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無敵ロボ トライダーG7(ジーセブン)の第1話


太陽系宇宙。

火星上空の巨大宇宙ステーションのそばを、1機の宇宙船が行く。
中には2人の乗組員。彼らの前方を、宇宙貨物船が追い越して行く。

「ねぇ、ヤマさん。この頃、貨物船の数がまた増えましたね」
「あぁ、ありがたいね。それだけ、我々の美しき地球が繁栄してるってことだからな」
「そりゃ、そうですね。でも繁栄の陰には、落ちこぼれていく者もあるってことですよ」
「ま、そういうことだ」

突然の衝撃音。どこからか閃いた光線が前方の貨物船に命中し、大爆発。

「おい、あれは何だ!?」
「わ、わかりません!」

巨大ロボットが飛来し、宇宙ステーションへと向かう。

「ロボットだ! 宇宙ステーションへ向かってます!」
「いかん! 急いで地球本部へ連絡しろ!」
「はい!」


地球、宇宙防衛省。長官の足立が、部下からの報告を受ける。

足立「何ぃ!? 今度は宇宙ステーションが襲われたと!?」
部下「はい! 応援を要請してきております!」
足立「ふむ、また応援の要請の話か? そんなことなら、すぐ出動させればいいじゃないか。いちいち長官直々に……」
部下「ですが、長官! 場所は火星近くですよ!? 応援を出したところで、到着するまでに全滅です!」
足立「だったら、どうしろと言うんだぁっ!?」
部下「それはですねぇ、兼ねてから申し出ているように、機動性のあるパトロール艇をどんどん買い入れるとか、このへんで画期的な改革を真剣に考えていただかないと、どうすることもできませぇん!!」
足立「……そうガミガミ、大声で怒鳴らんでもいいじゃろう」
部下「どうなさるんです? 考えていただけるんですね?」
足立「ふぅむ…… どうするったって、どうすればいいんじゃ? ……そうだ!」


がんばれ若社長!


とある下町の零細企業、竹尾ゼネラルカンパニー。
さびれた事務室にいる、事務員の砂原郁絵、専務取締役の柿小路梅麻呂。電話が鳴る。

郁絵「おはようございます。こちら宇宙の何でも屋、竹尾ゼネラルカンパニーですが。──少々お待ちください。専務、宇宙防衛省からお電話です」
専務「ん、私に? はい、もしもし。柿小路ですが? ──え!? 何!? ひゃ、百万円ですか!? は、はいはいはい、わかりました! わかりましたとも! 喜んでお引き受けしますです、はい! ──百万円だぁ──っ! 社長にお知らせせねばぁ──っ!!」


社を飛び出した専務が、自転車をこいで土手道を行き、タクシーの前を横切って走り去る。

自転手「バッキャロー! 気をつけろい!」


その頃、主人公・竹尾ワッ太は、緑ヶ丘小学校で担任の三重子先生の授業を退屈そうに受けていた。

三重子「今日はイギリスの生んだ大劇作家、シェイクスピアのリア王について研究しましょうね。56ページを開けて。いいですか? あらすじ。イギリスのブリテンという国を治めていたリア王には、3人の娘があった。──ワッ太くん!?」
ワッ太「へ!? は、は…… ハックション!」
三重子「もう、ワッ太くんたら。今のところを読んでごらんなさい」
ワッ太「はい! はおろだきか…… あ、逆さだ。リトマス紙の性質、リトマスに水や炭酸をつけ……」
三重子「もう、それは理科の本でしょ? 今は国語の時間なのよ!」
ワッ太「え? あ、アッハッハ!」
生徒たち「ハハハハハハ!」
三重子「静かに! 静かにしなさぁい! さ、ワッ太くん、国語の本を出して」
ワッ太「は、はい。えぇっと、えっと、どこだったかな? あ、あった」
別の生徒「おい、ワッ太くん、お呼びがかかったぞ」

窓の外を見ると、自転車に乗った専務が校門に駆け込んでくる。

三重子「今度は何をしてるの、ワッ太くん!?」
ワッ太「あ、いや、ちょ、ちょっと、お呼びが」
三重子「え、何ですって?」
ワッ太「お呼びがかかったんでね…… ほらね!」

