戻る TOPへ

RAVE [レイヴ]


HARU & FRIENDS
GO ON A TRIP
ROUND THE WORLD
TO BREAK
“DEMON CARD”
WE CALL HIS WEAPON
“RAVE”.



― RAVE:1 ひらかれた地図 ―


あちこちから煙の上がる、荒れた大地…
傷だらけの若い男が、いる。
「戦争は、終わった。これでやっと平和な…」
と!目の前で、突然動き出す翼のついた大きなナニカ!
ゴゴゴゴ…
「…しまった!!!!!!」


ガラージュ島

少年が、木にもたれて釣りをしている。
名前は、ハル。
長いこと何も釣れていないらしく、バケツの中はからっぽ。
「ハラ減ったなー」
その時、浮きにアタリが!! 「お!!やっと来たか!!」
竿を、ぐいっ!とあわせ、一気に引き上げるハル。
ザバァ! 「うおおっ!!でっけー…」
しかし、目の前にぶら下がった針の先にかかっていたのは、
「プーン…」 と鳴く不思議な生物だった。
それは、子犬くらいの大きさで、色は白…まん丸の頭は、体よりデカく、
顔には、なっさけない眉に、ちっこい目…
顔の真ん中には、穴の掘れそうな、黄色いドリルのような鼻?が付いている。
「……魚?何だコイツ!!」
ハルが、思わず竿をはなすと、その生物は、
「プーン、プーン…」と、鳴きながら、4本足でぴくぴく歩き始めた。
(な…なんだよ、こんな魚、見たことねーぞ。食えるのか?)

浜の突端
石に刻まれた文字を見つめている少女…
名前は、カトレア。
石には、『SAKURA・GLORY 0023〜0056』と、刻まれている。
ねーちゃん!!
と、そこへ、ドカドカやってきたのは、ハルだ。
「ハルー!!母さんの墓の前で、ドタバタしないで!!」
「すげー魚、見つけたんだ!」 「魚?」
「ホラ。」 ハルは、バケツに入れた、さっきのヘンな生物を見せた。
「プーン」 ピクピク…おびえた様子の、その生物。
「キャー、かわいいー」 「な!すげー魚だろ?」
「ハル、このコは、魚じゃないわよ。」 「何で?」
「だって、足が4本あるし…鳴いたりするでしょ。」 「じゃー、何なのコイツ。」
「そうね……犬よ!」 その生物を、ぎゅっと抱きしめるカトレア。
「絶対、ウソだね!!!」 ハルが、鼻水を飛ばす。

カトレアとハルの家
外壁に、これまたオカシな生物がくっ付いている?めり込んでいる?寄生している?
でっかいヒマワリのような顔と、2本の手が、とにかく、その家には…いる。
「ついてくんな!」 と、ハルに言われながらも、
カトレアとハルの後ろから付いてくる、ドリル鼻の生物。
「お帰りなさい、カトレア様、ぼっちゃん!」 「ただいま、ナカジマ。」
家についている生物は、ナカジマと言うらしい…
「!!んな!何ですかーそれはー!!」
ナカジマが、ぴくぴく後をついて来た、ドリル鼻の生物を指差した。
「プーン」 ぴくぴくぴく…
「何だよ…物知りのオマエでも、わかんねーのか?」
ハルのこの言葉からすると、ナカジマは、とっても物知りのようだ…
「私は、だと思うんだけどね。」
そう言うカトレアに、アセッてツッコむナカジマ。
い…犬?てゆーか、そんな生物いませんよ!
「いや…おまえもどーだろう?」 さらにツッコむハル。

ハルの部屋
「ふあー」 ハルが、ベッドに寝転んでいると…
「プーン…」 ぷるぷるおびえながら、ドリル鼻の生物がやって来た。
「オレの部屋、入ってくんな!!」
ハルに怒鳴られても、近づいてくるドリル鼻。
「オイ…オマエ姉ちゃんの所へ行けよ。」
すると、ドリル鼻は、向きを変え、一つの引出しの前で止まった。
「プーン、プーン、プーン…!」 そして、ピクピク身体を振わせている。
「!?」 ハルは、その引出しを開け、中から棒付きキャンディーを出した。
「まさかオマエ、コレ欲しいの?」
「プププーン!!!!」
後ろ足だけで立って、ちょっとはにかみながら、両手?を出すドリル鼻。
「もしゃもしゃ、バリバリ…」
嬉しそうに、床に座って、棒を持ってキャンディーを食べ始める。
「オマエ、アメが好きなん?…変な犬ー」
じーっと見ているハルに、ドリル鼻は、半分になったキャンディーを差し出した。
「ハハ…半分くれるのか?なかなかイイ奴じゃん。
オレはハル、よろしくな。」 ドリル鼻の頭をなでる、ハル。

