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仮面ライダーV3の第1回


仮面ライダーV3


ライダー3ごう
 そのはV3
!


夜、とある路地裏──

道路のマンホールを開け、全身黒ずくめの謎の男たちが、何やら荷物を中へと運び込んでいる。
その様子を、近くを通りかかったスクーターの男が目撃する。

男「何だろう……? よし」

マンホールのそばに男が近づく。既に謎の男たちの姿はなく、蓋は開けっ放しになっている。

男「危ねぇじゃねぇか、こんなところで。おぉい! 誰かいるのか!?」

突如、マンホールの中から巨大なハサミ状の刃が飛び出し、男を一突き。
男が倒れる。
そしてその刃は、またマンホールの中へ消えてゆく……。

そこへバイクで通りかかったのは、主人公・風見志郎。
男が倒れているのに気づく。

志郎「おい! おい、どうした!?」

志郎の目前で、その男の体はあっという間に溶けて消え去り、あとには衣服と煙だけが残る。

志郎「人間が溶ける……!? 何ていうことだ……!」

突如、近くの車のヘッドライトが点り、志郎目掛けて走り出す。
志郎が咄嗟によける。
車は尚も志郎を追うが、志郎はどうにか逃げ去る。

志郎「畜生……!」


翌朝の風見家。

志郎の妹・雪子が、食卓にコーヒーを置く。

雪子「あら? お兄ちゃん、まだ寝てるのかしら? お兄ちゃん、コーヒーが入ったわよ!」
志郎「おぉ!」

兄を呼びに行く雪子。その隙に、何者かがコーヒーに粉末を流し込む……

やがて、食卓につく志郎。

志郎 (俺は昨夜、この目で人間が溶けるのを見た…… そして、怪しい車に命を狙われた…… しかし、なぜ? なぜ俺の命が狙われなければいけないんだ!?)

考え込みつつ、コーヒーカップを口へ運ぶ志郎。
背後から雪子がそっと近づく。

雪子「わっ!!」
志郎「う!?」

雪子が志郎を脅かした拍子に、コーヒーは床に飛び散る。

志郎「こら雪子、びっくりするじゃないか!」
雪子「ごめんなさい……だってお兄ちゃん、ポカーンとしているんですもの」

そのとき。
志郎の目の前で、床に飛び散ったコーヒーが突如、炎を上げる──!


城南大学の化学研究室。
志郎の依頼で、先輩である本郷猛がコーヒーの成分を分析している。

猛「志郎、見てみろ……! 志郎、お前のコーヒーに入れてあったのは、チベット産のルガーという猛毒だ」
志郎「えぇっ!?」
猛「一口飲んだが最後、肉体組織が焼けただれる」
志郎「先輩、これでもまだ信じませんか? ……偶然じゃない。命が狙われたのは、これで二度目なんだ!」
猛 (……なぜ志郎の命が?)


レーシングクラブ主催者である立花藤兵衛の監督のもと、志郎がバイクで荒野を駆ける。
その様子を、立花と猛が見ている。

立花「風見志郎。つまり、猛の後輩の命が狙われているというんだな?」
猛「えぇ。それも単に、命が狙われたってわけじゃないんですよ。奴の目の前で……一人の人間が溶けてしまった」
立花「その目撃者であるためか?」
猛「おやっさん。俺たちの目につかないところで……何かが密かに行なわれて、目撃者が狙われる」
立花「ハハッ、考えすぎだ。ゲルショッカーは滅びたし、地上も平和になったんだぞ」
猛「そう信じたいが……」

やがて、志郎がバイクを停める。

立花「おぉい! まだまだコーナリングが甘いぞ!」
志郎「ハハッ、それじゃもう1周!」

再び志郎がバイクを出す。

立花「ハッ! あの男が狙われるなんて……」

だが志郎の姿が、丘の上の木々の中へ隠れたとき。
大爆発──

猛「まさか風見が!?」

猛がバイクで志郎のもとへ向かう。

立花「よし、俺は救急車を呼んでくる!」


志郎のもとへやってくる猛。

猛「風見! 風見、しっかりしろ! おい……風見! 風見!」
志郎「……そ、空から……爆弾が……さ、三度目……」
猛「風見……爆弾……? 風見、しっかりしろ! 風見!」

そこへ一文字隼人がバイクでやって来る。

隼人「本郷!」
猛「隼人、お前どうしてここへ!?」
隼人「親父さんに聞いた! 救急車はすぐ来る。大丈夫か!?」
猛「そうか……隼人、救急車が来るまでこの男を頼むぞ!」
隼人「おい本郷、どこへ行くんだ!?」

