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魔法陣 グルグル @

〜 第1章 ジミナ村 〜


都からはるか西 「ジミナ村」という小さな村に
奇妙な幻獣の伝説があった
村人たちはそれを「グルグル」と呼び
起こしてはならない神として
恐れ 丁重に祀っていた

― ジミナ村 ―
『勇者募集!!魔王を倒した者に、金5万を与え、コーダイ王国の王子とする コーダイ国王』
と書かれた立て札が立っている。
「あやー、都の王様のおふれだ。」 「魔王ってなんだ?」 「りっぱな木の立て札だな、風呂のたき木にするべか。」
「それは待つべ。勇者マニアのバドが見たら喜ぶべよ。」
集まって、立て札を見ている、村の衆。
「さあ、メケメケ(この村のヘンな動物)の世話に戻るべ!」
「勇者より、オマンマだべよ。なまけてると、グルグル様にたたられるぞ。」
「ハハハ、グルグル様は、迷信だっぺ。」
そこへ通りかかった、老婆… 「グルグルは、迷信ではないぞう。」 通り過ぎる…
「…っくりした〜〜っ。」 「村はずれのオババでねえか。」 「相変わらず、変わり者だべなー」
「ん?これは…」 いつの間にか、そこに来ていた バド ― 父 40歳 ―。
「あっ、バドさんが来たべ。」 「いい知らせだよ、バドさん。この立て札見てみなよ。」
と、アッというまに、立て札を引っこ抜いて走り去るバド。 どどどどどど…
「やっぱ立て札ごと、持ってっちゃったよ。」 「こりゃー息子さん、災難だべな。」

勇者の家
どたん、ばたん 「おーいニケ、ニケはいるかーっ」 ニケの父、バドが帰ってきた。
「オレ、やだからね。」 ― ニケ 13歳 LV1 HP10 MP0 ―
全然やる気のなさそうなニケ。
「何をいうか、勇者!!ついに、旅立ちの時が来たのだぞ!」 バド、輝くような笑顔…
「そうよ、勇者!」 ― 母・レナ 35歳 ― まばゆいばかりの笑顔…
「すでに、勇者って、呼ぶなよ…ったく、何かというと勇者勇者って…
オレは、勇者には、ならないよ〜ん!」 オマヌケポーズ…
「バカモノ!!」 バドは、涙ながらに語り初めた。
「わしはな…若い頃、勇者になるつもりだった…修行もした…
だが、肝心の魔王がいなかったのだ!!今の世は魔王がいる、幸せだー!!」
「魔王がいて、どこが幸せなんだよ。」 ツッこむ勇者…じゃないニケ。
「そう…あれは13年前、お前が生まれた日のことだ…」 目を閉じて回想するバド…
〜〜 回想シーン 〜〜
「おぎゃーおぎゃー」 「男の子ですよ、バドさん。」
「でかしたぞ、レナ!さあ、抱かせてくれ!」 バドは、生まれたばかりのニケを、しっかと抱き上げた。
「かいしんのいちげき!!」 ぼこ! いきなり、そう言って、バドの頬にパンチを喰らわすニケ…って、
お釈迦様でもあるまいし…?
〜〜 回想 おわり 〜〜
「それ以来、お前を勇者として育てることにしたのだ!!」
涙にむせびながら、なにげに、マル勇印の服を、ニケに着せるバド。
「ホントかよ〜って、なんだよこの服は!やめてくれよ。オレは、どうせなら魔法使いになりたいよ。
魔法使いは、かっこいいし…」
「まあニケ、母さん、魔法使いなんて許しませんよ〜」 なにやら、掲示物を指差すレナ。
〜 掲示物の内容 〜
 ☆村の人100人に聞きました
「勇者」と言えば?
1、カッコイイ
2、リーダー格
3、強い
4、伝説になれる
5、よくわからない

