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浪漫倶楽部
第1話 丘の上の学校

 主人公・火鳥の幼い頃の回想。
 木の上に妖精の姿が見える。
火鳥「あ〜〜、ママ!!」
火鳥の母「ん―――?どーしたの泉行(せんこう)ちゃん」
火鳥「ママ、あそこに人がいる」

小さい頃、オレには妖精のような不思議なモノが見えた…

 火鳥が妖精の姿が見えた方向を指差すも、母親には見えないらしく、
火鳥の母「なーに?誰もいないわよ」
火鳥「え〜〜〜?」
火鳥の母「さ、帰ってごはん食べよーね、泉行」

大人は誰も信じてくれなかったけど、オレには確かに見えたんだ

 暗転。
??「…くん、火鳥くん、火鳥くん!!」
 目を覚ますと、一人の男子生徒(部長こと綾小路宇土)が火鳥に呼びかけていた。
部長「火鳥くん!今、寝てたろ!!」
火鳥「寝てないですって、部長。ちゃんと起きていましたよ。ところでオレたち、下校時間を過ぎているのにこんな場所で何をしてるんでしょう」
 部長、少し呆れ気味にぼやく。
部長「やっぱり寝てたね火鳥くん…」

うちの中学校は丘の上に建っている
昔から、丘(ここ)では不思議な現象のウワサが絶え間ない
だけど、実際にそれを証明できる人間は一人もいなかった
そこでこの人、綾小路先輩が…
 
 少し熱っぽくも力説する部長。
部長「不思議な現象は必ず存在する!決して単なるウワサではない、私はそれを証明してみせるのだ!!」

こうして、みずから部長となり創設したのが「浪漫倶楽部」である
この丘で起こる不思議事件のウワサを解明しようとする部活だ
でも実際には依頼者の思い込みや見間違いが多く

部長「夜の校舎で人魂が漂うそうなのだ!」
 最も、その正体は見回りの校務員さんの懐中電灯の明かりだったが。

不思議な事件に出会うなど、今まで一度もなかったりする
もの好きなクラブだけに、ただいま部員はたったの2名…

火鳥「ねえ、部長」
部長「ん?」
火鳥「今回の依頼って何でしたっけ?」
部長「ああ。依頼者は化学部の部長でな、夕方になるとかならず理科準備室から物音と男のうめき声がするそうなんだ。気持ち悪いからどーにかしてくれって言われてな」
 沈みゆく夕陽を見ながら、部長が言う。
部長「おっ、日が暮れてきた。そろそろ作戦実行タイムなのだ!」
火鳥「はいっ」
 学校の見取り図を広げる部長。
部長「地図を見てくれ。このとーり職員室の前を通らないと理科準備室には行けない。先生に見つかったらすべておしまいだ…さらに困ったことに見つからずに通れたとしても見つからずに通れたとしても、理科準備室の入り口は内側からカギがかかっているのだ」
火鳥「じゃあ、お手上げじゃないですか」
部長「ところが!!この地図の通り裏山を通れば窓から侵入できるのだ」
 部室棟から裏山を抜けるルートをさす部長。
部長「裏山は人が抜けるのも大変な難所だが、方法はこれしかない。裏山側の窓のカギは依頼者に頼んで開けてもらっている。さあ行くぞ、火鳥くん!!」
 部長、何故かお面をつける。
部長「おっといけない、お面を忘れてた」
火鳥「部長…なんでお面をつけるんですか?」
部長「もし先生に見つかっても私だとバレないためなのだ(はぁと)」
火鳥「オレには理科準備室の物音と男の声より、部長の神経の方が不思議です」
 そして裏山を登って行く火鳥と部長。

