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忍者戦士飛影(とびかげ)の第1話



開かれた扉



火星の地表。

砂漠の砂嵐の中、バギーが銃を乱射しつつ、巨大メカを追っている。
その様子を、火星開拓長官ハザード・パシャが監視している。

ハザード「アホが…… AF8番、もういい! お前には兵士の適性はない! 明日から建設労働に従事しろ! 次、AF9番、AF9番! ……ジョウ・マヤ、どうした? どこにいる!? 兵士資格テストを放棄すれば、有無を言わさず建設労働だぞ!」


その頃、主人公の少年ジョウ・マヤは、友人のリール、カンジと3人で、草原でバギーを飛ばしていた。
ジョウが銃で野ウサギを狙うが、それより早くリールの銃弾がウサギに命中する。

ジョウ「リール!?」


住宅街へ帰ってきたジョウたちを、友人の少女レニー・アイが迎える。

カンジ「よぅ、レニー」
レニー「ジョウ、なぜ資格テストを受けに行かなかったの?」
リール「ジョウは兵士になりたくないのさ」
レニー「じゃあ、なぜ銃なんて持ち出すの? 銃の所持は、16歳まで禁止されてるのよ」

ジョウは無言で、撃ち殺したウサギをレニーに投げ渡す。

レニー「きゃっ!」
ジョウ「ちぇっ。せっかくのお土産を粗末に扱いやがって。この星じゃ、大切なタンパク源なんだぜ」
レニー「ジョウ…… あなたが撃ったの?」
リール「俺が撃ったのさ。ジョウは心優しい男だからな。そんなジョウに惚れたんだろ、レニー? ちぇっ、悔しいな」

リールがレニーに近寄り、ヒップを撫でる。

レニー「きゃあっ!!」
カンジ「このスケベ野郎! レニーにバカなことをするな!」
リール「あれぇ? お前、レニーが好きだったのかよ? こいつぁビッグニュースだぜ!」
カンジ「うぐっ…… な、何ぃ、バカなことを言うな! こいつぅ!」
リール「どうしようってんだ!?」
カンジ「このズタ袋!」
レニー「やめて、カンジ、リール! やめてよ! ジョウ、なぜ止めないの!?」
ジョウ「騒ぎのもとはお前だろ? 好きにさしときな」


建設現場。大勢の労働者が作業に従事する中、1機の宇宙船が着陸してくる。

「また、新しいヤツのお出ましか?」
「バカなヤツらだ。待っているのは地獄とも知らずによ」
「『監獄がいいか、火星開拓に参加するのがいいか』と聞かれてよ、火星を選んだんだがよ」
「来てみりゃ、この始末だ。ヤツらもじきに泣きを見るぜ」

『AB10号、CR13号、MG17号、私語を慎め! 手を休めるな!』

「へっ、これだもんな」


宇宙船に乗って地球からやって来た人々。
銃を携えた兵士たちがものものしく迎える中、ハザードが部下のドッグ・タックを連れて現れる。

ハザード「皆さん。遠い地球から、火星開拓の使命に燃えて、よく来てくださいました。私が火星基地の長官、ハザード・パシャです。お見知りおきを。そして、私の秘書官のドッグ・タックです。」
ドッグ「ドッグ・タックだ。この中には、子供を連れて来た者もいるが、この基地では、16歳以上の者は男女を問わず労働に従事することが、義務づけられている」
地球の面々「えぇっ!?」「そんなぁ……」


夜、ジョウの家。
銃の手入れをしているジョウを、父のマツオが不安げに見ている。

ジョウ「銃くらい使ったって、どうってことないさ。『誕生日を1日間違えた』って言やぁいいんだから。そうだろ? 親父、そんな顔しないでさぁ、俺が16になるお祝いでも言ってくれないかな?」
マツオ「あぁ…… あれから、10年も経つのか。すぐに戻れると思ったから、お前を連れて来たのに。ジョウ、お前にはこんな重労働より、兵士になって楽してもらいたかったのになぁ」
ジョウ「気にすんなって、父さん。兵隊になってヤツらに協力するくらいなら、俺、父さんたちと働いてたほうがいいんだ」
マツオ「出世はできんぞ」
ジョウ「関係ねぇや、そんなの」