教室に専務が飛び込んで来る。

専務「社長ぉ──! 社長、喜んでください。お仕事ですぞ!」
三重子「またですかぁ、専務さん……」
専務「え? いやいや、毎度こりゃどうも。社長、お急ぎください」
ワッ太「あれ? 今日、予定あったっけ?」
専務「おおありですぞ、社長。報酬はなんと、百万!」
ワッ太「へ!? 百万!?」
専務「その通りです、社長!」
ワッ太「ほんとかよ!? 百万か、何を買おうかな。えっと、あれも、これも……」
専務「感謝感激、雨あられ。社長の給料から、2ヶ月貯まっているガス代も電話代も払える計算でありますです、はい!」
ワッ太「えっと、プラモデルと、グローブと……」
専務「なんたって百万ですからなぁ、これで我がゼネラルカンパニーも、今月も安泰です。社長!」
三重子「あのぉ、もう少し小さな声で……」
専務「あ、こりゃお騒がせしました、どうも。社長、社へお急ぎください!」
ワッ太「うん。先生、悪ぃ、そういうことなんで。じゃあみんな、お先!」

ワッ太と専務が教室を出ようとするが、そこに隣のクラスの担任・大門先生が立ちふさがる。

大門「待ったぁ!」
ワッ太「よぉ、大門先生!」
大門「よぉじゃない! いいか、ワッ太? お前の立場はよぉくわかる。しかしだ。小学生のすべきことは勉学に勤しみ、元気に遊ぶことだ!」
ワッ太「先生、いつも元気に遊んでるよ!」
大門「……うるさぁい! 専務も専務だ。社会的立場にある人が、小学生の本分を放っぽりだして、仕事に引っ張り出すとは!」
専務「それでは伺いますが、先生ご自身の本分は?」
大門「もちろん、子供に勉強を教えることです」

後ろでは大門のクラスの生徒たちが、大門を小突いている。

生徒「先生! 僕たちの授業、どうなっちゃったの?」
大門「あ!? そうだったなぁ、アッハッハ! いや、こりゃどうも!」
専務「社長、いまのうちです!」
大門「こら、ワッ太ぁ!」


専務が自転車の後ろにワッ太を乗せ、社へと急ぐ。

ワッ太「降ろせとは言わないからさ、せいぜいオートバイくらい買おうぜ」
専務「何を仰います! まだ、この自転車で…… 十分です!」
ワッ太「ちぇっ、毎日大変だろうと思って心配してんのに。人の気も知らねぇで、勝手にしろい!」

社に到着。郁絵が、ワッ太の制服を用意して待っている。

郁絵「はい、社長」
ワッ太「サンキュ! あれ、鉄っつぁんたちは?」
郁絵「トライダーシャトルで待ってますわ」
ワッ太「あ、そ。じゃあね!」

ワッ太が社内のエレベーターから、地下の基地へ。
地下の格納庫に隠された巨大ロボット、トライダーG7に乗り込む。

ワッ太「安全、確認! 発進!」

そばの公園から子供たちが避難し、公園が真っ二つに割れ、トライダーG7が飛び立つ。

ワッ太「トライダー・チェーンジ! コスミック!」

トライダーG7が飛行形態のトライダーコスミックに変形。
さらに社員たちの乗った移動事務所・トライダーシャトルと合体し、巨大宇宙船トライダーフォートレスとなり、空へと飛び去る。

地上では、幼い子供を抱いた主婦がそれを見上げる。

「ほら、見てごらん。いつ見ても凛々しい姿だねぇ」


火星のそばでは、謎のロボットの暴挙が続いている。
防衛省の宇宙艇が立ち向かうものの、ことごとく撃墜される。冒頭の宇宙船の2人も奮闘している。

「くそぉ!」
「ヤツを宇宙ステーションに近づけないようにするんだ。いいな!」
「それにしても、ヤツはどこから現れたんでしょうね?」
「わからん。それより地球からの応援隊は、一体どうした!? こっちへ向かってるんだろうな!?」
「民間に依頼したそうですけど」
「何ぃ!? 民間に!?」