猛が周辺を探る。
ふと見ると、黒いローブに黒頭巾の者達が行列を成し、十字架と花束を運んでいる。

猛「変だな……? 近くに墓地も教会もないはずだ」

やがて彼らは、草むらの中に十字架を建て、花輪をかける。

謎の男たち「デーストロ──ン……」

男たちが去る。
猛が十字架ののもとへやってくる。そこの札に書かれていた言葉は……

猛「本郷猛の墓……!?」


やがて志郎の元に救急車が到着。
救急隊員により志郎が車内へ搬送される。

立花「本郷は!?」
隼人「近くの山を調べてますよ。一体誰がこんなことを……?」
救急隊員「出発しますよ」
立花「俺は、ついてくからな」
隼人「お願いします」

救急車が出発する。
しばし後、猛がやって来る。

隼人「どうした? 変な顔して」
猛「俺の墓があったよ……」
隼人「なんだって、お前の墓が?」
猛「あいつは三度も命を狙われた……それに俺の墓だ……おかしなことが起こりすぎるぞ」
隼人「うん……」

そこへサイレンを響かせ、救急車がやって来る。

隼人「おかしいな? また救急車だ」
運転手「怪我人はどこですか?」
隼人「しまった!」


志郎を搬送している救急車の車内。

立花「大丈夫ですか?」
救急隊員「この様子では、心配ですなぁ……」

志郎の顔を覗き込む立花。
すかさず救急隊員が立花に手刀を見舞い、気絶させる。
そして注射器を取り出すと、それを志郎へ……
しかし既に意識を取り戻していた志郎は、すかさずそれを跳ね除け、注射器を奪い取る。

志郎「誰に頼まれた!?」
救急隊員「やめろ!」
志郎「何だこれは? さては貴様……貴様にも打ってやろうか!? 言え!!」

意識を取り戻した立花も加わり、2人で救急隊員を取り押さえる。

志郎「言うんだ!」
救急隊員「言う! 言うから助けてくれ! そ、それは……グワッ!」

運転席を仕切る布から刃が飛び出し、救急隊員を刺殺したのだ。
救急車が停まる。

立花「志郎、逃げるんだ!」
志郎「はい!」

救急車を降りた2人が運転席へ回るが、運転手も誰もいない。

志郎「誰もいない……」
立花「これは……どうなってるんだ!?」
猛「おやっさ──ん!!」

そこへ猛と隼人がバイクで駆けて来る。

立花「おぉ!」
猛「おやっさん!」
立花「本郷、またやられたぞ! 志郎の言う通りだとすると、これで四度も命を狙われたことになる」
猛「ゲルショッカーが全滅して、やっと平和が戻ったと思ったんだが……」
隼人「また新しい組織か……?」
志郎「畜生……誰が一体こんなことを! よぉし、こうなったら俺1人でも探し出してやる!」
隼人「おいおい、無茶するなよ」


場所は変わって、とある山中。
怪しげな建物の中に、全身黒ずくめの謎の男たちが入っていく。
それを偶然目撃していた女性、珠純子。風景画を描きに来ていたのだろうか、絵描きの道具類を手にしている。

純子「あら? 何かしら、今の人たち」

純子が興味本位で建物へ近づく。
たちまち謎の男たち──組織の戦闘員たちが襲い掛かる。
必死に逃げ出す純子。

純子「助けてぇ! 誰か来てぇ! 助けてぇ! 助けてぇ! 助けてぇ!」

そこへ志郎が、バイクでやって来る。
咄嗟に純子が志郎にすがる。

純子「助けて下さい! お願いです、助けて!」
志郎「一体どうしたんです?」
純子「気味の悪い人たちが追いかけてくるんです!

