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時空警察ヴェッカーD-02の第1回 (後編)


PHASE−1.5


D-02本部。新任のカナを含め、メンバー一同が集合している。

サキ「カナ・ゴドー。着任早々、ご苦労様でした。しかし、犯罪者を勝手にディメンションプリズンに送ったのは、命令違反よ」
メイ「お陰で私たち、所轄にはもう手が出せない」
カナ「私は、メイを助けるために……」
メイ「私は助けてくれなんて頼んでない。もう少しで真犯人の手掛かりを……」
カナ「真犯人ですって!? あいつは苦し紛れにそう言っただけに決まってる!」
メイ「だからそれを調べる必要が……」
サキ「はい、そこまで! 確かに、犯人の行動には腑に落ちない点がありました。何故女性ばかりを狙っていたのか、女性から奪い取った血液をどこへ転送していたのか」
メイ「だからそれを調査すべきだと……」
サキ「テツ・カシワバがプリズンに入った以上、処遇は検察に任せるしかないの。わかってるでしょう?」
メイ「……」

サキ「エリー、その後の進捗状況を報告して」
エリー「テツ・カシワバのローレンツ・ホールは撤去しました」
サキ「グルオンの検出は?」
エリー「ありません」
サキ「わかった……念のため、追跡調査だけはやっといて。この件は以後、エリーの担当とします」
エリー「はい」
メイ「チーフ!?」
サキ「新たな事実でも出ない限り、この事件に、これ以上人員を裂く余裕はないわ。仲良くやれとは言わない。でも、任務は任務。当分、2人でコンビを組んでもらいます」
カナ「……はい」
メイ「……」

サキ「カナ、改めて紹介するわ。私がここのチーフ、日向サキ。普段はテレビ局のレポーターをやってる。色々と情報が入るから」

チーフ・日向サキ、時空刑事サキである。

続いて村田アミこと、時空刑事アム。

サキ「アムは素粒子物理学の第一人者。政界の動向を探るために、この時代の重鎮・太田黒家に潜入してる」

続くは望見ハルカこと、時空刑事ハル。

サキ「ハルは私の補佐役。警察病院の看護婦よ」

アンドロイドeree-2210-e、時空刑事エリー。

サキ「エリーはメカニカル・オペレーター。この本部に常駐してる」

木場健人、時空捜査官ケント。

サキ「ケントは情報収集の専門家。但し、実戦は弱いから、あんまりあてにしないで」

榊 明、時空刑事メイ。

サキ「で……これが、榊 明。メイはこの時代に詳しいから、わからないことは聞くといいわ」

最後に後藤カナ、時空刑事カナが自己紹介する。

カナ「カナ・ゴドーです。趣味はリリアン編み。特技は、誰とでも仲良くなることです。皆さん、よろしく!」

満面笑顔のカナに一同が頭を下げる中、メイは無視して立ち去る。

カナ「待ってよ! パトロールは2人で行く決まりでしょう?」


警視庁。
連続女性変死体遺棄事件捜査本部が設置されている。

ケント「田中さん。その後、新たなミイラ化事件の報告はありません」
田中「そうか。しかし犯人が捕まるまで、油断はするな。いいな?」
ケント「はい。……田中さん、ひとついいですか?」
田中「ん?」
ケント「それって……魚のミイラ?」

田中が食べていた食事のおかずは、アジの干物だった……


教会。

メイが祈りを捧げている。

あのとき女性が襲われた際、甦った忌まわしい記憶。
「お母さん、お母さぁん」と、幼い自分が母の亡骸に泣きついている……
亡き母が指にはめていた指輪は、今ではメイの指にある。

そんなカナを見つめる、神父とカナ。

カナ「メイは……よくここへ?」
神父「えぇ」
カナ「何をお祈りしてるんだろ? はは、『頭がちょっとは良くなりますように』ってか?」
神父「街で悲しい事件が起きたり、誰かが悲惨な目に遭ったりすると、彼女はここに来ます……彼女には、人の痛みがわかるのです……優しい子です」
カナ「ごめんなさい……茶化したりして」
神父「いぃえ……」