トライダーフォートレスは大気圏を離脱し、宇宙を目指す。

ワッ太「12時か…… 今頃みんな、うまそうに給食、食ってんだろうな。ついてねぇよなぁ、俺は。専務ったら決まって、給食の前に来んだもんなぁ」

シャトルの郁絵から、通信が入る。

郁絵「社長、きつねうどん作りましたけど、食べません?」
ワッ太「え? 食べる、食べる! グッドタイミングだぜ、郁絵ちゃん!」
郁絵「あら、本当ですか。それじゃ、自動操縦に切替えていらしてください。用意しておきます」
ワッ太「なんたって気が利くんだよなぁ、郁絵ちゃんは!」

機内のサロンで、専務、木下、常務の厚井鉄男に、郁絵がきつねうどんを振舞う。

郁絵「はい、どうぞ」
専務「ふふふ、いいですなぁ。いただきます」
郁絵「いただきまぁす!」

ワッ太が室内に駆け込んで来る。

ワッ太「もう食べてんの!? ひゃぁ、うまそう! いただきまぁす、熱熱熱! 俺、ちょうど腹ペコだったんだよ。お、入ってる入ってる。好きなんだよなぁ、このナルト」
木下「社長! よろしかったら、おひとつ」
ワッ太「え、俺にくれるの? 悪ぃなぁ、木下さん」
木下「とんでもない! 社長のためなら、ナルトくらい」
ワッ太「それんじゃ、遠慮なく!」
専務「社長、なんですなぁ。我が社にもこう、活気があふれてきましたなぁ。」
常務「だったら、こっちにも少し予算を回してくれ。トライダーの手入れだって、バカにならんのだ」
専務「いや、まぁ、まぁ。そこはなんとか、今の予算の枠の中で」
常務「もう…… 飛んでるとき突然、空中分解しても知らんからな」
ワッ太「お、脅かすなよ、鉄っつあん」
常務「ロボットだって、生き物なんだ。やり方によっては、腹も立てるさ」
ワッ太「や、やばいよ専務、なんとかしてくれよ」
専務「はぁ、考えておきます……」
ワッ太「頼むぜ。あ、そうだ。専務、仕事の話だけどさ、今度の仕事を頼んで来た防衛長官っていうと、あの太ったおっさんだろ?」
専務「えぇ、長官直々のご依頼です。嬉しいじゃありませんか。亡くなられた大社長とのお付き合いを、今もって覚えていてくれて」
ワッ太「それでさ、今度の仕事って何?」
専務「え? はて、そう言えば仕事の内容は……?」
ワッ太「え〜っ!? 何だってぇ!?」
専務「係長。君、知らんかね?」
木下「じょ、冗談じゃないですよ! 知るわけないでしょう? 電話を受けたのは専務なんですから!」
専務「いやぁ〜、こりゃあうっかりしてました!」
郁絵「フフフ、しっかりしてくださいね、専務」
木下「そうですよ、早くご連絡を」
専務「わ、わかった。至急連絡をとってみます。少々お待ちを」
ワッ太「大丈夫かなぁ、この会社……」


火星のそばでは、謎のロボットによりステーションが破壊され始めている。
冒頭の宇宙船が、なおも必死に立ち向かっている。

「応援隊はまだ来ないのか!?」
「ま、まもなく到着すると思いますが」

足立長官と連絡をとっているワッ太たち。

足立「と、まぁ、そういうわけだ。ワッ太くん、ひとつ頼むよ」
ワッ太「じょ、冗談じゃないよ! 暴れてるロボット排除なんて、そりゃかなりヤバイ仕事じゃないか!」
郁絵「そうね。安全な仕事だったら我が社に来るわけないし……」
ワッ太「そりゃ、我が社は宇宙の何でも屋だから、注文があれば何でもやるけど」
専務「いや、ここまで来たら、戻るわけにもいきません……」
郁絵「無責任よ、専務は! 仕事の内容も聞かないで引き受けるなんて」
専務「しかし、百万っていうもんだから、つい……」
ワッ太「そりゃあ、専務はいいよ。ソロバン弾いてればいいんだからさ。しかし、俺はねぇ!」

