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この醜くも美しい世界 第1話 暁は光と闇のわかれめ



  ―――現在、地球上に存在する動植物は四百万種をくだらないと言われている。
  だが、地球の誕生以来存在したとされる生物種の総計は実に五十億から五百億に達する。
  すなわち、99.9%の種は絶滅と言う運命から逃れることは出来ない。
  地球上の生物種は、過去六回、大絶滅に見舞われている。
  しかし、絶滅要因とプロセスは、いまだ明確にはされていない……



「なぁ、俺思うんだけどさ。俺が何もしなくても、世界は勝手に動いてる」
 真夏の青空、ジェット戦闘機らしいものが二機が飛んでいる。
「遠くのどっかじゃ、戦争やってて、あいかわらずやめようとしない。
 犯罪だってなくならないし、何処に行っても嫌なやつはいるもんだ。
 俺がなんかしたところで、そんな世界は良くも悪くもならない。」
寝そべっていた少年の顔の側に、ドンと、足が置かれた。
「ん」
少年が顔を上げると、そこには二人の少女がいた。
「だからここで寝転がって、何もしない、と。そういうわけ?」
「それがサボリの言い訳になるか?」
「ほれ、お立ち!」
髪の短い方の少女は、少年が寝転がっていたベンチを、踏んづけていた足で倒した。
「ってぇな! 何すんだよ!」
「世間のことはどうでもいい。竹本タケルくん、今君がすべきはプール掃除のはず」
「わかったよ、やるよ」
「そうそう、つべこべ言っとらんで、手を動かすの」
「じゃ、俺あっちの消毒槽を……」
「そっちは更衣室…」
「ほんでもって出口!」
「ベー!」
タケルの目論見はあっさりと見抜かれてしまっていた。

「タケルの分なら、俺がやるよ」
「「リョウさま!」」
「もともと、水泳部の人手が足りないからって、手伝いを買って出たのは俺だから。ん?」
「リョウさま、なんてお優しい! 竹本くんとは大違い!」
「でも不思議。そんな二人がいつもつるんでて」
「それ! 私も不思議に思ってました!」
「そりゃ俺、タケルのこと好きだから」
「「え!?」」
「もちろん、浴香も桜子もね」
「「えぇ〜!」」
「それから水泳部の…」
「聞いた、浴香!? リョウさま私のこと好きだって!」
「タケルと同列みないなのがちょっと気になるけど」
浴香と桜子の「好き」は、リョウの「好き」とは違うようだった。
「残念でした! リョウの好きには見境が無いんだよ」
「え、そう?」
「…人がいい気分に浸っているときに」
「お前というヤツはー! この!」
「うわぁ!」
桜子はタケルに蹴りを入れた。
「やったな!」
タケルは近くにあったホースを手に取り、水道の蛇口をひねった。
ホースから勢い良く水が飛び出る。
「うわ!」「きゃああ!」
「はははははは!」
「おのれ、こういうことになると生き生きして〜!」
「やるべし!」
桜子もホースを持ち、反撃に出た。
「ちょっとそこ、桜子、浴香、タケル、真面目にやろうよー」
「ん?」
タケルの目には、空に一筋の光、流れ星の様なものが見えた。
真夏の真昼に、であるにも関わらず。
リョウも気づいたようだった。
「それー!」
タケルが気を取られている間に、女子達が団結し、タケルに向かって大量の水を浴びせた。


第一話 暁は光と闇のわかれめ


日も傾きかけ、空が綺麗なオレンジ色に染まっていた。
「ただいま」
「お帰り、タケルくん。あら、リョウくんも」
タケル達の帰宅を、澄恵が迎えた。
「こんにちは」
「ただいま、おばさん」
タケルには、両親がいない。今は西野家でお世話になっている。
「おう、帰ったか」
そこに現れたのは西野一丁、澄恵の夫、西野家の主人だった。
「おじさん、また昼間から飲んでるの?」
「いいんだよー、夕暮れ時の一杯は、俺の日課だ」
「ったく、そんなだから店だって大きくならないんだよ」
「お前らも、飲むか〜?」
「あんた」

