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無敵超人ザンボット3(スリー)の第1話


ザンボ・エース登場


駿河湾。
主人公の少年・(じん) 勝平(かっぺい)が愛犬の千代錦を連れ、不良少年・香月(こうづき)真吾たちを相手に、オートバイで張り合っている。

香月「うっ、こいつ!」
勝平「そうれ、それそれぇっ!」
香月「くそぉ、逃がすなよ!」
近くの漁師「勝平、やめねぇか! 練習場じゃねぇぞ!」

勝平「ほぉらほら、どうした! ここまでおいで、だ!」
香月「ヘッ! あんなでっかいマシン、使い切れるもんかい。ほらよ、向こうから回るんだ!」

勝平に煽られ、香月の仲間の1人が海に落とされる。

勝平「パワーが違うのよ、パワーが! 香月組をこっちに渡せ! そうすりゃ、こんなことしないで済むんだぜ!」
香月「ここを切り抜けられたら、渡してもいいけどよ!」

別道へ入っていた香月の仲間たちが、勝平の前方に回りこむ。
挟み撃ちに遭った勝平が転倒し、危く海に落ちそうになる。

香月「でっかいマシンは無理なのよ! これでお前も、俺たちのグループに入って……」

パトカーが駆けつける。

勝平「パトカーだ! 香月、勝負はこれからだ。沖の島でケリをつけようぜ!」
香月「勝平がうまく逃げられたらな!」
勝平「千代錦、来い!」

警官たち「戻れ! 勝平は向こうだ!」「でも前の連中のほうが、数が多いですよ?」「勝平だよ! 勝平を懲らしめるのが先だ!」

パトカーに追われた勝平が、バイクで石段を駆け上がる。

警官たち「いっ、階段!?」「構わん、行け!」

パトカーから逃げ続ける勝平。突如、地面を割って不気味な触手が飛び出す。

「まさか!? ほ、本当かよ!? じょ、冗談でしょ、これ……!?」

鉄橋にさしかかる勝平。触手により、鉄橋が叩き割られてしまう。
なんとか勝平は鉄橋を渡りきるものの、千代錦が危く落ちそうになる。

勝平「千代錦!?」

咄嗟にバイクから降りた勝平が、千代錦を引き上げる。
勝平を追ってきたパトカーが、そのまま鉄橋跡から落下し、大爆発。

勝平「な、なんで…… こうなったの!?」


警察署。

「県警204、無線が切れました」
「網元のクソ坊主、他人のオートバイを無断借用、無免許運転、挙句の果てにケンカ三昧、またか! 親を呼べ! 宝探しなんかやめさせて、親子ともども締め上げてくれるわ!」


海上に築かれた作業所。勝平の祖母・梅江と、彼らの一族の長老の神北兵左衛門。

梅江「お爺さん! 今の地震、大丈夫ですか?」
兵左衛門「フッ、あのくらいの地震。一太郎、どうだ? 時間がかかりすぎるぞ。──よぉし、上がって来い」

海中で作業にあたっていた、勝平の兄・一太郎が上がってくる。

兵左衛門「急げ! 排水をするぞ」

そこへ勝平の母・花江が荷物を届けに来る。

梅江「ご苦労さん」
花江「お婆ちゃん、こんな宝探しは、もうやめてくださいよ。お父さんは来週には帰って来ますからね」
梅江「もう、おしまいだろ。今日で」
花江「本当にご先祖様の宝が見つかるんですか?」
梅江「あぁ、見つかるね」
花江「知りませんよ、こんなことでお金使って。怒られますよ」
一太郎「母さん、お爺ちゃんの言うとおりになりそう」
花江「はい、お弁当」


香月と仲間たちがボートで、決闘場所の小島へと向かっている。
突如、沖で貨物船が大爆発する。

香月「か、貨物船が!?」

その様子を、カタツムリにも似た奇妙なメカが監視している。
どこかで異形の男が、スクリーンに映し出されるその光景を見ている。

「ホーッホッホ! スネソーダーから第一報が入ったか。壊すものがあるではないか。どんな生き物がいるのか、スネソーダー? ──ホッホッホ、殺しがいのある生き物が、たっぷりおるぞ。わしも目覚めた価値があったというものじゃ」


勝平も、自分の親衛隊の少女・アキとミチを連れ、ボートで小島へ向かっている。

アキ「勝平、帰ろうよぉ。こんなときに決闘しなくてもいいじゃないの」
勝平「冗談こくなよ! こんなときだからこそ、カッコいいってわけ!」
アキ「ふぅん、それもそうだけどさ」
勝平「母ちゃん、いないな? 見つかったら、うるせぇからな。──香月たち、もう来てやがる。千代錦、いいな? あらよっと!」

