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らんま 1/2  

コミック @

― PART.1 らんまが来た ―


夏のある日…
「天道さーん、郵便でーっす!」
『前略 らんまをつれていく。中国にて 早乙女だよーん』
と、きったない字で書かれたパンダの絵葉書を、天道家のお父さん天道 早雲が
泣きながら読んでいる。
「らっ、乱馬くんが来る…?こっ、こっ、この日をどんなに待ったことか…」

天道家の門に『無差別格闘流 天道道場』と書かれた看板が掛かっている。
「お〜い、かすみ。」
「なーに、おとうさん。」台所でスイカを切っている、長女・かすみ
「なびきー。」
「んー?」寝転んで、アイスを食べている、次女・なびき
「あかねーっ、あかねはおらんのかー。」
「ただいまー。」ロードワークからちょうど帰ってきた、三女・あかね
あかねは、さっと道着に着替えると、ブロックを積み上げて
「破っ!!」と、割った。「あー調子いい。」
と、気持ちよさそうに汗をぬぐう。
それを見ていた なびき
「まーた、あかねはー。んなことばっかやってるから、まともにモテないのよ。」
「よけーなお世話よ。あたしは、おねーちゃんと違って男なんか大っ嫌いなの。」
「ふーん、じゃーこの話、あんたにゃ関係ないか。」

夕立が来る。
居間で、話をしている早雲と三姉妹。
「許婚(いいなずけ)?」
「うん、とーさんの親友の息子でな。早乙女乱馬くんというんだ。おまえたち3人の誰かが、
将来、彼と結婚して、道場を継いでくれれば、わが天道家も安泰だ。」
それを聞いて、血相を変えて怒るあかね。
「ちょっと待ってよ。勝手に決めないでよ。あたしはやだからね。」
「そーよおとうさん、会ったこともない男と。」 かすみに、
「もーすぐ会えるよ。」と、くすっと笑う、早雲。

雨上がりの街の中
ドドドドドドドドドドドド…
すごい地響きに、振り向く通行人たち。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド
一人の少女が、ドでかいパンダに追いかけられて、走ってくる。
靴を手に持って、水溜りを跳ね上げながら、裸足で…。
つかみ掛ろうとするパンダに、
「てめー、いいかげんに…しろよな!!」
と、とび蹴りを食らわす少女。
「ずしゃあっ!」 水溜りに吹っ飛ぶパンダ。
「パ…パンダだ…」 「パンダだよなあ。」
群がる野次馬達を尻目に、パンダはゆら〜りと立ち上がり、
ぺっとつばを吐き、拳法らしき構えをとる。
「くるかっ。」 足で、トントンとリズムをとる少女。
ビュビュビュと素早いパンダの攻撃をかわし、
「だいたい、おれは、最初から気が進まなかったんだ!勝手に許婚なんて…」
少女は、パンダの腕をがっきとつかみ、
「決めやがって!!」
と、パンダを投げ飛ばした。驚く、野次馬達。
「ずう〜むむむ!」 標識をなぎ倒して、転がるパンダ。
「はぁ、はぁ、はぁ…おれはもう一度、中国に行くぜ。てめーは一生そーしてろよ。」
少女は、そう言って、荷物を肩に担ぐと、すたすた歩き出した。
パンダは、むくっ!と起き上がると、少女の後頭部を折れた標識で
「げいん!」と殴る。そして、気を失った少女を担ぐと、
「かっ!かっ!」と、野次馬を威嚇。蜘蛛の子を散らすように去る野次馬達。

天道家 居間
「早乙女親子は、武者修行の旅に出ておってなあ。最近は、中国に渡っていたらしい。」
「へえ〜中国。」 早雲の言葉に、興味津々といった様子のなびき。
あかね「だからといって、強いとは限らないわ。」
なびき「ハンサム?」
かすみ「いくつなのよ。年下はいやよ。」
かすみ・なびき「乱馬くんて、どんな男なの?」
早雲は、「はっはっはっ、知らん。」と、きっぱり答えた?
「知らないの?」 なびきの問いに
「会ったことないもん。」と、オチャメに答える早雲。
その時、玄関の方から、ドスドス騒がしい音と
「はなせ、ばかやろー。」と、言う声が聞こえた。
「きゃー、きっと乱馬くんよ。」
「早乙女くん、待ちかねた!」
ドタタタ…廊下を走って行く、なびきと早雲。
(年上だといいんだけど)髪をなおしながら、かすみ。
(あーあー、やんなっちゃう)しぶしぶ、あかね。
その2人が廊下へ出ると、「どたたたたた」と、
早雲となびきが、すごい勢いで戻って来た。
その後ろから、のっしのっしとパンダが歩いてくる。
おびえる4人。
かすみ「これが、おとうさんの友だち?」
ぷるぷるぷるぷる…必死に首を横に振る早雲。
なびき「友だちでなかったら、なんでパンダがくるのよ。不自然じゃない!」
パンダは、抱えていた少女を、早雲の前に降ろした。
「きみ…もしや。」
「早乙女乱馬です。すいません。」
ぽっと、頬を赤らめて答える少女。
「おおっ!!そうか、きみが!」
早雲は、喜んで、がばっ!と、乱馬を抱きしめた。
「いやー、よー来てくれた。」
「ぐにゃっ」 抱きしめた時の感触…。
「?」 早雲は、あわてて、乱馬を離す。
唖然としている早雲。
「んー?」 なびきは、乱馬の胸を、ぷにぷに突っついた。
「ちょっと…やめてください。」 下を向く乱馬。
「女の子じゃない。」