「洗濯してくるから、先、部屋に上がっててくれ」
「うん、ありがとう」
タケルは洗濯をするため、脱衣所のドアを開けた。
「あ」
「あ…」
そこには、少女がいた。
「あ…あ…あ…うぅ…」
ちょうど、制服の上着を脱いでいたところだった。
「マリ……!」
「きゃぁぁ――――!」
悲鳴とほぼ同時に、澄恵の声が聞こえた。
「洗濯だったら、今マリがお風呂使ってるからー」
「遅かったな」
一丁はいつものことのように呟いた。

「これだから居候はいやなのよ! デリカシー無いんだから!」
マリは部屋の外から叫んでいた。
「お前がいるって知らなかったんだよ!」
「これだけ暑けりゃ、シャワーくらい浴びるわよ!」
「あんなモンじゃ、服着てるのと変わらないだろ!」
「バカ!」
タケルの部屋のドアをはさんで、マリが叫んだ。
「それより! さっき浴香と桜子から電話があったわよ」
「え?」
「プール掃除手伝うはずが、水遊びに熱中してたって」
「だって掃除なんてつまんねーから」
タケルは畳の上に寝転んだ。
「無駄な事ばかり一生懸命になって、そのエネルギー他のことに使いなさいよ。
 タケルくんのいとこだからって、私まで文句言われるのよ!?」
「はぁ……」
タケルと一緒に部屋にいるリョウは、苦笑いを浮かべた。
「リョウくんからも言っといて!」
「ハイ!」
急に名前を呼ばれ、リョウは困惑したようだった。
「洗濯物、ここに置いといたからね!」
マリの足音が聞こえ、やがてそれが小さくなった。
「やっと嵐が去ったか」
「洗濯、代わりにしてくれたんだからよかったじゃない」
「大損だよ! マリの裸見たくらいでひっぱたかれたんじゃ」
「そんなものかなぁ?」
「無駄なことに一生懸命、か…」
「え?」
「どうもそうなっちまうんだよな、何かしなきゃって気持ちはあるんだけど」
「その気持ちの向けどころが、分からない?」
「あれ、また同じ話してるか?」
「ホントはさ、真面目なんだよ、タケルは」
「俺が? よせよ」
「タケルくん! カバン廊下に置きっぱなしよ!」
不意にマリの声が聞こえた。
「すぐに片付けといて!」
タケルは窓を開け、半身を乗り出し、空を見上げた。
「俺の周りの女は、口うるさいヤツばっかりだ」
「そう? みんないい子だよ」
「そうかぁ?」
タケルはリョウを見た。
「じゃあ、タケルの好みはどんなのなのさ?」
「なんだよ、いきなり」
「俺?」
「バカ! たとえばだなぁ、そう、桜子より髪はさらっとしてて、浴香よりもスタイルよくて…マリみたいにうるさくなくて……」
「なんか難しい注文だなぁ」
「ん、何してる?」
リョウはスケッチブックに絵を描いていた。
「スケッチ」
「や、やめろ! 恥ずかしい!」
タケルは慌ててリョウの手からスケッチブックを取り上げた。
「あ…」
タケルはリョウの描いた絵を見た。
「……お前、絵上手いな」
「タケルくーん」
澄恵の声が聞こえた。
「タケルくん、ちょっといい?」
窓の外、タケルは窓から身を乗り出し、外にいる澄恵を見た。
「はい」

「ススキ台の早川さんから山田印刷さんまで、五時までにね。伝票は入ってるから」
「悪いわねー」
「そりゃあ、バイト代はちゃんともらってますから。それに、俺がしっかり稼いでもっとちゃんとしたところに店、開きたいですしね」
「そんなこといいから、あんまり飛ばすんじゃねえぞ」
「飛ばすったって…へへ、まだ動いたンすね、このボロ」
タケルは自分の乗っているバイクを指した。
「だからさ。飛ばすなよ? ハハハハハ」
「お待たせ」
フルフェイスのヘルメットをかぶったリョウがバイクの後ろに乗った。
「あ?」
「旧道行くでしょ? 帰るついでに乗せてってよ」
「でかい荷物だなぁ」
「タケルくん」
「ん…?」
「…気をつけてね」
マリは微笑んで言った。
「ああ」

