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仮面ライダーXの第1回


仮面ライダー


X.X.Xライダー誕生たんじょう!!


昼間の海岸──

海から、背広姿の男がずぶぬれのまま、砂浜へと歩いてくる。
そして砂浜を掘り始めたかと思うと、中から奇妙な像が掘り出される。
像から声が響く。

「余はGOD総司令──ネプチューン、行け! 計画は既に動き出している。お前は今日から、海の大王となるのだ!」

空に雷鳴が轟き、男の姿が怪人ネプチューンへと変わる。
そして像が爆発、姿を消す……


ところは変わって、沖縄と東京をを結ぶフェリー・新さくら丸が東京へ到着する。
降りてくる乗客の中に、主人公・神 啓介がいる。

啓介「半年振りの東京か……」

道を行く啓介を、4人の男が取り囲む。

啓介「何だ、お前たちは?」

男の1人が拳銃を取り出す。

男「神教授の息子、神啓介だな?」
啓介「お前たちは……?」

男たちが啓介を捕えにかかる。

啓介「何をする気だ!?」
男たち「お前は大切な人質だ。一緒に来て貰おう」「来い!」

啓介が得意の沖縄空手で対抗。銃が地面に転がる。

男「俺たちに1人で立ち向かうとはいい度胸だ。しかも! 人間の分際でな」
啓介「するとお前たちは人間じゃないのか……!?」

男たちの姿が一瞬にして、異形の戦闘員の姿へと変わる。
戦闘員たちの反撃に劣勢を強いられた啓介が、必死に逃走し、海の中へと飛び込む。

戦闘員の1人が海へ銃を向けるが、別の戦闘員がそれを制する。

戦闘員「待て。馬鹿な男よ……ネプチューンの生贄になって死ぬのだ!」

海の中からネプチューンが顔を出す。

ネプチューン「死ね! 神啓介! お前は自ら死の道を選んだのだ」

ネプチューンが口から泡を吹き出す。
泡が海の上を這い、次第に啓介へ迫る。必死に逃げる啓介。

ネプチューン「その泡に追いつかれたとき、お前の体は白骨となって、死ぬのだ!」


城北大学。

一室で啓介がずぶ濡れの服を着替えているところへ、恋人の水木涼子が訪れる。

涼子「きゃ! ……啓介さん!」
啓介「涼子……!」
涼子「びっくりしたわぁ。沖縄にいるとばかり思ってたのに」
啓介「あぁ、水産大学が休暇になったんでね、東京でバイトでもしようかと思って」
涼子「でも一体どうしたの? ずぶ濡れになっちゃって」
啓介「ん……ちょっとした寒中水泳ってとこかな?」
涼子「寒中水泳? 服を着たまま?」
啓介「少し寒かったな……親父は?」
涼子「……教授は隠れ家よ」
啓介「隠れ家ぁ?」


啓介がバイクに跨り、後ろに涼子を乗せ、父・神啓太郎教授の隠れ家のあるという海岸の洞窟へやって来る。

啓介「あそこかい?」
涼子「えぇ」

洞窟の中へ向かう2人。
その様子を密かに、ネプチューンが目にしていた……


洞窟内の隠れ家。
そこは隠れ家というより秘密基地とでも言うべき、様々な機器に囲まれた部屋。

涼子「教授、教授? ……どこへいらしたのかしら?」
啓介「親父の奴、いつの間にこんな所へ引っ越したんだ? ……危ないっ!」

突如、何者かが木刀を振るって襲い掛かる。
啓介がテーブルを盾にしてそれを避け、相手と応戦。
手刀で木刀を叩き折る。

その相手こそ、父・神教授である。

啓介「ちぇっ。相変わらずだな、親父」
神教授「啓介、その腕じゃまだまだだぞ。これからの科学者は、腕っ節も強くなきゃ務まらん!」
啓介「よしてくれよ。俺は科学者になるなんて言った憶えはないぜ」
神教授「何っ!?」