外で、カトレアが、洗濯物を干している。
「ねーちゃん!コイツの散歩させてくる。」
ハルが、ドリル鼻を連れて来て言った。
「夕食までには、帰るのよ。」
「よし、町まで行くぞ。」 「プーン」
走って行く、ハルとドリル鼻。

町の『CAFE TSUBOMI』
「…で、これが、おまえの釣ったか?…ぷぷぷ…でひゃひゃひゃ!!
ハル!おまえ、釣りの才能あるよ!」
デカい口を開けて、大笑いする、この店の主人ゲンマ。
「将来は、猟師で決まりだな、ぷぷぷ…」
どよーん…とするハルと、ますます、情けない顔になるドリル鼻。
「ハル、この犬っコに、名前はつけたのか?」
「ああ…一応…『しゃぶ太郎』ってつけた…今…」
「しゃ…ぶ……た…ぷっ!」 ゲンマは、必死に、笑いをこらえているが…
でひゃあーっ!!!まいった!!サイコー!!
こらえきれず、涙と鼻水をふり飛ばして、もっと笑うゲンマ。
「帰る。」 暗〜く、店を出て行こうとするハル…
「でへでへ…まー待てよ。久しぶりに会ったんだ、
もう少し、話をしようじゃねーの。」

店の外で、ドリル鼻が、プピープピー…と、寝ている。
「ハル…もう10年も経つな。」 「10年?」
「サクラが死んでからだよ。」 「あー、母ちゃんね。」
「あの頃のオマエは、こんなに小っちゃかったからな。」
ゲンマは、親指と人差し指で、2cmほどの幅を作った。
「オレは、虫か?」
少しして、ゲンマは、真剣な顔になって、ボソッと言った。
「ハル…まだゲイル…いや、父親からの連絡はないのか?」
「!」 ……………
「そうか…アイツが姿をくらましてから15年…」
「ゲンマ!前にも言った事あるだろ、親父なんて、生きてるか死んでるか、
わかんねーんだ。もし生きているとしても、今さら会おうとも思わねー
オレには、親父なんて必要ないね。親父なんていなくても…
姉ちゃんは、オレが守るから!!」 ハルは、バァン!!と、立ち上がり、
「そのために、毎日鍛えてんだ。」 と、こぶしをつくって見せた。
「…そうだな、この島じゃ、オマエにケンカで勝てる奴、いねーもんな。」
ゲンマの言葉に、微笑むハル。
「悪かったな、引きとめちまって。」 「別に。」
「でへへ…早く行かんと…しゃ…しゃぶ…しゃぶた…ろ……
でひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!!
カウンターをバンバン叩いて、もう我慢できない!とばかりに、笑うゲンマ。
「…またな。」 ハルが、目をテンにして店を出て行こうとすると…
「フォフォフォ、久しぶりじゃのう。」
長ーいひげをたくわえた、一人のじいさんが、やって来た。
ちょっとオシャレ?な、ロングコートを身にまとっている。
? しばし、かたまるハルとゲンマ。
「ゲンマ…こんなの島にいたか?」 「いいや…」
すると、そのじいさんは、いきなりゲンマに抱きついて言った。
「おおおっ、ボートン!!久しぶりじゃあ!!」
「うわっ!離れろ!妖怪じじい!オレはボートンじゃねェ!!
ボートンは、オレの死んだ父親だ!!」
「なぬ…とすると、おまえは、あの笑いぐせのあるセガレ…ゲンマか!?」
ゲンマ…汗。
「フォフォフォ…大きくなったのぅ、ボートンにそっくりじゃ。」
「スマン…じいさん、思い出せねェよ。」
「いやいや、いいんじゃ…この小僧は、おまえのセガレか?」
ハルを見るじいさん。
「違うよ、オレはハル。ゲンマは、結婚してねーんだ。」
それを聞いて、じいさんは考えた… (ハル…どこかで聞いたような…フム…忘れた)
「ところで、ボートンよ。」 「オレはゲンマだ!!」 怒鳴るゲンマ。
ハルは、不思議そうに、じいさんに尋ねた。
「なあ、じーちゃんは、この島に住んでいたのか?」
「うむ…遠い昔じゃがな…ちょいと訳ありで、世界を旅しておるんじゃが、
たまたま近くを通ったからのう…あまりの懐かしさに…」
ふるふるふる…肩を震わせたじーさん……と! 「ぐもーーっ!!!
びちゃ!!と、いきなり泣き出した! はっきり言って、キタナイ顔…
「じーちゃん!!」 ハルも、キタナイ…
「もう、この島には、ワシを知っとる者はおらんか…さみしいのう…」
鼻水をすするじいさんの横顔を、見つめるハル。
「さて…ワシはそろそろ行くかのう、元気でな、ゲンマ。」
「オウヨ(誰だか知らねーけど)」
荷物を背負って出て行こうとするじいさんに、ハルが声をかけた。
「なー、じいちゃん。オレが、友達になってやるよ。」
ゲンマ…吹き出すのを我慢する。
じいさんは、ポッと頬を赤らめて、「ハル!ワシはうれしいぞ!」 と、
カウンターの上に置いてあったペンギン?の人形の頭をすりすり…
それは、人形だーっ!!