「いつもご苦労さんね」
「またよろしく」
山田印刷に荷物を届けたタケルは旧道を進んだ。
「まーったくさ、おじさんには上昇志向ってもんが無いんだよな」
「今のままで充分なら、背伸びしなくたっていいってことでしょ? いいんじゃない?」
「わかんないね、やればできるはずなのにさぁ……ん?」
ふと、タケルが空を見上げると、そこには一筋の光があった。
「前に進もうとするばかりが正解とは限らないんじゃないかな? でも、タケルのそういうところ、好きだよ」
「おい! あれ…あの光!」
タケルがリョウに声をかけると同時に、光は直線運動をやめ、蛇行を始めた。
「う…!」
謎の光がタケルたちの横をすり抜けていった。
「なんだありゃ!?」
「戻ってくる」
「うわ!」
光が、タケル達の横にピッタリくっついて飛行している。
「流れ星かな…?」
「馬鹿言え!」
光はさらに蛇行し、タケルたちの側を離れようとしない。
「くそ! 何なんだ一体!?」
「でも…綺麗だ…」
不意に光が加速し、目の前に広がる森に飛び込んだ。
森がすさまじい光に包まれた。
「…!」
「な…!」
光が二つに分かれた。

「リョウ、今の光…見たよな?」
タケルはバイクを停め、後ろのリョウに尋ねた。
「うん、すごかったね…」
「何かが頭の中を抜けていったみたいだ」
一つの光が、二人の眼前の森の木に落ちた。
「…行ってみようか」
「お、おう…」

辺りはすでに暗くなっていた。
だが、森の中、一本の木が、光り輝いていた。
その木の枝に囲まれ、光はふわふわと浮いていた。
「あれは…さっきの………ヒカリ…」
ポンと、突然光の中央に少女が現れた。
まるで胎児のようにうずくまり、さかさまに宙に浮いていた。
「!」
「人だ!」
タケルは駆け出した。
「あ、タケル!」
リョウの後ろで、何かの物音がした。

(ヒカリ……私は…ヒカリ…)

少女が目を開いた。
「あ…!」
その少女は、リョウがスケッチブックに描いた少女、タケルの理想の女性そのものだった。
「ひ…!」
「女の子だ」
少女は光からするりと抜け出し、タケルたちの方へ飛んできた。
全裸だった。
少女は手を伸ばし、タケルもそれに答えるように手を差し伸べた。
少女はタケルの手を取ると、微笑んだ。
タケルは頬を赤らめていた。
突然、大きな音がした。
背後から、何かの巨大な触手の様なものが現れ、タケルたちを串刺しにしようとした。
タケルは少女を抱き、飛び跳ねた。
触手は光る木に巻きつき、そのまま木をへし折った。
「な…なんだよ、あれ…」
そこにいたのは、ムカデの様な、蛇のような生き物、体調は軽く10メートルを超えているだろう。
その生き物は触手をうねらせ、少女の方へ来た。
タケルはまた少女を抱き、触手を避け、跳んだ。
少女を抱えたまま、タケルはもと来た道を駆け出した。
「やああああああ!!」
前方から何かの光が現れた。
バイクに乗ったリョウだった。
「リョウ! よせ!」
リョウはその生き物の手前でバイクを乗り捨て、地面を転がった。
「うわ…!」
バイクは生き物にぶつかり、爆発した。
謎の生き物は、悲鳴をあげた。
「ふぅ、なんとか追っ払えたね」
「お前…やるときゃやるなぁ…」
抱きかかえた少女がタケルを抱き寄せた。
「ん…うわぁ!」

