戻る TOPへ

ケ ロ ロ 軍 曹


★ 第1話「我が輩がケロロ軍曹であります」 ★



西暦 2004年
地球は 突然謎の地球外生命体に襲われた
空を覆い隠すUFOの群れ
残酷にして冷酷無比な侵略者
逃げ惑う人々
圧倒的な科学力の差
警察の防衛軍も成すすべなく敗れ去り
そして 地球は
新たな支配者を迎えることになる

はずだったのに…
はずだったのに…

はずだったのに〜〜っ!!!!!



住宅街の一角にある、赤い屋根の家…
リビングに響く、すごんでいる割にかわいらしいこんな声。
「ゲロゲロゲロゲロ…ペコポン(地球)人どもめ…
今こそ、我が輩の力を見せつけてやるであります。
我が輩こそは、宇宙にその人ありと恐れられた
ケロロ軍曹であります!」
ソファーの奥から、掃除機に乗ったカエル(?)軍人、
ケロロ軍曹、さっそうと登場!!敬礼っ!!
(実は、宇宙人)
「ゲロ、ペコポンの最新兵器、
省エネエコロジー掃除機すいとーるクンを扱わせたら、
この宇宙でもはや我が輩の右に出る者はいないであります!」

『宇 宙 最 強 掃除ガエル 伝説』
(無意味なゴシック文字…)

ケロロ軍曹が、次々とゴミを吸い取っていくっ!!
…と、そこへ学校から戻ったこの家の長女 夏美(中2)の
制服のスカートに…ノズルがピトッ!
「!あ…」
一瞬、固まる軍曹と夏美…。
「きゃああああああ〜!!」
慌ててスカートを抑える夏美に、軍曹はご挨拶。
「あ、夏美殿、お帰りなさいであります。」
「ス、スイッチ!スイッチ切りなさいよっ!!」
「あ?スイッチでありますか?…しかしぃ。」
どうやら眺めがいいようで…。
「早くしてよ!このボケガエルっ!!」
「なっ?ボケガエルとは、あんまりであります!」
「いいわよ、もう、自分で切るから!」
夏美は、スカートを抑えつつ、
掃除機本体の『スイッチはここだ!!』部分に足を伸ばしたが、
「あ、しまった!」
踏み損なったその反動で、掃除機が空中高く跳ね上がった!
「うわっ!!掃除なら、まだ終わってないであります!」
『ケロロ軍曹は、死んでも掃除機のホースを放しません』と言わんばかり、
必死にホースにしがみつく軍曹。
夏美は、スカートにノズルが引っ付いたまま、次々蹴りを繰り出すが、
軍曹の華麗な掃除機さばき(?)の前に空振りばかり。
「…まさか、これほどの戦闘力があろうとは!」
軍曹も流石にびっくり!の、軍曹と掃除機のタッグチーム対夏美の、
激しい戦いが繰り広げられていた。
そこへ、長男 冬樹(小6)が帰って来た。
「大変だ!軍曹が危ないっ!!」
冬樹は、上着の内ポケットからヘンなボールを取り出しながら、
騒ぎの聞こえるリビングへ走り出した。

〜 説明しよう!
彼は、日向 冬樹。
ケロロ軍曹から預かった『ケロボール』の瞬間移動くんを使って、
ケロロ軍曹を助けようというのだっ! 〜

冬樹は、リビングに飛び込むと、
スイッチのようなデコボコのいっぱい付いた『ケロボール』をかざし、
「瞬間移動!!」
と、その中の一つのスイッチを押した!!
すると、『ケロボール』からアンテナが伸び、そこから軍曹に向かって、
10000Vの電流が!
「うぎゃ〜〜〜…!!」
散々感電した後、真っ黒になって落ちる軍曹。
「…あ。」
こちらは、真っ青になる冬樹。

― 終了 ―

「ごめん、また間違えちゃった…。
瞬間移動がこっちで、電撃ショックがこっちで…じゃなくてぇ、
あれ?あれれ??」
すると、黒こげの軍曹…、むっくり頭を上げると、
「冬樹殿…、気をつけてほしいであります…。
その『ケロボール』は、ペコポンを丸ごと吹っ飛ばすことも
できるのでありますからな…」
「…あ、ああ。」
そして、何事もなかったかのように緑色に戻ると、
ぴょん!と、ソファーの背もたれに飛び乗った軍曹、
「さ、わかったらさっさと我が輩に返却するであります!」
と、どさくさに紛れて『ケロボール』を取り戻そうと手を出した。
だが…
「そんな物騒なもの、アンタに渡せるわけないでしょ?
これまで通り、こっちで預からせてもらうわ。」
夏美の一言で、軍曹…撃沈。
「それよりアンタ、お風呂の掃除もまだなんでしょ?
サボってたら夕飯抜きよ!」
「ゲロ!?夕飯は何でありますか?」
「エヘッ!ビーフシチューよっ!」
それを聞いて、一転うれしそうにクルクル踊りだす軍曹。
「やったー!夏美殿のビーフシチューは最高なんでありますっ!
気合を入れて、ピカピカにするであります!!」
敬礼っ!