店の外
あああああ!!」 ハルが、叫んだ!
「しゃぶ太郎が、いなくなったぁ!!!ぐおおおお!!
やべー、アイツどこ行ったんだ!?」
「しゃぶ太郎?」 一緒に外へ出たじいさんが、聞いた。
「ああ…犬の名前。」
(犬の名前…) 再び、ぐもーん!となるじいさん。
ハルは、サッと棒つきキャンディーを出すと、地面に置く。
「何をやっとる?」 「あいつはアメが好きだからな、ココでこーして待つ。」
「フォフォフォ、変な犬じゃな…………!!」 じいさんの顔色が、サッと変わった。
向こうから、ズシズシ、一人の男が歩いてくる…
ハルの、見たことのない男だ。 「今日は、外からの客が多いなー」
頭にバンダナのようなものを巻いた、人相の悪いその男は、
「くそじじぃ…」 と、ハルが置いたキャンディーを踏み潰して、じいさんに近づいた。
「おい!!何すんだよ!!」 しかし、ハルは無視される。
「こんな島に、いやがったのか…手間かけやがって。」
「フォフォフォ、今日は、いい天気じゃのう。」 知らないふりをする、じいさん。
「それで、変装したつもりか?あ?」
「ふー、近頃の若いモンの言葉は、よくわからんわい。」 あくまでトボけるじいさん。
ハルは、その男の後ろにしゃがむ。
「ガキィ、邪魔だ、消えろ。」
「ふざけるな!!アメかえせ!!」
「あ?うるせェ!!!!」 ゴス!っと、ハルの顔面を蹴り飛ばすその男。
ハル、吹っ飛ぶ。
「何て事をするんじゃ!!大丈夫か、ハル、しっかり!!!」 ハルに歩み寄るじいさん。
「いってェー」 ハルが、蹴られた頬をさすっていると、その男…
今度は、じいさんの背後から、ゴン!と、じいさんのハゲた頭を殴った!
「じいちゃん!!おいおい、大丈夫かよ。」 心配するハル。
頭をさするじいさん… 「うむ…大丈夫じゃよ。」
「どうだ、じいちゃん、ボケは治ったか。」
その男の言葉に、ハルは立ち上がった! 「おい、オマエ…」
ハッとするじいさん…
「アメ踏んだり、オレを蹴飛ばしたまでは、まだいいけどよォ…
じいちゃんを殴ったのは、ゆるさねェぞ。年寄りは大切にしろって…
姉ちゃんが、言ってたからな!!!
ハルは、今まで見せたことのないような怖い顔で、そいつに殴りかかった!
「はっはっはっ!」 笑う男。 「ハルー!!」 叫ぶじいさん。
ハルのこぶしが、その男の顔面に炸裂!!口から血を出しながら、今度はソイツが、ぶっ飛んだ。
驚くじいさん。 「!!!ハル、今のうちじゃ!!」 「あ…オイ、何すんだ!」
じいさんは、ハルの手を引っ張り、その場から走り去った。

