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新造人間キャシャーンの第1話


たったひとつの命を捨てて

生まれ変わった不死身の体

鉄の悪魔を叩いて砕く

キャシャーンがやらねば誰がやる!!


不死身の挑戦者


ロボット学者・東光太郎博士の研究所の研究室。

数基のカプセルの中、人間に似せられて造られたアンドロイドたちが眠っている。


世界的ロボット工学の権威 東光太郎博士の研究所は
荒海と断崖に守られた この古い城の中にあった

引き続く公害で汚れきった地球に
緑の土地と 澄み切った海を取り戻すことは
誰もが願うことである

この夢を実現させるために 東博士が精魂込めて作ったのが
この 公害処理用アンドロイドである

アンドロイドとは 自分の意思を持って動くことのできる
人間に似た ロボットのことで
中でもアンドロイドBK1号は 最も人間に近く
優秀な電子頭脳と 強力な力を持ち
他のロボットを指揮して 働くことができるのである


空に暗雲が立ち込め、突然の落雷。
その衝撃で研究室の機器に電流が迸り、アンドロイドBK1号に異常な電流が流れ込む。
BK1号の顔の形相が奇怪に歪み、ひとりでに起動。自らカプセルを破壊して動き出す……。


東博士の1人息子・鉄也の寝室。
ベッドで寝ていた鉄也の傍らで、愛犬ラッキーが物音に目を覚まし、部屋を駆け出す。
鉄也も気づき、ラッキーを追って玄関へ。

玄関には父・東博士と、母・みどりも来ている。

鉄也「お父さん!」
みどり「あなた、物音は研究室の方です」
東博士「白鳥ロボットが雷に驚いたのだろう」

ラッキーが盛んに、玄関ドアに爪を立てている。

鉄也「ラッキー、どうした?」

不気味な足音。

鉄也「お父さん、ほら、誰かがこっちへ近づいてきます」
東博士「この城には、わしたちの他には誰もおらん筈だが……?」

足音が次第に玄関に迫る。
そしてドアをぶち破り、アンドロイドBK1号が現れる。

東博士「アンドロイドだ……!?」
鉄也「どうしてアンドロイドがひとりでに動いて……? 何かの間違いで電源が入ったに違いない」
みどり「恐いわ……」
鉄也「お母さん、大丈夫。アンドロイドは人間の命令に服従し、危害を加えないように造ってあるんだよ。恐くなんかないよ」
みどり「それじゃ早く研究室へ戻して下さい。私、気味が悪くて……」
東博士「アンドロイドBK1号、研究室へ戻りなさい」

命令を受けたにも関わらず、BK1号は動かない。

東博士「さぁ、戻りなさい!」
BK1号「俺ハ人間ノ命令ニハ従ワナイ」
東博士「何だと!?」
BK1号「オ前タチ人間ハ機械ヲ造リ出シテハ使ッテキタ・ダガ今度ハ違ウゾ・今度ハ俺タチガオ前タチヲ使ッテヤル・人間共ヲ支配シテヤルノダ」
東博士「……く、狂っている!」

BK1号が両腕を振り上げつつ、鉄也たちに迫る。

みどり「あなた……」
鉄也「お父さん!」
東博士「狂っている……何かがあったんだ!」

ラッキーがBK1号に飛び掛るが、BK1号は難なくラッキーを投げ飛ばす。

BK1号「オ前ハ俺ヲ強ク造ッタ・コノ力デ人間共ヲ皆殺シニシテヤル」
東博士「逃げろ!」

鉄也がBK1号に物を投げつけるが、BK1号はそれを意にも介さず鉄也に迫る。

東博士「逃げるんだ! 鉄也、早く!」

車に乗り込んでいる東博士、みどり。
鉄也も車に駆け込む。

車が発車し、ラッキーも後を追う。

BK1号「ドコヘ逃ゲテモ無駄ダ・何モカモ粉々ニシテヤル」


東博士の急報で
国防軍・機動隊が出動した


機動隊の車両群が研究所に急行。BK1号目掛けて砲撃や火炎放射を加える。
だがBK1号がその直撃をかけても意に介さず、高笑いを続けている。

隊員たち「な、何という奴だ!?」「こ、こっちへ向かって来ます!」「撃てぇ──っ!!」

BK1号が口からレーザーを撃ち出し、隊員の1人を射殺する。
たまらず逃走する隊員たち。BK1号はなおも攻撃を加え、隊員たちを殺してゆく。

隊員「た、助けてくれぇ……!」
BK1号「フハハハハ! 人間共ヨ・ヨォク見ロ・コレガオ前タチの未来ノ姿ダ」
隊員たち「何と恐ろしい奴だ、手の出しようがないぞ」
BK1号「東博士ニ伝エロ・必ズ探シ出シテヤルトナ」