オレは子供の頃に数回…普通の人には見えないようなモノを見た

火鳥「うひ―――」
 それなりに体力があると思われる火鳥に比べ、部長は息もあがっている。

妖精のような不思議な生き物だって見えたんだ…

部長「待ってくれー、火鳥くん」

オレは―――それが何だったのか確かめたくて浪漫倶楽部に入ったんだ

 裏山の上、注連縄で囲まれた大きな石の見える広場にたどり着く2人。

火鳥「へー、裏山にこんな広場があったんだ」
 しかし石の近くに、小さな女の子の姿が見えた気がした。
火鳥「ん?」
部長「こんな所で休んでいる暇はないぞ!まだ道のりは半分だ!!」
火鳥「なんだ?」
 その女の子はフッ、と消えたような気がした。
部長「火鳥くん!?」
火鳥「先に行っててください」
 部長を先に行かせ、火鳥は大きな石の傍に行ってみることにした。
火鳥「おーい、誰かいるのか」
 しかし誰もいない。
火鳥「気のせいか?」
 ふと石の上を見ると、そこにはさっきの女の子の姿があった。
火鳥「!! おっ、おい、そこのキミ!危ないぞ、おりてこい!!」
 きょろきょろと辺りを見回す女の子。
火鳥「キミだよキミ!」
 自分を指差す女の子。
火鳥「そう、そう!!」
 石の上から降りてくる女の子。
火鳥「よーし!!ゆっくりでいいぞ、ゆーっくり」
 火鳥、女の子の頭をなでながら、
火鳥「だめだろ?あんな危ない所に登っちゃ…よく一人でこんな裏山まで来れたな。お兄ちゃんが下まで連れてってあげるから、おいで」
 火鳥、女の子の手を引いて歩き出す。女の子(ここからは便宜上、コロンとする)が口を開く。
コロン「あたしのことが見えるのか?」
火鳥「え?」
コロン「おまえ“第2の瞳(セカンド・サイト)”の持ち主でしょ」
火鳥「何だ?その“第2の瞳”って?」
コロン「普通の人間には見えない存在が見える瞳の能力(ちから)だよ」
火鳥「!! ―――あはは、そりゃすげーや。さー、遊びはおしまい。帰るんだ」
 その時、一足先に理科準備室についていた部長の声がした。
部長「火鳥くん、こっちだ!早く入りたまえ!」
火鳥「すみません部長、子供が裏山に迷い込んでいたんで連れてきちゃいました。おいてくワケにはいかないでしょ?やっぱ」
 しかし部長はいぶかしげに見ている。
部長「―――で、その子供はどこだい?」
火鳥「は?ここです」
 火鳥、自分が抱えているコロンを指すが、
部長「どこにもいないぞ?」
火鳥(オレには見えて部長には見えないのか?)
火鳥「ここにいるじゃないっすか、ピエロパンツの幼児が…」
部長「―――だから、どこに?」
 その時、コロンが姿を現す。
部長「おお―――!!その子、いつ出したのだ火鳥くん!?」
火鳥「さっきからいたじゃないですか。冗談はよしてくださいよ」
コロン「冗談じゃないよ。今、あなた(セカンド・サイト)以外の人間にも見えるようにしたんだもん」
部長「キミは手品師かい?」
コロン「あそこの丘神石に住む、石の精霊だよ」
部長「丘神石?」
コロン「あんた達、この丘にいながら丘神石を知らないのか?」
部長「―――…はあ」
コロン「しょーもない人間だ!」
 浮かび上がってくる、「災いの丘」と呼ばれていた頃の裏山。
コロン「この丘は昔から霊的な土地の力を持っていて、不可思議な事件がよく起きていたの。人間からは「災いの丘」って呼ばれていたほどだもん」

恐ろしい女の霊が夜な夜な現れたり
化け物のような野犬が、幾度となく人間を襲った

 唾を飲み込む2人。

困り果てた村人は祈祷師を呼び、丘の頂上の自然石に術をかけ、この怪現象を鎮めたの
石という物質は「現世」と「この世ならざるもの」をつなぐもの…
術をかけ「丘神石」となった石は
この丘の霊的土地(パワースポット)を封印する、いわば「フタ」なの

