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仮面ライダーW ビギンズナイトのオープニング


夜の成海探偵事務所。
翔太郎が口笛でクリスマスソングを奏でつつ、鏡に向かって気取ったポーズで帽子をかぶる。

誰かがその帽子を取り上げる。振り向くと、所長・成海荘吉。

翔太郎「あ!? 何すんだよ、おやっさん?」
荘吉「いつも言ってるよな、翔太郎? 半熟のお前に帽子はまだ早い」

荘吉の放り投げた帽子が、壁の帽子掛けに掛かる。

翔太郎「いいだろ!? このぐらい真似したって!」
荘吉「良かねぇさ。男の目元の冷たさと、優しさを隠すのがこいつの役目だ。お前にはまだどっちもねぇだろ?」

荘吉が自分の帽子を脱ぎ、翔太郎目がけて放る。
慌ててよける翔太郎。またもや帽子が見事に、壁の帽子掛けに掛かる。

荘吉「俺が認めるまで、かぶるな。イヤなら出て行け。わかったな?」
翔太郎「わかったよ…… わかりましたよ。そんなことよりさ、今日が何の日か、わかってるよな?」

デスクに掛けた荘吉が微かに笑みを浮かべる。

「メリークリスマス!!」

荘吉の声ではなく、大勢の男女の声。

翔太郎「はぁ!?」

幻聴か、と疑いつつ翔太郎が自分の耳をこする。

声「こらぁ!」
翔太郎「はぁ?」


昼間の事務所でうたた寝していた翔太郎を、亜樹子がスリッパでひっぱたく。

翔太郎「痛っ! ……亜紀子!? ……おやっさんは?」
亜樹子「はぁ? お父さん? 何、寝ぼけてんのよぉ!? お父さんが帰ってきた夢でも見たの?」
翔太郎「……何だ、夢か」

サンタちゃんがいきなり登場し、チキンのチラシを示す。

サンタ「寝ぼけちゃだめだよ〜! 予約とるよぉ」
翔太郎「わぁ!?」
サンタ「バーン! チキンはぁ、胸と足と、どっちがいい?」
翔太郎「はぁ?」

ウォッチャマンが現れ、翔太郎を引っ張り回す。

ウォッチャマン「胸ぇ! 胸、胸ぇ!、ねぇ、翔ちゃあん!」

広間では、亜樹子、クイーン、エリザベスがクリスマスツリーの飾り付けをしている。
その片隅で、フィリップが静かに本を読んでいる。

ウォッチャマン「翔ちゃん胸好きだからねぇ!」
翔太郎「どっちだっていいよぉ!」
ウォッチャマン「う、裏切り者ぉ! ザ・ムネーズの誓いを忘れたか?」
翔太郎「あぁ? 何だ、そのチーム名!? そんな誓い、した覚えねぇんだよ!」
サンタ「足! LEG! FOOTがいい人は?」
女性陣一同「は──い!」
クイーン「足派の勝──ち!」
ウォッチャマン「食べちゃうぞ〜」
クイーン「キャア〜!」
翔太郎「おい、やめろ、やめろ!」

玄関で、誰かがチャイムを鳴らす。
大騒ぎの一同は、一向に音に気づかない。

ドアが開き、1人の女性が現れる。

亜樹子「あ──っ、お客さん! お客さぁぁん!」
女性「すみません、探偵事務所と間違えました……」

事務所らしからぬ雰囲気に引き返そうとした女性を、亜樹子が慌てて引き戻す。

一同「探偵事務所で〜す!」
女性「……やっぱり、そうでしたか?」
亜樹子「どうぞぉ!」
翔太郎「あぁ──、コホン! 普段はもっと、ハードボイルドな雰囲気で……」
ウォッチャマン「あれ? 睦月安紗美ちゃん!?」
エリザベス「あの姉妹デュオ、エリカ&アサミのぉ!?」

依頼人は人気歌手、睦月安紗美。

安紗美「はい…… あの、実は人を探して欲しいんです」
亜樹子「おまかせください。うちには、スペシャリストがいますから!」

亜樹子が翔太郎の耳を引っ張る。

翔太郎「痛痛痛! 痛ぇよ!」
安紗美「普通の人じゃないです! 姉なんです」
一同「……」
翔太郎「……お姉さんって、確か、海難事故でお亡くなりになった?」
安紗美「えぇ。その姉が、5日前に……」


回想。

ガードマンに守られて歩く安紗美が、大勢のファンに囲まれる。
人ごみの隙間から、微かに見える光景。
光がひらめき、姉・恵里香の姿が現れる。
驚く安紗美。
ファンの持つ花束が視界を遮り、再び視界が開かれたときには、すでに恵里香の姿はない。

安紗美「すいません、どいてください! お姉ちゃん!」


翔太郎「幽霊を捜せ、ってことなのかい?」
安紗美「姉はまだ遺体が見つかってないんです。死んだと思いたくないんです!」

翔太郎の脳裏に、荘吉の最期の姿がよぎる。

安紗美「姉を捜してください。お願いします!」

必死な眼差しの安紗美が、深々と頭を下げる。

亜樹子「パーティー…… 今日はナシね」
一同「え〜っ!?」
エリザベス「せっかく今日は、フィリップくんと仲良くなれるチャンスだったのにぃ! 超ムカつくんですけどぉ!」
クイーン「ほれほれ、行くよ」

フィリップに迫るエリザベス。
しかし、静かに話に聞き入っていたフィリップが、目を輝かせ始める。

フィリップ「死者が生き返る!? そんなことありえないなぁ…… これは調べてみる必要がある!」

翔太郎「この街は俺の庭だ! 安心して待ってな……」
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