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コ ー タ ロ ー ま か り と お る !


学園の旋風児(スーパーボーイ)登場!! の巻



のどかな昼休みの
私立鶴ヶ峰学園 ボート池。
たくさんのカップルがボートを浮かべるその中に…
ダダダダダ…
「待て〜〜ッ!」
バッ!太ももの辺りまで伸ばした黒髪を翻し、
岸から、一艘のボートに飛び乗る少年。
「功太郎ッ!」
セーラー服に風紀委員の腕章を付けた女生徒は、
その功太郎を追って来たらしい。
功太郎は、
「おじゃましま〜す。」
そのボートに乗っていたカップルの女の子の肩に手を回し、
「やっほ〜麻由美ちゃん♪」
と、岸の女生徒にVサイン!
「あのヤロ〜〜」
「すぐボートの手配を!」
女生徒・麻由美についてきた男子の言葉に、
「それじゃおそいわ!」
と、返したかと思うと、麻由美はジャンプ一番、
功太郎の真似をして、そのボートに飛び乗った!
「わお!」 焦る功太郎。
しかし、すぐ隣のボートに飛び移り
「やきもちは、みっともないですよ〜」と、おちゃらけポーズ。
「誰がやくかっ!
功太郎っ!!今日こそ、そのうっとーしい長髪を切るっ!!」
麻由美が、大きな裁ちばさみを光らせた。
「毎度おなじみのそのセリフ、聞き飽きちゃった。
たまには違うこと言ったら?
功太郎くん好き〜とか。」
功太郎は、次から次へとボートに飛び移り、
「黙れ、頭髪違反常習者!!」
麻由美も、それを追いかける。
ザッパーン!ドッボーン!
恋人達の、静かな語らいの時間はめちゃめちゃ…。
「よくついて来られること…さすがだね〜〜」
「あたりまえよ、風紀委員会を甘くみないことねっ!!」
功太郎をやっと同じボートに追いつめ、
「覚悟っ!!」 と、はさみを突き出す麻由美。
功太郎は、それを飛んで避け、ボートの反対側に着地。
その拍子に、大きく跳ね上げられた麻由美の真下で
「白!」
スカートの中を見上げる功太郎。
その頭の上に、麻由美がひざから落下。
ドッボ〜ン!
池に落ちた二人…、一瞬顔を見合わせ…
「まちやがれ、この〜」
「ヒャッホ〜」
猛スピードで泳いでいく功太郎と麻由美。
「なんなんだ、あれは…」
池に浮かびながら、あ然として二人を見送る、
ボートから落とされた男たち。

次の日の学園新聞に
『ボート集団転覆事故  昼休みの学園大池』
の大見出しと
『事件の影にまたも新堂功太郎(空手部)』
と書かれた記事と功太郎の写真…。
ビ…ビビビビ…
その新聞を、悔しそうに破り捨てるメガネの男子。
オールバックにタラコ唇…
一見サラリーマン風のこの男子、
実は、学園を牛耳る生徒会長だった。