「こりゃあおじさんに大目玉だね」
リョウが壊れたバイクを見て言った。
「ほら、これ着て。いつまでも裸じゃ、こっちが困る」
タケルは自分の着ていたライダースーツを少女に着せた。
「さっきまでひっついてたくせに…」
「しょうがないだろ! そういう成り行きだったんだから…」
少女はタケルに着せられたものが何か分かっていないようだった。
自分の体を見、スーツの匂いを嗅いだ。
「匂いを嗅がないの!」
少女はスーツのファスナーを全開にし、自分の体を見た。
タケルは慌ててファスナーを一番上まで上げた。
「さっきのやつ、また来るかも知れないんだ。早く逃げないと」
「それ言うなら、この子はどうなのさ」
少女はまたファスナーをあけた。
「あ!」
タケルがまた慌ててファスナーを元に戻した。
少女がタケルに微笑みかけると、タケルは赤面した。
「な、なぁ、さっきから気になってたんだけど、この子さぁ、昼間お前が描いた絵にそっくりじゃないか?」
「ああ、それは違うよ」
「え?」
「うん、違う。だって、俺はタケルの言ったとおりに描いただけだから。タケルの理想の女の子をね」

「キミの名前、ヒカリっていうの?」
「うん。私はヒカリ」
「さっき道で出会った輝きも、キミだったのかなぁ?」
タケルがヒカリを背負い、リョウは壊れたバイクを持ち、夜道を歩いている。
「お前、よく自然に話せるな」
「タケルは知りたくないの? ヒカリのこと」
「そ、そりゃあ…」
「この子を、ヒカリって名付けたのはさ、タケルなんだよ、きっとあの時…」
「え? 別に俺はそんなつもりで…」
「そう? いい名前だよ? 覚悟を決めるしかないよ、タケル」
「覚悟って、どんな?」
「さぁ、それはタケル次第。さっきの怪物は、間違いなくこの子を狙ってた。
 余計な苦労を背負い込みたくなかったら、何の覚悟も決めないっていう選択も…無いわけじゃないけど…」
ガサリ、と茂みから音がした。
「きゃ!」
ヒカリがタケルにしがみつく。
「大丈夫、何か落ちただけだ」
ヒカリはタケルにしがみついたまま、ふるふると怯えている。
(震えてる…不安なんだ、この子…やわらかくて、とても華奢で…)
「ヒカリ……ヒカリ」
ヒカリは目を開いた。
「俺はタケル、竹本タケル」
「たけ…タケル……」
「大丈夫、ヒカリはきっと俺が守ってやるから…」
タケルがそう言って微笑むと、ヒカリも微笑んでタケルを見つめた。
タケルの頬がまた赤らんだ。
「…!」
ドクン、ドクン……
「あ……あ……う…あ…」
何かの発作がタケルを襲った。
「タケル…?」
タケルは地面に両膝をついてうめいた。
「どうした!? タケル!?」
「あぁ……うう……」
タケルは胸を押さえ、息を荒げた。
しかし、しばらくすると、タケルの動悸は治まった。
(なんだ今のは…? 心臓が飛び跳ねたみたいだ…!)
「! …虫の音が消えた……」
しばらくの静寂。
そして突然、木々の間から先程の怪物の触手が現れた。
「うわっ!」
リョウの近くの地面がえぐれる。
「リョウ!」
怪物の触手がヒカリを掴み、引き上げる。
「タケル!」
「ヒカリを離せ!」
タケルは触手に飛びついた。
「この! 離せ!」
怪物はヒカリを掴んだ触手をタケルごと振り回し、木にたたきつけた。
「タケル! タケル!」
怪物はヒカリを解放した。
タケルは木に叩きつけられ、地面に倒れている。
「タケル…」
「ヒカリ…」
上半身を引き起こすだけで精一杯だった。
「逃げろ、ヒカリ! 体が言う事聞かないんだ。お前だけでも…!」
「イヤ! タケル!」
「だから! 早く逃げろ!」
「イヤ!」
怪物の触手が、またヒカリを捉えた。
「ヒカリ!」
タケルの顔に触れていたヒカリの爪が、怪物に引きずられたため、タケルの顔に傷をつけた。
「う…う……!」
「ちくしょお……」
(畜生、守るって言ったのに…俺は何も出来ないのか!? 畜生、ちくしょおおおお!)
「うあっ、がっ!」
先程の発作が、再びタケルを襲った。
「う、うああぁああああ! うっぐぅぅぅあああああ……!」
ヒカリのつけた傷跡が大きく赤く光り、顔をクロスした。
髪が伸び、腕に赤い線が何本も入り、体は膨張し、そして……