夕焼けの中、家の前に止まるバイク。
ヘルメットを取ると、長い髪がふわり…、
実はこの人、夏美と冬樹のママ!
「ヘヘ…、ケロちゃん、どうしてるかしら?」
ママは、漫画雑誌の編集者、なかなか忙しい人だ。
「ただいま〜」
「お帰りなさい、ママ!今日は泊まりなんじゃなかったの?」
夏美は、キッチンでシチューを煮込んでいる。
「吉崎先生の原稿が早く上がったのよ!ケロちゃんは?」
「フロ掃除。」
「あら、ビーフシチューね?」
「お肉が安かったから。」
ママは、お鍋に顔を近づけて匂いをかぐと、
「う〜ん!!夏美、いつも感謝してるわ!」
と、夏美をギュッと抱きしめてにっこり!
「マ、ママってば…」
ちょっぴりテレる夏美。


「え?我が輩に部屋を???マジっすかぁ?」
ホッペを赤く染めて、感激のケロロ軍曹。
「反対!反対!断固反対!!」
夏美は、『断固反対』のプラカードをもって猛反対。
(なんか…、ケロロ軍曹に部屋を与えるって話に、
いつの間にかなっているようで…)
「あら、家族なんだから当然じゃない?」
ママ、ニッコリ。
「家族って…、一応『侵略者』って設定なんだけど。」
夏美はプンプン!
「それに、どうせ一部屋空いてるしね。」
ママの言葉に、夏美も冬樹もびっくり。
「え?家に空いてる部屋なんてあったっけ?」
軍曹は、もうすっかり舞い上がっている様子。
「我が輩専用の部屋…!!
『専用』
…それは、軍人のステータス。
『専用』
…それは、通常の3倍の能力〜!」
そして、心の内の内では…
(ここを拠点に情報を収集し、侵略への足がかりとするであります。
そう、まさに…『前線基地』!!!!!)
軍曹は、腕を組み、夏美に一言。
「夏美殿、我が輩の部屋が完成した暁には、
優先的に招待してさしあげるであります…、召使いをとしてな。」
あ〜あ、余計なことを言ったばっかりに…
バキッ!!!
哀れ軍曹…、夏美に蹴り上げられ、壁にめり込んでるし。
「ママの決定には逆らえないわ。
でも、ヘンなモン持ち込んだりしたら、許さないから…!」
「おいおい、嫉妬かよ…」
またまた余計なこと言って…
夏美に、スリッパで顔をむにゅむにゅにされる軍曹であった。


階段の下にある小さな重い扉を開けるママ。
それは、どうやら地下室への入り口のようだ。
「こっちよ!隠してたわけじゃないんだけどね。」
下へ降りると、そこにドアが一つ。
「ほら、ここよ。」
「こんなところに部屋が…」
冬樹はアゼン。
「隠してたわけじゃないのよ。」
「…思いっきり隠し部屋でしょ、コレ。」
軽くツッこむ夏美。
「高まる期待を抑えきれないであります。」
ケロロ軍曹が、ドアのノブにジャンプ!ドアを開けると…?
「ゲロロ!」
そこは、ガラクタいっぱいの倉庫??だった。
「す、すばらいい物件であります!!」
しかし軍曹は、感激している様子。
「でしょ?でしょ!!好きに改造しちゃっていいからね!
もうぐちょぐちょどろどろにねっ!!
宇宙人のプライベートルームなんて、滅多に見られるもんじゃないわ!
ケロちゃんの、秘密に満ちた私生活空間を見せてちょうだい!!」
すっかり興奮しているママ。
「それが狙い。」
夏美と冬樹は、やっと納得。

〜 母、日向 秋は、少年漫画誌の編集者である。
宇宙人の生活に興味を持つのは、その職業ゆえの使命感なのだと…
思う…、たぶん…。 〜

「この適度な湿度はどうだ…!
お肌もつやつやでありま〜すっ!」
軍曹は、すっかりその物置(失礼)がお気に召したようで、
ルンルン気分…なのだが、
中に一歩足を踏み入れた冬樹と夏美は、
そのどんよりとした重苦しい空気に、何かを感じでいた。
「な、なんか…ヘンなオーラを感じるような…。」
周りを見回す冬樹に
「気のせいよ!」
と、ママ。
夏美も
「うっ、急に肩が重くなったんだ…ケド…?
なに…?どうして…??」
と、目がテンに。
それでもママは、な〜んにも気にしていないようで
「さっ!ケロちゃんのお部屋だから、行きましょう!」
と、ニッコニコ。
ママについて、夏美がナメクジみたいにずるずる部屋を出た後、
残った冬樹に軍曹がコッソリ言った。
「冬樹殿!『ケロボール』の貸し出しを希望するであります!」
「ええっ?」
「あれには、我が輩の私物も収納してありますゆえ。」
「…わかったよ。ねーちゃんにはナイショだからね。
悪用しちゃダメだよ。」
「かたじけないであります。」
冬樹が部屋を出ると、ケロロ軍曹はニヤリ。
「ゲーロゲロゲロ!こいつは予想外の大収穫であります。
敵にみすみす拠点を与え、あまっさえ『ケロボール』まで渡すとは、
愚かなりペコポン人!!これさえあれば…」
『ケロボール』を手に軍曹は…っ善からぬ行動に!!!
…っと思いきや、
「はっ!!これは悪用しないであります!
冬樹殿との約束であります!!」
…地球侵略には、あまり向いていない性格の持ち主だった。
その時…!
どこからともなく、少女のすすり泣く声が…。
「ゲロ?」
ケロロ軍曹の立つ後ろの壁に、人型の影が!!

