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DAYS 1 右手の恋人

退屈な学園生活を送るには、みんなは何が必要だと思う?
打ち込めるスポーツ?夢中になれる趣味?
まあ、それもたしかにアリだけど・・・
オレにはもっと大切なものがある。それは・・・

少女「ゴ・・・ゴメンね、沢村君・・・私、今、好きな人がいるから・・・」

コイビト。

少女「ーじゃ、そういう事で・・・」

オレ、沢村正治。高校2年生。彼女イナイ歴2か月。連続失恋記録現在も更新中・・・

正治(フッ・・・オレには幸せの青い鳥はやって来ねぇってか?)
正治(へへ・・・夕日が涙でにじんで見えるよ。)

まわりで恋人達がいちゃついている。

正治「キショーッ!てめぇらオレの前でいちゃつくんじゃねー!」
正治(ったくどいつもコイツも・・・)
正治「何だ、クソ!こんなモノ!こんなモン!!」

政治花壇の花をブチブチと抜きまくる。

不良「おい、ヤベェよ。沢村さん、また荒れてるぞ。今、越えかけるのやばくねぇ?」
不良2「しょうがねーだろ。もう「泥華瑠斗」に対抗できるのは沢村さんしかいねぇし・・・」
不良3「でもなぁ・・・」
宮原「大丈夫だって!一の子分のオレが頼んできてやるよ!!」
不良4「お・・・おい、宮原・・・」
宮原「さ・・・沢村さん!!あの・・・ちょっと手伝ってもらいたい事が・・・」
正治「あ゛?」
正治(ったく、女の子には全然寄りつかねぇてのに、何で、こう野郎ばっかトラブル持って来てやがんだ・・・)
正治「フン、まかせとけ。そんな奴ら、秒殺だぜ。」

正治(この「悪魔の右手でな!!)
正治「オラァッ!!」

正治おもいっきり不良を殴る。

正治「ケッ。何が関東最強の暴走族だよ。」
宮原「あ・・・ありがとうございます!沢村さんが協力してくれたなんて、感激っス!!」
正治「へっ・・・こんな奴らにやられちまうようじゃ、お前らもまだまだだな。でも、お前の弟の敵はとってやったぜ。」
正治「オレを呼ぶならもっと骨のある相手の時にしてくれ。弱いものイジメするシュミはねぇからよ。」
不良達「あ・・・ありがとうございましたーっ!!」
正治(ハァ・・・またやっちまった・・・)

正治、家に帰る。

正治(虚しい・・・虚しすぎるぜ・・・・・・やっぱケンカなんか強くてもイミねーよな。)
正治(おかげで周りはオレに対してビビっちまってて、今日で通算20回目の失恋か・・・)
正治(あの子も相当オレにビビッてたしなァ。)
正治(オレは、本当は普通の彼女作って・・・明るく楽しい学園生活を送りたいだけなのに・・・)
正治(かといって今さらあいつらの前でそんな事・・・カッコ悪すぎて口が裂けても言えねぇし・・・)
正治(このまま高校3年間、彼女もできず、「右手が恋人」で終わるなんて・・・そんな暗いセイシュン、嫌すぎる!!)

政治「ああっ!どーすりゃいいんだよ!!もぉ、誰でもいいからオレのカノジョになってくれぇ!!!」

「−本当!?」

正治、驚く。

正治「な・・・何だ?今の声・・・」
正治「ン?」

少女「あれ?ここはどこ?」

正治の右手が女の子になっていた。

正治「うわあああああ!!な・・・何だお前!?何で袖口から女が!?」
少女「あ・・・ああ・・・」
少女「セイジ君だーっ。」

少女、正治の顔に抱きつく。

正治「ぶわ!!」
少女「セイジ君だぁ。夢じゃない、セイジ君だぁ」

少女、正治の口を引っ張り喜ぶ。

正治「ひゃめれーっ。ひゃめれーっ。」
正治「ひゃめろっつてんだろ!!!」

正治、袖をぐいっと引っ張る。
すると、少女は裸で正治の腕になっていた。

正治「あっ。」

正治、驚く。

少女「キャー!!み・・・見ないでください!!」
少女「ン?」
少女「−ってアレ?わ、私・・・何でセイジ君のウデに?」

少女、腕になってるのに気が付く。

正治「つーか、それはコッチが聞きてぇよ!!何でオレの右手がちちが・・・」
正治「いや、違う!何でオレの右手が女になってんだ!?てゆーか、お前何でオレの事知ってんだよ!!!」
少女「あ、あの・・・それは・・・つまり、その・・・」
少女「私、ずっとずっとか・・・片想いしてたんです。セイジ君の事をッ!!」

正治(か・・・片想い!?)