しかし、戦闘員たちは既に姿を消している。

志郎「誰もいないじゃないですか?」
純子「消えた……」

気が抜けた拍子か、純子が気を失う。

志郎「あぁ、ちょ、ちょっと君! 君! はぁ……弱っちまったな……」


風見家。
純子は気を失ったまま椅子に寝かされ、志郎の母・綾が濡れタオルを額に当てている。

雪子「志郎兄ちゃん、ずるいわねぇ。こんな素敵なガールフレンドを隠しておいたなんてぇ」
綾「違うんですって。偶然出会って、助けたんですよ」
雪子「わぁ、ロマンチックねぇ!」
純子「うーん……恐い……助けて……」
綾「大丈夫ですよ、ここなら安全ですからね」


立花のもとを訪れる志郎。猛と隼人もいる。

立花「何、人を助けた? ふーん……で、その人はどこにいるんだ?」
志郎「えぇ、気を失ってたもんで、ひとまず安全な所をと考えて、俺の家に寝かせてあります」
隼人「彼女も何かを見たために……狙われた」
猛「どうも気になるな……」
立花「うむ。なかなか姿を見せんが、今の相手は油断できんぞ!」

隼人が志郎に言う。

隼人「おい、お前はすぐ家に帰ってろ!」
志郎「え!? あ、いや……? すると、俺の家が狙われるってんですか!?」


風見家へ迫る、怪しい足音……

夜の道を、志郎がバイクで家へ急ぐ。


風見家。
純子が意識を取り戻す。
綾と雪子に加え、志郎の父・達治もいる。

純子「う……うーん……あ!」
達治「あぁ、まだ横になっていた方がいい」
綾「私どもの息子の志郎が、あなたをお連れしたんですよ」
雪子「私、雪子よ。よろしく!」
純子「申し遅れました。私、珠純子です。色々お世話になっちゃって、どうもありがとうございました」
綾「お世話だなんて、とんでもない」
達治「良かった、良かったね」

そのとき……奇妙な足音が響く。

達治「何だろう……あの音は?」

居間の照明が消える。
雪子が綾に抱きつく。

雪子「恐ぁい!」

突如、壁から刃が突き出す。
そして壁をぶち破り、怪人ハサミジャガーが出現する。

ハサミジャガー「シーザ──ス……シーザ──ス!」

咄嗟に達治が家の中の物を投げつけるが、怪人相手には到底通用しない。

ハサミジャガー「シーザ──ス!」

達治の胴を、ハサミジャガーの手から伸びた刃が貫く。

綾「お父さん!」


その頃ようやく志郎は、自宅に到着していた。


ハサミジャガーの刃がさらに達治に炸裂する。

ハサミジャガー「シーザ──ス……」
達治「逃げろ……逃げるんだ!」

綾たちが逃げようとするが、たちまち戦闘員たちが現れ、退路を塞がれてしまう。
そこへ志郎が現れる。

志郎「父さん!?」
綾「志郎!!」
雪子「お兄ちゃん!!」
志郎「母さん!!」

家族を救おうとする志郎もまた、戦闘員に捕われてしまう。

ハサミジャガー「我々の姿を見た者は、すべて死んでもらう!」
志郎「母さん!! 雪子!!」
ハサミジャガー「シーザ──ス!」
綾「あぁ……」

ハサミジャガーの刃が綾と雪子を串刺し。
志郎の目の前で、母と妹が息絶える……
呆然とする志郎。だが戦闘員に捕えられており、手も足も出せない。

ハサミジャガー「次はこの女だ。死ね!!」

ハサミジャガーが純子に迫る。
そこへ猛が登場。

猛「志郎!」
志郎「先輩!」
ハサミジャガー「本郷猛……」
猛「ライダ──……変身っ!!」

猛が仮面ライダー1号に変身する。
志郎「先輩が……ライダー!?」
1号「逃げろ! 行くぞっ!!」

ハサミジャガーや戦闘員たちと戦いを繰り広げる1号。
彼らを追いつつ戦場を家の外に移し、戦闘員たちを一掃するが、ハサミジャガーはどこかへと姿をくらましてしまう。

そこへ駆けて来る2号。

2号「本郷、どうした?」
1号「風見の家族が皆殺しにされた……」
2号「何だって!?」
1号「恐ろしい奴らだ……来てくれ!」


風見家。1号・2号が室内に戻っている。
志郎が花瓶に生けてある菊の花を握り締め、悔しそうに投げ捨てる。

志郎「俺は今日限り……人間であることを捨てる! 復讐の鬼となって、親父たちの仇は必ず取る! 仮面ライダー、お願いだ。俺を……俺を改造人間にしてくれ!!」
1号「風見……お前の気持ちはよくわかる。しかし、個人の復讐の為に力は貸せない」
志郎「しかし俺は……!」
2号「改造人間は私たち2人だけでいい。人間でありながら人間でない……その苦しみは私たち2人だけで十分なんだ!」
1号「戦うのは……私たちがやる」
2号「風見……君の身の上にもしものことがあれば、それこそ亡くなった両親や妹さんも浮かばれまい」
志郎「……」
1号「純子さん。あなたが襲われた場所に、デストロンの手掛かりがあるはずだが」
2号「その場所は?」