タケルの動悸が治まった。

怪物の触手に捕まったヒカリに、何かが飛び掛った。
次の瞬間、怪物の触手は破壊され、そこにヒカリの姿は見えなかった。
月明かりの下、人の形をした生き物に、ヒカリが抱えられている。
「あ…!」
「ヒカリ…」
タケルだった。
「待ってて」
「タケ…きゃっ」
タケルは着地すると、すぐさま怪物の元へ飛んでいった。

(これは一体…どうなったんだろう? 体の底から沸きあがるような、この力は……).
「ふん!」
タケルは勢いをつけ、怪物の頭部に着地した。怪物の頭部がへこんだ。
そのまま地面に降りる間もなく、怪物の頭部を蹴り飛ばした。
しかし、怪物は残っている触手でタケルを掴み、締め上げた。
「そうこなくっちゃあな…」
タケルの両腕は刃物と化し、締め付けていた触手を断ち切った。
そのまま触手を力任せに引っ張り、交差間際に怪物の頭部に突進し、突き抜けた。
「でぇやぁぁぁ!」
再び頭部を両手で殴りつける。
怪物の頭部からは緑色の血が吹き出、怪物はそのまま倒れた。
「でぇえい! ふん!」
タケルは何度も両の拳を怪物の頭に叩き込んだ。
「ハッハハハハハ!」
タケルの左腕がドリルのようなものに変化した。
怪物が血涙を流しているかのような顔で、タケルを見つめた。
「ハッ!」
ピタリ、とタケルの動作が止まった。
(俺は…一体どうしちまったんだ!? こんな姿になって、こんな力を使って、怒りのままに、闇雲に…)
タケルの左腕が元に戻った。
(もういい… もういいだろ!?)
「うっ…ぐ、ぐあぁぁぁ」
タケルが、元の人間の姿に戻った。
「な、なんで!?」
怪物が、地を這って去ってゆく。
「ま、待て!」
タケルの体を激痛が襲い、動く事が出来ない。
「くっそぉ…!」

ヒカリはタケルと別れた場所に立っていた。
崖を見つめていると、上から、タケルにめちゃくちゃにされた怪物が落ちてきた。
「ひっ…!」
怪物が落ちた衝撃で、砂埃が舞う。
怪物は、ヒカリを狙っているようだ。
「ふふ……ふふふ……」
ヒカリは立ち上がった。
「大好きな匂いがするわ。そう、あなた死に掛けてるのね」
ヒカリはくすくすと笑っている。

「ヒカリ! リョウ!」
タケルは息を荒げ、二人を探していた。
「畜生…! あ…! リョウ!」
「タケル…」

「ヒカリ…ヒカリ…」
「ん…タケル…!」
ヒカリは気を失っていた。
「ヒカリ! よかった…」
「タケル!」
ヒカリはタケルに抱きついた。
「ヒカリ…?」
「怖…かった…」
「大丈夫…ヒカリは俺が守るから…」
タケルはそう言い、ヒカリの肩に手を回した。
「だけど、ここで一体、何があったっていうんだ…」
ヒカリを中心に、怪物の残骸と血が飛び散っていた。
まるで、ヒカリがこの怪物を残骸にしてしまったのかのようだった。
(怪物の血で、青く輝く川を前に、俺はヒカリを守ると誓った。
 この満月の夜、こうして、すべてはここから始まったんだ……)




<<次回予告>>
「あ、私西野マリです。そりゃあね、メダカや金魚ならよしとしましょう。
 親を亡くした仔猫なら見て見ぬフリも出来ましょう。
 なのにタケルくんったら、こともあろうに、何処の誰とも分からない女の子を連れて来て、
 この子は俺が守る! ですって。

 次回、この醜くも美しい世界、あなたが初めて

 何、何が初めてなのー!?
 事と次第によっちゃ、タダじゃおかないんだからね!」



この醜くも美しい世界 第一話 おわり

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