少女「私、セイジ君とは学校が違うんですけど、町でセイジ君を見かけるたびに憧れてて・・・」
少女「友達はみんな、セイジ君の事不良だとか言って怖がっているけど・・・本当は、優しい人だってこと、私知ってるんです。」
少女「だって、セイジ君は悪くない人には絶対暴力をふるったりしない。むしろ、弱い人の味方をする人・・・」
少女「私、そんなセイジ君が3年前から大好きで・・・そ・・・その・・・セイジ君と一緒にいられたらいいなってずっと思ってて・・・」

正治(こ・・・告白だよ・・・生まれて初めて告白されたよ、オレ・・・)

正治「・・・・。」

正治(い・・・いや、おれしくない。この状況で告白されても、ちっともうれしくねぇっ!)
正治「あ・・・あのなァ、」
少女「ハ・・・ハイ!!」
正治「片想いだかなんだか知らねぇけどな・・・こんな事までされると、ハッキリ言って迷惑だ!!」
正治「こんなウデしてどーやって生活してけっつーんだよ。」
少女「そんな・・・そんな事言われても・・・」
少女「私だって、目が覚めてたら、セイジ君の右手になってて・・・わけわかんなくて・・・本当は泣き出したいくらい怖いです。」
少女「大好きなセイジ君のそばにいられるなんて、正直言ってちょっぴり嬉しいかな(ハート)・・・・・・なんて・・・エヘヘ。」

正治、少女の口をつかむ。

少女「!?」
正治「何、のーてんきな事言ってるんだ、オメーはよ!!オレはこれっぽっちも嬉しかねーよ。」
少女「あややややや・・・」
正治「オレはなァ、お前・・・アレだぞ!巷じゃ、泣く子も黙る「狂犬サワムラ」って恐れられてる男だぞ!!」
正治「そんな男の右手にこんなものがついててみろ?」


正治「ブチ殺すぞ、コラァ!!」
少女「すぞー」


正治「ーってめちゃくちゃカッコ悪いだろが!!」
少女「・・・・・・・・・・」
少女「そ・・・その時はカッコ良くなるように努力します!!!」
正治(いや、そういうイミじゃなくてよ・・・・・・)
少女「そ・・・それに私、お料理とか得意ですから、元に戻れるまでの間は・・・その・・・セイジ君のお役に立てると思いますよ(ハート)」

正治(何言ってやがんだ!?冗談じゃねぇよ・・・こんな右手のままで日常生活なんか送れるかよ・・・)
正治(ここは、やっぱ医者に診てもらって・・・でも、治療法があるとは思えねーしな・・・)
正治(当然、研究材料にされて、学会に発表されたりして・・・さらにその話が全国に報道されて・・・右手に女の子を持つ男として、有名人の仲間入りに・・・)
正治(数々のTV番組主演の後に芸能界デビューを果たし・・・この世に2つとない謎のコンビに、人気はうなぎ登り・・・)
正治(しかし、その後・・・俺達のせいで仕事が激減した腹話術氏の手によって路上で・・・)

少女「よいしょ。」
少女「雑誌は一か所に集めておいた方がいいですよ。今や、新聞雑誌も分別ゴミですからね。」

少女が部屋を片付ける。

正治「な・・・何やってんだよ、お前?」
少女「はい。少しちらかってるので、お掃除をと思いまして・・・」
正治「勝手なことしてんじゃねーよ、ったく・・・」
少女「よっと・・・」
少女「ふう。」
正治「・・・・・・・・・・・」

正治(なんか、こーゆーのも悪くないかも・・・)

少女「あっ!ベッドの下に古雑誌が・・・」
正治「うわーっ!よせっよせっ!!」

中にはエロ雑誌が・・・

二人「・・・・・・・・」
少女「捨てましょうこの際!」
正治「お前が勝手に決めんなっ!!!」

「ピンポーン」

正治(だ・・・誰だ?)

宮原「ちわーす。宮原っス。沢村さーん、さっきのお礼に来ましたあっ。」
正治(み・・・宮原!?やべぇよ、どーするよ・・・)
正治(お・・・おちつけ!とりあえずおちつけ、オレ!!おちついて対処すりゃ大丈夫だ!!)
正治「おう。」

正治、ドアを開ける。
そこには2人の女の子がいた。

正治(!!女!?)

宮原「鴨葱女子校の子なんスけどね・・・なんでも沢村さんのファンらしくて・・・」
正治(うっそー!マジかよ、オイ!!)
正治「フッ・・・」
正治「仕方ねーな。茶でも出してやるよ。ちょっと待ってろ。」

正治、家の中に入り、包帯を取り出し、少女(右手)に巻きつける。
少女「むーっ!!」
正治「いいかよくきけっ!」
少女「む?」
正治「いくらお前がオレの事を好きでもな、右手になってもお前を、オレが好きになるワケがない!ってゆーかキモチ悪い!!!」
正治「オレが欲しいのは「人間」の恋人だ。右手の恋人じゃねェ!!」
少女「・・・・・・・・・・」
正治「オレはこれから人に会うが、絶対に声を出すな!!顔を出すな!!オレに迷惑かけるな!!わかったな!!」
少女「・・・・・ハイ。」