そこへメイの知り合いらしき、小学生ほどの少年・達三がやって来る。

達三「お姉ちゃぁん! お姉ちゃん、遊んで」
メイ「いいよぉ。何して遊ぼっか?」
達三「野球!」
メイ「野球かぁ……じゃあねぇお姉ちゃんがピッチャーやるから、達三くんはキャッチャーやってよ」
達三「やったぁ!」

達三をあやすメイの表情は、優しいお姉さんそのもの。メイの笑顔を初めて見て、思わずカナの顔にも微笑がこぼれる。


後日の朝。

団地のゴミ捨て場に、主婦がゴミを捨てに来る。
ゴミ袋の中に混じって、女性のミイラ化した死体が──


警視庁。

「十年前の吸血鬼騒動再燃か?」との見出しでミイラ事件を報じた新聞を、田中が机に叩きつける。

田中「お前まさか、こんな記事、真に受けてるわけじゃあないだろうなぁ!?」
ケント「はぁ?」
田中「いいか!? 吸血鬼なんて、絶対いないんだ!!」
ケント「……」
田中「……すまん、興奮してしまった」
ケント「なんか、わけありですね……」
田中「実は、十年前の事件……あれ、俺の担当だったんだ。俺はまだ、ほんの駆け出しの頃で……今でも、俺の耳に焼き付いてるよ。あの女の子の泣く声が……」

田中が十年前の事件を思い出す。
ミイラ化した女性、母親の亡骸にすがり付いて「お母さん、お母さん」と泣きつく少女。
その光景は奇しくも、メイの忌まわしい記憶と同じ光景だった──

田中「あんな涙は、もう二度と見たくないよ……犯人ホシを挙げなきゃ、あの女の子には申し訳が立たないと、今でもそう思ってる」
ケント「その女の子は、今どこに?」
田中「それが……不思議なことに、消えちまったんだ」
ケント「消えた!?」
田中「あぁ。姿もそうなんだが、戸籍の上からも綺麗さっぱりとな。まるで元から、この世界にいなかったみたいにな」
ケント「それ……どういうことですか!?」
田中「わからん……だからこそ気になるんだよ。さぁ、聞き込みに行くぞ!」
ケント「(小声で独り言) でも、今の警察の力じゃ……この事件、解決できないような気がしないでもない……」
田中「つべこべ言うなぁ! とにかく、できることを一つずつやるんだ!」
ケント「痛痛痛! ちょっと、耳引っ張んないで下さい、田中さん!」


昼下がり、教会の中庭。

メイ「行くよ!」

メイと達三が野球で遊んでいる。
そこへ神父が、中庭のテーブルへ紅茶を運んでくる。

神父「さぁ、お茶が入りましたよ。どうぞ」
メイ「休憩しよっか!」

カナも交え、4人でお茶を飲む。
カナとメイのつけているクロノクリスタルに、神父が目をとめる。

神父「お揃いなんですね?」
カナ「あ……これ? 私たち、仲良しだし、ね?」
メイ「……頂きまぁす」


D-02本部。

ハル「今回の被害者は、長沢満子、22歳。数日前から姿が見えず、先日、近所のゴミ捨て場で」
カナ「ミイラになって、死んでいた……」
サキ「メイ……あなたの言うことを聞いておくべきでした」
メイ「いいんです、チーフ。でも、早く犯人を!」
サキ「その通りね。犯人が同じ手口を使ってるとすれば、どこかにローレンツ・ホールが残ってるかも」
ハル「他にも犠牲者がいるかもしれないわね」
アム「でもぉ、そうやって探せばいいのかにゃ? だってぇ、隣の人がミイラになったって誰も気付かないかもしれないよぉ」
サキ「今のところ、犠牲者は若い女性に限られてる。アム、ハル、彼女たちに何か共通点がないか、もう一度調べてみて」

