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帰ってきたウルトラマンの第1話


怪獣総進撃

凶暴怪獣 アーストロン
オイル怪獣タッコング
ヘドロ怪獣ザザーン
登場


世界各地が異常気象に覆われている
日本列島でも 毎日のように起こる小地震が不気味な地核の変動を示す

そして ついに怪獣たちが一斉に目を覚ました


東京湾。

海中より突如、怪獣タッコングとザザーンが出現し、戦いを始める。
激しい戦いの余波で橋が砕け、車が次々に海に没してゆく。


M・A・T

MATマットとは モンスター・アタック・チームの略称である

国際連合機構の地球防衛組織に属し
地球の平和を守るためにあらゆる怪事件にいどむ特別チームなのだ


海底のMAT基地。司令室で加藤勝一郎隊長のもと、隊員の南猛、岸田文夫、上野一平、丘ユリ子が集合する。

加藤「勝鬨橋が破壊された。怪獣を都心に入れたら大惨事になる。南」
南「はい!」
加藤「岸田」
岸田「はい!」
加藤「上野」
上野「はい!」
加藤「君たちは空から攻撃しろ」
3人「はい!」「出撃します」
加藤「丘くん、出発だ」
丘「はい」

MATの戦闘機、マットアローが出撃する。


東京湾。依然、戦い合っている怪獣たち。
マットアローが飛来し、怪獣たちに砲撃を加える。

「発射!」「発射!」


一方こちらは、坂田自動車修理工場。
駆け込んで来る坂田次郎少年を、姉のアキが迎える。

次郎「怪獣だぁ! 怪獣だよ! 怪獣だぁ!」
アキ「どうしたの、次郎?」
次郎「怪獣だって」
アキ「怪獣?」

レーシングカーを整備している、坂田家の長兄・坂田健と、主人公・郷英樹。

次郎「兄ちゃん! この車、怪獣に壊されたらどうする?」
郷「怪獣?」
次郎「本物の怪獣だよ。ようし」

郷のスパナを次郎が手にし、駆け出す。

坂田「おい、次郎? 次郎、やめるんだ!」
アキ「危ないわよ!」
郷「よし、俺が連れてくる」
アキ「郷さん!?」


東京湾付近の道路上で、大勢の人だかりを、警官が整理している。

警官「さぁ、これから先は危険です。さぁ」

その脇を次郎がすり抜け、走り去る。郷が次郎を追う。

警官「おぉい! 危ないぞ! おっ死んだって知らんぞ!」
郷「おぉい、次郎!」

タッコングの攻撃の前に、ザザーンが倒れる。
勝ち誇ったように暴れまくるタッコングに、マットアローが攻撃を続ける。
海岸でその様子を見つめる次郎に、郷が追いつく。

郷「次郎!」
次郎「郷さん、怪獣」
郷「あぁ。さぁ、帰るぞ!」


公園。避難してきた人々を、MATの面々が誘導している。

女性「子供を、子供を助けて下さい!」
加藤「どこです?」
女性「あのアパートです! ハトを逃がすって聞かないんですよ!」
加藤「まぁ、落ち着いて。丘くん!」
丘「はい!」

加藤と丘が、そのアパートへ向かう。
海岸から上陸したタッコングが、次第にアパートに迫る。
郷と次郎もいる。

女性「ヒロシ!」
加藤「あっ、危ない」
丘「私、行きます」
女性「ヒロシ! ヒロシ!」
丘「行って来ます!」
郷「待て、女じゃ無理だよ」
丘「え?」
郷「待ってろよ」
加藤「君!?」

アパートの屋上で、必死にハト小屋を開けようとしている少年のもとへ、郷が駆けつける。

郷「君! 怪獣が見えないのか!?」
少年「だから逃がしてんだよ」
郷「よし!」
少年「ほら、早く逃げろよ! ほらほらほらぁ! ほらぁ!」

郷が少年を手伝い、小屋からハトを逃がし、階段を駆け降りる。
廊下に飼い犬が鎖で繋がれ、逃げられずにいる。

少年「あっ、チビだ」
郷「君は早く逃げろ。俺が連れてくる」

郷は少年を逃がし、犬を助けに走る。

少年「あっ、お兄ちゃん。怪獣だよ! 怪獣が来たよぉ!」

犬を救い出した郷が、少年のもとへ駆けつける。

郷「伏せろ!」

郷が自分の体を盾にして、少年をかばう。
タッコングがアパートを叩き壊し、郷の上に瓦礫が次々に降り注ぐ。

郷「うっ! ぐっ……!」

そのとき。
周囲が突然の閃光に包まれたかと思うと、タッコングの体に火花が飛び散る。
あまりの眩しさに、思わず目を覆う加藤。

加藤「今の光は何だ……?」

タッコングが体から煙を吹き上げながら、海へと退散してゆく。

郷「大丈夫か」
少年「うん。ありがとう」
郷「よかった……」

少年が駆けて行く。無事を見届けて安心したかのように、郷が倒れる。


病院に搬入された郷。

アキ「先生、献血ならいくらでもします。郷さんを助けてあげて下さい!」
医師「静かに……」
加藤「どうですか?」
医師「今のところ、何とも」
加藤「この青年を死なせてはいけません。子供の命、いや小犬の命まで助けたんです。死なせてはいけません」
医師「我々も全力を尽くしている」

