


城内の廊下を、家老のバルジャンが走り回っている。

バルジャン「若! 若ぁ〜っ!」


各国の大使たちが控室で、会見のときを待っている。

「長らくお待たせいたしました。それでは、大広間のほうへどうぞ!」


相変らず廊下を駆け回るバルジャン。侍女たちがいる。

バルジャン「あぁ、お前たち。ミト王子のお姿をお見かけしなかったか!?」
侍女たち「い、いえ……」
バルジャン「もう〜っ! この大事なときに、若は一体どこへ!?」

ラッパの音。

バルジャン「いかん、式が始まる! 若ぁ! 若ぁ〜っ!」


「国王陛下のお出まし──っ!」

大広間に平伏した大使たちの前に、エドン国を治めるトクガー王と、王妃が現れる。
3つ用意された玉座に、王と王妃が就く。3つ目の玉座は無人のまま。

「表を上げぃ! イプロン系52か国、その1か国も欠けることなく、この出典に出席したことを嬉しく思う。それでは、国王陛下にお言葉をおかけすることを許す。お1人ずつ、前へ出られよ」

「エブロン星大使リトーネンでございます。国王陛下の少しも変らぬご健康なご様子、喜びに絶えません」
「次ぃ!」
「ガレシア星大使イワナにございます。わがガレシア星はエドン国王に対し、永久に忠誠を誓います」

バルジャン「あぁ、もうダメだ…… 歴代の王子がこの式典に欠席するなど、かつて一度たりとも……」

会見が続き、ついに最後の大使の番。

大使「ときに国王陛下、王子のお姿が見えませぬが?」
トクガー王「うむ。少々、体の具合が悪くてな」
大使「おぉ、それはいけませぬ! 早速、我が国の優秀な医師を呼び寄せ……」
トクガー王「いやいや、それには及ばぬ。そなたの心遣いだけは、ありがたく受け取ろう」
大使「ははぁ!」
側近「陛下。以上をもちまして、すべてでございます」
トクガー王「そうか。それでは」

「国王陛下、ご退席──!」

会見の場を去ったトクガー王たちのもとへ、バルジャンが駆けて来る。

バルジャン「国王陛下〜っ! お待ちください、お待ちください! 国王陛下!」
トクガー王「バルジャンか」
バルジャン「も、申し訳ございません! 私めがついておりながら、王子が式に欠席という不始末。この責任はすべて、世話役である私めに……」

バルジャンが短剣を抜き、喉に突きつける。

バルジャン「かくなる上はこのバルジャン、潔く責任を! 責任を〜! 責任を〜!」

芝居がかった仕草とは裏腹に、短剣は一向に喉に刺さらない。

王妃「まぁ、クスクス……」
トクガー王「ん、どうした? 遠慮をいたすな」
バルジャン「え!? せ…… 責任を〜! 責任を〜!」
トクガー王「ワッハッハッハ!」
バルジャン「責任を〜! ……え!?」
王妃「ここでは、お話しできません」
バルジャン「あ…… あの、もし、もし!」


自室に戻ったトクガー王たちを、バルジャンが追って来る。

バルジャン「何がおかしいんでございます!? 私が責任を取れぬとでも!?」
トクガー王「毎度のことだ。ムリをするな」
バルジャン「な、なんと痛いところをハッキリと……」
トクガー王「王子を捜しても、ムダじゃ。ここにはおらぬ」
バルジャン「はっ!?」
トクガー王「お前をちょっと、からかってみたのだ」
バルジャン「からかった!? 私めを!?」
トクガー王「まぁ、許せ、許せ。お前に黙っておってすまなかったが、王子は今朝早く、諸国訪問の旅に出た」
バルジャン「な、何ですとぉ〜っ!?」
トクガー王「いやぁ、王子が『すぐに旅立ちたい』と言うのでな」
バルジャン「しかし、お言葉ですが、お忍びの諸国訪問は16歳までに成されば良いこと。若はまだ14歳。危険でございます!」
トクガー王「危険?」
バルジャン「はい! 諸国の中には、上辺は忠誠を誓いながら、時あらばエドン国打倒を狙う国が、ないとも……」
トクガー王「そういうことなら、心配いたすな。腕の立つ者を2名、同行させた」
バルジャン「たった2人だけぇ!? そ、そんな、なぜ、私めをお加えには……」
王妃「バルジャン。諸国訪問は長い旅。王子は、お前の体を心配したのです」
バルジャン「そんなぁ! そんなのウソだ! そらぁない! ズルい、ズルいっ!」