千代錦が小島へ上陸、続いて勝平が上陸。千代錦が様子を窺い、咆えて合図。

勝平「よぉし、来てるか。よしよし。ん、まじぃな、風下か」

香月の投げた錨が飛んできて、勝平の足元に突き刺さる。

勝平「おっと! やるじゃんかよ、先に来て戦いやすい場所を選ぶなんてね!」
香月「ヘヘッ、勝つための条件ってやつよ! ん? アキ、ミチ、またついて来てるのか!? お前もお前だ、ここは男同士の世界だぜ!」
勝平「いいじゃねぇか、俺の親衛隊だい! 勝つとこ、ちゃんと見てもらわなくちゃ。それっ!」
香月「おっと!」
勝平「このぉ、お返しだ!」

あのカタツムリ状の奇妙なメカが、そばの空中に浮かんでいる。一同がそれに気づく。

アキ「で、でんでん虫みたい……」
ミチ「な、何、あれ?」
香月の仲間「香月、ひ、引き上げようぜ」

突如、あの不気味な触手が海上から飛び出し、勝平のボートが破壊される。震え上がる一同。

勝平「香月、ミチとアキを頼むぜ!」
香月「で、お前は?」
勝平「爺ちゃんとこ行く。頼む! 香月についてけよ!」
アキ「勝平は?」
勝平「人のことは心配するな!」
香月「行くぞ、みんな! 勝平、本当にいいのか?」
勝平「いいから、いいから。港に早く帰れよ!」

香月たちはボートで脱出。勝平は千代錦を連れ、兵左衛門たちのいた作業場に到着。
作業場はすでに破壊され、兵左衛門たちの姿はない。

勝平「あの変なのがやったんだ、爺ちゃぁん! 婆ちゃぁん! 一太郎兄ちゃぁん! 爺ちゃぁ──ん! 一太郎兄ちゃ──ん! 逃げたのかなぁ……」

千代錦が匂いをかぎつけ、海への入口を咆えつける。

勝平「ここに入って行ったのか? まさかねぇ…… こんなときに宝探しでもないだろう?」

あの触手が海から飛び出す。

勝平「わぁぁっ!? こ、困るんだよなぁ。こういうのは、俺」

作業場が破壊され、千代錦が海に落とされる。

勝平「わぁっ! ち、千代錦ぃ──! この、負けてたまるか こんにゃろ、こんにゃろ!」

必死に触手に抵抗する勝平も、海に突き落とされる。

勝平「真昼間から、お化けでもないでしょう…… 来やがれ、来やがれ、来やがれってんだ。どっからでもかかって来やがれってんだ!」

海に漂っている流木を手にして身構えると、また触手が飛び出す。

勝平「わぁ、来ました!」

流木を叩きつけるものの、敵うわけもなく、海に突き落とされる。
海上に顔を出すと、千代錦が必死に触手に抵抗している。

勝平「千代錦ぃ、千代錦ぃ!」

海に落とされた千代錦が、勝平のもとへ顔を出す。

勝平「このまま、お化けにやられちまうのかなぁ…… わ、わぁぁっ!?」

突然、眼下の海中から、巨大な機械が浮上する。

香月「な、何だ、あれは!?」

それは見たこともない、巨大な船であった。
その上に乗る形となった勝平。沖では無数の触手が水中から飛び出し、蠢いている。

勝平「あ、あんなにでっかい…… 化物みたい……」
兵左衛門の声「勝平! 学習要綱第31章、第2項を思い出せ」
勝平「31章……第2項? 知らねぇ。お、俺は知らねぇよ」
兵左衛門の声「思い出せる! 走れ、勝平、『シュート・イン』だ!」
勝平「シュート…… イン?」

勝平の脳裏に映像が浮かび、声が響く。

『シュート・イン。『シュート・イン』ハ・速ヤカニ戦闘メカニ乗ル装置ニテ・次ノ図示ニテ・説明サレル』

勝平「知ってる…… 知ってるぞ。シュート・インだ! 急げ、それっ!」

勝平がそばの搭乗口へと駆け込む。
スロープを滑り落ち、内部に到着。そこには花江と梅江が待ち受けている。

勝平「つ、着いた! お婆ちゃん!?」
花江「ほら、ほら」

花江がいきなり、勝平の服を脱がしにかかる。

勝平「お母ちゃん、何すんだよ!?」
花江「でも、いいんですか? お婆ちゃん」
梅江「ご先祖様を信じるんだね」
勝平「うわっ 恥ずかしい」
花江「でも、こんな子供に……」

