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仮面ライダーストロンガーの第1回


仮面ライダー
 ストロンガー


おれはでん人間にんげん
ストロンガー
!!


ここは三河湾 この平和な海を
幸せをもとめる沢山の人々を乗せた船が
今日も滑るように走っていた


三河湾を行くホバークラフトの船内。
多くの乗客を相手に、女性ガイドが解説をしている。

ガイド「本日はホバークラフトをご利用頂き、ありがとうございます。この船は、蒲郡、伊良子、鳥羽間を走っております」

数人の乗客には、耳たぶに妙な紋章がある。

ガイド「本船はジェット燃料を使用して、船底から圧縮した空気を吹き出し、水面から船体を浮き上がらせて飛ぶように走っております。これまでの船に比べますと、操縦は簡単、そして乗り心地も満点、時速は100km……」

乗客の1人が、異形の怪人・ガンガルへと姿を変える。
さらに乗客の数人も、黒ずくめの戦闘員へと姿を変える。

ガンガル「やめろっ!! 能書きはそれぐらいでいい!」
乗客たち「きゃっ!」「何!?」「助けてぇ!」
ガンガル「おとなしくしろ! 静かに聞け。このホバークラフトは、これから我々が操縦する」
乗客「シ……シージャックだ!」

操縦席にいる操縦者を、戦闘員が殴って気絶させる。

戦闘員「操縦席、占領!」
ガンガル「よぉし、予定の方向に走らせろ。いいか、このホバークラフトは我々の輸送船となる! おとなしくしていれば、殺したりはせん」
乗客「うわぁ、引き返してくれぇ!」
ガンガル「うるさい!」

騒ぎ出す乗客の1人を、ガンガルが締め上げ、やがて乗客が動かなくなる。

戦闘員「報告! 東南60度の方向に尾行者です」
ガンガル「何? 尾行者だと!? よぉし、どけぇ!」

客を押しのけ、ガンガルが窓を覗く。

オートバイで砂浜を駆けてホバークラフトを追うのは、主人公・城茂だ。

ガンガル「奴か!? おい、あの邪魔者を蹴散らしてしまえ!」

出口へ向かおうとする戦闘員。
ところが出口に先のガイドが待ち受けており、いきなり手刀を見舞う。

ガイド「えいっ! 一丁あがり!」

さらにガイドは操縦席に乗り込み、ホバークラフトを操縦している戦闘員にも手刀を繰り出す。

ガイド「えいっ!」


ホバークラフトが砂浜に着地。
数人の戦闘員が外に出るが、バイクが乗り捨てられているだけで、茂の姿はない。

戦闘員たち「消えた?」「よく探せ!」「くそぉ、どこへ逃げやがった……探すんだ!」

どこからともなく、口笛が吹く。

戦闘員たち「ん? 口笛?」「誰が口笛を……お前か?」「違う」

ホバークラフトの上に立つ茂。

茂「俺だよ!」
戦闘員「誰だ、貴様は!?」
茂「貴様はないだろ! これから度々お目にかかるブラックサタンの戦闘員諸君ら、名を名乗っておこうか! 姓は城、名は茂!」
戦闘員たち「我々をブラックサタンと知っている……?」「生かしはおけん、降りて来い!」
茂「言われなくたって降りて行くぜ!」

たちまち、茂と戦闘員たちの戦いが始まる。


ホバークラフト内、ガンガルが異常に気づいて操縦席を覗く。

ガンガル「どうした? むっ!?」

そこにいたのは、テントウムシを思わせる姿の女性戦士、電波人間タックル。

ガンガル「き……貴様は誰だ!?」
タックル「電波人間タックル!」
ガンガル「電波人間タックル……? 何者だ!?」
タックル「ブラックサタンの奇械人と戦う、自由と平和の戦士」