少年「お兄ちゃん……」
母親「大丈夫。大丈夫よ、きっと!」
次郎「郷さんが死ぬもんか……」

病室での治療が開始される。
ベッドに付き添うアキたち、加藤たち。坂田も駆けつける。

アキ「兄さん」
坂田「郷。流星号は完成したぞ。いつでも走れるんだ。いつでもOKなんだぞ。聞こえるか、郷!」


子供を愛し 生き物のすべての命を愛し
人を助けるためには自分の命をも投げ出した青年 郷秀樹

今 郷青年の命は風に揺れるろうそくの火のように消え去ろうとしている

郷 がんばれ! 死ぬな 郷よ!


アキ「郷さん!?」
医師「ご臨終です……」
次郎「郷さん、死んじゃイヤだ! 死んじゃイヤだよぉ! 郷さぁん!」


坂田家。

坂田三兄弟が、坂田と郷の手で完成させたレーシングカー、流星号を見つめる。

(郷『優勝して賞金もらったら、田舎の母さん呼んで、一緒に暮らそうかな』)

空き地で、流星号の運転席にアキが花束を、次郎は車の玩具を置く。


坂田「郷…… 俺がお前にしてやれるのは、せいぜいこの程度だ…… あんまり飛ばすんじゃねぇぞ」

坂田が流星号にガソリンをまき、火をつける。炎に包まれる流星号を、次郎が見つめる。

次郎「さよなら…… 郷さん」


病院の遺体安置室。
郷の遺体の上に突然、眩い光が輝き、光の中からウルトラマンが姿を現す。

ウルトラマン「郷秀樹── 私は君の勇敢な行動を見た。自分の危険も省みず、子供を助けようとした君に感動した」

郷が少年を救おうとしていた場面の、一瞬の閃光の中で繰り広げられていた光景が浮かび上がる。
瓦礫に埋まっていく郷。
空の彼方からウルトラマンが飛来。タッコングに攻撃を加え、さらに必殺のスペシウム光線を撃ち込む。

ウルトラマン「私はこのままの姿では地球上に留まることはできない── だから、君に命を預ける。一緒に地球の平和と人類の自由のために頑張ろうではないか──」

ウルトラマンが、郷の肉体と一体化。郷が目を開く。

郷 (ここはどこだ? 俺は一体どうしたんだ?)

ドアが開き、看護婦が花を持って入ってくる。

郷「やぁ」
看護婦「きゃあぁっ!?」


MAT司令室。

加藤「おう、どうだった?」
南「はぁ、探知機でくまなく探ってみたんですが、反応はありませんでした」

星占いの本に目をやる上野。

上野「金星に火星がかぶっている…… 大凶だ。地球は呪われている」
岸田「やめないか、上野。星占いなんかしてる場合じゃないんだ」

電話が鳴る。

丘「隊長……!」
加藤「何だ?」
丘「郷さんが…… 郷さんが生き返ったそうです」
加藤「何だって!?」


坂田家に帰った郷が、燃え尽きた流星号を目にする。

アキ「送り火にしたのよ…… 流星号に、あなたの魂を乗せて、天国に向けて走らせたんだわ」

坂田自動車修理工場。

郷「坂田さん、もう一度初めからやり直しましょう。流星2号!」
坂田「その必要はないよ」
郷「えっ?」

修理工場の前に、1台の車が止まり、加藤が現れる。

坂田「君は今日から、あの人のところへ行くんだ。君を、MATチームの一員として、ぜひ欲しいとおっしゃっている」
加藤「やぁ、坂田さん」
坂田「いらっしゃい」
加藤「郷くん、聞いてくれたね? 坂田さんから。君は灰の中から、フェニックスのように甦った。君のその不屈の精神力、強靭な肉体は、我がMATチームにふさわしい。来てくれるね?」
郷「え…… 急にそんなこと言われても、俺……」

突然、郷の耳に怪獣の叫び声が響く。

アキ「どうしたの?」
郷「誰かが俺を呼んでいる……」
アキ「郷さん!?」

郷が車に飛び乗り、走り出す。加藤のもとに通信が入る。

加藤「私だ」
丘『隊長、朝霧火山に怪獣が出現したそうです。南、岸田、上野隊員が現場へ急行しました』
加藤「了解、すぐ帰る」


朝霧火山付近。
怪獣アーストロンが出現、人々が逃げ窓う。
MATのマットアローとマットジャイロが飛来。アーストロンの攻撃を避けつつ、砲撃を加える。

車を飛ばす郷。

郷 (どうした……? 俺はいったいどこへ行くんだ?)