突然、警報が鳴り響く。
ワッ太がスクリーンを操作すると、謎のロボットがステーションを破壊している光景が映し出される。

専務「しゃ、社長!?」
郁絵「宇宙ステーションが危ないわ!」
専務「社長、何とかお願いします! この仕事には、我が社の未来と社員の生活がかかってるんですぞ」
ワッ太「だって、あ、あんなロボットと戦うなんて……」

ロボットによりステーションが破壊され、火の手が上がる。
それを見たワッ太の目に、次第に決意の色が浮かぶ。

郁絵「きゃあ、もうダメだわ! 社長、早く助けて!」
ワッ太「わかった!」
専務「常務、わしらもスタンバイだ!」
常務「よぉし!」

ワッ太がトライダーの操縦席へ。

ワッ太「よし、シャトルを切り離すぞ。いいな!」
常務「こちら、準備OK!」
ワッ太「よし。トライダーコスミック・セット・オフ!」

トライダーシャトルが分離。トライダーコスミックのみが、宇宙ステーションへと向かう。

専務「百万円ですぞ、社長……」

宇宙ステーションでは、ロボットにより外壁のヒビが入り、中の人々が逃げ惑っている。

ワッ太「あそこか。よし、ミサイル攻撃だ!」

トライダーコスミックが飛来し、ロボット目がけてミサイルで先制攻撃。

ワッ太「ほんじゃ、本格的にやってみっか! コスミック・チェーンジ! G7!」

トライダーコスミックが変形してトライダーG7となり、ロボットに立ち向かう。

ワッ太「よし、行くぞ! G7ミサイル!」「トライダージャベリン! 来い、ロボット!」

トライダーG7と敵ロボットとの戦い。敵の攻撃がトライダーに炸裂する。

常務「社長、社長!」
木下「がんばれ、社長!」
郁絵「がんばって!」

ワッ太「やりやがったなぁ! よし、見てろぉ!」

反撃に移るトライダーが、次第に敵ロボットを圧倒してゆく。

ワッ太「よぉし、とどめだ! トライダーバードアターック!!」

鳥型のエネルギーがトライダーの全身を包み込み、巨大な光の鳥となったトライダーが、流星とともに宙を舞う。
必殺の体当たり攻撃で、敵ロボットが両断され、大爆発。

郁絵「やった、やったわ!」
専務「おぉ、社長、お見事です…… 社長、お疲れ様でした……」
ワッ太「ふぅ〜、まったく危ない仕事だったよなぁ。一歩間違えれば俺、死んじゃうところだったぜ」
専務「ありがとうございます! これで間違いなく、今月の給料が出せますです」
ワッ太「えぇ〜っ!? 途端に銭勘定だもんなぁ! 参るよ、専務には」
専務「あ、いや、あの、そんなつもりじゃあ……」
ワッ太「アッハッハ! 照れてやんの」
一同「アッハッハッハ!」


一方、どこかの宇宙。
謎の宇宙船の中で、煙草をふかす男に、別の男が報告をしている。

「何、失敗したと?」
「申し訳ございません、オンドロン様!」
「所長と呼びたまえ、所長と」
「は、はい、所長」
「今回は大目に見てやる。だが、二度と同じ失敗は許さんぞ!」
「ははぁ!以後、気をつけます!」


夕暮れの緑ヶ丘小学校。
教室にワッ太が駆け込んで来る。すでに放課後で誰もおらず、ワッ太の机の上には宿題の山。

ワッ太「冗談だろぉ!? 今日もまた、こんなに宿題があるなんて。俺、もうイヤぁ!」

教壇から、大門先生が顔を出す。

大門「ワッ太ぁぁ!!」
ワッ太「わ、わぁぁっ!?」
大門「ま、そう悲観するな、ワッ太。がんばれよ」

大門先生が机の上に何か置き、教室を去る。
見ると、まんじゅうが置かれている。

ワッ太「まんじゅうか! いいとこあるぜ。サンキュー、大門先生!」


(続く)
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