ガンガルが逃げ出す。
タックルはガンガルを追って客席へ降りてゆくが、客席には気を失った乗客たちが乗っているだけで、ガンガルの姿はない。

タックル「消えた……?」

そこへ茂が乗り込んでくる。

茂「よぉ、どうしたい?」
タックル「茂、奇械人が消えちゃったの」
茂「何? そうか……外には出ねぇな……ちぇっ、タックルになるのが早過ぎるんだよ! 早けりゃいいってもんじゃないぜ!」
タックル「私のせいで逃がしたっていうの!?」
茂「おぉ、よせ! お前とチャンバラはないぜ。それより、ブラックサタンめ……何の目的でこのホバークラフトを狙ったのか……? ん?」

床に落ちているマッチを、茂が拾い上げる。

茂「ホテルのマッチ? 何かの手がかりになるかもしれねぇ」
タックル「あ、待ってよぉ!」

船から降りた茂が、バイクで走り去る。

茂「お先になっ!」

タックルが一瞬にして変身を解き、人間の姿に戻る。
茂のパートナー、岬ユリ子。先ほどのガイドはユリ子の変装だったのだ。

ユリ子「負けるもんか、あんな奴に!」


マッチを頼りに、当のホテルへやって来た茂。
入口で、背広にサングラス姿の紳士と肩がぶつかり合う。
紳士は、ぶつかった自分の肩を手で払うと、微かに嘲笑を浮かべ、立ち去る。

紳士「失礼……」
茂「ちぇっ、キザな野郎だ」


先の紳士が、ホテルの一室へ入る。
ちょうど部屋を出ようとしていた戦闘員が、紳士とぶつかる。

紳士「触るな」

紳士が吸っていた煙草を戦闘員に押し付けると、たちまち悲鳴と共に戦闘員が崩れ去る。
戦闘員の触れた上着を紳士が迷惑そうに脱ぎ捨て、代りにロッカーから別の上着を取り出して着込む。
彼の元にひれ伏す、数人の戦闘員。

紳士「邪魔者が入ったそうだな」
戦闘員たち「はっ、城茂と申す命知らず」「それに、電波人間タックルという女」
紳士「そのタックルの正体はわかっている。ガンガルが既に手を打っているはずだ」
戦闘員「さすがはタイタン様」