放課後
功太郎が、校庭のど真ん中にたくさんのギャラリーを集め、
空中に5個のリンゴを投げて、それにピッケルを突き刺すという、
大道芸人もびっくりの技を披露している。
「さーて、おたちあい。いよいよ超ウルトラCの極意―
目隠し投げ!
うまくいったら、よろしくお願いしまーす♪」
目隠しをして、『恵まれない空手部に愛の手を』と書かれた
旗を振る功太郎。
その下には『あゆみの箱』(500円玉大歓迎の但し書アリ)
「わかった、わかった、はよ、やれ!」
リンゴを持ったギャラリーの声援(?)に、ピッケルを構える功太郎。
「おし、こいっ!」
ところが…
功太郎の顔面に、ドベベベベッ!と、何かが飛んできた。
「このヤロ、誰が顔にこいといったっ!!」
目隠しをはずした功太郎の目の前には、
「まだ投げてない…」
リンゴを持ったままのギャラリーが…。
功太郎の横に転がっていたのは、野球のボール。
「新堂ォッ!!」
「!?」
いつの間にか功太郎を取り囲んでいた野球部員。
みんな、なぜか殺気立っている。
「その髪、もらったァ〜〜っ!!」
バットを振り下ろす背番号8。
そのバットを、自分の髪を絡めて受ける功太郎。
「その髪もらったァ?寝ぼけとんのか?おまえら。」
バットを奪い、ケリ一発!
「ったく、何のつもりか知らねーが、営業妨害もはなはだし…い!?」
ズサ〜ッ!今度は、牙のようなスパイクのスライディングが!
「とっ!このっ!」
ジャンプしてそれを避け、バットで股間を待ち伏せ…カン!
「ラン・エンド・ヒット、なんちゃって…」
野球部員たちは、ますます怖い顔で功太郎に迫ってくる。
「へん!野球部なんぞに恨まれる覚えはないが―
やるというならおもしろい。
たとえ、いついかなる場合でも、極端流空手は―
敵にうしろをみせないっ!!」
「う…!!」
功太郎の凄みに、ビビる野球部員。
…と?
スタタタタタ…
功太郎は、あっという間に後向きに走って逃げ出した。
「う〜む、たしかに敵にうしろを見せていない…」
「アホ、感心しとる場合かっ!追うんだーッ!」
「まてェ〜っ!!」
野球部員たちが必死に追いかけるが、
功太郎は、後走りなのに、ものすごいスピード!
「な、なんであの走り方で、あんなに速いんだ!?」
「とにかく変態じゃっ!!」
「しめた、行き止まりだ!」
見ると、功太郎の後ろに板べいが!
シュバババッ!
持っていたピッケルを手裏剣のように投げて板べいに突き刺し、
それに足を掛けながら、へいを難なく登る功太郎。
「たかがこれしきの板べい。たとえ地雷源だろうが、
使用中の女子便所だろうが、
オレのとおれない場所なんかないもんね。」
功太郎は、へいの上で余裕の笑みをみせた。
「ケッ、そのくらいの芸当―」
野球部員が、ピッケルに手をかけたが、
スポッ、スポッ、スポッ!!
いつの間にか結びつけてあったひもを引っぱり、
ピッケルを全部抜いて逃げる功太郎。
「使いたかったら、一本千円♪」
「せこいぞ、てめっ、この〜!」
「ハシゴだ、ハシゴ〜!」
板べいの向こうで悔しがる野球部員。
(しかし…何だって野球部が髪を―?)
わけがわからない功太郎。

華道部 部室
みんなが着物を着て、花を生けている。
(ちなみに、部員は全員女子)
その中には、風紀委員の麻由美がいた。
「麻由美先パーイ、私にも教えてくださ〜い(は〜と)」
「ちょっとォ、次は私の番よ!」
「アラ、私の麻由美お姉さサマに手を出さないで!」
「なによ〜〜!」
麻由美… 「・・・・・(汗 」
「こらこらこらこら、一年ども!」
そこへやって来た華道部の部長。
「麻由美は風紀委員会の仕事で疲れてるのよ。
非番の時ぐらい、ゆっくり息抜きさせてあげなさい!」
「あ〜ん、つまんない。」
おとなしく部長命令を聞く一年生たち。
「ありがと、部長。」
にっこり微笑む麻由美。
「なんのなんの…。さ、息抜きしましょ(は〜と)」
麻由美の肩を抱き寄せる部長。
「ちょ、ちょっと!!」
すると…
「キャ〜、部長一人だけズルーイ!」
「麻由美お姉サマ〜(は〜と)(は〜と)(は〜と)」
麻由美の周りは、『は〜とマーク』飛ばしまくりの部員たちに、
あっという間に囲まれてしまった。
…なんて、アブノーマル?
「やめ〜〜〜〜っ!!」

―― 間 ――

「じょ、冗談よ、冗談、麻由美ちゃん。」
「泣かないで〜お姉サマ〜!」
焦る部長と一年生…と、
着物の袖で顔を覆い、座り込んでいる麻由美。
そこへ…
「は、班長っ、大変ですっ!新堂が―」
風紀委員の一人が、飛び込んできた。
「功太郎がどうかしたのっ!?」
顔を上げる麻由美…と、顔中キスマークだらけ!
「あ〜こいつぅ、うそ泣きしてたな〜チュッ!」
再び抱きつく部長。
「いいかげんにしなさいっ!!」
「…………」
風紀委員は一瞬言葉をのんだ後、
「とにかくそれを…(そういう趣味だったのか、班長は…)」
と、一枚の紙を麻由美に差し出した。
「これは―!」
それは…
『WANTED ¥1,000,000
凶悪 ドアホ 新堂功太郎』
の文字と、功太郎の長い髪にハサミの絵。
つまり、功太郎の髪の手配書という訳だ。

