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コジコジ @

〜 その1 「コジコジはコジコジ」 の巻 〜


コジコジは、メルヘンの国に住んでいます。
そこに住んでいる仲間たちは、みーんなおかしなかっこうで…
たとえば、コジコジは、宇宙生命体!なのですが…小さな女の子って言えばそうですけど、
おひげのないネコちゃんのようでもあり…ほっぺにうずまきがあって、おまけにシッポもついていて…
ついでに、お空も飛べちゃうんです。でも…どこらヘンが宇宙生命体なのでしょうね?
で、仲良しの次郎くんは、半魚鳥!…って、半分魚で、半分鳥ってことなのでしょうが、
どう見ても、太ったにわとりさん?でも、とさかのところには、ちゃんとウロコが付いてます。
他にも、たーくさんの仲間がいるのですが、登場のつど、説明することにしましょう。

ここは、コジコジたちの学校、3年インコ組(セキセイ)…コジコジの教室です。
「この前の魔法の筆記テストを返す前に、みんなにちょっと話がある、よく聞け…」
先生は、背広を着たロボット!という感じでしょうか、真四角の顔にメガネをかけています。
頭のてっぺんに立ったうずまきアンテナが、チャームポイントです。
でも、今日は、ちょっとコワい顔をしていますよ…
クラス中が、ざわざわし始めました。
「静かにっ、この字を見なさいっ」 先生は、黒板に『
勉強』という字を書きました。
「今回のテストで、先生は呆れた。みんな 先生の教えた事が、全然わかってないな。
どうして勉強が大切なのか、わかってないな…」
すると、一人の子が、先生に尋ねました。
「先生、ぼくら、なんで勉強するんですか?勉強しなくても、生きていけるのに…」
曲芸師のゾラくんです。星の付いたトンガリ帽子と、カステラを日本に伝えた外国人みたいな洋服が、
なんともステキ?顔は、ゆで卵みたいですケド…。
うさぎの精のうさこちゃん 「ホントだよね、ここはメルヘンでファンタジーの国なのにね。」
光のつぶのペロちゃん 「そうね、でも、わたしは勉強するよ。」
その隣に座っているのが、コジコジと次郎くんなんです。
次郎くんが、口(ばし)をとんがらせて、言いました。
「コジコジ、おまえ、何で勉強するのかわかるか?」
すると、コジコジは、にっこりキッパリ、答えました。
「知らないよ。ぜんぜんわかんないよ。コジコジは、一回も勉強したことないよ。」
「お…おまえ…一回もって…スゲー…そんなこと胸張って他人に言えるのもスゲー…」
「はい、静かにしろっ、なぜ勉強が大切なのか説明するぞ。」
教壇の先生に、ピンスポが…
「メルヘンの住人は、人間を楽しませる使命がある。それが、メルヘンの住人の役割なのだ。
ミッキーマウス、スヌーピー、ドラえもんなどの、優秀な者達を見たまえ。
ああゆうふうに立派になるために、勉強をするのだ。」
「ミッキーマウス?それ誰?」 コジコジが、にこにこしながら、信じられないような質問をしました。
「おまえ、ミッキーを知らない?マジ?」 となりの次郎くんが、青くなってます。
「コジコジっ、キミは、勉強不足だぞっ。」 先生の四角い顔から、汗がタラ〜ん。
「勉強っていうの、一回もやった事ないよ。」 ちょっと得意げなコジコジ…
「あっ、バカッ、言うなよ、おめえ…」 ますます青くなる次郎くん。
ほら、先生のうずまきアンテナが、怒りにクルクル回りだしてしまいました。
「コジコジっ、キミは三年間も学校に通っているのに、一回も勉強したことがないなんて、ふざけるなっ。」
でも、コジコジは、全然気にする様子もなく、
「ふざけるって、ゲラゲラ笑ながら、パンツ頭にかぶって走り回ることでしょ?」
と、次郎くんに聞きました。
「まあな。それも、ふざけるの一種と言えるな…うん。」 次郎くんは、妙に納得。
「先生、そんな事より、さっき言ってたミッキーマウスって、友だちになりたいよ、写真見せて。」
「ミッキーマウスの写真は、今ここで見せるわけにはいかない…いろいろ事情があるのだ。
だが、これだけは言っておくぞ。コジコジ、キミが友だちになれるような相手ではない。」
「ふうん…友だちになれないのはわかったけど、なんで写真は、ここで見せちゃいけないの?
ミッキーマウスって、丸はだかで写真撮ってるの?」
すると、いつもは無口な、お天気の神様ハレハレくんが、言いました。イガグリ頭で、
着物を着ているハレハレくんは、とっても恥ずかしがりやさんなのですが、よっぽど自信があったのでしょう。
「無断でキャラクターを使えないのさ。ウォルトディズニー・カンパニーは厳しいからね。」
それを聞いて、先生はうれしそうにハレハレくんをほめました。
「おっ!ハレハレ君、難しい事をよく知っているな。いいぞ、その調子でガンバレよ。」
ハレハレくんは、照れて、赤くなって口をモゴモゴさせました。
「とにかく、勉強は大切なんだぞ。よし、テストを返すからな、順番に取りに来い。」
「先生、その前に、ちょっと質問がありますっ。」 コジコジが、元気に手をあげました。
「おっ、コジコジいいぞ。キミも勉強をやる気になったようだな、よしよし…」と、先生がにっこりしたのもつかの間…
「黒板に書いてある字が読めないけど、何ていう字ですか?」
……さすがに、先生は、立ち直れないようです。