紳士が椅子につくと、その顔が巨大な一つ目の顔となる。ブラックサタンの幹部、一つ目タイタンだ。

タイタン「何の目的で我々の邪魔をするのか……いいな? 城茂から目を離すな!」
戦闘員たち「はっ!」

テーブル上の鉢植えの花を持ち上げるタイタン。

タイタン「電波人間タックルは、必ず始末する! フフフ……」


ユリ子がチェックインした部屋。
ユリ子が出かける支度をしていると、突然、部屋にあった鉢植えの花から煙が吹き出す。
先ほどタイタンが手にしていた物と同じ花だ。

ユリ子「あ……あ……?」

次第にユリ子の気が遠くなる……


ホテルのロビーで、茂が時計を見つめる。

茂「かっきり5分。ユリ子の奴……これだから女は! お先に失礼だぜ」

そのとき、玄関で花屋らしきトラックが停まっており、1人の男が鉢植えの花をトラックに積み込んでいる。

茂「どっかで見たような顔だな……?」

「渥美フラワーセンター」のロゴが入った、トラックが走り去る。

茂「あ、もう6分か……全く世話の焼けるお嬢さんだ」


ユリ子の部屋。
部屋を埋め尽くす赤い煙にユリ子が苦しみ続け、とうとう気を失う。
そこへ戦闘員たちが侵入、ユリ子を外へ連れ出す。
ところが廊下には城茂が。

戦闘員「貴様は!?」
茂「名乗った筈だがね……城さんとか茂さんとか言ってほしいもんだな」

戦闘員がユリ子を置いて逃げ出し、茂は戦闘員を追って階段を駆け下りる。

茂「待てっ! ユリ子の代りに、俺を案内してもらおうか!」


ユリ子が意識を取り戻す。
外を覗くと、ホテルの外の庭で、戦闘員を迎え撃とうとする茂から、戦闘員たちが必死に逃げている。

戦闘員たち「急げ!」「よし!」


ようやく茂を振り切って戦闘員たちが辿り着いたのは、どこかの海岸。
ガンガルと数人の戦闘員が迎える。

ガンガル「女は? 女はどうした!?」
戦闘員「それが……あの城茂が……」
ガンガル「何ぃ!? あの若造め、また出たのか!」

そのとき、またあの口笛が響く。

ガンガル「あの口笛は……出て来い、城茂!!」

ガンガルや戦闘員たちが周囲を見回す。

戦闘員「あっ、あれは何だ!?」

断崖の上に颯爽と立つ、カブト虫を思わせる新たな仮面ライダーの姿──仮面ライダーストロンガーだ。

ガンガル「えぇい! 己は何者だ!?」
ストロンガー「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ、悪を倒せと俺を呼ぶ! 俺は正義の戦士!」
ガンガル「な、何だとぉ!?」

ストロンガーがガンガルらのもとに飛び降りる。
電撃を帯びた強烈なパンチ、キックの前に、次々に戦闘員が倒されてゆく。

ストロンガー「俺の名は、仮面ライダーストロンガー!!」
ガンガル「ライダーストロンガーだと!?」
ストロンガー「ブラックサタンの奇械人ガンガル、お前がこの地に派遣された目的は何だ!?」
ガンガル「ブラックサタンの敵か……仮面ライダーストロンガー、そのでかい口を二度と利かせなくしてやるわ! かかれぃっ!」

襲い来る戦闘員たちを、ストロンガーがたちまち一掃。

ガンガル「ガンガルバズーカ!」

名前の通りカンガルーをモチーフにしているらしく、腹の部分にある子カンガルーにあたるもうひとつの頭部が、口からバズーカを放つ。
爆撃を次々にかわしつつ、ストロンガーがガンガルにキックを見舞う。


その様子を、岩陰からあの紳士──人間体の姿のタイタンが見ている。


ガンガル「死ね!」

ガンガルがストロンガーに爆弾を投げつけるが、これもストロンガーがかわす。


タイタンが無線機を手にする。

タイタン「ブラックオートバイ出動! ガンガルを掩護しろ!」


群がる戦闘員を蹴散らしつつ、ストロンガーがガンガルを追う。
やがて、戦闘員の駆るバイク部隊が到着。
ストロンガーも愛車カブトローを駆って応戦する。
激しいバイク戦の末、バイク部隊は全滅。

タイタン「畜生……ガンガル、ライダーストロンガーは貴様を探している。正体に気づかれん内にホテル中に花を飾り、皆殺しにしろ!」
ガンガル「了解、ただちに準備を!」

タイタンが無線を切る。

タイタン「それにしてもあの姿……どこかで見たことがある」


渥美フラワーセンター。

従業員が鉢植えの花をビニールハウスに運びこんでいる。
ふと見ると、ユリ子が立っている。

ユリ子「きれいな花ね、おじさん」
従業員「びっくりさせないでくれ、わしゃ忙しいんだ」
ユリ子「どこへ持っていくの?」
従業員「触らんでくれ! 商売もんじゃ!」
ユリ子「おじさんの顔、どっかで見たんだけどな……」
従業員「わしゃ、知らん!」
ユリ子「思い出した! ホバークラフトの中にいたでしょ?」

従業員の表情が引きつる。

ユリ子「あの時、奇械人ガンガルが消えた後、噂によれば奇械人は人間に成り変わるのが得意……」
従業員「何のことかさっぱりわからん!」
ユリ子「とぼけてるわね……それにさ、よく言うでしょ?」

鉢植えの花の一つを、ユリ子が手にする。

ユリ子「綺麗な花には棘がある……この花には毒がある!」
従業員「何をする!?」
ユリ子「やっぱり……この花粉で私を眠らせたのね?」
従業員「……うるさい小娘……どの道、生かしてはおけん」
ユリ子「さぁ、正体を現せ! ガンガル!」
従業員「フフフ……お前もひとつ、電波人間タックルになってみるかな?」