そこへ、レニーが食事を持って訪ねて来る。

レニー「こんばんは、おじさん」
マツオ「やぁ、レニー。何の用だい?」
レニー「お母さんがね、持ってってあげなさいって。美味しくできてるわよ!」
ジョウ「またお母さんに作ってもらったのか? いい加減に、自分でも料理くらい作れるようになれよな」
レニー「失礼ね! ちゃんと手伝ってるわよ」
ジョウ「本当かねぇ? 少しくらいやっとかないと、嫁に行くとき苦労するぜ。貰い手がないよ。そうそう、カンジはお前のこと好きなんだってなぁ。あいつならいいや。レニーの言いなりだぜ。食事だって毎日作ってくれるかもしれねぇし、お似合いだぜ」
レニー「私、カンジなんて好きじゃないもん! ベーだ!」

ジョウの弟分、マイク・コイルが訪ねて来る。

マイク「おい、兄貴」
ジョウ「なんだ、マイク?」
マイク「そろそろ時間だぜ、歓迎会の」
マツオ「歓迎会? 今日、地球からやって来た連中のか?」
ジョウ「地球の話が聞けるの、半年ぶりだもんな」
マツオ「だが…… 彼らは犯罪者たちだよ。昔の父さんと同じ、な」


盛り場。
地球からやって来た男たちのもとに、ジョウやマイク、それに大勢の火星の住民たちが群がっている。

地球の男「随分と集まってくれたじゃねぇよ。そんなに地球が恋しいのかい?」
ジョウ「俺ぁいつか、地球に帰るつもりさ」
地球の男「おめぇ、地球で産まれたんじゃねぇのか?」
マイク「で、どうなんだよ? 地球じゃ今、何が流行ってんだ? ニューヨークで話題になった『自由の女神ファッション』なんかは?」
地球の男「ハッハッハ! 自由の女神なんざ、もうありゃしねぇよ」
火星の男「う、ウソだぁ!」
地球の男「ウソなもんか。この前暴動があってよぉ、爆弾を仕掛けられて木っ端微塵よ!」

火星住民の老人の1人が、その男に食ってかかる。

老人「で、デタラメだ! あの、自由の女神がなくなるなんて、そんな……」
地球の男「本当の話なんだよ、爺さん。それだけ国民の、政府に対する反感が強いってことさ」
老人「わ、わしゃなぁ、あの自由の女神を見ながら育ったんだ。自由の女神は、わしの故郷そのものなんだ……」
地球の男「あれを壊したのは俺じゃねぇっつうの! 怒るぞ!」
ジョウ「やめろよ!」
地球の男「何ぃ! このガキ!」

口論をきっかけに、大乱闘が始まる。

一同「このぉ!」「くそっ、やりやがったな!」
店長「やめてくれ! わしの店が壊れる! やるなら外でやってくれ!」

そこへ、2人の警官が店に入って来る。

警官「こらっ! 何の騒ぎだ!? やめろ、やめるんだ!」

一同の乱闘が止まる。知らん顔のジョウに、警官が目をつける。

警官「またお前か…… ジョウ・マヤ、お前に召喚状が出ている。来てもらおうか」
ジョウ「なんだい、召喚状って?」
警官「お前は今日、兵士資格テストを受けなかったそうだな? 長官から事情徴収するよう、命令が出ている」
ジョウ「日にちを間違えたんだよ。明日だと思ってた。いいんだろ? 建設労働に従事すれば」
警官「兵士になるか重労働に従事するかは、本人が決めることではない。ハザード長官だ」
ジョウ「そんな法律、聞いちゃいねぇな」
警官「もう一つ。未成年者の分際で銃を使用したな? これはどう説明する?」
ジョウ「日にちを間違えたんだよ。よく考えてみたら、16歳の誕生日は明日だった」
警官「ほぉ〜、それもこれも1日間違えたってわけか…… ふざけんじゃねぇ! このガキぃ!!」

いきなり銃でジョウを殴りつける。

マイク「ジョウ!?」
ジョウ「何しやがんでぇ! 俺ぁ火星開拓法じゃ、今日はまだ未成年者だぜ! くッ、未成年者には、警官の暴力は禁じられているはずだ!」
警官「札付きは別だよ」
ジョウ「畜生!」