「何点?」 「オレ51点だった」 「げっ、たったの10点っうそっ」
「わっ、ペロちゃん100点!!」 うさぎそのまんまのうさこちゃんが、ペロちゃんの答案を見て言いました。
「まぐれよ、前の日におさらいしたのが、出ただけよ。」 顔はかわいいのですが、ペロちゃんの腕と足は、一本線…。
「ペロちゃんて、何でもできるのに、けんきょでえらいね。」 そう言ったのは、やかん君。
当然、頭がやかんでできています。ちなみに、やかん科に属しているそうです。
「やかん君、キミはペロちゃんに恋しているね。」 カメの精のカメ吉くんが、ひやかすと…
やかん君が真っ赤になって、お湯がチュンチュン沸き始めました!
「あっ、沸騰した!ちょうど湯のみがあるから、お茶にしよう。」 湯のみは、カメ吉くんの必携品のようです。
「あーあ、28点か…母ちゃんに怒られちゃうよ…やだなァ、家に帰りたくないな…」
次郎くんが、しょんぼりとつぶやきました。
「次郎くん、元気出しなよ。これを見てごらん?楽しいよ。」
コジコジが、そう言って次郎くんに何か見せました。
「どれ?」 それは、コジコジの答案用紙だったのですが…
「げっ!名前間違えて、マイナス5点になってる!0点以下の答案なんて、初めて見たぞっ。」
「よかったね、初めて見たなんて、よけい楽しいね。(にこにこ) 先生が、あとで来いって言ってたけど、
おかしかケーキ、くれるのかな?」
「おい、期待しないほうがいいぞ、…絶対に。」

放課後 ――
「コジコジ、一緒に帰ろうよ。」 雪だるまのコロ助くんが、言いました。
「うん、帰ろう帰ろう。」 なんの迷いもなく、そう答えるコジコジに、慌てて次郎くんが言いました。
「あっ、おい、待てよ、おまえ。」
「次郎くん、なんか用?今日は、山へは行かないよ。」
「なに言ってんだ、おまえ…先生に呼ばれているだろ!」
「あっ、そういえばそうだったね、ぜんぜん忘れてたよ。先生が、何かくれるかもしれないんだった。」
「お、おまえ…」
「行ってくるね。」 コジコジは、ふよふよ飛んで行きました。
「職員室に行くだけで、わざわざ飛んでいくなんて…」 「横着だなァ…」