「冒険の主役は、なんといっても勇者よ!競争率は高いけど、勇者でカル〜ク、一発当てれば、
将来安心よ!!」 レナは、にっこり!
「(うっ、説得力ある…) でも、オレは勇者にはならないからね!ノンビリ暮らしたいんだ〜」
だーーっと、走り去ろうとしたニケ。
「あっ、ニケ、どこ行くの!」 その背中に向かって、レナが 「フッ!」と、吹き矢を…
解説) 勇者は、しびれ吹き矢をうけた
ばたっと、前のめりに倒れるニケ。
「とにかく、ごはんにしましょ。今日は特製なのよ!」 何事もなかったかのように、
レナは、ごはんの仕度にかかった。
「おお、そうだな。」 そう言うバドの横で、ニケが、ぼよんぼよんシビレている。
やがて、ニケの前に、大皿が運ばれてきた。 「こっ…これは…!?」
ばーん!「勇者ランチよ!」
お皿の上は、まるで、ゲームでよく見かける地図のようだ。
お城や山、川、町、沼にほこら…
たらー…言葉を失うニケ… 「おかずがマップになってるのよ!」 レナの自信作のようだ。
しかたなく、一口食べてみる…と… 「く…くるしい…」 青くなるニケ。
解説) 勇者は毒をうけた
「そこは、毒の沼よ!早くとなりの薬草を食べて!!」
あわてて別の場所を食べるニケ。
「ちがう!そこはほこらよ!」 ニケは、もう、手当たりしだいに食べ始めた。
「お城を食べる勇者がいますか!」 「それは魔王!」 「早くしないと、死ぬわよ!」
解説) 勇者はこんらんしている
「もう、イヤだーっ!」
解説) 勇者はついにかんねんし、旅立つことにしたのであった
玄関から出る3人。
「よかったわ、行く気になってくれて!」 よろこぶレナ。
ニケ、げっそり…(死にたくないからな…)
「ニケや、まず魔法オババの家に寄りなさい。」
「え〜〜っ、なんでェ?あの妖怪ババアの家にィ?」
「村を出るときは、魔法オババの家にあいさつに行くのが、しきたりですよ。」
「ニケ、これを持っていけ!私が若い頃使っていたカブトだ。」 バドが、古めかしいカブトを持ってきた。
「ここ、割れてるわよ。」 「おや、本当だ。」
見ると、ひさしの部分が、遠い昔のバンカラ学生がかぶっていた、ツバの破けた学帽のよう…
「いいよ、父ちゃん!!オレには、この方がいいや!!」
ニケは、そのカブトを、くいっとかぶり、割れたすき間から、キラン☆と、目をのぞかせた。
「お前は番長か!!」 ばこーーん!バドにブッとばされるニケ。
解説) 勇者は、とばされてしまった
「もう、何もやらん、そのまんま行け!!」

村の道
(ホントに何もくれないとは…ま、いいや、都で買おっと…)
「ニケ兄ちゃーん!」 ニケに向かって走ってくる、村の男の子。
「魔法オババの家に行くんだって?」
「そーだけど…(さすが田舎、ウワサが早いな)」
「やめた方がいいよ、ボク、見たんだ。昨日の夜、オババの家から、すっごいモンスターが
飛び出してきて消えるのを!!あそこは、モンスター屋敷なんだよ。」
…と、言われている間に、オババの家の前に立っているニケ…(帰ろうかな…)
ギイイィィィ…「ごめんください…っと」 仕方なく中へ入るニケ。
「まっくらだな…」 すると、突然、ニケの目の前に、上からブラーンと何かがぶら下がって…!
「出たーっ!モンスターっ!」
「誰がモンスターじゃ。」 それは、オババだった…すとっと、床に降りるオババ。
「オ、オババ…(同じようなものだよ…)」
「ほう〜〜お前が勇者か!命が惜しくないのかえ、その歳で…ケッケッケッケ…」
「い…いえ、ちがうんです、すぐ帰ります、ハハハハハ…」 ドアに向かったが…
「しかし、帰ろうにも、扉は閉めてしまってのお…ケッケッケッケ」 「げっ!」
解説) 勇者はにげられない!
「さて、勇者よ…おぬしに、この村に伝わる『グルグル』をさずけようぞ。」
「グルグル!!」
解説) 「グルグル」…それは、この村では、言ってはならぬ言葉であった。それが、どんな意味なのか
誰も、教えてくれなかった
「それで、それでボクは…エッチな言葉だと思ってましたが。」 ニケ、にっこり。
ボウン!ひっくり返るオババ…
「ち…ちがう!!グルグルとは、この村が今日までかくし通してきた、古代の魔術なのじゃ!!」
デカい顔を、よりいっそうデカくして、オババは言った。
「『グルグル』って…ま、魔術なんですか?」
「さよう!グルグルはその昔…『ミグミグ族』が発見した、彼らだけが使える魔術なのじゃ。
おぬし『魔法陣』を知っとるかえ?グルグルは、あれによく似ておる。
図形を描き、その図形の持つパワーを引き出す魔術なのじゃ。
あれは、13年前のこと…『ミグミグ族の生き残り』と名乗る男が、ここに来た…
〜〜 オババの回想 〜〜
ひげ面の男が、赤ん坊を抱き、グルグルの秘密の書かれた書物を持っている。
〈これは、グルグルの経典…そしてこの子は、最後のミグミグ族です…多くの悪人が、
この秘術を狙っています…どうか、この子とともに、この村に隠してほしいのです…〉
〜〜 終わり 〜〜
そして、今日まで、この家でわしが育ててきたのじゃ。今、連れてくる、待っておれ…」
オババは、そう言うと、隣の部屋へ入っていった。
しーんとした部屋に、一人残されたニケ…
(グルグルを使う魔法使い…?) 頭に浮かぶ、まるでペテン師のような魔法使い…
(モンスターかも…?) 次に浮かんだ、長い舌をベーッとのばし「ニイハオ」と挨拶しているモンスター…
ぞお〜〜〜…想像は、なおも膨らむ…
そのモンスターのお腹がふくらんでいて、そのうらで「ありゃま、喰われてしもうた。また別の勇者を
連れてこねばのお。」と、つぶやくオババ……ひいいいいい〜〜!!
「待たせたのお。」 突然、ぬっと戻ってきたオババ。
「あっ、やっやっぱ、ぼく帰ります!!」 ニケ、おたおた…
「何をいまさら、ほざいておる。ミグミグ族のククリじゃ。」
オババの横に、かわいらしい、長い三つ編みの女のコが立っている。「はじめまして!」
「えっ、えっ、え?…お…女の子…?」 さりげなく、髪をとかすニケ。
「さよう、たのんだぞ勇者、世界の平和は、おぬしと、このククリにかかっているのじゃぞ。」
「よ…よかった〜っ」 ものすごい想像をしていただけに、顔全体で安心しまくるニケ。
それを見て、カタまるオババとククリ…「全然聞いてないようじゃな…」
オババは、ニケの耳を引っ張って怒鳴った! 「よいか!!グルグルは恐ろしい!!
使い方次第で、敵にも味方にもなるんじゃぞ。くれぐれも、気をつけられよ!!」 キーーン…
それから、ククリに向かって…「おおそうじゃ、ククリ、お前に新しい杖をあずけよう。
その杖は、もう古いし魔法も弱いからの。」と、やさしく言った。が――
「いや!」 ククリは、古い杖を抱えて、むすっ! 「えっ?」
「だって、これ気に入っているんだもん!!」
「バカなことを言うな!そんな杖で外に出たら、即オダブツじゃぞ!」
「だって、好きなんだもん、しょーがないでしょ、クソババー!」 オババの頭を杖でポカポカ…
「いてて…気に入ってるとか、そういう問題ではないぞ、このバカ娘!!」
「この杖じゃないんなら、外行くのやーめた、妖怪ババア!」
「人の親切が、わからんのか、このアホ娘は!」
…ニケでさえ、呆れてしまう 「なんだ、この低レベルな会話は…」
「ホラ、これじゃ。」 オババは、ず〜〜んと、新しい杖を出した。
杖の上部には、太陽のような飾り…しかし、まん中に、目がある…ちょっと、コワいかも…
解説) 魔法陣の杖 攻撃力3 魔法陣を描くための杖 ただしミグミグ族専用
「イヤーッ!絶対イヤー!デザインがかわいくない〜」 泣き叫ぶククリ。
「勇者よ、ククリを頼んだぞ。ホレ、とっとと連れて行け!!」 オババが、無理やりククリを押し付ける。
「ゲゲッ…は…はあ。」 しかたなく、ニケは、ククリを連れて外へ出て行った。
……… 「ホッ…よかった〜っ!」 一人、嬉し涙にくれるオババ。