大泣きし始めるバルジャン。

トクガー王「国民にも各国の大使たちにも、王子は病気ということにしてある。まぁ、心配いたすな」
バルジャン「いやぁ、それはない! 若! なぜ私めを置いてけぼりに…… わぁ〜ん!」


一方、エドン星を出発した宇宙船ポウ号。
主人公のエドワード・ミト王子は、お付きのバロン・カークスの前で浮かれまくっている。

カークス「王子!? お……」
ミト王子「やった、やったぁ! とうとう旅に出たぞぉ!」
カークス「あのですねぇ、王子。諸国訪問の旅は、遊びではないのですよ!」
ミト王子「もう好きなときに横になれるんだ! 寝たいときに寝られるんだぁ〜! ヒャッホー!」
カークス「やがて王となられるときのために、諸国のありのままの姿を視察……」
ミト王子「(じい)には可哀そうなことしたけど、一緒に来たら、こうはいかないもんねぇ〜」
カークス「王子ぃ!!」
ミト王子「はいは〜い。これから誰にも監視されない生活が始まるんだぁ〜っ!!」
カークス「じょ、冗談じゃありませんよ、王子!」
ミト王子「気楽にいこうよ、気楽に」
カークス「とんでもありません!! いいですか、王子。コホン! 先ほどから何度も申し上げますように、この諸国訪問の旅というのはですね、王子が将来国王となられたときのためのですね、非常に重要なお勉強でして…… え!?」

熱弁するカークスをよそに、ミト王子は宮廷服を脱ぎ捨て、平民服に着替える。

ミト王子「いいよなぁ、堅苦しくなくってさぁ」
カークス「もう〜っ!」
ミト王子「そう。今までは、自分の部屋さえ自由に歩けない毎日だったものなぁ……」

ミト王子が宮廷生活を回想する。父王とともに観衆を前に、ムリに笑顔を作って挨拶。
城を出れば、後ろに家来たちがゾロゾロ続き、道行く人たちは皆、平伏。
城へ戻れば、猛勉強、武芸の習い事の連続。
食事のときまで、周りに何人もの給仕が取り囲み、憩いどころではない……

ミト王子「もう、これからは自由なんだぁ──っ!!」


宇宙船ポウ号の操縦室。

カークス「拙者はこの先、心配になってきた…… 王子は俺たちと違って、宮廷以外の生活は頭でしか知らんのだからな」

隣ではもう1人のお付き、デューク・スケードがのん気に寝転がっている。

スケード「案ずるより産むが易し……」
カークス「あ? ちょっと、お(ぬし)!?」
スケード「デューク・スケードって、ちゃんとした名前があるんだぜ」
カークス「よ、よくもそんな、のん気なことを言ってられるな! お主、心配じゃないのか!?」
スケード「初めはちょっくら、ね。でももう、旅に出ちまったんだ。ま、あとは精一杯、王子をお守りするさ」
カークス「ほぉ〜、たいしたもんだ!」
スケード「フフン。もう1人、お供をつけると聞かされてはいたが、それが王子の武芸の相手をしているバロン・カークスだったとはね」
カークス「むっ、どういう意味だ、それは!?」
スケード「いやぁ、別に。深い意味は」

カークス (何が『案ずるより産むが易し』だ。王子の教育係だと思って、知ったかぶりしやがって)
スケード (フン。王子は戦いに行くのではないぞ。腕っぷしが強いだけでは、どうにもならぬ)