ケント「チーフ、ちょっとこっち見てください」

ケントに呼ばれ、サキたちがエリーの操作する画面を目にする。
画面には地図が映り、ところどころに×印が浮かぶ。

ケント「この×印の所が、今まで9人の被害者が出た場所なんですが」

×印を結ぶと、被害場所は綺麗にX字を成している。

ケント「偶然でしょうか……?」
サキ「出来過ぎだわ……罠かもしれない」
ケント「それにしても、特定エリア内で事件が起きているのは間違いないです。ローレンツ・ホールを通せるエリアに、限界があるんじゃないでしょうか」
メイ「その場所……私に捜査させて下さい」
サキ「危険よ。わかってるの?」
メイ「でも、今のところ他に手掛かりはありません。これ以上、被害者を出さないためにも、何か手を打つべきです」
カナ「私も行きます!」
メイ「私1人でいい」
カナ「行かせて下さい。メイのコンビは私だって、チーフが決めたんじゃないですか?」
サキ「……わかった。カナ、メイと一緒に行ってちょうだい」
カナ「はい」
サキ「捜査するのは、この場所よ」

被害場所を結ぶX字のうち、唯一被害が出ていない箇所をサキが示す。

サキ「正直言って、何かつかめるという確証はないけど……」
カナ「でも、やってみないと何も始まらないと思います」
サキ「……一つだけ約束して。もし、犯人の尻尾をつかんだとしても、決して深追いはしないこと。私たちがバックアップするから」


どこかの真っ白い一室。

女性が眠っており、赤薔薇が捧げられている。
1人の男が寄り添っている。顔は見えない。

「心配はいりませんからね……君の命の糧、私がきっと探してきます……できれば、自分の手を汚したくなかった……君のためにも……でも、仕方がありません……」

男が、あのゴーグルを顔につける。
その視線の先には、メイが口をつけていたティーカップ。ゴーグルの視界の中、カップの縁に反応が表示される。

「まさか、こんな近くにいたなんて……!」


D-02本部。

アム「魚座、射手座、OL、ホステス、Bカップ……Fカップぅ!?」
ハル「どうしたの?」
アム「アムちゃんね、被害者の共通点を探してたにゃん」
ハル「……血液型は? 犯人が血に拘っていたのには、何か理由があるんじゃないの?」
アム「A型が4人、Bが1人、ABとOが2人ずつ……うーん、見事にバラバラにゃん」
ハル「ABO型じゃなくて、RHインプローヴドでは?」
アム「何にゃ?」
ハル「ほら、2100年代に、DNAのクローニングが画期的に進んだ時代があったじゃない? そのとき、MNや、RH式の分類法を発展させた……」
アム「あぁ、思い出したぁ! 親子とか、遺伝の法則を飛び越えたぁ、完璧な輸血適合を判定するってやつだぁ! でもあれ……誰も使ってないにゃ?」
ハル「2155年に、女性固有のXローカスってタイプが、絶滅したのよね?」
アム「うん。一説によると、今の2000年頃から、人類の血液型って大きく変化したらしいよ。核汚染とかぁ、エプライズ、それに狂牛病! だからぁ、弱いタイプのXローカスは絶滅しちゃったんだって。もういなくなった人間の血液型なんて、分類したって意味ないでしょ、ハルちゃん?」
ハル「あぁ! 鈍いな、もう! この時代には、そのタイプがまだいるかもしれないじゃない!」
アム「あ! ねぇ、被害者の髪でも皮膚でもいいや、何か手に入らない?」
ハル「待ってて、何とかするから」


警察病院。

看護婦姿でハルが潜入。遺体安置所へ入り込むと、遺体の一部を採取する。


D-02本部。

エリー「9人の被害者の血液型は、いずれもXローカスと一致しました。──10人目の適合者がいました」

画面に映ったのは、何とメイ。

エリー「榊 明。Xローカスに一致しました」
サキ「……どういうこと!?」
アム「なんでぇ、アムちゃんたちの時代にない血液型を、メイが持ってるの!?」
ケント「そう言えば……」

