目暮「黒川氏は……お酒を飲みながらワープロに向かったところを公募から何者かに殴られ、殺害された。凶器はそばに落ちているブロンズ像に間違いなかろう。しかしわからんのはこれだな。ダイイングメッセージのようでもあるが、「JUN」ってのは何のことだ!?」

小五郎「フッフッフッ。それはズバリ、犯人を指しているんですよ」

目暮「何だって!?」

小五郎「しかも犯人は、そこの3人の中にいます……」

コナン(おっ、珍しく冴えてる)

小五郎「奥さんの黒川美奈さん、長男の黒川大介さん、そして……家政婦の中沢真奈美さん。この3人の中にね」

目暮「いいぞ毛利君! で、誰なんだ犯人は!?」

小五郎「黒川大造氏を殺害した犯人は……あなただ!!」

小五郎が指したのはなんと美奈だった。

美奈「えっ!?」

目暮「お……奥さんが!?」

コナン(ん?)

小五郎「黒川氏が残した「JUN」の3文字……これは英語の6月「JUNE」を略した言葉です。この6月は水のない月「水無月」、つまり美奈さんです。しかもあなたは……」

美奈「6月生まれだからどうだって言うのよ!? 何が水無月だから美奈よ!! あなた、そんなダジャレで私を犯人にする気なの!?」

小五郎「い……いや、これは論理的推理というやつでして……」

目暮「死ぬ間際の人間がそんな回りくどいことをするかね!? ワシだったらストレートに犯人の名前を打つぞ」

小五郎「そんな、警部まで……」

コナン(ハハ…おっちゃんの推理だとここまでか。仕方ねぇ……いつものようにこの時計方麻酔銃でまたおっちゃんには眠ってもらうか)

美奈「無実のものを犯人に仕立てるのが探偵の仕事なの!? 変なことばっかり言うと、名誉毀損で訴えるわよ!」

コナンが麻酔銃から麻酔針を発射。

それが小五郎に刺さる。

小五郎「うおっ、チクっと……いやあ、きました!!」

目暮「おお、来たか!!」

小五郎はそのまま眠る。

机に隠れるコナン。

コナン「そう、犯人は奥さん。というのはほんの冗談です」

美奈「冗談!?」

小五郎「目暮警部、遺体をよーく見てください。黒川氏の手で血がついている指は右手小指だけです」

目暮「確かに……」

小五郎「では、キーボードには、どの部分に血がついていますか!?」

目暮「「け」「む」「ろ」と左端の英大文字についとる」

小五郎「「け」「む」「ろ」についた血は黒川氏が人差し指で「J」「U」「N」のキーを押したときについていた血が付着したものですが、右手の小指でわざわざ押しづらいキーを押す人はいませんよね!? では、左端のキーについた血は何なのか……おそらく、黒川氏は背後から忍び寄ってきた犯人に後頭部を殴られ、右手で高等部を押さえ、小指の血はその時ついたのでしょう。そして振り返ったとき、再度殴られ、倒れるときにキーボードを小指で引っ掛け落とした。つまり、左端のキー・栄大文字変換のキーは反抗当時、黒川氏の意思で押されたので字はなく、倒れたときに偶然押されたものなんです。そして黒川氏は犯人が立ち去った後、せいゆく意識の中で、力を振り絞り、キーを押した。かな文字のつもりでね」

目暮「じゃあ、黒川氏が打った「j」「U」「N」のかな文字は……「ま」「な」「み」!」

小五郎「そう……家政婦の中沢真奈美さん、あなただ!!」

真奈美「じょ、冗談ですよね!? 探偵さん……証拠なんてないんですから」

小五郎「証拠ならありますよ。あなたは反抗のとき、スリッパを脱いだんじゃあありませんか!? フローリングの床では、スリッパの音がして、気づかれずには以後から忍び寄ることができないから。あなたは知らない間に、床に飛び散った結婚を踏んでしまった……それは、不自然に途切れている証拠物件Aが証明しています。あなたの白いソックスの裏には、結婚がついているはずだ」

真奈美が足の裏を見ると、靴下に血痕がついていた。

目暮「おお!!」

小五郎「あなたは、警察の事情聴取に対し、遺体のそばには近寄らなかったと答えていますね」

目暮「足についた血痕を調べさせてよろしいですね!?」

真奈美「黒川は……1年前……私の夫を殺したんです……」

目暮「え?」

大介「じゃあ、まさかあんたは……親父が心臓手術した患者の!?」

真奈美「そうよ! 黒川が酒に酔って手術したして死んだ患者の妻よ!! ちょっと髪型と名前を変えただけで誰も気づかないなんて……あなたたちにとってあの事件は記憶に残るほどのものじゃなかったってことね。私は黒川を告訴するために病院関係者の証言をえようとしましたが、誰1人協力してくれませんでした……みんな、黒川が怖かったんです……」

目暮「それで、ご主人の復讐を……!?」

真奈美「今日が主人の命日だったの。私は後悔してないわ! あの人の恨みを晴らせたんですもの。オッホッホッホ……うっ……」

真由美の目から涙が滲む。

目暮「行こうか……」

コナン(はぁ〜、またおっちゃんに手柄立てさせちゃったなぁ……)

 

名探偵コナン
時計じかけの摩天楼