コロン「こうして、この丘の不可思議な事件は影をひそめるようになったんだよ」
部長「お、おおお―――、すごいぞ!!私の思った通りだ。やはりこの丘には秘密が隠されていたんだ!!浪漫倶楽部を作った甲斐があったよ、火鳥くん!」
火鳥「え、ええ」
 とその時、どこからともなく謎の物音が聴こえてくる。
部長「―――誰もいない…よね?」
火鳥「部長!!調べましょう」
 火鳥、窓を開け外を覗き込む。
火鳥「外には誰もいません」
 部長、恐る恐る廊下側を覗き込む。
部長「ろろろ、廊下にも誰もいないよ」
 辺りには再び静寂が漂う。しかし再び謎の物音が聞こえる。
部長「ひいっ」
 火鳥、コロンを抱える。
コロン「あんた達、一体何をしてるの?」
火鳥「この部屋で起こる謎の物音と、男のうめき声の正体を解明しようとしてるんだ…」
 部長、気勢を張るために大声を上げる。
部長「幽霊化?悪魔か?隠れてないで出てこい!浪漫倶楽部は無敵だぁ!!」
 しかし部長の大声が災いしたのか、怒り顔の先生がドアを開けて入ってくる。
先生「誰かいるのか!?」
 だがそこにはただ静寂のみ。火鳥たちはとっさに物陰に隠れ、気配を殺してやり過ごしていた。
先生「確かに人の声がしたのだが…」
 先生が火鳥たちの近くまで来るも、気付かず、
先生「気のせいか…」
 先生、理科準備室を出て行く。先生が立ち去って行ったのを確認して、火鳥たちも姿を現す。
部長「浪漫倶楽部にも天敵があったのだ」
火鳥「あの先生、怖いんですよね」
 一息つく間もなく、上から謎の物音が聴こえてくる。
火鳥「!!うっ、上だ!上から聞こえたぞ」
 そして、謎の声も聞こえてくる。
謎の声「あ―――、あ―――、あ―――」
部長「声がぁ!!男のうめき声が聞こえるぅ!?」
コロン「火鳥ィ!!」
 ふと見ると、コロンがカラスを抱えて浮いていた?
コロン「怖がらなくてもいいよ。男のうめき声の正体は…この子だよ」
カラス「あ―――」
コロン「天井裏にカラスの巣があったよ。カラスの鳴き声って人間に似てるから間違えちゃったんだね。夕方になったら巣に帰ってきてたんだよ。ナゾは解決だね(はぁと)」
 コロン、着地する。
火鳥「と…飛んだ?」
 火鳥も驚いているが、一番驚いていたのは部長であった。
部長「飛…ん…だぁ―――!?すごい!!すごすぎるぞ!私は待っていたんだ、キミのような子が現れるのを!!やっぱり本当に石の精霊なんだね!?」
 いきなり肩を掴まれ、コロンは驚く。
コロン「わぁ!!」
火鳥(…すごいぞ!夢じゃない!!オレが子供の頃に見たような不思議な生き物はやっぱりいたんだ!!)
部長「キミ!部室に来て詳しくキミのことを教えてくれ!!」
 かくして理科準備室を出ようとする3人。
部長「さぁ、行こう!」
火鳥「よーし、静かにな」
 しかしその時!
先生「こら」
 ふと振り返ると、そこには先ほどの先生が怒り顔で仁王立ちしていた。
先生「やはりさっきいたんだな!夜の学校で何をやっとる!?」
火鳥「やっべ〜」
先生「何年何組の誰だ!?答えなさい」
 火鳥、振り向いてコロンを見る。
火鳥「じっとしてろよ」
コロン「え?」
 その瞬間、火鳥はコロンを先生のほうに投げる。
コロン「あう」
先生「わっ」
 コロンはヘッドスライディングの要領で足元を滑り込む。
先生「なっ、何だ!?」
 先生は気を取られている。その隙に火鳥たちはコロンを抱え、ダッシュで逃げ出す。
先生「あぁ!?こら、待ちなさい!!」

 渡り廊下はすっかり夜になっていた。火鳥たちが息を整えている。
火鳥「危なかったぁ。ふ―――…まいったぜ、今日はふんだりけったりだな。事件の犯人は結局、ただのカラスだったし。」
 火鳥、コロンの方を振り向く。
火鳥「ん?どーした」
コロン「…………何か胸がワクワクいってる…こんな冒険初めてだ!!」
 火鳥、微笑みながら、
火鳥「あんな散々な目にあったのに楽しかった?」
コロン「“楽しい”?そっか、こーいうの楽しいっていうのか?楽しい!!すっごく楽しかったもん!!丘の下の方にこんな“楽しい”があるなんて、ずっと丘神石と暮らしてたから知らなかったもん」
火鳥「どれくらいいたの?あそこに」
コロン「うーん、百年ぐらいかな?」
火鳥「えっ、ウソ…」
コロン「ウソじゃないもん、人間と話したのも初めてだもん」
火鳥(―――百年?)
火鳥「…じゃあ、ずっと裏山に一人でいたのか?」
コロン「丘神石と一緒だったよ」
火鳥「丘神石って…ただの石じゃないか。そりゃ淋しかったろ」
コロン「淋しかった?“淋しい”って何?」
火鳥「独りぼっちで誰もいなくて、悲しくなっちゃうことだよ」
コロン「“悲しい”?何でぇ?」
 コロンはこれらの言葉に不思議そうな表情を見せる。
コロン「百年間ずうっとあの丘に一人でいたよ。だってそれが、丘神石と一緒にここの霊的土地を封印するあたしの役目なんだもん」