その頃、リビングでは…
「昔ね、この土地には、罪人を閉じ込める部屋があったんですって。
そこに、無実の罪で捕らわれた少女がいてね、
その怨念が、今でも下の部屋に残ってるって話なんだけどねぇ、
まあ、気にすることないわよっ!」
「気にするわよ!」
ママの話に、半べそ状態で反論する夏美。
「でも、そんなことでもなけりゃ、今時、都心の一戸建てなんて
買えるわけないじゃない!
それに、宇宙人には、地球の恨みつらみなんて関係ないしねー!
あはっ!今頃きっと…、ぐっちょんぐっちょんの、
ねっちょんねっちょんの…!!!」
あくまで、宇宙人の私生活が見たい、
他のことはどーでもいいママだった…。
「もしかしたら…、さっき感じたヘンなオーラは…悪霊??
軍曹ーーーーっ!!」」
不安になった冬樹は、地下室へ走った。
「あ、なになに?」
それに続く夏美とママ。
「やっぱり、その部屋は危険なんだよ!
出てきてよ、軍曹!!ねえ、軍曹ってばっ!」
しかし、ドアが開かないっ!!
「ダメだ、開かないよ!閉じ込められちゃったのかな…」
「3人で引っ張るのよ。」
3人は、ドアノブに手を掛け思いっきりドアを引いた!!
バーーーン!
あ、やっと開いたっ!!
その、開いたドアの向こうは!!!!!
・・・・・・・・・・?
へっ??超高級マンションの一室??
真っ暗な倉庫だったのに、白い壁に白い天井…
周りにはオーディオセットやプロジェクター、ソファーなどが並び…
そして、その部屋の真ん中で、ヘッドホンにサングラスで
パソコンらしき機械と優雅に戯れるケロロ軍曹!
「これはこれは、みなさんお揃いでようこそ!」
アッケにとられ、キョロキョロするばかりの3人。
「な、なによ、この部屋…」
「すごいじゃないか…」
夏美も冬樹もびっくり。
「ぐっちょんぐっちょんじゃない…」
ママはがっかり。
「だいたい、どうやって集めたのよ?」
夏美の素朴な質問に、
「『ケロボール』があれば、簡単に作れるであります!」
思わず軍曹は『ケロボール』を出して威張ってしまったが…
「『ケロボール』!!??」
夏美に睨まれ、
「ゲロッ!!…でも、すぐに返すであります!」
約束通り、素直に『ケロボール』を冬樹の手に渡す軍曹。
「冬樹〜っ!!」
「いいでしょ?悪用しなかったんだから。」
冬樹…汗。
それでも夏美は、顔中のピキピキマークが治まらない。
「わたしの部屋よりいいってどういうことよっ……」
「このくらいはケロン星ではあたり前であります!
おやぁ?どうしたでありますか?
な・つ・み・ど・の??」
「う、うらやましくなんかないんだから…(ピキピキ)」

〜 ほんとーはうらやましい夏美であった。 〜

「ばらさないでよっ!」
夏美、ナレーターに怒る!!
「♪うっうー!やっぱり都会人としてぇ、快適に暮らすにはぁ、
ネットにEメールはあたり前っ!
はっCD聴くなら〜コンポは上等!できればこだわってプレイヤー、
歌はもちろん、アフロシンガー、ダンスマンっ!
ゲロゲロゲロゲロ、よきかなよきかな〜♪」
気分良くラップを歌う軍曹のバックに出ていた
『快適生活』
の文字の『快』が、だんだん…『怪』に変わってきた…。
ひゅ〜どろどろどろどろ…
の、BGMにのって姿を現したのは、
白い着物姿の少女の幽霊!!
「ひゃ〜!!!」
夏美とママは、真っ青になって部屋を飛び出していった。
「おや?どうしたでありますか?
せっかくだから、もう少しくつろいでいってはどうでありますかー?」
2人を追いかける軍曹。
その軍曹をふわふわ追いかけてゆく幽霊。
1人そこに残った冬樹は…?
「宇宙人の次は…幽霊?すごいやっ!!!」
『ビバ!オカルト』
の文字の中でガッツポーズ!

その夜、閑静な住宅街に、
日向家の大騒音が、いつまでも響いていた。

〜 これは、日向家の何気ない日常の1コマである。
ケロロ軍曹と日向家の出会い、
それは数週間前にさかのぼる。
詳しくは後半で。
チャンネルはそのまま。 〜


★ 「我が輩がケロロ軍曹であります」おわり ★

inserted by FC2 system