お返しに、ジョウが警官の股間を蹴り上げる。

警官「ぎゃあっ!」
ジョウ「マイク、逃げるぜ!」
マイク「あ、あぁ!」
ジョウ「どけぇ!」

店を飛び出したジョウとマイクが、バギーに乗って逃げ出す。
しかし警官たちも車両で追いかけてくる。

ジョウ「冗談じゃねぇぜ、本気んなってやがる! どうしても俺を拘置所へ放り込みたいようだな!」
警官「見つけたぜ……!」


その頃、どこかの宇宙空間では、ある宇宙船がトラブルに見舞われていた。

『第1エンジン破損! 第3エアーロック、起動不能!』『メインエンジン大破! 光速解除!』


依然として逃走を続けるジョウ。警官たちが銃を放つ。

ジョウ「くそぉ、本気で撃ってきやがった!」
警官「ハハッ、追いつめろ! 三方に分かれて挟み撃ちだぁ!」

そのとき突如として、空が一面、青白い閃光で包まれる。
驚いた警察車両が次々に転倒。ジョウたちも車から投げ出される。

ジョウ「うわぁ!」
マイク「兄貴ぃ!?」
ジョウ「あぁ、痛ぇ…… な、何がどうしたんだ?」

見たこともない、折鶴を思わせる白い巨大宇宙船が忽然と姿を現していた。

ジョウ「あぁっ……!?」

さらに空中からもう1機、別の銀色の宇宙船が虚空より姿を現す。

ジョウ「な、何だぁ!?」
マイク「何かこう、空気の中からポコンと出てきたみたいだったけど」
ジョウ「バカっ! 空気の中からあんなもんが出てくるかよ!?」

さらに、次々に人型の巨大ロボットが現れる。

ジョウ「人型ロボット!? 火星のもんじゃないぜ、ありゃあ!」
マイク「エイリアン……? ま、まさかぁ!」


ジョウを追っていた警官からハザード長官のもとにも、その報告が届いていた。

ハザード「何ぃ? エイリアンが侵略してきた、だと!?」
警官「わ……我々には見たこともない宇宙船で、しかもロボットが、2本足なんです。……わ、わぁ──っ!!」
ハザード「おい、どうした!? おい! むぅ……」
ドッグ「しかし我々地球人は、これまで一度もエイリアンに遭遇したことはないのですよ? 過去200年にわたる銀河系の調査でも、生命体発見の報告はないのです」
ハザード「200年目にして我々が遭遇したのかもしれんじゃないか、この火星でな。ま、とにかく報告のあったポイントまで行ってみよう。戦車部隊に出動命令を出せ」
ドッグ「わかりました」

火星基地の戦車部隊、爆撃機部隊が次々に出動する。
街中を闊歩する戦車部隊に驚くリール、カンジ。

リール「おぉい、カンジ! なんだか面白そうじゃねぇか」
カンジ「これだけの部隊が出動するんだ! こいつぁ只事じゃあないぞ!」
リール「行ってみるか?」
カンジ「OK!」

リールがバギーを出す。

リール「カンジ、早く乗れよ」
カンジ「よっしゃ!」
親たち「カンジ、どこへ行く!?」「リール!?」


突然出現した人型ロボットたちは、最初に出現した白い宇宙船を次々に攻撃し始める。

マイク「ジョウ、戻ろうよ。ヤバイよ、ここ」
ジョウ「うるせぇな! 帰るんなら1人で帰れ! 俺ぁもう少し見物してっから」
マイク「もう、兄貴の野次馬根性にはつき合ってられないよ。──兄貴、長官の爆撃機だ! あぁっ、戦車部隊も来たぜ!」
ジョウ「へへっ、こいつはいよいよ面白くなってきたぜ」

ハザード自ら、ドッグとともに爆撃機に乗って現場へ赴いている。

ハザード「宇宙船の国籍はどこだ? 分析はできたか?」
操縦士「所属不明です。火星上のすべての船に、該当するものはありません」
ドッグ「やはりエイリアンですかな?」
ハザード「まさか異星人の侵略を体験することになろうとはな。呼びかけろ。ヤツらはどこの星の者か」


