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 ミルモでポン!@

::: ミルモと楓の出会い編 :::


「来たっっ、来たよ、悦美、ホラっ!!」
「ええ―どこぉ?」
「200mくらい先に見えるじゃん!!」
…実はよく見えない。
「わからねーよ…」
「今日もカッコい〜♪」
― あたし 南 楓(みなみ かえで)中学1年生
同じクラスの 結木 摂(ゆうき せつ)くんに 片思い中です♪
入学した春に ひとめぼれして はや11ヶ月… ―
モノカゲに隠れて、結木くんが来るのを待っている楓と友だちの悦美。
「今よ、楓!!今日こそあいさつすんのよっ。」
「うんっ。」
その時、目の前を結木くんが…!
「(ドキドキ…)おっ…おはおはおはおは…」
真っ赤になって口ごもる楓の前を、さらっと通り過ぎる結木くん。
「さっさと言えよー!!」 怒る悦美。
「だってハズイんだもんっ!」
「バカッ!男は愛嬌のある女が好きなのよ。
笑顔であいさつ、これ基本!さあ、ご一緒に!!」
営業用スマイルをキラメかせて、悦美が見本を示す。
「こ…こう!?」 まねする楓。
そこへ…
「ゆーきくんっ!オッス♪教室まで一緒しよっ♪」
スチャッ!と、現れたのは、美少女 日高 安澄(ひだか あずみ)!
なにげに振り向く結木くん。 「日高…勝手にすれば…」
「うんっ、勝手にするーっ♪」
日高さんは、ニコニコしながら結木くんの横を歩いてゆく。
「日高さん―!!!」 楓、真っ青!
その後ろで、冷静に分析を始める悦美。
「手ごわいわね、日高安澄…!転入して来てすぐに結木くんに目をつけ、
わずか一週間で一緒に登校!!
特に今の『オッス♪』はスゴイわ!男のハートわしづかみよ、100点!!
ちょっと楓、あんたもやってみなさいよ。」
「(タラ…ッ)え…お…おっす♪…こう?」 ぎくしゃく…
「…20点。」
「ガーーーーン!」
「とにかく!あいさつくらい出来なきゃ、
日高さんに結木くん、持ってかれるわよ!?」
「…ふぁ〜〜い。」

楓の家(マンション)
「ただいまーーー!!旅行楽しかったわーー!!」
玄関で、笑顔を撒き散らす楓のママ。
「おかえり〜ママ…」 ふら〜っと出迎える楓。
「あらぁ楓!!どーしたのよ、沈んだ顔して!?
ホラ、これ楓におみやげ!マグカップよ。」
紙の包みを出す楓ママ。
「あ…ありがとう。」
「それアンティークショップで見つけたのよ。数がとても少ないらしくって高かったけど、
そのカップで、恋のおまじないができるんですって!!
楓、好きな人がいるって言ってたでしょ!?」
「へえ…?恋の…」

楓の部屋
包みを抱えて入ってくる楓。
(おまじないかぁ―それで結木くんとうまくいったりしたらいいな…)
「さっそくやってみよう!わー、かわいいマグカップ!ピンクだ。
おまじないのやり方は…あ!底に書いてある…
『このカップにホットココアを注ぎながら念じると』…?
『恋の妖精・ミルモが、あなたの恋をかなえてくれます』!!
うひゃーーー!!メルヘンチック!!」
さっそく缶のホットココアを買ってきて…
「結木くんと両思いになれますように…」
ブツブツつぶやきながら、トプトプトプ…カップに注ぐ楓。
「…とまぁ、こんな感じかな?まー妖精なんてのは
うそっぱちだろうけどね―――」……

…カップから、水色の帽子をかぶった、小さな小さな男の子が…?
のわーーーーーー!!」 驚く楓!
その、カップより小さい男の子は、もそもそカップから出ると、
ゴス!とテーブルに落ち…「げふっ!」
「なんだこれーーー!?」
(コッ…ココアを注いだら、なんか変なのが出てきたーー!!)
楓は、顔を近づけてじーっとその子を見た。
すると、その子は…
「なんでぇお前、ぶっさいくだなぁ、どーせなら、もっといい女に
呼び出されたかったぜ…ノリカとかよぉ。」
「しゃべったあぁぁぁ…マジでこれは一体、何ー!?」
楓は、わたわた…と、一人パニクる。
「んっ、オレか?お前がこのマグカップで呼び出したんじゃねーか。
ミルモだよミルモ!!
『ゆーきくん』とやらとお前をくっつける…恋の妖精さ!!」