村の道
「なー、魔法陣って、どうやるんだ?いっぺんやって見せてよ。」
まだ、杖が気に入らないらしく、うるうるしているククリに、ニケが言うと、
「…いいわよ。カンタンな、火を起こす魔法陣を描いてみるね…」
ククリは、ちょっと笑顔を見せて、地面に杖で、魔法陣を書き始めた。
「まず、火のシンボル、タウラ(ヘンなマーク)を描くのよ、それで…」
「ラクガキみたいだな!」 ニケ…わくわく。
「こうやって…こう…できたっ!」 じゃーーん! 描き上がった魔法陣…「ん?」
その線に沿って、地面がぼこぼこっと…もり上がってきたかと思うと…
ぼこっ!
地面から、突然現れた、おかしな…ホントおかしなモンスター!そんでもって、でっかい!
ニケを頭の上に乗せたまま、空へ向かって伸びていく。
「きゃー!」 「どっしえ〜〜、な、なんだコレ〜〜〜ッ!!」
その声が、ゆっくりお茶を飲んでいたオババのところに届いた。 「ム?まさか、もう…」
タタタタタ…ククリのところへ駆けつけたオババ…「やっぱり!!」
「あ、おばーちゃーん!!」 「ひーっ!」
「○’□△◎…」 オババが呪文を唱えると、たちまちモンスターは、消え去った。
「火のシンボルはトーラじゃ!!また変なモノ出しおって…」 オババ、怒る!
「ごめんなさい…」 一応、反省している様子のククリ。
ニケは、恐る恐るオババに尋ねた。 「あの…またって、もしかして昨日…」
「よく知っとるの。昨日の夜も、こーなった。」 予感的中のニケ…(やっぱり…)
「言うつもりはなかったが、この際話しておこう、グルグルの本当の恐ろしさ…
それは、術に失敗した時じゃ!!未知のエネルギーを使うゆえ、一体何が出るかわからん!!」
青くなるニケ…「…え…そ、そんな…!!」
「おまけにこの子は、物覚えがワルい…わしはもう疲れ果てた。あとは任せたぞ、勇者よ。
ヒッヒッヒッヒッヒッ…」 ダーーーッと、走り去るオババ…しかも、とてもうれしそう。
「あっ!!待ってくれよ〜」 追いかけようとするニケの前に、ひょいっと顔を出すククリ。
「さ!!行きましょ、
勇者様。」 「………」 ニケ、ヒクヒク…言葉を失う…

解説) こうして、勇者ニケと魔法使いククリは、ジミナ村を旅立ったのである。
だが、勇者は思った。やはりグルグルは、モンスターであったと…


〜 第1章 おわり 〜

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