神教授が一本背負いで啓介を投げ飛ばす。

啓介「あ痛ったぁ……やったな親父ぃ!」
神教授「バカ息子!」

再び取っ組み合おうとする2人に、涼子が仲裁に入る。

涼子「教授! 啓介さんも、どうして会うたびにこうなんですか?」
啓介「……クソ親父!」
神教授「フン!」
涼子「本当は仲のいい親子の癖に……」
啓介「フン、こんな親父と……」
神教授「なぁにぃっ!」
涼子「やめて下さい!」
神教授「……まぁ、今日の所はこれぐらいで勘弁してやろう。お前の未来の嫁さんの顔を立ててな」
涼子「そんな……お嫁さんだなんて……」
啓介「悪趣味だぞ、親父」
神教授「柄にもなく照れてやがる」

神教授がロッカーから、赤いジャケットを取り出す。

神教授「啓介、今日からこれを着てろ」
啓介「何だこりゃ……へへ、よせよ、こんな女の子みたいな」
神教授「反対は許さん、言われた通りにしろ!」
啓介「冗談じゃねぇよ……」
神教授「啓介! お前はそれを着てなくちゃいかん。お前が今日、沖縄から帰った時にどんな目に遭ったか、よく考えてみろ」
啓介「お……親父? 知ってたのか?」
神教授「うむ……」


夜。父に言われた通りジャケットを着込んだ啓介が、ステーキハウスで涼子と食事中。

涼子「よく似合うわ」
啓介「チッ、あの頑固親父め……一体何考えてんだかさっぱりわからん」
涼子「お父様はね、あなたと一緒に仕事がしたいのよ」
啓介「まっぴらだ。狭っこい部屋に閉じこもって人間工学の研究だなんて……おれはね、涼子さん。7つの海を駆け巡る世界一の船乗りになるんだ!」
涼子「啓介さんはそれでいいでしょうけれど……私、時々教授がとても寂しそうに見えることがあるの」
啓介「寂しそうに?」
涼子「教授は大学でも孤立してしまっていて、味方といえば私だけでしょ? 口ではあんなこと言ってても、本当はとても辛いんだと思うわ。私ね、教授が何度も啓介さん宛てに手紙を書いてるところを見たわ……でも、今の仕事を啓介さんに手伝ってもらいたくてたまらないのよ。だって、周りはお父様のことを気違い扱いする人ばかりですもの。啓介さん、手伝ってあげたら?」

その時、レストランのボーイが……

ボーイ「水木涼子様?」
涼子「はい?」
ボーイ「お電話が入っておりますが」
涼子「すみません」


涼子が席を立った後、啓介らのテーブルにどこからか声が響く。

「神啓介……余の名はGOD総司令」

啓介が声の方向を探し、テーブルの下を覗くと、そこには奇妙な像が。

「お前の親父に伝えろ。GODは神教授の頭脳を必要としている。誘いを拒否すると死ぬ、とな!」

小さな爆発を起こし、像は跡形もなく消え失せる。
やがて涼子が戻って来る。

涼子「どうしたの? 啓介さん」

先のボーイが姿を変える。その正体はネプチューン……


夜。
ある船の海を行く中、前方で海面が突然、沸き立ち始める。

乗組員たち「おい、あれは何だ!?」「海面が沸き立ってるぞ!?」

不審に思った乗組員たちが船上に出ると、海からネプチューンが飛び出し、甲板上に降り立つ。

乗組員たち「うわぁ──っ!!」

ネプチューンが乗組員たちに泡を吹きかけると、たちまち乗組員の肉体が溶け、骸骨と化してしまう……


GOD機関とは
世界の対立する大国同士が 密かに手を握り
改造人間を使って 日本全滅を狙う
恐怖の秘密を組織である


翌朝。

海岸に打ち上げられた乗組員たちの骸骨を、神教授が浜へ引き上げ、ゴザをかける。
そしてビーカーで海水をすくおうとし、危うく足をすべらせる。
すかさず啓介が父を支え、代って海水を採って父に渡す。

啓介「手伝ってるわけじゃないぜ。やられた船の仇討ちがしたいだけだ」
神教授「……ふん!」

そこへ涼子が駆けて来る。

涼子「啓介さ──ん!」
啓介「涼子さん!」
神教授「動くな!」

なんと神教授が、拳銃を取り出す。

啓介「お、親父、何を!?」

神教授が啓介を撃つ。

啓介「わぁっ!」

その場に倒れる啓介。
涼子が神教授の隣に寄り添い、笑い合う。

神教授「わはははは!!」
涼子「うふふふ!」

撃たれた筈の啓介が身を起こす。狐につままれたような表情。

神教授「啓介、いつまで寝てんだ。早く起きろ!」
啓介「ひでぇなぁ、びっくりさせやがるぜ」
神教授「これを着てろという意味がわかったか?」
涼子「このジャケットは完全な防弾チョッキになってるの。弾丸ばかりじゃなく、三千℃の火にも、爆弾にも耐えるようにできてるわ。教授の発明よ」
啓介「初めっからそう言やいいのに」
神教授「啓介、明日から忙しいぞ! いよいよ本格的なGODとの戦いが始まるんだ。今日はゆっくり休んでおけ」