巨大スクリーンの前に、兵左衛門が座している。

兵左衛門「スクリーンは良好だ、一太郎」
勝平「じ、爺ちゃん!? な、何なんだよ、母ちゃん!?」
花江「爺ちゃんたちに聞くんだね、あたしゃ知らないよ。勝平に何かあったら、ただじゃ済みませんからね!」
兵左衛門「そんな個人的なことを言ってるときですかいな」

花江と梅江が、勝平を真っ赤な戦闘服に着替えさせる。

梅江「勝平や、お前ならこの大事なときを切り抜けられる」
勝平「婆ちゃん……?」
梅江「あれがロボットの入り口なんだと。お行き」
勝平「うん」

そばのハッチへと身を躍らせるが。
勝平の座したシートが自動的に、格納庫内の別のメカの中へと運ばれる。

兵左衛門『それが『ザンバード』だ。わかるか?』
勝平「ザンバード?」

勝平の乗ったメカ、ザンバードが船外へと運ばれる。
沖からは、触手の主である巨大な怪物が出現する。

勝平「わぁ! まだ、本体があんのか?」
兵左衛門『発進じゃい』

ザンバードが空へと飛び立つ。

勝平「ちょ、ちょ、ちょっと! じ、爺ちゃん! 何なんだよ!」
兵左衛門『いつまで騒いどるんじゃ、前を見ろ!』
勝平「じ、爺ちゃん!?」
兵左衛門『前から、戦闘機に乗ってみたいと言っとったろうだから? だから乗せてやったんだ』
勝平「あぁ、なるほど、これ戦闘機…… えぇ〜っ!? じょ、冗談でしょ? 俺が運転できるわけないでしょ!?」
兵左衛門『あぁ? 計器類にしても、みんな知ってるものじゃないのかな?』
勝平「え? そういや…… みんなどっかでお目にかかったような?」
兵左衛門『かくありなんと思って、この半年間、お前が眠っとる間に、ずぅっと睡眠学習で学ばせてあったんじゃ』
勝平「ふぅん、睡眠学習……」
兵左衛門『ご先祖様の遺してくれた、素晴しい技術でな』
勝平「じゃあ、あの船もかい?」
兵左衛門『そういうことだ。これが、わしらの探していた宝物というわけじゃ。今、地球には恐ろしい魔の手が伸びておる。ご先祖様の古文書に『ガイゾック』と記されている敵だ』
勝平「ガイゾック?」
兵左衛門『目の前にいるロボットが、そのガイゾックのメカブーストのはずだ。あれと戦えるのは、今の地球にはおまえと、そのザンバードしかおらん』
勝平「俺が戦う!?」
兵左衛門『そうだ。お前の友達も救わねばならんぞ!』
勝平「え!? あっ! こ、香月たちが!!」