そこへミト王子が現れ、2人は慌てて姿勢を正す。

2人「お、王子!」
ミト王子「ねぇ、最初の訪問国はどこなんだい?」
スケード「最初の……」
カークス「最初の国はバードランドで、この国は……」
スケード「この国はですね、農業を中心に営んでおリます」
ミト王子「農業国か! いいだろうなぁ。緑がいっぱいあって」
カークス「王子! 念のためにもう一度申し上げておきますが……」
ミト王子「なんだね?」
スケード「は、はい。これからはお忍び旅行。ご身分を隠さねばなりません」
カークス「そうしないと、王子の訪問なさることが事前に知れ……」
スケード「相手は取り繕い、有のままの姿を知ることはできなくなってしまいます!」
ミト王子「わかっておる!」
スケード「そこで取敢えず、これからは王子のことを…… 『坊ちゃん』と呼ばせて頂きます!」
ミト王子「坊ちゃん!?」
スケード「ははぁっ! 無礼は重々、承知のことでございます! 馴れ馴れしくこのようにお呼びすることを、お許しくださいませ!」
ミト王子「いいんだよ、そんなことを」
スケード「はぁ?」
ミト王子「『坊ちゃん』なんて呼ばれたの初めてだから、ちょっとビックリしたんだよ。それ、結構いいんじゃない?」
スケード「ははっ! それで私たち2人は王子の、いや、坊ちゃんの家庭教師ということにさせて頂きます」
カークス「なるほど! 2人の家庭教師が、大金持ちの坊ちゃんを社会見学に連れて歩いている、というわけか」
スケード「そうだ」
ミト王子「ようし! こりゃあいいぞぉ〜っ!」
スケード「良かった……」
ミト王子「それじゃね、僕はお前たちのことを、こう呼ぶことにしよう。スケさん、カクさん」
スケード「スケさん!?」
カークス「カクさん!?」
スケード「……カクさん」
カークス「スケさん……」
ミト王子「『坊ちゃん』か…… いいなぁ、生れ変ったみたいだ!」


宇宙を行くポウ号。ミト王子は広間でテーブルに足を投げ出し、ふんぞり返っている。

ミト王子「いいなぁ、この気分! あのお城では絶対に味わえないよなぁ〜! こんな格好見たら、バルジャンのヤツ……」

(なんですか、若! その恰好は! いいですか、若! 若はいやしくも、このイプロン系52か国を治めるエドン国トクガー王家のご長男ですぞ! そしてやがては王位を継いで、国王となられるご身分! もっと毅然たる態度で……)

ミト王子「でも、いいんだ! 今日から僕は王子じゃない! 誰とだって自由にしゃべれるんだ!」

そこへ、操縦室のスケードから通信。

スケード「王子。間もなく、バードランドに到着いたします」
ミト王子「わかった、すぐに参る! ……ん? そうだ、そうなんだよ! 今日からはこんなに、畏まらなくていいんだよね。ヤッホー! それ行くよぉ!」


操縦室に戻ったミト王子。前方に目的地のバードランド星が見える。

スケード「ごらんください。あれがバードランド星です」
ミト王子「モニターで見ても綺麗だな。女の子も住んでんのかな?」
スケード「は?」
ミト王子「い、いや、何でもないの」
カークス「おっ!? 何だ、あれは!?」

数体のロボットが、こちらへ向かって来る。

ミト王子「我々の訪問を知って早速、歓迎に来たんだ!」
スケード「いえ、そんなはずは絶対に……」

よく見ると、先頭を飛ぶロボットが、後方の3体のロボットからの攻撃を浴びている。
追っ手側のロボットの放つビームが、ポウ号にまで迫る。

ミト王子「あぁっ!?」
カークス「スケ殿、かわせ!」

とっさにスケードの操縦で、攻撃を回避。

ミト王子「どういうことなんだ!?」
スケード「わかりません」
カークス「まさか、戦争ではあるまい!?」
スケード「だとしたら、追われているほうも応戦するはずだ!」
ミト王子「許せん! 抵抗しない相手に、しかも3体で襲いかかるとは卑怯だ! 助けてやる!」
カークス「お、王子!? お待ちください! 行ってはなりません!」
ミト王子「なぜだ!?」
カークス「ここで王子がロボットに乗って出て行けば、せっかく隠している身分が……」
ミト王子「そんなこと、わかっている!」