百年間ずっと独りぼっちで…
かわいそうに、この子には人間の感情がわからないんだ…

コロン「そんなのあたりまえすぎて“淋しい”なんてないもん。“淋しい”って言葉、よくわかんない」
 火鳥、複雑な表情をする。
火鳥「………」
部長「火鳥くん」
火鳥「はい?」
部長「この子…浪漫倶楽部に入部してもらったらどーかな?」
 火鳥、その言葉に明るい表情に戻る。
火鳥「そ、そうだよ!!毎日オレ達と一緒に今日みたいに不思議な事件を解決してみないか?」
コロン「い、いいのか?」
火鳥「あったりまえだろ!!」
 火鳥、コロンの手をとる。
火鳥「よ〜し、決まりだ!!今日からお前も浪漫倶楽部の仲間だぞ!!」
コロン「本当かぁ!?」
火鳥「そういえば名前なんてーの?まだ聞いてなかったよな」
コロン「名前?石の精霊だよ」
火鳥「いや…だからそーじゃなくて」
コロン「それ以外ないもん」
火鳥「―――…そうか。よし!オレが明日までに考えといてやる」
部長「あっ、ずるいぞ火鳥くん」
コロン「わーい、楽しいだぁ(はぁと)」

 丘神石のある裏山に走るコロン。
コロン「楽しみ―――!!また明日、火鳥達と遊べる」
 そして丘神石の中に入ろうとするが入る事ができず、頭をぶつける。
コロン(丘神石に入れない!?)

 翌日、火鳥の教室にて。授業中だが火鳥は名前の書かれた手帳を見ている。
火鳥(さ―――て、どんな名前にしようかな?昨日からずっと考えてたけど、放課後までに決めなきゃな。約束したもんな)
 しかしその時突然、ドアが開いてコロンが教室の中に入ってくる。
火鳥「え?」
 コロン、火鳥の元へ向かう。しかしコロンの姿は普通の人には見えないため、教室内は大騒ぎになる。
先生「おい!!いきなりドアが開いたぞ!?」
生徒A「あ!!先生、オレじゃないっスよ」
先生「じゃあ、一体誰のいたずらだ!?」
火鳥(…………そうか…普通の人には見えてないんだ)
コロン「火鳥…あやまることがあるの。あたし、やっぱりあなたたちの仲間になれない」
火鳥「え?」
コロン「丘神石があたしのことを…拒むようになったの」
火鳥「?…別にいいじゃないか、オレ達とずっと一緒にいれば」
コロン「だめなの!!石の精霊(あたし)と丘神石は一心同体だもん!一緒じゃないと役目がはたせないの!!あたしのせいで丘神石の封印が弱まって…この丘の霊的土地が少しずつだけど開放されてるの!!」
火鳥「開放されたらどうなるんだ?」
コロン「開放された力(エネルギー)は植物や動物…物、何にでも、どうすることもできない「弱い存在」たちの心や願望に反応して力を貸すの」
火鳥「…よくわからないけど、いいことじゃ?」
コロン「いいことばっかりじゃないもん!!もし火鳥がイヤなことがあって木を蹴ったとするよ?木が火鳥に大きな恨みを持って、開放された力を手に入れたらどーなると思う?木が襲いかかってくるかもよ!」
火鳥「………」
コロン「だからもう、火鳥達とは会えないの」
火鳥「―――な?何でそうなるんだ!?」
コロン「こんな事態になったのは石の精霊であるあたしが、人間の感情を持ってしまったから…一緒に遊べなくてごめんね。バイバイ」
 そしてコロン、教室から走り去っていく。
 前の席の生徒が不審に思い、話しかけてくる。
生徒B「火鳥、さっきから一人で何ブツブツ言ってんだよ?」
 火鳥、突然立ち上がる。
火鳥「先生!!トイレ行かせてください!!」
 そして火鳥、玄関に向かう。部長も来ていた。
火鳥「あっ、部長!?」
部長「火鳥くん!!」
火鳥「部長の教室(クラス)にも来たんですね!?」
部長「おお!!火鳥くんもか」