そのメカブーストなる怪物が、香月たちのボートに襲いかかっている。

勝平「バードガンってんだ! 照準!」

ザンバードに装備された機銃・バードガンで、怪物の触手を撃ち抜く。

勝平「ふぅ、危ない、危ない」
兵左衛門『急上昇だ!』

反射的に勝平がザンバードを急上昇させる。メカブーストの撃った光線を、ザンバードがかわす。

勝平「メカブーストが何か撃ったぜ!?」
兵左衛門『レーザーだ。左のスクリーンは後ろが映る。見るのを忘れるな!』
勝平「映った映った。うわぁ!」

メカブーストがさらに攻撃を繰り出すが、ザンバードはことごとくそれをかわし、バードガンで反撃。

勝平「うまくよけてくれるじゃん、このザンバードってヤツぁ!」

油断した隙に、レーザーがかすかにザンバードの翼をかすめ、機体が大きく揺れる。

勝平「わぁっ! レーザーが羽をかすめただけで、これかぁ!?」

さらにメカブーストがミサイルを発射。ザンバードがかわすが、ミサイルが追って来る。

勝平「えぇっ!? お、追いかけてくるぜ!?」
一太郎『ホーミングミサイルだ! エンジンを切って、妨害ビーコンを出せ!』

勝平が指示に従うと、ミサイルは別の方向へと飛んで行く。

一太郎『よぉし、切り抜けた! 勝平、エースチェンジだ!』
勝平「え!? エースチェンジって……? ん、わかった、わかった!」

スイッチの操作により、勝平の乗った座席が移動し、別のコクピットへと運ばれる。

勝平「ここ、ここだよ! これこそザンボエースの運転席!」

さらにザンバードが変形。四肢が伸び、頭部が現れ、巨大ロボ・ザンボエースが完成する。

香月の仲間「ロボットになったぞ!」
香月「一体、あれは何なんだ!? アキ、本当にあれに勝平が乗ってたってのか?」
アキ「間違いないわ、見えたもの」

メカブーストの触手により、香月のボートが転覆。すかさずザンボエースが香月たちをすくい上げる。

勝平「ヘヘッ、こうなると、香月なんかひとひねりだな」
爺「勝平! 急げ!」

ザンボエースが香月たちを陸に上げ、メカブーストに立ち向かう。

香月「勝平…… 一体何者なんだ、あの連中は?」

メカブースト目掛け、ザンボエースが宙を舞い、パンチの連打。

勝平「いける、いける! 香月やっつけるより 簡単そう!」
一太郎『勝平、空中戦はザンボエースには無理だ! 下がれ、下がるんだ!』
勝平「冗談冗談! そぉれ、とどめよ!」

しかしメカブーストの反撃で、ザンボエースは海に突き落とされてしまう。

一太郎『ほぉら見ろ! 陸へ上がれ! そこの岬なら、誰にも迷惑をかけないで戦えるぞ!』
勝平「まかせとけって! 戦ってんのは この俺だぞ。アフターバーナー!」

兵左衛門「一太郎、ザンボマグナムを忘れとる!」
一太郎「あっ、ザンボマグナム…… と、 これだ」

勝平「まじぃな、こんなデカブツだとは」

メカブーストが触手でザンボエースを絡め取るが、ザンボエースはそれを引きちぎる。

勝平「ひぇぇ、ご機嫌なパワー!」
一太郎『マグナムだ、受け取れ!』

ホルスターが飛来し、ザンボエースの腰に装着される。

勝平「んにゃろ! こいつがあったんだ、思い出した! ザンボマグナムだ、行くぞ!」

ザンボエースがホルスターから専用銃ザンボマグナムを取り出し、メカブーストを銃撃。

勝平「やったぁ、当たったぁい!」
兵左衛門『敵の正面にザンボエースが動いとらんときは、自動で狙いをつけてくれる。だがな』
勝平「だが、って……?」

メカブーストが襲い来る。ザンボエースは攻撃をかわしつつマグナムを連射するが、今度は命中しない。

兵左衛門『ザンボエースが動いとるときは、お前が狙わなくちゃいかん!』
勝平「わかった!」

メカブーストの撃ち出すミサイルを、ザンボエースがマグナムで銃撃。
ミサイルが爆発。爆煙がやむと、メカブーストは姿を消している。

勝平「い、いない……? あのデカブツが、いない……?」
一太郎『グレネードランチャーも用意しろ! マグナムの弾だけじゃ、倒せないかも』
勝平「うるせぇ! こっちはキリキリしてるんだ!」

突然、地中からメカブーストが飛び出す。

勝平「見ろぉ! 引っ込んでろぉ!」

ザンボマグナムを連射。メカブーストの頭部が砕ける。

勝平「やったか?」

しかし、なおもメカブーストは倒れない。

勝平「参らねぇのかなぁ、参らねぇのかよぉ……」
一太郎『勝平、メカブーストの弱点を探せ! 一番弱い所が 必ずあるはずだ』
勝平「言うのは簡単なんだよな、言うのは」

首を破壊されたままのメカブーストが襲い来る。
ザンボエースが、ザンボマグナムにグレネードランチャーを装着、メカブーストの胴の柔軟そうな箇所に狙いを定める。

勝平「あそこだ、間違いない!」

グレネードランチャーを発射。弱点に直撃を食らったメカブーストが、大爆発を遂げる。

勝平「ひぇぇ! やったじゃんかぁ!」

冒頭の異形の男が、その戦いの様子を見ている。

「ホーッホッホ! 地球にも、こんなロボットがあったか。まぁ、いいだろう。今日のメカ・ブーストは所詮、偵察用じゃ。これからはゆっくり、ゆっくりと殺しつくしてやるともさ。ホッホッホ!」


兵左衛門たちのもと。スクリーンには、別の船が映し出されている。

兵左衛門「信号が入っとりますぞ ビアルII世どうぞ」
通信の声『ビアルII世、浮上します』
一太郎「一体、船は何隻あるんです? お爺さん」
兵左衛門「この東京湾のビアルII世と、こっちのビアルIII世、そして我々のビアルI世の3隻じゃ」
一太郎「はぁ…… たったの3隻ですか」
花江「こ、こんなものを、私達の親戚が持っていたなんて……」
兵左衛門「我が神ファミリーの、悲しい運命と言えるかもしれんのぉ……」


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