森の中
「ハーハーハーハー…」
ハルと、じいさんは、石の上に腰を下ろした。
「何だったんだよ、あの変な奴…(老人マニアか?)」
「ふひゃー、森なら、安全じゃな…それより、ハル、みかけによらず、腕がたつのう。」
「まーね、姉ちゃんを守るために、毎日鍛えてんだ!」
「フムフム、感心じゃ。そうじゃ…名乗るのを忘れとった、ワシの名はシバじゃ…」
「…たしかに…しわって感じだ!」 笑いをこらえるハル。
「フォフォフォ、でもシバじゃ…本当の顔も、見せよう。」
シバは、怪盗なんとかが、正体を明かす時のように、マスクを取り去った!!
どーーーーん! 「なかなか、男前じゃろ?フォフォフォ」
しかし…マスクをとっても、じいさんはじいさんだった…
「…それ…変装した意味あったのか?」 静かにツッコむハル。
「フォフォフォ…」 ちょっと切なそうなシバ…
「なんで、変装なんてしてんだ?」
「………………」 シバは、黙ったままだ。
その時!! 「プーン」
ふりかえるハルとシバ。 そこには、ぴくぴく小刻みに震えるしゃぶ太郎が!
「あっ、どこ行ってたんだよ、しゃぶ太郎。驚いただろ、シバ、オレも初めて見た時は…」
ハルが、くるっとシバを見ると! ものすごい顔で、驚いている!!
しゃぶ太郎も、普段以上にぴくぴくしているし…
少しして、シバが叫んだ。 「プルー!!!!」 「プーン」 返事?
「ぷる?」 状況を把握できないハル…
「生きて…おったか、やっと会えたな…」 「プーン」
しゃぶ太郎を見るハル。 「プルーって、コイツの事?」
「…うむ、50年間、ずっと探しておった。」
「50年もー!!ひえー!お前、一体何歳なんだよ…」 「プーン」
「プルー…いや、しゃぶ太郎か。」 「プルーでいいよ。」
「プルーとは、いつ会った?」 「今日、海で釣った…ハハハ…」
ぐもーーーん! (海で…釣った?) シバの目、テンになる。
「…そうか…ハル…プルーをワシに返してくれ。」
「えーーーっ!!?そんなの、やだよ。(プイッ)」
「フム…ハルよ、ワシには、その犬がどうしても必要なんじゃ…
清算しなければならぬ事が、あるんじゃよ。
「…………」 うつむく、ハル。
「今から、50年前、戦争があったのは知ってるな?」 「戦争?」
「そうか…知らんか…世界中の人々をおびやかした闇の力、魔石ダークブリング
それに対抗できる唯一の光の力、聖石レイヴ。」 「レイヴ?」
「光と闇の不思議な石による戦争…ワシとプルーは、その戦争の真っ只中にいた…」