研究所の池のほとりにいた白鳥ロボット・スワニーを、BK1号が拾い上げる。

BK1号「恐ガルナ・オ前ハ俺タチノ仲間ダ・ペットニシテ可愛ガッテヤル・フフフ……」


ただちに 緊急会議が開かれたが
何ら対抗する方法も発見できなかった


議員たち「我々に奉仕するために造られたアンドロイドが歯向かうとは何事だ!」「そうだそうだ、その通りだ!」


一方 BK1号は
3体のアンドロイドに命を与え
自らをブライキング・ボスと名乗り
アンドロ軍団を組織して
人類征服に立ち上がった


議員たち「公害よりも、アンドロイドの方が人間を滅ぼすかもしれんぞ」「人類は滅亡だ……」「造った者は責任を取れ!」「そうだ、人類の敵だ!」


アンドロ軍団は
東博士の研究所だった古城を本部にして
着々と 戦闘準備を整えていた

だが 政府には何の対策もなかった
相手は 不死身のアンドロイドなのだ


アンドロ軍団のロボットたちが街を襲撃し、人々が逃げ惑う。

人々「わぁっ!」「助けてくれぇ!」「逃げろぉ!」

無人同然となった街中を、ロボットの大群が我が物顔で闊歩する。
人々は家々の窓から、恐る恐るその様子を見ている。


世間の風は 東博士の一家に冷たかった

博士達は 国立科学研究所に
ひっそりと閉じこもっていた


東博士は、自らが生み出したアンドロイドが、人間を苦しめていることに苦悩する……

博士の書斎を訪ねる鉄也。

鉄也「お父さん」
東博士「おぉ、鉄也か」
鉄也「お父さんは疲れている。休んだ方がいいよ」
東博士「……わしは人間の幸福を願ってあのアンドロイドを造った。だが結果は逆になった。あいつの力は強い。人間の力で倒すことは不可能だろう」
鉄也「お父さんの責任じゃないよ」
東博士「いや、造ったのはわしだ。責任はわしにある。あいつはわしを狙っている。あいつより力の強いアンドロイドができるのを恐れているのだ……」
鉄也「父さんをあいつに渡しゃしないよ。もっと強いアンドロイドを造ろう!」
東博士「あぁ……だが、今までのアンドロイドの造り方では駄目だ。新しい方法で造らねば勝ち目はない。だがそれには、問題があるのだ」
鉄也「僕はお父さんの助手だ。もう一度一緒に造ろうよ! もっと強い、新しいアンドロイドを!」

東博士が、机上の設計図面に目をやる。

東博士 (新造人間……)


後日。

日中の街中を、鉄也の友人・上月ルナが、自転車で走る。

だが前方に突然の爆発。アンドロ軍団の襲来だ。

ルナ「きゃあっ!」
人々「うわぁっ!」「早く逃げろぉ!」「助けてくれぇ!」

ロボットたちが次々に人々を殺戮する。
ルナはかろうじて、物陰に身を潜める。

ルナ「大変だわ。ロボットたち、国立科学研究所に近づいて行くわ……早く、鉄也さんに知らせなくっちゃ!」

ルナが自転車で走り出そうとしたとき、その前にロボットが立ちはだかる。
絶体絶命かと思われたとき、何者かが飛び出し、ロボットに体当たりする。
それは鉄也の愛犬、ラッキーであった。

ラッキーがロボットに飛び掛るが、ロボットはラッキーを地面に叩きつける。
尚もラッキーが果敢にロボットに挑み、ロボットの頭部の回路を食いちぎる。
ロボットが最期の足掻きで、その爪をラッキーの胴に尽き立てる。

ルナ「ラッキー……?」

ロボットが大爆発──

そして、ラッキーもまた息絶える……

ラッキーに駆け寄り、号泣するルナ。

ルナ「ラ……ラッキー、ラッキー……ラッキー! あぁ、ラッキー! あぁっ……ラッキー、ラッキー……ラッキ──ッ!!」


国立科学研究所。

ラッキーを収めた棺を、東一家とルナが見つめる。

ルナ「ラッキーは、私を守ってくれたのよ……ごめんね、ラッキー! うぅっ……」
みどり「ルナ、あなたが悪いんじゃないわ。さ、気を静めて……ね」
鉄也「ラッキー……仇は必ず取ってやるぞ!」
東博士「鉄也。ラッキーを研究室へ運んでくれ」
鉄也「研究室へ? ラッキーを……?」


東博士は 死んだラッキーを
ロボット犬として生き返らせようとした

ラッキーの 全ての機能を記録した
電子頭脳が ロボット犬に組み込まれた

こうしてラッキーは
ロボット犬 フレンダーとして甦った


夜、東博士の書斎。

東博士「何!?」
みどり「鉄也……!?」
東博士「て、鉄也……お前、今、何て言った!?」
鉄也「死んだラッキーだってロボット犬として生き返ったんだ。生きた人間の体を利用すれば、もっと強いのができるんでしょう? お父さん……僕を新造人間にして下さい!」
みどり「鉄也……馬鹿なことを言うんじゃありません!」
東博士「一度新造人間になったら、二度と元のお前には還れないんだぞ!」
鉄也「でも、ブライキング・ボスに勝つためには、僕が新造人間になる以外にないんでしょう? 僕はブライキング・ボスが憎い……お父さんの苦しんでいるのが見ていられないんだ!」
東博士「鉄也……お前、それほどまでに……」
鉄也「僕がやらなければ誰がアンドロ軍団と戦うんです!? 狂ったブライキング・ボスを倒し、今度は本当に人間の平和のためになる、良いアンドロイドをお父さんに造ってもらいたいんだ!」