ミト王子が操縦席を立ち、格納庫へ向かう。

カークス「あぁっ、行ってしまわれた! スケさん! いや、スケ殿!」
スケード「早く王子をお守りしろ!」
カークス「わ、わかった!」

ミト王子が専用ロボット・エースレッダーに乗り込み、そのロボットたちのもとへ飛来。

敵操縦士「あっ、あれは何だ!?」
ミト王子「ただちに攻撃をやめろ! 無抵抗の者を襲うなら、僕が相手だ!」
敵操縦士「何だとぉ!? どこの国の者かは知らぬが、ジャマだてすると容赦はせぬぞぉ!」

追われていたロボットがさらにビームを浴び、煙を吹き出す。

ミト王子「あっ、いけない!」

そのロボットを助けようとするエースレッダーに、敵ロボットらのビームが降り注ぐ。
そこへ、カークスの乗る専用ロボット・コバルターが駆けつける。

カークス「無礼者! 王子に向かって、何ということを!?」

コバルターが身を挺してエースレッダーを庇い、次々に敵機のビームを浴びる。

カークス「こ、このぉ!」

コバルターがパワー戦法で、敵ロボットの1機を撃破。

ミト王子「カクさん、こっちを助けるのが先だ! 手を貸してくれ!」
カークス「は、はい!」

エースレッダーらが、追われていたロボットを助けつつ、退却。
しかし敵ロボットの残る2体が執拗に追い、ビームを連射する。

どこからかビームが閃き、敵ロボットの1機が撃破される。

敵操縦士「おぉっ、これは!?」

1機の宇宙戦闘機が飛来。敵ロボットとの交戦となる。
戦闘機は宇宙空間を自在に飛びまわり、敵ビームをかわし、ビームやミサイルを浴びせる。
その隙にエースレッダーらは、ポウ号へ帰還。

敵操縦士「く、くそぉ! お、おのれ、何者だ!? 覚えていろよ!」

敵ロボットが飛び去り、戦闘機はポウ号のほうへと向かう。


撃墜されたほうのロボットの操縦者は、意外にもまだ若い少女。気を失っている。
ポウ号機内に運ばれた少女を、スケードたちがベッドに寝かせていると、ミト王子が濡れタオルを運んで来る。

カークス「お、王子!? そのようなことなら、私におっしゃってくだされば……」
ミト王子「構わぬ。驚いたなぁ。こんな女の子が1人で、ロボットに乗っていたとは」
スケード「どう見ても、ロボットを持てる身分の者とは思えませんね。これには何か、わけが……」

突如、警報音が鳴り響く。

スケード「いかん! 何か非常事態が起きた! カクさん、急いで操縦室へ!」
カークス「わかった!」

だが次第に、警報がやむ。
彼らの背後で壁面のスイッチを操作している、女忍者のフローラ・シノブ。

シノブ「発進口を開けたままでは、危険ですわ。いつ、こういう事態にならないとも限りません」
カークス「えぇっ、開けっ放し!?」
スケード「そ、そういうお前は!?」
シノブ「それに、自動操縦への切替も不完全です」
スケード「な、何……!?」

シノブがミト王子の前に跪く。

シノブ「お騒がせして、申し訳ございませんでした」
ミト王子「君は?」
シノブ「フローラ・シノブと申します」
ミト王子「……どこかで、顔を見た覚えがある」
シノブ「お城では、お妃様の護衛を務めておりました」
ミト王子「あ、それでか!」
シノブ「このたび、お妃様より王子の旅先でのご身辺をお守りするように仰せつかって、やって参りました」
スケード「そうか! 顔は知らなかったが、噂に聞いたことはある。お妃の護衛の中で、歳は若いが腕の立つ、メカにも滅法強い者がおるというのをな」
シノブ「それはまことに光栄です、デューク・スケード殿。これから先は、旅の足となる乗り物の管理、連絡役は、すべて私がお引き受けいたします」