〜 50年前… 〜
冒頭の荒れた大地
若かりし頃の、血だらけのシバが立っている。
その目の前に立つ、翼を持つロボットのような大きな何か。
「これが、最後のダークブリングだ、行くぞプルー!!」
シバの横には、しゃぶ太郎…じゃない、プルーがいる。
「レイヴの力を解放しろ!!」 叫ぶシバ。
すると、プルーの首に下がった石が、まばゆいばかりの光を放ち…
「はああーーーーっ!!!」
そのパワーを帯びたのか、シバの振り下ろした剣は、恐ろしいほどの破壊力で、
ダークブリングに突き刺さった!
ドガァ…地面にめり込むようにして落ちた、ダークブリング…
剣を、天へ向かって突き上げるシバ。 「よっしゃあ!!!!やったぞ、プルー!!オレたち…」
「プーン」 落ちたダークブリングの前で、プルーが鳴いている。
「!何してんだ?帰るぞ。こんな石、もう二度と見たくねー。」
「プーン、プーン、プーン…」 しかし、その場から動こうとしないプルー。
シバは、満足げな顔で歩き出し、少し離れて振り向いた。
「ま…とにかく…戦争は終わった…これでやっと平和な……!!」
ゴゴゴゴゴ…突然、動き出すダークブリング!
しまった!!
そして、爆発!!!!!!!!!!!!!!!!
― この爆発こそが、のちに語られる大破壊(オーバードライブ)
世界の10分の1を破壊し…ダークブリングは逃げた。
プルーは、知っていたんじゃ、ワシのつめがあまかったこと事…
あの時まだ、ダークブリングは、生きていた事を…
…そして… ―
ボー然と、その場に座り込むシバ…
まわりは、先ほどの爆発でめちゃくちゃなのにもかかわらず、
自分は、たいして傷も負わずにいることに気づく。
見ると、ダークブリングのあったあたりから、シバの元まで、
破壊されていない道のようなものが出来ているではないか!
そして、その先には…プルーが両手をいっぱいに広げて、立ったまま……
そばへ駆け寄って、プルーの亡がらを抱きしめるシバ。
― プルーは死んだ、ワシを守って…
だが、その時じゃ、レイヴが光り出した! ―
プルーの身体が、空へ浮かび上がり、その首のレイヴが、もう一度まばゆい光を放った!!
― レイヴは、飛び散った…
そして、プルーも姿を消した ―
〜 回想 終わり 〜