その様子を、密かにネプチューンが監視していた……


夜、啓介の自宅。
啓介がベッドで寝に入る。

啓介「チェッ、親父め……俺が手伝いをすると勝手に1人で決めてやがる」

神教授の隠れ家である洞窟の入口に、戦闘員が群がる。

隠れ家の奥、研究室で研究中の神教授のもとに突如、ネプチューンが出現する。

神教授「ゴ、GODだ!!」

果敢にネプチューンに挑む神教授だが、怪人相手では到底歯が立たない。

ネプチューン「死ねぃ!!」


一方、啓介の自室。
何者かが、ハンガーにかけられているジャケットに薬液をかけると、たちまちジャケットが溶けてゆく。

啓介「誰だ!?」

気配に気づいた啓介が飛び起きると、そこには全身黒ずくめの何者かが。

啓介「待てぃ!!」

その謎の人物が逃げ出す。啓介が家の外まで追って行き、捕まえてマスクをはぎとる。
その素顔は……なんと水木涼子。

啓介「涼子さん……? どうして!?」

そのとき、近くに飾られていた天使像から声が響く。

「神啓介! お前たち親子が邪魔だからだ!」

啓介「……親父が危ない!」


夜の道路で啓介がバイクを飛ばし、父の隠れ家へ急ぐ。

翌朝、ようやく啓介が隠れ家へ到着。
洞窟入口のそばに神教授が倒れている。

啓介「親父ぃっ!!」

神教授に啓介が駆け寄る。

啓介「親父、親父ぃっ!!」
神教授「あ……バ……バカ息子……」
啓介「しっかりするんだ!」
神教授「お前こそ……後ろ……」

啓介の後ろに、数人に戦闘員たちが群がる。

啓介「お前たちは……GOD?」
戦闘員「俺たちの名は、GOD戦闘工作員。親子仲良くくだばれ!」
啓介「何を!!」

戦闘員たちが銃を放ち、たちまち啓介が蜂の巣となる。
啓介が倒れたのを確認し、戦闘員たちが立ち去る。


やがて、息絶え絶えの神教授が、啓介が倒れたのに気づき、力を振り絞って啓介を隠れ家の奥への研究室へと運んで行く。

神教授「啓介……このままでは、お前は死ぬ。わしはお前を死なせたくないのだ……お前を生かすには、この方法しかないのだ。許してくれ……!」


今にも意識を失いそうになる
我が身を奮い立たせ
神教授は 死力を尽くして
啓介の体にサイボーグ手術を行なう

それは 教授の 我が子に対する
最後の愛であった


啓介が意識を取り戻した時、彼は洋上の船の上にいた。

啓介「俺は生きてる……? どうしてだ?」

傍らに無線機らしきものがあり、神教授の声が響く。

神教授「聞け、啓介。私は、いつかこんな日が来ることを見越していた。啓介、お前の体はもう人間ではない」
啓介「えぇっ!?」
神教授「お前の命を救うにはこの方法しかなかった。許してくれ……お前は改造人間カイゾーグとなったのだ」
啓介「カイゾーグ……?」
神教授「お前の体は1万mの海底の水圧に耐える強さを持っている。お前の名は“仮面ライダーX”」
啓介「仮面ライダー……X?」
神教授「見ろ、啓介」

船の先に小島が見える。

神教授「あの島は私が作った島だ。あの島は私自身だ。島全体が大コンピューターになっている。私の全人格、全知識が中にある」


やがて、船が島へ到着。

その内部はまさに秘密基地とも言うべき、最先端の機器が備えられた基地であった。
正面の壁が開くと、神教授の遺体が収められたカプセルが現れる。
そして神教授の声が響く。