ミト王子がシノブの美貌に見とれる。

シノブ「……何か?」
ミト王子「い、いやぁ、何でもない。よろしくな」
シノブ「はっ、こちらこそ!」
スケード「まぁ、そう堅くなるな。王子は今日から、違う世界のお方になられたのだ」
シノブ「は?」
カークス「うむ。一緒にいれば、すぐにわかるよ」
スケード「すると、先ほどの戦闘はお主が?」
シノブ「はい!」
スケード「いやぁ、女とは思えぬ見事な腕前だ」

あの少女が意識を取り戻し、ベッドから飛び起きる。

少女「……こ、ここはどこ!?」
ミト王子「もう、心配はいらないよ」
少女「だ、誰よ、あんた!?」
カークス「無礼者! 誰に向かって口をきいていると思う!?」

ミト王子がカークスを制止する。

カークス「あぁ、そうでした……」
スケード「私たちは、このお坊ちゃまを社会見学の旅にお連れして、各国を回っているものだ。決して怪しい者ではない」
少女「フン! 社会見学のお坊ちゃんが、なんでロボットなんか持ってんのさ!? お侍でもないクセに、いくら出して身分を買ったんだい!?」
一同「何だとぉ!?」
ミト王子「もう一度言ってくれないか?」
少女「いくらでロボットを持てる身分を買ったのか』って聞いてんだよ!」
ミト王子「身分が、金で買えるというのか!?」
少女「とぼけんじゃないよ! でなかったら、お侍でもないあんたたちが、なんでロボットなんか持ってんのさ!?」
カークス「そ、それはだな……」
少女「お金さえあれば、身分だって何だって買えるんだ! そんなの、常識じゃないか!」
ミト王子「常識……!?」
少女「何、驚いてんだい!? あんたの親父だって、そうやって身分を勝手に決まってんだよ!」
カークス「き、貴様、何ということを!?」

思わずカークスが剣を抜く。

少女「斬れるもんなら斬ってみろ!」
スケード「よせ、カークス! いや、カクさん。やめろ」
少女「フン! 助けてくれたことは、礼を言うよ。でもキライなんだ、あたい! 領主様や、あんたたちみたいなお金持ちは!」
ミト王子「教えてくれ。なぜ嫌うのだ?」

次第に少女の目に、涙が浮かぶ。

少女「あたいたちを、苦しめてばっかりいるからだぁ! バカヤロォ──っ!! あたいたちが何、悪いことしたってんだよぉ! みんなで平和に、畑耕してたのにぃ!」
一同「……」
少女「あたい、エドン国の王様に訴えに行くとこだったんだ!」
スケード「訴えに!? お前、国王陛下に直訴に行くつもりだったのか!?」
カークス「お前、直訴がどんな罪になるか知ってるのか!? 挙句にロボットまで盗んだとなれば、間違いなく死刑だぞ!」
少女「他にどうしろってのさ!?」
ミト王子「領主がいるだろう? なぜ、自分たちの領主に訴え出ない?」
少女「それができるくらいなら、誰がわざわざ危険を冒してまで、直訴になんか行くもんかぁ! あたいたちをいじめてるのは…… あたいたちをいじめてるのは、その領主なんだぁ!」

泣き崩れる少女に、一同は顔を見合せる。

少女「あたいの父ちゃんは、領主に殺されたんだ……」
ミト王子「君の国は、どこだい?」
少女「バードランド星……」
ミト王子「バードランドか…… 直訴になんか、行かなくて良かった」
少女「え?」
ミト王子「お前を死刑にはさせたくない」
少女「同情なんかまっぴらだよ! あたいたちがどんな目に遭ってるか、知りもしないで!」
ミト王子「僕たちはちょうど、君の星へ行くところだ。君の村へ案内してくれないか?」
少女「村へ? 来て、どうすんのさ!?」
カークス「王子!?」
スケード「おっと!」

慌ててカークスの口を塞ぐスケード。

スケード「坊ちゃん、急に予定を変更するのは……」
ミト王子「この子の村を見たいのだ。今、この子の言ったことを、自分の目で確かめたいんだ」
少女「……」
ミト王子「シノブさん、バードランドに急いでくれないか?」
シノブ「はい!」


旅は道連れ 世は情け 巡る星々 数々あれど
王子の見る星 どんな星 聞いて極楽 見て地獄

行く手に光る バードランド星──


(続く)
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