「ママー!」 ドタバタ…キッチンへ駆け込む楓。
「ママからのおみやげからバケモノがっ!!ホラ見て!!」
そう言って、右手に握ったミルモをママに見せたが…
「は?手がどうかしたの?」
「なっ何言ってんのよママ、この小人みたいなのが見えないの!?」
「??何も持ってないじゃないの?
ママ忙しいのよ、からかわないでね。」
「ガーーーン!(あたしにしか見えてないっ!?)」

バケモノとはなんだ!!こんなプリチーなオレ様にむかって。」
楓のベッドの上で、プンプン怒るミルモ。
楓は、まだ信じられない…
「ホントに…本物の恋の妖精なの…!?」
「どんな片思いでも、オレの魔法で両思いになれるのさ。」
「会話したことがないような人とでも…?」
楓の頭に浮かぶ結木くん。
「まーな。」
「じゃ…じゃあ…(ドキドキ…)あたしの恋、かなえてくれる!?」

「ヤダ」
ミルモは、きっぱり!

「なんでっ!?」 楓、ガーーーン!
「お前のコト、気にくわないから…
ちゅーワケで、オレはマグカップに帰るわ。さいなら〜。」
ミルモは、カップに入ろうと…
「まっ…待った!!」
ひょい!っとマグカップを持ち上げる楓。
「何しやが…」
「せっかく来たんだからっ!!もー少しこの世界、
楽しんでいきなさいよ、ねっ、ミルモ♪」
「コンタンが見え見えだぞ。…少しだけだからな。」
つーん…と、そっぽを向くミルモを、作り笑いで見つめながら、
楓は、思った。
(そー簡単にあきらめてたまるかっ!
どーしてあたしのコト気に入らないかは知らないけど、
なんとか結木くんと両思いにしてもらおう!!
待っててね、結木くん…♪♪)

― こうして次の日から 楓の『ミルモでラブラブ大作戦』
が 始まったのだった ―

「ミールモっ♪一緒に公園行こっ!!」
楓は、笑顔でウィンク! (まずは仲良くなる!!)
「めんどくさぁい…一人で行けよ〜」
と、嫌がるミルモを無理やりずるずると…
「そんなこと言わずに、レッツゴー!!」
あんなにイヤそうな顔をしたミルモだったが、公園に着くと…
「ブランコ乗るぞー!!」
楽しそうに、イキイキ輝き出した!
(うわっ、素直じゃないー!!) あきれる楓。
「のせろ!」 ミルモが、ブランコを指差した。
「ヘイヘイ…しっかりつかまっててね。」
「おう!」
楓は、ブランコに立ち乗りし、腕にミルモをつかまらせて、こぎだした。
びゅおっ!「わーお、中学生になってから初めて乗るよ、ブランコ。」
「おー!」 ミルモも、楽しそう!!
「久しぶりに乗ると楽しー!!それー!!」
調子に乗って、ブランコを思いっきりこいだ、その瞬間!!
楓の腕から、ミルモが吹っ飛んだ!
「あーーーーーー!!!」
おまけに…
どぼーん! 「池に落ちたー!!」
急いで池から、ミルモを救い出す楓。
「ミルモ、大丈夫!?ああっ、気絶してるー!!」
真っ青になって、ぶるぶる震えているミルモ…
「ごめん、ミルモ〜〜」

楓の部屋
「う〜ん…う〜ん…」
うなって寝ているミルモ。
「お、怒ってる?ミルモ…」
楓が、ミルモをのぞき込むと、
「お前を呪ってやる!!」 ミルモ、怖っ!
ガーーーーン!
(すっごい怒ってるー!!どどど、どうしよ…ゴキゲンとらなきゃ)
「そーだミルモ、食べたいものないっ!?
おわびにごちそうするからっ、ねっ!」
「…じゃ、チョコレート。」
「チョコレートね!!」
キッチンへ走る楓。
「ママ!チョコレート買ってない?」
「あるわよ、そこの棚見てみなさい!」
ママの言葉に棚を見ると、入れ物に金紙に包まれた
一口大のチョコレート(?)があった。
楓は、それを一個つまんで、ミルモのところへ急ぐ。
「ほら、ミルモ、チョコレート!!ささ、召し上がれ♪」
ミルモは、それを抱えて一口ぱく……

ブフォー!!