銀色の方の宇宙船に、ハザードたちからの通信が届く。

「司令官、地球側から何か通信してきていますが」
「放っておけ」


ハザード機の操縦士「ダメです。通信波長が合いません。回線を開くことは不可能です」

ロボットたちの攻撃は、ハザードたちの爆撃機にまでおよぶ。

ハザード「宣戦布告もなしか、くそぉ…… 迎撃開始!」

ハザード側の部隊が迎撃に転じるが、次々に返り討ちに遭う。

ハザード「戦車部隊は全滅か!? なんてヤツらだ!」

マイク「兄貴……」
ジョウ「ダメだ、てんで歯が立たねぇや」

2人の背後にも、いつの間にか敵ロボットが現れている。

マイク「あ、兄貴ぃ!」
ジョウ「マイク、逃げろ!」

ロボットの攻撃。ジョウがマイクを突き飛ばし、なんとか攻撃をかわす。

マイク「兄貴ぃ!」
ジョウ「俺に構うな! 逃げろ!」

ジョウが逃げ出すが、ロボットは鎌を振るいつつ追いかけてくる。

ジョウ「鎌なんか持ちやがって、カマキリ野郎が! てめぇなんかにやられてたまっかよ!」

前方に、最初に現れた白い宇宙船。後ろを振り向くと、敵ロボットは依然として追って来る。

ジョウ「しつこい野郎だね、ったく! こっち来んなよ! 俺、そういうの趣味じゃねぇんだから!」

白い宇宙船は攻撃を受け、あちこちの装甲が砕けている。その裂け目から、ジョウが船内へ飛び込む。

ジョウ「はぁ、はぁ……」

中は広い通路。正面に3人の人影がある。
王冠を頭に頂いた、美しい王女といった風貌の女性。お付きと思われる男性が1人、女性が1人。
ジョウの目は、その王女らしき女性の美貌に引き寄せられる。

ジョウ「あぁ…… すんげぇベッピン!」

向こうの男性が何か言うが、聞いたこともない言語。

ジョウ「ん!? ……てんでわかんねぇや」

男性がいきなり、銃を向ける。

ジョウ「え!? お、おい、違う違う! 俺は敵じゃねぇよ、本当!」

敵ロボットが、宇宙船の中までジョウを追って来る。

ジョウ「来やがった!」

すかさず男女3人が、壁面のドアから逃げ去る。
慌ててジョウも一同に続こうとするが、すでにドアは閉じられ、びくともしない。

ジョウ「お、おい!? 何だよぉ! 隠れるとこがあんなら、俺も入れてくれよ!」

敵ロボットが次第に追ってくる。

ジョウ「くそぉ……」

ふと周囲を見渡すと、見たこともない機械があり、その中央にコクピットらしきスペースがある。

ジョウ「な、何だありゃ? 何だっていいや、あいつに首をすっ飛ばされるよりはマシだ!」

咄嗟にジョウが、その機械のコクピットに飛び込む。ひとりでにハッチが閉じる。

ジョウ「な、何だ、ここは!?」

敵ロボットの足音が近づいて来る。

ジョウ「くそぉ、来やがった!」

真っ暗なコクピットの中で、自動的にスクリーンが表示される。

ジョウ「な、何だ!? ──あぁっ!?」

スクリーンに、すぐ目の前に迫っている敵ロボットが映し出される。敵ロボットが鎌を振り上げる。

ジョウ「くそったれぇ──っ!」

その声に応じるかのように、ジョウの乗る機械から2本の鋼の腕が飛び出し、敵の鎌を受け止める。

ジョウ「え……!? これは! ここは人型ロボットの中なんだ。このロボットは、おれの意思どおりに動くフィードバック・システムになってるんだ。そうとわかれば、へへっ、面白くなってきたぜ!」

ジョウの乗りこんだ機械は、異星人の巨大ロボット・黒獅子(くろじし)であった。
黒獅子が2本足でしっかりと立ち上がり、敵ロボットを握りつぶす。

さらに何体ものロボットが追って来る。黒獅子が外壁を破って外へ飛び出し、敵ロボットたちもそれを追う。
初めて操るロボットでジョウが奮戦しつつ、敵ロボットを2体、3体と倒す。
だが隊長格らしき別タイプのロボットが登場。黒獅子を捕え、地面に叩きつけられる。

ジョウ「うぅっ……!」

動きの鈍った黒獅子に、敵ロボットがさらに迫る。
あわやというとき。どこからともなく、新たな白いロボット・飛影が飛来する。

黒獅子が変形、胴に飛影が合体し、ライオン形態となり、咆哮をあげる。
まさしく野獣のような身軽さで、敵ロボットを牙で噛み砕き、爪で引き裂き、ビーム砲で撃ち抜く。
瞬く間に、敵ロボットが一掃され、敵宇宙船は虚空へと姿を消す。

見物にやって来たカンジとリールが、マイクを見つける。

カンジ「おい、マイク!」
マイク「あっ、リール、カンジ!」
カンジ「大丈夫か?」
マイク「もう、何が何だかわかんないよ。人型ロボットが出てきて戦ったり、四つ足の獅子になったり」
リール「ジョウは?」
マイク「それが……」

黒獅子がもとの人型に変形。コクピットが開き、ジョウがぐったりと地面に倒れこむ。

一同「ジョウ!」
マイク「ジョウが動かしていたのか!?」
リール「一体どうなってんだ!?」
ジョウ「こっちが聞きてぇよ……」

攻撃を受けていた白い宇宙船。ジョウが出会った3人、それに大勢の人々が、甲板の上でジョウたちを見下ろしている。

ジョウ「あぁっ……!」


この異星人との遭遇が 少年たちの運命を大きく変えてしまうとは
誰1人 知る者はなかった


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