従業員がガンガルへと姿を変える。

ユリ子「やっぱり……!」

ユリ子も一瞬にしてタックルに変身。

ガンガル「殺してやる!」

戦闘員も現れ、タックルを迎え撃つ。

タックル「電波投げ!」

電波エネルギーを衝撃波として放つタックルの得意技が炸裂。戦闘員が吹っ飛ぶ。
だがタックルの力ではさすがに奇械人には通じず、ガンガルの一撃でタックルは気絶してしまう。

ガンガル「縛り上げてサタンドームに吊るせ!」


変身が解除されたユリ子が、野外でドーム上に組み上げられた鉄骨──サタンドームに逆さ吊りにされる。

ユリ子「う……うっ!」
ガンガル「いいザマだな、岬ユリ子。教えてやろう。ここで毒花を栽培し、街の花屋に運ぶ。何も知らずに花粉を吸えば、人は死ぬ! 街全体がな!」
ユリ子「そう、そうだったの! 悔しい! 目の前にして……茂──っ!!」
ガンガル「えぇい、ほざけ! 貴様はここで死ぬのだ!」
ユリ子「悔しい!」
茂「そう悔しがりなさんなよ」

茂が現れる。

ユリ子「茂! 何してたのよ!」
茂「ほ〜、おっしゃいますねぇ。自分勝手に乗り込んどいて」
ガンガル「くそぉ!」
茂「おっと待ったガンガル、この姿じゃ勝負にならんぜ」
ガンガル「何を!?」
茂が両手の手袋を外す。その手は電線で覆われたコイルアームだ。

茂「変……身!! ストロンガ──ッ!!」

変身ポーズと共に両のコイルアームを擦り合わせると、電気エネルギーがスパーク。
変身ベルト・エレクトラーが閃光を放ち、茂はストロンガーへと変身を遂げる。

そしてストロンガーは一瞬の内にユリ子を救い出し、サタンドームの上に降り立つ。

ガンガル「ライダーストロンガー!」

ドームから飛び降りるストロンガー。

ストロンガー「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ、悪を倒せと俺を呼ぶ! 俺は正義の戦士! 仮面ライダーストロンガー!!」
ガンガル「くそぉ……かかれ!」

群がる戦闘員たちを、たちまちストロンガーが一掃する。
残るはガンガルのみだ。

ガンガル「ガンガルバズーカ!」

再びバズーカが放たれるが、ストロンガーはまたしてもかわす。

ガンガル「ガンガルスプリングアターック!」

ストロンガーの目の前に躍り出るガンガル。
ガンガルは手も脚も繰り出していないようなのに、強烈な衝撃がストロンガーを次々に襲う。

ストロンガー「何のショックだ!?」
ガンガル「どうだ、ライダーストロンガー……来るか!?」
ストロンガー「おかしい……奴の武器は一体何だ!? よし、ライダービデオシグナル!」


ビデオシグナルとは 記憶再生装置で
これを使うことにより
以前の状態をスローモーションで
もう一度 映し出すことができるのである


ガンガルの攻撃の模様が分析される。
腹部のもうひとつの頭部パーツが、スプリングによって超高速で射出されていたのだ。

ストロンガー「武器の秘密は、スプリングだったのか! よぉし!」

ガンガルの腹部の頭部パーツ目がけ、ストロンガーが連続攻撃。
そして隙を突き、ストロンガーの体が空に舞って宙返り。

ストロンガー「ストロンガー電キィ──ック!!」

10万ワットの電撃をこめた強烈キックがガンガルに炸裂。


大爆発──奇械人ガンガルはストロンガーの前に敗れ去った。


砂浜をバイクで駆ける茂を、ユリ子もバイクで追う。

ユリ子「茂、待ってよぉ!」
茂「ははっ、勝手について来い!」


2人の様子を遠くから、タイタンが苦渋を呑みつつ見つめている……。


突然 悪の巣に挑戦し その陰謀を砕いた
仮面ライダーストロンガーと電波人間タックル

一体この2人は 何の目的で
また どうやって出現したのであろうか?

その秘密は何であろうか……?


つづく
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