火を噴くミルモ!!
プスプスプス…パタリ…
「ミッ…ミルモ!?」
楓が、慌ててチョコレートを見ると…?
「ああーっっ、これカレー粉だー!!(しかも激辛)
チョコとまちがえたー!!」
ピクピク…ミルモは、危うく天使になってしまうところだった…

学校
どんより、机に伏して泣く楓。
(もうダメだ〜あのあとのミルモは、うかつに話しかけられないくらい
完全に怒ってた…)
ナナメ後ろを振り返ると…結木くんが本を読んでいる。
(結木くん…。ミルモの魔法で結木くんと両思いにしてもらうのは
もームリなのかな…) 楓が、うるんだ目で結木くんを見つめた時、
「結木くーーーん♪何の本、読んでるのー!?」
出た〜!キャピキャピの日高さん!!
「…罪と罰。」 あくまでクールな結木くん。
「へーっ、誰の本?」
「ドストエフスキー。」
「あ、きーたことあるーっ!」
その様子を、ただ見ているだけの楓…
(わあああ、日高さん、あんなに楽しそうに!!うらやましいっっ!
こっこのまま2人が親しくなっていったら、あたしの片思いは、
話すらできずに見つめるだけで終わり…
それはイヤーッ!
で、でもあたしは、日高さんみたいに積極的になる勇気ないし…)
一人、あれこれ想像して青くなってる楓…

楓の部屋
ぐ〜すやすや…ミルモは睡眠中。
その寝顔を見て、意を決する楓。
(やっぱりあたしは、このミルモの力にたよるしかないっ!!)
「ここはひとつ、心のこもった手作りのプレゼントとか…
うんっ、いいかも!!」
…そして、
「ミルモ、見てこれっ!!」
小さな洋服を見せる楓。
「ミルモの新しい服、作ってみたの!
ちょっと着てみない?」
「…………」
じとーっと、その服を見ているミルモ。
「そっ、そんな顔せずに!ねっ!」

― 着替え中 ―

で、着用後…!
ぶるぶるぶる…首回りが小さすぎて、
ほとんどテルテル坊主状態で、真っ青になってるミルモ!
今にも、死にそう!!
「わーーー!!首回りが小さすぎたー!!
ミルモ、死なないでーーっっ!」
慌てて脱がせる楓。

ミルモは、すっかりぷんぷんになっている…
「ご、ごめんミルモ…」
「…………」
「次はまともなの作るから!!」
「…………」
「お願い、機嫌直して…」
いいかげんにしろ!!
驚く楓!
「…いいか、オレは最初からお前がキライだったよ。
お前は自分でがんばろうとしないで、
オレの魔法をただ利用しようとする。
そんなヤツのために魔法を使ってやる気はねーよ!!
わかったか!!」
ミルモの言葉に、何も言い返せない楓…
しばらく沈黙…
「……あ……あははははっ、そっそうだよねー!!
もーまったくミルモの言うとおり!!
あ、あたしってほんと、情けな…」
…楓の目から、大粒の涙がこぼれた。
「…っごめんねミルモ…ごめん……」
時計は、夜11時を回っている。
「あ…もうこんな時間!き、今日はもう寝るね!おやすみミルモ。」
涙を拭う楓…そんな楓を黙って見ているミルモ。
やがて、小さくため息をついて、「しかたねーなぁ…」と、独り言…

…そして、午前3時
眠っている楓の枕元に忍び寄る小さな影…
キラーン!目が輝く。
それは、両手にマラカスを持ったミルモだ。
「…これより、ミルモによる、南 楓の恋愛成就の儀式をおこなう。」
シャカシャカ…とマラカスをふりふり踊るミルモ。
「ミル♪ミル♪ミルモで♪ポン!
左手のマラカスを、眠る楓に向けると、
カッとまばゆい光が降り注ぎ…
キラキラと、楓の体を包み込んだ。
「ミル=ミルモの神よ、楓の恋をかなえたまえ!!」

次の朝…
「わーーーっ!何これー!?かっ体がなんか光ってるー!!」
自分の体がキラキラ光っていることに驚く楓。
「魔法さ。」 ミルモ、どこからともなく登場。
「ミルモ!?」
「お前が寝てる間に魔法をかけたんだ。
その光は、そのしるし!!」
「へ?」
「お前と結木を両思いにした!!」
「えーーーーー!?」
楓は、まるでおたふく風邪みたいな
真っ赤でぷっくりになったほっぺたをおさえた。
「その光は、お前にしか見えねーからな、安心しろ。」
そこへ、楓ママが入ってきた。
「楓!玄関に男の子が来てるわよ。『むかえに来た』って!!」
「へ!?男の子?だっ、だれ??」
「『結木くん』ですってよ。」