 丘神石の丘に向かって走るコロン。
コロン「これでよかったんだ!すべて元通り…今までどおり、石の精霊のあたりまえに戻るんだ!あたしが元に戻れば丘神石の封印の力もきっと戻るもん!!あたしは楽しんだりして人間の感情を持っちゃいけなかったんだ」
コロン(大丈夫っ!火鳥達と二度と会わなければ、“楽しい”なんてすぐ忘れるもん!!)
 ふと、コロンの足が止まる。
コロン(二度と会わない…)
コロン「………?あれ、前に進めない。何で?」
??「それが“淋しい”だよ」
 火鳥と部長が追いついてきていた。
火鳥「今…キミは、身体いっぱいに淋しさを感じているんだ。キミの本当の心が一人になりたくないって感じているんだよ!」
コロン「ち、違うもん!!」
 コロン、声を限りに叫ぶ。
コロン「あたしは人間の感情を持っちゃいけないんだもん!!」
火鳥「何で、そう決めつけるんだ!!」
コロン「―――火鳥は、石が笑ったり泣いたりしてるのを見たことある!?」
火鳥「!!」
コロン「あたしは石!!感情がないのがあたりまえだもん…感情なんて持ってると、石の精霊として不完全になっちゃうんだもん!!あたしが不完全だとこの丘…霊的土地の封印が弱まるの!!植物や物が感情を持って不可思議な事件を引き起こす…人間に迷惑がかかるもん!!」
 火鳥もまた、声を限りに叫ぶ。
火鳥「迷惑なもんか!!キミみたいな存在は、オレの夢だったんだ。オレだけじゃない…キミの存在はみんなに夢を与えてくれるんだぞ!!」
コロン「ゆ…め?何それ…そんなの知らない」
 火鳥、コロンの近くに近づく。
火鳥「夢はね…持っていると素敵になれる心の宝物みたいなものなんだ。だから、人は夢に向かって泣いたり笑ったりしてがんばれるんだ。みんな、そういう幸せを感じるために生きているんだよ」
コロン「…でも、あたしは石の精霊だもん。石は夢なんか見ないもん…」
火鳥「…………キミは石なんかじゃない。オレ達の仲間だろ…」
 コロンの目から涙がこぼれる。
コロン「…あれ?目から水が出てきた」
 火鳥、コロンを抱え上げる。
コロン「あうっ」
火鳥「涙っていうんだよ。キミはとっても素敵なフレゼント(感情)をもらったんだ」
 火鳥、微笑んで、
火鳥「大丈夫!キミにだってきっと夢は見つかるよ」
 まだ涙目のコロン、
コロン「―――でも、あたしのせいで事件が起こっちゃうよぉ」
火鳥「だからこそ浪漫倶楽部の出番だろ!!これから一緒に不思議な事件が起きたら、一つ一つ解決していけばいーじゃないか!!仲間だもんな…手伝ってくれるか?」
 コロン、笑顔をみせ、
コロン「もっちろん(はぁと)」

 そして放課後。浪漫倶楽部の部室にて。
部長「はい、これ」
コロン「う?何これ」
部長「入部届けだよ。略式だけどルールだからね。文字書けるかい?」
コロン「書けるもんっ。ほらっ」
 入部届けには「いしのせいれい」と書かれている。
部長「おお―――、よく書けました(はぁと)」
 部長、拍手をする。
火鳥「それ、違うよ」
 火鳥、コロンの手を取り、「いしのせいれい」と書いたところに横線を引き、「コロン」と書く。コロン、不思議がって火鳥の方を見る。
火鳥「まんまるくってコロコロしてるからコロン!!キミの名前だよ、どーかな?」
コロン「―――…なまえぇー」
 コロン、笑顔を見せる。火鳥もまた微笑む。
コロン「あたしはコロンちゃんだぁー(はぁと)」
部長「丘の封印は解かれた!名前も決まって準備OK!!これからの浪漫倶楽部は忙しくなるぞぉ!!」

(第1話・終わり)

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