神教授「科学者、神啓太郎はここに生きている。啓介、これが私の“神ステーション”」

島の岩山が崩れ、秘密基地・神ステーションとしての本来の姿が現れ、海中へと姿を消してゆく。

神教授「啓介、私はいつもここにいる。今後お前が私を必要とするとき、私はここで待っている。お前はいつでもこの神ステーションに、私を訪ねて来るが良い」
啓介「親父……」
神教授「GODは私の資料を奪った。あれをもとにGODはますます強大な悪魔の組織になるだろう」

壁が開き、特殊装備を備えたバイクが現れる。

神教授「啓介、これがお前の乗る“クルーザー”だ!」

さらに啓介の胴に、特殊なベルトが装着される。中央には武器らしきスティック、両腰にはマスク状のアイテムが備えられている。

神教授「そしてこれは、お前の武器“ライドル”。もうひとつはXライダーにセットアップするための“パーフェクター”と“レッドアイザー”だ! 啓介、最後の頼みがある……Cスイッチを入れてくれ」

言われるがまま、啓介がそのスイッチを押す。
すると神教授の遺体を収めたカプセルが、海中へと射出される。

啓介「親父ぃっ!?」

カプセルが、海中で爆発──

啓介「親父ぃ──っ!!」


神教授「泣くな啓介。私はここにいる。この神ステーションが私自身なのだ! 行け、Xライダー! 悪の組織GODを倒せ!! 行け、Xライダー!!」

啓介「……見ていてくれ、親父。セターップ!!」

啓介の首から下が銀と赤のスーツで覆われ、更に左腰のレッドアイザーがXマスクとなって啓介の顔を覆う。
最後に左腰のパーフェクターをXマスクの口に装着。
“仮面ライダーX”の誕生だ。


神啓介は
レッドアイザーとパーフェクターによって
仮面ライダーXに
セットアップするのだ


クルーザーに跨ったXが神ステーションを発進。海中から海上へと飛び出し、地上へ。
地上では多くの戦闘員達が待ち受けている。

戦闘員たち「な、何だあれは!?」「何者だ!?」

クルーザーから降りたXが地面に降り立つ。

戦闘員たち「貴様は何者だ!?」

Xがライドルから細剣・ライドルホイップを引き抜き、宙を裂いてX字を描く。

X「Xライダー!! 行くぞ!」

Xの拳が、蹴りが、投げ技が次々に戦闘員に炸裂。

X「ライドルスティック!」

ライドルが棒状のライドルスティックに変形。次々に戦闘員が叩きのめされ、一掃される。
そして怪人ネプチューンが出現。
Xのライドルスティックと、ネプチューンの構える三叉の鉾が激しい鍔迫り合いを展開する。

ネプチューンの振るう鉾の前に、ライドルスティックが宙に飛ぶ。
しかしXもまた宙に舞うと、空中のライドルスティックで鉄棒の大車輪のように宙を回転し、地面に着地。
隙を突き、ネプチューンの投げた鉾が、Xの左足に突き刺さる。

ネプチューン「どうだ、Xライダー!」

痛みを堪え、なおもネプチューンに挑むX。
そしてXの体が宙を舞い、一杯に広げた両手両足が「X」の字を成す。

X「Xキィ──ック!!」

渾身の力を込めたXのキックがネプチューンに炸裂。

大爆発──
そしてネプチューンの首だけが、Xの足元に転がってくる。

ネプチューン「これが最後の……首爆弾だ!」

ネプチューンの首が爆発。

Xの変身が解除されて神啓介の姿に戻り、左足の傷の痛みに耐え切れず、膝をつく。

そこへ、誰かがネッカチーフを差し出す。その顔は……涼子!?

啓介「君は……!?」
女性「私は涼子ではありません。霧子です」
啓介「霧子……?」

霧子と名乗ったその女性が、ネッカチーフを啓介に手渡す。

霧子「その傷をこのネッカチーフで。半日もすればすっかり良くなるはずです」

啓介がネッカチーフで応急手当をしつつ、去ってゆく霧子の後姿を見送る。

啓介「似ている……」


日本を滅亡させるため
巨大な悪の組織GODは
不気味な活動を始めた

恋人に裏切られ 父を殺された神啓介の
心の傷は まだ癒えていない

涼子は なぜ裏切ったのか?

そして 謎の女・霧子とは何者か?

負けるな 啓介!
走れ Xライダー!!


つづく
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