ちりーーーーーーん
風鈴が、物悲しい音を奏でている。
布団に、涙を流しながら寝ている早雲。
「おとうさん、よっぽどがっかりしたのね。」
と、洗面器で、タオルを絞るかすみ。
その横に、なびきとあかねが、乱馬を間にして座っている。
そして、その後ろに、申し訳なさそうな顔をして座っているパンダ。
なびき「がっかりしたのは、こっちよ。許婚なんていうから…」
あかね「やめなよ、おねーちゃん。せっかく、来てくれたのに。」
なびき「おとうさんがいけないのよ。よく、確かめないから。」
早雲「息子が生まれたって、いってたもん!」
なびき「これのどこが息子なのよ、これのどこがっ!」
ぱんぱん、乱馬の胸を叩くなびき。
「ちょっと、やめてください。」 あのなぁーという表情の乱馬。
そんな乱馬に、あかねがやさしく声をかけた。
「ねー、道場見に行かない?あたし、あかね。仲良くしようね。」
にっこり笑う乱馬。

道場
あかね「あなた、拳法やるんでしょ?」
乱馬「うん…少し。」
あかね「ね、ちょっと手合わせしようよ。」
乱馬「え?」
あかね「軽くよ、軽く。大丈夫、本気出さないから。」
乱馬「本当?」
ダダダダダダダ、ダンッ!
乱馬に走り寄って、「せいっ!!」と、拳を出すあかね。
それを、ふわっとジャンプしてよける乱馬。
蹴りも、どんな拳でも、あっさりよけてしまう。
「どうしたの?打ってらっしゃい。」
それでも、あかねの攻撃をよけるだけの乱馬。
「はぁはぁ…」 (あ…当たらない。見切られている…?)
「(ほ…本気で…) いくわよっ!!」
あかねは、壁を背にして立っている乱馬に、思い切り拳を突き出した。
乱馬は、それを、やはりジャンプでよける。
壁を突き破ったあかねの拳。
乱馬は、あかねの後ろに降りると、あかねの頭をつんつん突付いた。
驚いて振り向くあかね。
「へへへー。」 笑う乱馬。「へへへへへへへへ」 頭をかく。
「あはははははははは」 つられて笑うあかね。
「結構やるわね。あーあなたが、女の子でよかった。
だって、男の子には、絶対負けたくないんだもん。」
「……」乱馬は、黙っている。

風呂場
パンダが、頭にタオルをのせ、かぽ〜んと、湯船につかっている。

ちりーーーーーーん
風鈴の音が響く部屋で、早雲と、めがねをかけた男が、
向き合って座り、2人とも、涙を流してお互いの顔を見ている。

台所
料理をしているかすみ。そこへ、なびきが来る。
「おねーちゃん、あのおっちゃん誰?」
「さあ…。」

縁側
「乱馬ちゃん。乱馬ちゃん。お風呂にはいんなさい。」
かすみが、乱馬に、タオルを渡しながら言った。
「え、いえ、いーです。」
「ダメよ、たっぷり運動して、汗かいてるでしょ。」
無理やり、乱馬の背中を押すかすみ。

風呂場
乱馬が、頭から、水をかぶっている。「う〜っ、冷てっ。」
そして、湯船に入り「あー、どーすっかなー。」
脱衣所へ、乱馬が入っていると知らずに、あかねが入ってくる。
「どーすっかなー。」(いずれバレるんだし、いいか)
あかねが入ろうとしていることに、気づかない乱馬。
「このまま出ちまえ」と、乱馬が、湯船から出たその時、
風呂場の扉が開いて、あかねが入ってきた!
一瞬、きょとーん!として、見詰め合う二人。
湯船から上がりかけの乱馬の胸は、ぺっちゃんこ。
あかねは、ちらっと乱馬の股間に目をやると、黙って風呂場から出て行った。
赤くなって、震える乱馬。
あかねは、ゆっくりと服を着ると、脱衣所から出て…
「キャ〜〜〜〜〜〜〜!!」
と、叫ぶと、一目散に、庭に飛び出し、「うぬうっ!」と、灯篭を持ち上げた。
「重しつけて、風呂桶の底に沈めてやる!!」
それを見ている、かすみとなびき。
「どうしたの、あかね、そんなものかかえて。」
「痴漢がお風呂に入ってる!!」
「素手で、たたきのめせばいーじゃないの。」
「こわくて、できないわよ!」
「おかしーわね。お風呂なら、今、乱馬ちゃんが入って…」
そこへ 「あの…」と、誰かやってきた。
「あ…あなた、誰よ?」
頬を赤くして、頭をかきかき、その少年は答えた。
「早乙女乱馬です。すいません。」
…カタまる、三姉妹。


― PART 1 終わり ―


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