剣道部
「みごと、この男の髪を切ったクラブには」
サッカー部
「生徒会より、特別予算として―」
ボクシング部
「100万円を贈呈!!」
なぜかマガジン編集部
「だ、そうです。」
「てーしたことねーや、うちなんかビデオデッキもつけてるもんね」
女子バレー部
「今日の練習は中止っ!
なんとしても新堂功太郎を探し出すのよっ!」
円陣を組むバレー部員。
「100万円の特別予算は、バレー部がいただくわっ。
ファイト、ファイト、オ〜〜ッ!!」
「絶対、他の部に先をこされちゃダメよっ!」
バタバタと部室を出てゆく部員たち。
誰もいなくなったバレー部室のロッカーの扉が開く…
「なーるへそ、そういうわけか…」
出てきたのは、功太郎だった。
そして、壁に貼られた手配書を眺める。
「手配者の生死にはこだわらず…?
たまんねーなー…」
その時、
「忘れ物、忘れ物。」
と、バレー部員の一人が戻ってきて…功太郎を見てびっくり!!
「あ!…みんな〜100万円がいたわよ〜!」
「100万…☆?」
窓から外へ飛び出す功太郎。
「あ、あそこだ!」
待っていたかのように、
テニス部員が、ラケットを振りかざして駆けつける。
「100万円〜っ!!」
「ったく、人格無視しやがって、この〜」
功太郎は、手製のバクダンに火をつけ、
「オレは新堂功太郎さまだっ!
100万円じゃねーや!」
テニス部員に向かって、投げつけた!
ボーーーーン!!

生徒会本部
「いったい生徒会は、どういうつもりなんですっ!?
このままじゃ、学園中大騒ぎになりますよ!
賞金なんて、すぐに取り消してくださいっ!」
サラリーマン風の生徒会長に、直訴する麻由美。
「…麻由美くん、言葉が過ぎるよ。
この学園では、生徒会の力は絶大だ。
ましてや、この決定は生徒会長の私自らくだしたもの。
きみが口をはさむべき問題ではない。
総理大臣の中曽根くんだって、私の方針には
何ら口出ししてこないのだよ。」
「するわけないでしょ!!」
「まァ、これを見たまえ、麻由美くん。」
生徒会長が、麻由美の目の前に数冊の雑誌を出した。
…それは、『週刊 変態』はじめ、いかがわしそうな雑誌ばかり。
「!!」
ガチャッ! 生徒会長に手錠を掛ける麻由美。
「わいせつ文書所持の現行犯で逮捕しますっ!!」
「ちが〜〜〜うっ!!」
焦って、事情を説明する生徒会長。
「功太郎が?」
「そ〜だっ!ワイロにこれをやるから、
空手部へ予算をまわせとほざきおった。」
麻由美、アチャ〜…(…あのアホ!)
「まったく、どれもこれも発売禁止になったどぎつい本ばかり。
つまり…、これがほんとの ハッキンワイロ!!」
(ハッキンワイロ…その昔、一世を風靡したTVコマーシャル『白金カイロ』に
かけているものと思われる)
シラ〜… 一瞬、二人の間を通り過ぎる、さむい風…
「こ、ことわっておくが、このシャレは新堂が言ったのだ、新堂が!
私のは、もう少しレベルが高い。」
「どうでもいいでしょ、そんなこと。」
「とにかく、ヤツのような学園のガンを、もはや風紀委員だけには
まかせておけんのだ!今こそ、私の持つ権力の恐ろしさを―
ヤツにたっぷり思いしらせてくれるっ!!」
ダン!こぶしで机を叩くつもりが…
こぶしの落下地点には、ペンたてに上向きにささった、
無数の鉛筆が……グサッ!
「ア〜イ、アイアイッ!!おのれ、この筆記用具っ!!」
右手を押さえて、鉛筆にアタリ散らす生徒会長。
「生徒会の備品の分際で、新堂に味方する気か!!
こーしてくれる、こーしてくれる!」
マジで、ぐしゃぐしゃ鉛筆を踏み潰している…。
(ダメだこりゃ…)
呆れて生徒会本部を出る麻由美。
「話にもならないわ、あの偏執狂会長っ!!
ったく、冗談じゃないわ、何が賞金よ!」

― 功太郎の髪を切るのは、私なんだから!! ―

と、その頃、功太郎は…
さっきのバクダンで、木の枝に吹き飛ばされて、
真っ黒こげ。
「ま〜た、火薬の量まちがえちゃった…」


学園の旋風児(スーパーボーイ)登場!!  おしまい

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