みどりがすすり泣く。

鉄也「お母さん、僕を許して下さい……」
みどり「鉄也……何ということを……」
鉄也「お父さん、お願いします!」
東博士「あぁ鉄也……人間でなくなるのだぞ?」
鉄也「はい。でも心は僕のはずです」
東博士「鉄也……!」
鉄也「はい!」
みどり「鉄也……」
鉄也「お母さん……許して下さい」
みどり「あぁ……鉄也……」


アンドロ軍団は 再び行動を開始した

東博士の行方を突き止めた彼らは
国立科学研究所に向かった


研究所内では、鉄也を新造人間に生まれ変わらせるための作業が開始されようとしていた。
東博士の目の前に巨大な装置、そこに2つのカプセルが備えられている。
片方には哲也が。もう片方には、純白の装甲に身を包んだアンドロイドが。

東博士「鉄也、いいな? 始めるぞ!」
鉄也「はい!」

スイッチが入る。
機械が作動し、作業が開始される。

東博士「鉄也……」
みどり「て……」

やがて作業が完了し、鉄也はアンドロイドと融合した新造人間となる。
体は純白のアンドロイドだが、顔は鉄也のそれである。

みどり「鉄也……」
東博士「お前は今日から新造人間だ。人類を平和を導く者……キャシャーンと名乗るが良い」
キャシャーン「キャシャーン……?」
東博士「お前が新造人間キャシャーンとわかれば、世間の人々はお前を許さないだろう。人々は全てのロボットを憎んでいる。キャシャーン、お前だけが頼りだ。フレンダーも強力に改造してある」

カプセルから出たキャシャーンが、東博士と握手をかわす。

東博士「頼んだぞ、キャシャーン」
キャシャーン「はい!」


その頃、ブライキング・ボス率いるアンドロ軍団は、既に国立科学研究所前に集結していた。

ブライキング「逃げたつもりだろうが、わしの目はどこまでもお見通しだ。ヤルッツェ・ブラッキン!!」

ブライキング・ボスの合図でロボットたちが行進。
ロボットの吐き出した炎が、研究所の扉に浴びせかけられる。
ほくそ笑むブライキング・ボス。だが燃え尽きた扉から現れたのは──キャシャーンの姿。

ブライキング「何だ、あれは……?」

ロボットたちがキャシャーン目掛けて攻撃を繰り出すが、キャシャーンには通用しない。
そのキックがロボットの胴を抉り、手刀がロボットの胴を裂き、その手がロボットの腕を握りつぶす。
鉄拳がロボットの胴を貫き、膝蹴りがロボットの腕をへし折る。

ブライキング「何奴!?」
キャシャーン「俺は……キャシャーンだ!!」

純白の装甲に包まれたその雄姿が、太陽の光を浴びて燦然と輝く。

ブライキング「ヤルッツェ・ブラッキン!!」

ブライキング・ボスの合図で、ロボットたちが再び攻撃を開始。
キャシャーンが連続攻撃をかわしつつ、自分の数倍はあろうかという体格のロボットを持ち上げ、ロボット群に叩きつける。

ふと見ると、東博士とみどりが、ロボットたちにより車で連行されそうになっている。

東博士「離せっ!」
みどり「あなた……」
キャシャーン「しまった……!」

両親を助けようとするキャシャーンがの前に、ロボットたちが立ち塞がる。

キャシャーンが口笛を吹く。
それを合図に、研究所内から遠吠えをあげてフレンダーが駆けつける。
フレンダーの牙と爪がロボットを裂き、口から吐き出す炎がロボットを溶かす。

キャシャーン「フレンダー・ジェーット!!」

キャシャーンの合図でフレンダーが飛行形態・フレンダージェットに変形し、キャシャーンが飛び乗る。
フレンダージェットが両親が捕われた車を追って空を駆ける。車にはブライキング・ボスも同乗している。

ブライキング「ヤルッツェ・ブラッキン!!」

フレンダージェットの前に数機のメカが出現。
たちまち合体し、巨大なロボットと化す。

キャシャーン「うわっ!」

巨大ロボットがフレンダージェットを叩き落す。
フレンダージェットが元のフレンダーの姿に戻り、巨大ロボットの手がキャシャーンを捕える。

そして巨大ロボットの胸が、まるで時限爆弾の如く点滅を始める。
このロボットは捕えた相手ごと自爆する、爆発ロボットなのだ……


父とは母は ブライキング・ボスに
奪い去られてしまった
恐るべき爆発ロボットに捕えられた
新造人間キャシャーンに 危機が迫っている

鉄の悪魔 アンドロ軍団を倒す日はいつか

キャシャーンがやらねば誰がやる!!


(続く)
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