同僚の田中刑事の言葉が、ケントの胸をよぎる。

(田中『それが……不思議なことに、消えちまったんだ。姿もそうなんだが、戸籍の上からも綺麗さっぱりとな。まるで元から、この世界にいなかったみたいにな』)

ケント「あの、まさかとは思うんですが……メイは、十年前の事件と関係があるのでは?」
サキ「どういうこと!? 詳しく説明して!」
ケント「同僚の田中刑事に聞いた話なんですが……」


捜査を命じられた場所を、カナとメイが訪れる。

カナ「この辺よね……何か感じる?」


D-02本部。

サキ「そう……そんな事件が……」
アム「そのぉ、消えた少女がぁ……メイなの?」
ケント「本部に問合せてみたらどうでしょうか?」
サキ「……どうせ、とぼけるに決まってる。それよりも、今はメイの掩護が先よ。犯人はきっと、メイの血を狙って来る」


とある路地裏に入るメイ。
何かを見つけ、駆け出す。

カナ「どうしたの?」

その先には、あの少年・達三が、泣きじゃくりながら手で目を拭っている。

達三「お姉ちゃぁん……」

達三に駆け寄るメイ。

メイ「何でこんなところに!?」
達三「わかんない……知らない内にここに来たの……」
メイ「大丈夫よ。家までちゃんと送ってあげるから。ね?」

そのとき、カナのクロノクリスタルに反応が。

カナ「メイ、気をつけて!」

達三が、目を拭っていた手をのける。
その瞳の中に、ローレンツ・ホールが。
咄嗟にメイの腕をつかむカナ。
2人とも、達三の瞳の中へ吸い込まれてゆく……


気がつくと、2人がいるのは、メイが頻繁に訪れていたあの教会。

玄関から、神父が現れる。

神父「来てくれると思っていました……あの場所に、意味などなかったのですよ。でも、あなた方は何とか意味を見出そうとする……そう思って、罠を張りました」

神父があのゴーグルを顔に付ける。

メイ「神父様……? どうして!?」
カナ「あなたが犯人だったのね」
神父「装備も持たずに来たのですか? なぶり殺しは趣味じゃありませんが、これも主の思し召しでしょう……」

カナがクロノクリスタルを手に取る。

カナ「ヴェックフォームを!」
神父「無駄です……この教会は、アンチパーティクルでシールドを張っています。DIXの装備はおろか、通信さえ機能しませんよ」

神父の手首から、長い2本の爪が伸びる。

神父「主は仰った……『来るべき時に備えメソン空間を形成せよ、時空刑事を無力化せよ』」
カナ「本当にそんなことを言ったとしたら……それは神じゃない! 目を覚ましなさい!」


カナとメイが捜査していた場所に、ハルとアムが駆けつける。
達三が倒れている。

アム「ね、大丈夫、大丈夫ぅ!?」

達三が、きょとんとした表情で目を覚ます。

達三「メイ姉ちゃんが……」
ハル「メイ? メイは、どこに行ったの!?」
達三「わかんない……」
アム「君は、どうしてここに? 誰かに言われて来たの?」
達三「神父様……お姉ちゃんに逢えるって言われた」


教会。

神父の凶刃から逃れつつ、カナたちが教会内を逃げ続ける。
とある一室へ逃げ込むと──そこは、あの女性が眠っている真っ白い部屋。
神父も2人を追って現れる。

神父「神は時にして不公平なことをなさいます……私の妻にだって生きる権利はある……そう思いませんか? 私の妻は1万人に1人という特殊な血液型を持って産まれてきた。しかし、その血は未来の世界では途絶えてしまった……いぃや、排除されたのです……」
カナ「だから、この時代に来て……」
神父「そう……女たちを殺しました。我が最愛の妻……その血が絶えることのないように」
メイ「……ふざけないでよ! 自分のためだったら、罪のない他の人を殺してもいいとでも思ってるの!?」
神父「いいとは思っていません! しかし、弱い者が滅びていいとも思わない……誰にだって、生きる権利はあるのです」