そして、ここは職員室…
「コジコジ、キミは毎回0点だったのに、今回は、名前さえ間違えるなんてひどすぎるぞっ。
自分の名前も書けないようでは、これから先、生きていけないぞ。」
先生は、できるだけやさしく言いました。 ―― が!
「大丈夫だよ、コジコジは不死身だもん。名前が書けなくても、生きてられるよ。」
コジコジが、いつにも増して、にっこり答えるものですから、先生も、堪忍袋の緒が切れてしまいました。
あっ!先生のうずまきアンテナが、飛んでいってしまいそうなほど、ぐるぐる回っています!
先生は、スックと立ち上がって 「
口ごたえするなっ!」と、目をつり上げました。
その様子を、窓の外から、次郎くんとコロ助くんが、のぞきこんでいます。
「先生が…」 「うん、立ち上がったぞ!」 「先生、だいぶ怒ってるね…」
「うん…コジコジ大丈夫かな…」 2人とも、きがきではありません。
先生は、ムリヤリ落ち着いて、もう一度イスにドスッと、座りなおしました。
「だいたいキミはな、向上心がなさすぎる。毎日、一体何をしているんだ!?」
「えっ、毎日?あのね、空飛んで遊んでね、そんでお菓子食べて、山に行って遊んだり、
海に行って遊んだりね…あと、寝たりしてるよ。」
「なにっ!?遊んで食べて、寝てるだけじゃないかっ」 先生、アンテナが…
「えっ、悪いの?遊んで食べて、寝てちゃダメ?」
のぞいている次郎くんとコロ助くん…「あいつ…よく言えるよな…先生にさ…」 「うん、度胸あるよね…」
コジコジは、続けます。
「盗みや殺しやサギなんかしてないよ。遊んで食べて寝てるだけだよ。なんで悪いの?」
「勉強はどうした。立派なメルヘン者になるために、勉強しろ。いいか、コジコジ、学校へ通えるもの、
みんなメルヘンの国の人達が、お金を出しているからなんだぞ。コジコジがタダで来られるのも、
みんなのおかげなんだ。なぜ、みんながお金を出してくれるか、わかるか?わからないな…
よし、今から教えてやろう。」
先生は、可能な限り穏やかに、諭すように話しています。さすがは教職者!
「この国の人はなあ、立派なメルヘンのキャラクターが、人間界で活躍してくれるのを、期待しているんだ。
だから、学校を無料で開いているんだよ、わかったか?」
「わかったよ、学校はタダなんだね、安心したよ。」
そんなこと言ってるんじゃないっ!」 あ〜あ、先生がついに、烈火のごとく怒り出してしまいました!
あっ!アンテナが…すごい勢いで!!
外の次郎くんとコロ助くん…「コジコジの奴、スゲーよな…」 「うん、あそこまで物わかりが悪いのもね…」
キミは、えらくなりたくないのかっ、立派なメルヘン者になりたくないのかっ、
世界中の人に愛されたくないのかっ!!

「先生、今、お腹すいたでしょ、大きい声出したから。」
カーッ!これには先生も、かなりのショックを受けたようです…
(私は、教師として、今、道に迷っているのか?この混乱…この気持ちは何だろう…
ノイローゼ?チアノーゼ?チアガール?…)
でも、先生は、なんとか気を取り直して、聞きました。
「…コジコジ、キミ…将来、一体何になりたいんだ?それだけでも先生に教えてくれ…なっ。」
「コジコジだよ、コジコジは、生まれた時からずーっと!将来も、コジコジはコジコジだよ。(とびきりニッコリ)」
ガ―――ン!!(真理だ…負けたぞ、先生の負けだ…) 先生のアンテナが、ピタッと止まってしまいました。
これは、先生の信念を、根底から覆すほどのショックを与えてしまったみたいです…ね…
「すごい、なんか感動しちゃったね。」 コロ助くんは、溶けそうなほど身を震わせています。
「うん、なんかガーン!ときちゃった…オレ…オレ…」 次郎くんも、クラクラ…
「ホントだよね、ボクだって雪だるまさ、これからもずっと…」
「オレも、次郎さ…半魚鳥の次郎…」
―― ずっとずっと何者でもない…自分なのさ…コジコジ、キミはすごいよ…

その夜、次郎くんの家では…
「次郎っ、なにこれ、テストで28点って、大バカッ!あんた、将来立派な半魚鳥になれなくてもいいのかいっ!」
次郎くんとそっくりな、次郎くんのお母さん…カンカンになっています。
でも、次郎君はまだ、さっきの感動に浸っていますから、へっちゃらです。
「…フフフ、かあさん、オレ、次郎だよ。次郎は、今も将来もずっと次郎なのさ。」 決まったー!
ところが……… バッシーン!!
ブンッ、グルッ、ヒューッ……ドサッ! 「あうっ」 おかあさんの愛のムチが…。悲惨な次郎くん…です…
バカ言ってんじゃないよっ、ずっと次郎じゃ困るんだよっ、次郎なんてさっさと捨てて、
ミッキーでもスヌーピーでも何でもなって、楽させとくれっ!


次郎くん…ボー然…
……あ…口ン中切れてる……痛えぇ……


〜 その1 おわり 〜

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