純子が見た怪しげな建物へ1号・2号がやって来る。
見張りの戦闘員をたちまち一掃。

2号「本郷!」
1号「おぅ! こっちだ!」

地下への階段を発見し、2人が駆け下りる。
やって来た場所は、明らかに何らかの組織のアジト。しかし誰の姿もない。

1号「遅かった……既に放棄した後だ」
2号「デストロン! 誰もいないのか!?」

そのとき、壁に掛かっている蠍の紋章から声が響く。

首領「ようこそ、仮面ライダー1号、2号!」
2号「その声は……まさか!?」
首領「ワッハッハ! 久しぶりだな、仮面ライダー」
1号「ゲルショッカーの首領!?」
首領「お前たちが見たゲルショッカーの首領は、私の仮の姿に過ぎない。そしてお前たちは二度と再び私の姿を見ることもないのだ!」
1号「何だと!?」
首領「私は最後の組織、デストロンを再編成した。世界は必ず征服する。まずその手始めに、宿敵・仮面ライダーを抹殺する!」

突如、1号・2号に怪光線が浴びせられ、2人が苦しみ出す。

首領「この光は、デストロン科学陣が開発した、改造人間分解光線だ。二度と再びお前たちの姿を見ることもない。同時に立花藤兵衛も後を追う!」

その頃志郎は、1号・2号の後を追ってアジトへとやって来ていた。

志郎「よぉし……」


アジト内。

首領「あと10秒で全身が分解する。さようなら、仮面ライダー!」

そこへ飛び込んでくる志郎。

志郎「先輩!?」
1号「来るな、風見! 来るな!!」

志郎が2人に体当たり。2人は光線の呪縛から免れたものの、志郎は光線をまともに浴びてしまう。

志郎「うわぁっ!! うっ……うっ……!」
2号「風見!?」
1号「あれだ!」

1号が光線源を見つけ、破壊。志郎は気を失い、そのまま倒れこむ。

2号「風見、しっかりしろ!」
1号「風見!」
2号「このままじゃ死ぬぞ!」
1号「……風見は死を覚悟で、私たちを助けた。死なせたくない……」
2号「とすれば……方法はひとつ」
1号「よし!」


デストロンのアジト跡を利用し、1号・2号の手により、改造手術が執り行われる。
そして1号と2号が、風見の左右の手をとる。

1号・2号「エネルギー全開!」

2人の変身ベルト・タイフーンが作動。2人のエネルギーが風見へ注ぎ込まれる。

と、その時、室内の機器が突如爆発。

1号「どうしたんだ、これは?」
2号「何だ……?」

さらに建物が揺らぎ、天井が落下してくる。


アジト外。 怪人・カメバズーカが、背中のバズーカ砲から砲弾をアジトへ撃ち込んでいる。

カメバズーカ「これだけ撃てば、仮面ライダーは完全に死んだな」

1号・2号「ハッハッハッハ……!」

カメバズーカが笑い声の方を振り向くと、そこには1号・2号の姿が。

1号「デストロンを倒すまでは、仮面ライダーは死なん!」
カメバズーカ「くそぉ、生きていたのか! やれぇ!」

1号・2号と、戦闘員やカメバズーカの戦いが繰り広げられる。

1号「隼人、早くおやっさんのところへ行け!」
2号「よし!」
カメバズーカ「行かせるものか、ライダー!」

2号目掛けてカメバズーカが砲撃。
あまりの砲撃に、とても動きようがない。

2号のもとへ1号が駆け寄る。

1号「隼人、大丈夫か!?」
2号「大丈夫だ」
カメバズーカ「1号、2号、死んでもらう。ズーカァ──!!」

「待てっ!!」

カメバズーカが声の方を振り向く。
そこには、緑の体に赤い仮面の、新たなる仮面ライダーの姿。
それこそ、改造人間となった風見志郎が変身した姿、仮面ライダーV3であった。

1号「おぉっ、成功したぞ!」
2号「うむ!」

カメバズーカ「貴様は!?」
V3「仮面ライダーV3!!」
カメバズーカ「V3……!?」


束の間の平和を破って
突如出現した暗黒組織 デストロン

デストロンに家族を殺された風見志郎は
仮面ライダーV3となって甦った

デストロンとの激しい戦いが
これから始まるのである


つづく
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