「そんな事が、あったのか…」 シバの横顔を、のぞきこむハル。
「オーバードライブの時、逃げたダークブリングが、50年経った今、ついに動き出した。
これに対抗できるのは、レイヴだけじゃ。
すべては…あの時、ワシのつめがあまかったせいじゃ。
だからワシが、ダークブリングを倒しに行く!!」
ズン!と、こぶしを握りしめるシバ。
!!その気迫に、圧倒されるハル。
「そのためには、まず、バラバラになったレイヴを一つにしなくてはならん。
そして、そのレイヴの場所を知っているのは……プルーだけなんじゃ。」
ぷーん…と、プルー…なんとも情けない。
「ええ!!コイツが!!?」 「プーン…」
「プルーは、レイヴの使いじゃからな。」
「レイヴの使い!?そ…それでプルーを探してたのか。」
「プーン」 プルー、いつのまにかやって来たイモムシと戯れる…
「なるほど…わかった、プルーを返すよ!(ニッ)」 「ハル…スマン。」
「いいって!オレたち友達じゃん。」 「友達…」 「そうだよ。」
「なんと懐かしいひびきじゃ…」 「そうなのか?」
「友達が出来たのは、何年ぶりじゃろう…うっうっ…ぐもーーーー
じゅるーと、飛び散る涙と鼻水…
「シバッ!!…今日からオレ達は友達だ、シバ。」 ハル、手を出す。
「そうじゃな…ハル。」 その手を、ガシッと握るシバ。
(ついにプルーが見つかった…いよいよじゃ、急がねば!!)
そこへ、先ほどのバンダナ男が、やって来た!
「てめェら、やっと見つけたぞ。やっぱりてめェ、シバじゃねーか、なめやがって。
シバァ…レイヴを渡す気がねーなら、オレは、力ずくでもらっていってもいいんだぜ。」
男の右手には、ゴオオオ!と音を立てている砲のような物が…
「そう言って、ワシに返り討ちにされた主の仲間は何人いたかのう、フォフォフォ。」
「フン…おいぼれがぁ…いきがってんじゃねェぞ。」
「誰なんだよ、コイツ…さっきから。」 ハルの問いに、シバはこう答えた。
「ダークブリングを持つ組織『デーモンカード』の下っぱじゃよ。」
「んだとォ、コラァ…」 砲を前へ出す男。
「なんだよ、アレ!!」 シバは、ハルを制して目を閉じた。
「ハル…さがっておれ。」
「シバ!!こんなのに、勝てんのか!!」
ゴオオオ…うなるような音の渦巻く中、にらみ合うシバとその男…
「今すぐ出て行け!!」 「来いシバァ!!」
右の握りこぶしを振り上げ、シバは念じた… (レイヴよ、ワシに力を!)
しかし、何も起こらない!焦るシバ… (レイヴが…)
「何ボーッとしてんだぁ!!」 ハルが怒鳴る。
(使えなくなっとる………なぜじゃ…!!!!)
その時、男の砲が、シバの至近距離から火を吹き、シバの身体を貫いた!!!
驚くハルの目の前で、倒れていくシバ… (もう…終わりじゃ…)
しかし、いったん落としそうになった右手に握っていた小さな剣のような物を、
もう一度、しっかりと握り直す意識はあった。
「さすが、パンクストリート製の武器だな。」 威力に、満足そうな笑みを浮かべる男。
「シバー―――ッ!!!シバーー!!しっかりしろ!!」 駆け寄るハル。
「…ハル…うっ…こ…これを持って、遠くへ逃げ…ろ…」 「?」
シバは、先ほどの、小さな剣をハルに渡した。
それは、手の中にすっぽり隠れてしまうほどの大きさだ。
「なんだよ、コレ?」
「いいから、逃げるんじゃ!!」
「そうは、いかねェよ。友達がピンチの時は、必ず助けるんだ…
自分だけ逃げるなんてダメだって…姉ちゃんが、言ってた!!!
すごい顔で、男をにらみつけるハル。
「小僧、シバから受けとったモノを、オレによこせ。」
「ハル!!ワシの事などどうでもいい!!それを持って、どこか遠くへ逃げろ!!」
ガフ!…血を吐きながら、シバは必死に訴えた…しかし!
フウー…フウー…ハルは、息もあらく、その男をにらみつけたままだ。
「(いかん、完全に暴走しとる、このままではアレが奴らの手に) 逃げろハル!!」
ドパッ!シバの口から、なおも血が吹き出す。
ブウン!ハルが、男の一瞬をついて、そばへ駆け寄る! 「!はや!!」
そして、シバに火を吹いた奴の武器ごと、ソイツの腕をつかむと、
「うああああああああああああ!!!!」
ソイツを持ち上げ!! 「ひィィィィ!!!」
「なんと!!?」 驚くシバ。
ズボッ!ゴッ!! 思いきり地面に、投げつけた!
「なんつー怪力だ!!」 頭をさする男を見下ろして、ハルは言った。
「立て、シバの痛みは、こんなモンじゃねーんだ。」
「ガキがぁっ!!大人をなめんなヨ。」 立ちあがる男。
シバは、それを見ていた… (な…なんというパワーじゃ…信じられん)
!!ハッとするシバ。 (パワー?スピード?…心…プルー………ハル…?)
「オラァ!!!!」 ハルが、男にしかける!
「チッ!!」 男、殴ろうとするが、ハル、それを避け、ドス!と、蹴りをかます。
(ワシがさっき、レイヴを使えなかったのは…まさか…) わなわなと震え出すシバ…
フラつく男…しかし、ハルは容赦しない。右の握りこぶしを構え、
うわあああああ!!!!」 思いっきり、男の顔に突き出した!!
ドガァ〜!!ハルの一発は、まるでダイナマイトのような…恐ろしい威力で炸裂!
男は、口を開いたまま、鼻血を撒き散らし、仰向けに倒れた。
(………) シバの見開いた目は、何かを確信したようだった。
自分の右のこぶしを、じーっと見つめ、
「ば…爆発した!!?」 シバの方を見るハル。
「ハルよ…さっき、渡したモノがあるじゃろ?」
シバの言葉に、ハルは、そのこぶしを開いてみる… 「それが、レイヴじゃ。」
!!この、小さな剣みたいなのが…
「レイヴ…これが?」 「…うむ。」 「何で爆発したんだ?」 
「それがレイヴの力じゃ。これで、レイヴを使える者は、世界にお主だけになった訳じゃ。」
「!?どういう事だ?」
「昔から、レイヴを使えるのは、世界でたった一人と決まっていた。
50年間…ワシ一人じゃった…だが、ワシがさっき、あの男にやられた時、
ワシにはレイヴが使えなかった…分かるな?
後継者が、現れたからじゃ。」
「え?」
ただ、ボー然と立ち尽くすハルだった。


― RAVE:1 終わり ―


inserted by FC2 system