楓が、玄関を出てみると…
「おはよう南さん!!」
立っていたのは、まぎれもなく憧れの結木くんだ!
…ただ、ちょっと目がうつろ…?
「ゆっ…結木くん…!!」
真っ赤になる楓を、結木くんは、ぐっと抱き寄せ、
「愛してるよ、マイハニー!」
と、ささやいて、楓のほっぺにチュッ!
…倒れる楓。
「どうしたんだい、ハニー…好きだよ。」
もう一度、楓の肩を抱きしめる結木くん。
(うっ、ウソみたいーーー!!)
楓は、幸せいっぱい!
「手をつないで行こう!!」 「うんっ♪」
手をつないで学校へ向かう二人。
(ミルモの魔法ってスゴイ…)
「ちょっと待ったぁ!!」
その声は…もちろん、日高さんであった!
「何やってんのよーっ!?なんで結木くんが、
南さんと手ェつないでんのー!?」
「日高さん!!」 アセる楓。
しかし、結木くんは…
「つきあってるから。」 と、Vサイン。
「なっ何言ってるのよーっ、南さんとなんて、話してるところも
見たことないよ!?急にどうして!?」
日高さんは必死。
しかし、再び結木くんは…
「…さぁ、理由なんてないよ。ただなんとなくさ。」
そう言って、両手で楓を抱きしめてみせた。
「…………」 言葉を失う日高さん…ショック!
だが、すぐ気を取り直して、
「はっ…話にならないわ!!ちょっと南さん!!
あなた、結木くんのこと好きだったの!?
いつのまにこんなことになってんのよ!!」
日高さんは、楓の腕をぐいっとつかんだ。
「えっえーと、それは〜(ひゃ〜っ!)
お互い知らぬ間にひかれあっていたというか…(苦しい…)」
楓は、しどろもどろ…。
「ウソよ!!!これは何かの間違いよー!!!」
うがー!日高さんは、カバンを放り投げて楓に向かっていこうとしたが…
「やめろ日高!!」
さっと、楓をかばう結木くん。
「オレから告白したんだ!!」
「……………」
これには、さすがの日高さんもコタエたらしい。
「……そう……あたしだって結木くんのことが大好きで…
一生懸命気持ち伝える努力してきたけど、届かなかったんだ…
負けるのは仕方ないけど…あたし、あきらめないから…!!」
切ない顔を長い髪でかくすようにして、日高さんは走り去った。
(日高さん…。あたし…すごく卑怯なことしてる…!!)
楓は、胸がしめつけられる思いがした。
「…ごめん結木くん、先に学校行ってて!!」
その場に結木くんを残し、家の方へ走り出す楓。

「ミルモ!!この魔法といて!!」
楓は、ミルモのいる自分の部屋に戻った。
「…いいのか?」
不思議そうに、楓を見上げるミルモ。
「うんっ、あたし魔法にたよっても意味ないってわかったの。
だから、自分でがんばる!!勇気出せるか、ちょっと不安だけど…」
「…なぁ楓、お前ってホントーにドジだよな!!
オレのごキゲンとろうとしても失敗ばっか!!
けど、お前の一生懸命な気持ちは、すげー伝わって来たよ。
だから結木にも、失敗なんか恐れずにぶつかっていけよ!!」
「…うん…!!ありがとっ♪」
手のひらにミルモをのせ、ほっぺたにくっつける楓。

― そしてミルモが魔法をとき、あたしと結木くんは、
前の関係に逆戻り
それと同時に日高さんも、結木くんがあたしを好きと言った
あのときのことを忘れ、すべては元通りになったのでした ―

教室
本を読む結木くんの隣で、話をしている日高さん。
それを見ていた楓…ゲンコツを突き上げ、気合を込める。
「よっし!!話しかけてきます!!」
「ファイト!!」 横から励ます悦美。
ドキドキ…結木くんに近づいてゆく楓…そして、勇気をふりしぼり、
「ゆ…結木くん!なんの本、読んでるの?」
顔を真っ赤にして…笑顔で話しかけた!

楓の家
テーブルの上に立つミルモ。
「ふふん、楓のヤツ、なかなかいいとこあるじゃねーか。
ちっと見直したぜ!」

一ヵ月後
「結木くーん、おはよーっ!!」
同時に声を掛ける楓と日高さん。
「…オッス……」
ちょっと困ったように、あいさつを返す結木くん。
ばちばち…楓と日高さんの目から火花が…!
「結木くん、あたしと一緒に行こー♪」
結木くんの右腕をつかむ楓。
「何言ってんのよ、あたしと行くのよ、手はなしなさいよ!」
左腕をつかむ日高さん。

― あたしは、朝のあいさつもできるようになったし、
日高さんとも戦えるようになりました(もちろん自力で!)
我ながら、ずいぶん成長したと思うの!!

ミルモはまだ家にいます。

『チョコがうめーから、もうちょっといることにする』

もうしばらくは、にぎやかな日が
続きそうです ―


::: おしまい :::

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