加藤「南、村へ近づけるな。正面攻撃だ」
南「了解。行くぞ!」
加藤「MAT2号、村民を安全な場所に誘導させるために着陸せよ」
岸田「了解」

マットアローが着陸。隊員たちは、銃で怪獣を威嚇しつつ、村人たちを避難させる。
怪獣が口から火を吐き、木々が燃え上がる。

加藤「退避!」
一同「はっ!」

鉄塔が倒れ、1人の老人がその下敷きになる。

少女「あっ、おじいちゃん、おじいちゃん!?」
老人「早く、早く逃げろ!」
少女「おじいちゃんと一緒じゃなきゃイヤだぁ!」

そこへ郷が駆けつける。

郷「どうしたぁ!?」
少女「おじいちゃんが挟まれて……」
郷「よし」

郷が鉄塔をどかしにかかる。怪獣の吐いた火で木々が燃え上がり、煙が郷たちを包み込む。

少女「うっ…… ゴホッ、ゴホッ!」
郷「おい、しっかりしろ…… 我慢するんだ! ぐっ!」

そのとき、上空に光が輝く。
何かに導かれるように、郷が空を目がけて両手を広げる。

閃光に包まれ、郷がウルトラマンに変身。
空から舞い降りたウルトラマンが、アーストロン目がけてキックを浴びせる。

老人たちのもとへ、MAT隊員たちが駆けつける。

隊員たち「おい、大丈夫か!?」「おい、しっかりしろ!」

ウルトラマンとアーストロンの戦いが続く。
巨体同士のぶつかり合い。ウルトラマンは次第に追い詰められる。


ウルトラマンのエネルギーは3分間しか続かない
カラータイマーが青から赤に変わると危険信号だ

ウルトラマン 頑張れ!


アーストロンの隙をつき、渾身のウルトラマンの攻撃が炸裂。
そして必殺のスペシウム光線が撃ちこまれる。とどめを食らったアーストロンが、ついに倒れる。

勝利を収めたウルトラマンが、空の彼方へと飛び去る。


川原に佇むMAT一同のもとに、丘が食事を運んで来る。

上野「おぉい、早く出せよ。腹ペコだよ」
丘「ダメ。手を洗いましたか?」
上野「こんなとき、どうだっていいだろ?」
丘「ダメよ。ほら」
加藤「早く洗った方がいいようだな。え?」
南「行くぞ」
丘「ほら、早く」

一同が手を洗いに、川辺へ向かう。

南「隊長!」

誰かが倒れている。加藤が駆けつけて助け起こすと、それは郷。

加藤「おい…… 郷くんじゃないか!?」
郷「……隊長?」
加藤「駆けつけてくれたんだな」
郷「いや、僕はいったい……」
加藤「大丈夫か?」
郷「……」
加藤「300kmもはるばる、来てくれたじゃないか。諸君、紹介しよう。今日からMATの一員になる、郷秀樹くんだ。勇敢な青年だよ」
丘「歓迎しますわ。初めまして、丘です」
南「やぁ、南だ。よろしく」
郷「郷です」
岸田「岸田です。よろしく」
上野「上野です。よろしく」
加藤「さぁ、おにぎりにありつくか」
丘「どうぞ」
加藤「一緒に食おう」
郷「はい」

MATの面々が食事の場に戻る。

ふと、郷が空を見上げる。
まばゆい光が輝き、ウルトラマンの声が響く。

ウルトラマン「郷秀樹── 私はウルトラマンだ」
郷「ウルトラマン……?」
ウルトラマン「君は一度死んだ。そこで私の命を君に預けたのだ」
郷「そうだったのか…… 一度死んだ人間が生き返るなんて、俺も不思議に思っていたんだ」
ウルトラマン「君はもうウルトラマンなのだ」
郷「俺がウルトラマン?」
ウルトラマン「これは君と私だけの秘密だ。人類の自由と幸福を守るために、共に戦おう」

郷「俺はウルトラマン…… 俺の使命は人類の自由と幸福を脅かすあらゆる敵と戦うこと……!」


空の彼方を見つめる郷の胸に、MAT隊員として、ウルトラマンとしての戦いの決意が満ちる。


(続く)
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