咄嗟にカナが神父を突き飛ばし、部屋を逃げ去る。
しかし瞬時に、神父がカナたちの目の前に。

神父「か弱き存在を守るために私はほんの少し力を使っただけだ……その何が悪い!?」

カナが果敢に神父に挑むが、神父は難なく跳ね飛ばす。
そして神父の凶刃がメイに迫る……。

「待って!」

そこにはヴェックフォームに身を包んだサキ、ハル、アムの3人が。

サキ「これで終わりよ、吸血鬼さん!」
神父「それはどうかな……?」

サキが得意の格闘技で神父に挑む。

アム「気をつけて、チーフ! ヴェックフォームが正常作動してないにゃ!」

ハルとアムが2人がかりで神父を押さえようとするが、神父は難なく振り解く。
サキが渾身の力で神父を叩きのめす。

カナ「早く、ディメンションプリズンを!」
アム「駄目ですぅ! ヒッグス粒子は対消滅しました! この空間ではぁ、ディメンションプリズンは使えません!」


神父が別室から、妻を抱いて運んでくる。
突如、教会が揺れ始める。

神父「私たちは別の時代で生きることにしましょう……私たちの存在することが許される、別の時代で……」
ハル「この教会全体が、巨大なクロノライナーよ!」
アム「このままでは巻き込まれる! 逃げなきゃあ!」


カナたち一同が教会から逃げ出す。
教会が光に包まれ、一瞬にして消え去る。

教会の消え去った虚空を、カナたちが呆然と見つめる……


D-02本部。

ハル「事後処理は、大体終わったわよ。関係者の記憶もリセットしておいたから」
サキ「……」
ハル「どうしたの?」
サキ「私には……生きてるように見えなかった……」
ハル「それ……神父の奥さんのこと?」
サキ「奴も、わかってたんじゃないかな……それでも愛する人のために、血を与え続けて」
ハル「究極の愛ね……でも……哀しい愛だわ」


カナたちの学校。

授業中にもかかわらず、メイが廊下で窓の外を見つめている。
そこへ通りかかるカナ。

カナ「またさぼってんの?」
メイ「……私の血液型、未来では絶滅したんだって……でも私は、ここに生きてる」
カナ「……そうね。生きてるね。かなり強い自己主張してるね」
メイ「だから私は時空刑事になったの。自分を守るため、そして、自分が一体何なのか知るために……でも私は、どこに行けばいいのかわからない……どの時代だったら、自分の居場所があるのか……」
カナ「時空刑事って、孤独だよね……派遣された時代の人間とは交流できないし、恋もできない」
メイ「……」
カナ「でも、だからこそ、仲間が大切に想える……!」

照れたようにメイが微笑む。
ようやくメイがカナに微笑みかけてくれた……。

カナ「もう、お互いナウなヤングなんだからさ、青春をフィーバーしなくちゃ!」
メイ「……?」
カナ「使い方間違ってた……? この時代の、流行語」
メイ「それ、アカデミーで習ったの? 今、誰も使わないよ、そんな言葉」
カナ「嘘っ!? 私、クラスで言いまくっちゃったよ? だっからみんな変な顔してたんだぁ! がっちょーん!」


カナとメイが下校する。

あの教会のあった場所を通りかかる。
教会があったはずの場所は空き地となり、立入禁止の札が貼られている。

そのとき……
カナたちの前方から歩いてくる、達三。
しばし達三が、目の前に空き地に目をやる。

思わず声をかけようとするメイを、カナが制する。
時空犯罪に巻き込まれた人間たちから、事件の記憶は一切消去され、達三にももうメイの記憶はないのだ。


達三がメイを一瞥すらすることなく、彼女の横を通り過ぎ、立ち去って行く。


寂しげに達三の後姿を見送るメイを、夕陽が照らしている──


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