正治、外に出る。

正治「待たせたな宮は・・・・・・」
正治「ン?宮原はどうした?」
女子高生達「あ・・・コンビニ行ってくるって言ってました。」
正治「まあいい・・・あがってくれ。」
女子高生達「おじゃましまーす。」

なぜか宮原は気絶して倒れていた。

女子高生1「へえー沢村さんのご両親は海外暮らしなんですか。いいなー。こんな広いおうちに一人暮らしかー。」
正治「いや・・・姉貴がいるから2人だ・・・自炊とかしなきゃならないからたいへんだがな。」
女子高生2「じゃあ、今度センパイのごはん作りに来てもいいですか?」
女子高生1「こう見えても私たち、料理得意なんですよ。」
正治「・・・・・・・・」
正治(つ・・・ついに・・・ついにオレにも春が!?)
正治「ああ・・・楽しみにしてるよ。」

女子高生1「あ、すいません。ちょっとトイレに・・・」
正治「廊下のつきあたりの右だ。」
女子高生1「ハイ、ありがとうございます。」
女子高生2「−沢村サンパイ・・・」
正治「?」
女子高生2「センパイは、あの・・・年下の子とか好きですか?」
正治「あ?」
女子高生2「センパイには今カノジョいないって聞いたから、その・・・どうなのかなぁって、思って・・・」
正治「フッ・・・年下の女とも20人はつきあってきたぜ。」
正治(何!?ウソ!これって・・・ひょっとして!?)
女子高生2「センパイ。」
正治「ン?」

女子高生2「あの・・・キスしてもいいですか?」
正治(ええ!?ななな・・・なんて大胆な・・・)
女子高生2「目をつぶって・・・」

すると後ろの女子高生1が凄い形相で竹刀を持って振りかざそうとしていた。
少女、そのことに気が付く。

女子高生1「くたばれ、サワムラァ!!」

少女、その竹刀を体当たりでその竹刀を折る。

女子高生1「な・・・何ィィ!?気付いてやがったのか!?」

正治(ま・・・まさかコイツ・・・オレを守って!?」

女子高生1「バレてるんなら仕方ねェ!アタシらは「泥華瑠斗」のレディース!!!アンタに病院送りにされた彼氏の敵討ちに・・・」
正治「しっかりしろよ!!死んでねェよな!?オイ!!!」
正治(やっぱり、オレがモテるなんて変だと思ったんだ・・・)
正治「クソッ!」

包帯を取ろうとするが取れない。

女子高生1「オゥコラ!ヒトの話聞いてんのか!?」
正治「どけっ!!」

正治、走り出す。

女子高生1「きゃっ。」
女子高生1「や・・・やったな、テメ・・・」

正治、包丁を持つ。

正治「−よし、コレで・・・ハァーハァー」
女子高生達(出刃!?)

正治「ン?」
正治「見てんじゃねーよ!!!早く出ていけ!!!」
女子高生達「ひあーっ、殺さないでーっ!!!」
正治「クソッ・・・取れねーじゃねーか、クソッ!」

少女「ハァハァハァ」
正治「オ・・・オイ、大丈夫か!?お前・・・」
少女「あ、セイジ君・・・」
少女「セ・・・セイジ君の方こそ大丈夫?さっきの子達に、何かされてないですか?」
正治「さ・・・されてねーよ、何も・・・」
少女「よかったァ。私、途中で気を失っちゃてたから・・・でも約束は守ったよね?声も顔も出さなかったよ、私・・・・・・・」

正治(こいつ・・・その約束を守るために、体を張ってオレを・・・)

ー私ずっとずっと片想いしてたんです。−

正治(オレを・・・)
正治「・・・・・・」
正治「お・・・お前さ・・・名前・・・教えてくれよ。」
少女「み・・・美鳥です。春日野美鳥っていいます。そういえば、まだ名前も言ってなかったね・・・」

正治「あのな・・・美鳥・・・」
美鳥「え?」
正治「これからはよ、あーゆー時は約束なんて破っちまっていいから・・・声に出して俺に教えてくれよな。」
美鳥「で・・・でもそしたら・・・私の事がバレて・・・」
正治「かまわねーよ。そんなの。」
正治「その時はその時だ。女の子にケガさせちまってまで守るべき秘密じゃねーよ。」
正治「オレの右手になっちゃいるけど・・・お前だって女の子なんだから。」

美鳥「セイジ君・・・」
正治「ン?」
美鳥「大好き(ハート)」

美鳥、正治にキスする。

正治「!!」

宮原「大丈夫っスか?沢村さん!さっきの女どもは・・・」
正治「うわっ、よせっ、やめろって!!!はなせってば!オイ・・・」
正治「あ。」
宮原「一人で何やってんスか?沢村さん・・・」

こうしてオレの退屈な日常は一変し右手の美鳥との奇妙な生活が幕を開けたのだった。

終わり

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