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ゲッターロボ(ごう)の第1話


アメリカの都会。
突如としてロボット怪獣が出現して暴れ回り、ビルが砕け、人々が逃げ惑う。


突然出現したロボット怪獣・メタルビーストによって アメリカの主な都市は 壊滅的な打撃を受けた
そして ソ連でも同じ事件が起きていた


モスクワの街で、同様にロボット怪獣・メタルビーストが暴れ回る。

「よく聞け、者ども。私の名はプロフェッサー・ランドウ。全世界、いや地球はたった今から、私が支配する」


北極でメタルビーストを指揮する狂気の科学者、プロフェッサー・ランドウ。

ランドウ「ムダな抵抗はやめることだ。メタルビーストよ、全世界の者に、お前を造り上げた私の偉大なる力を、思う存分見せてやれ。フフフ……」

部下である異形のミュータント、ラセツ、ヤシャが現れる。

ラセツ「お呼びでございますか? ランドウ様」
ヤシャ「ご機嫌麗しいようで。ヘヘッ」
ラセツ「ヤシャ。次は日本の東京だ」
ヤシャ「ハッ! お任せを」


出動!! 武器なき戦い


北海道の日本国際航空宇宙技術公団NISAR(ネイサー)
テストパイロットの主人公・一文字 (ごう)と大道 (がい)がシミュレーターに乗り込む。
シミュレーターを操作する武藤由自(ゆうじ)

由自「號さん、剴さん、ラスト行きます!」
號「OK!」
剴「今度は、うまくやってみせる!」
由自「レベル5、スイッチ・オン!」

2人それぞれ乗ったシミュレーターが、仮想空間の渓谷の映像の中を進む。

由自「2人とも、いい調子です。目標物まで、あと200メートルです」

谷の中に目標物の球体が出現。剴の伸ばしたマニピュレーターがそれを掴むが、勢い余って崖に衝突。

剴「うわっ、しまった!」

一方で號の方は見事、それをキャッチする。
シミュレーターから降りた2人を由自と、教官の橘信一が迎える。

信一「號、見事だ。今日もパーフェクトだな」
號「ありがとうございます!」
信一「剴、もう一息だ」
剴「自分は、情けないです……」
信一「明日はうまくいくさ」
號「気にしない、気にしない」
剴「慰めなんか言わんでくれ!」
兄貴「俺たちのほうが上だとしたら、それは訓練時間の差だけさ」
由自「チーフの言われるとおりですよ、剴さん」

通信「信一、F2777に来てくれ」

部屋を出た信一と入れ替わりに、医務担当の看護師、リー・フォア・メイが部屋を訪れる。

號「メイ! 今日は一段と綺麗だな」
メイ「今日も、って言って! フフッ」

一同に書類を配るメイ。

メイ「一文字號くん、はい。大道剴くん、はい。武藤由自くん、えーっと……あ、あったわ。はい」
由自「なんですか、これ?」
メイ「この間行なった、健康診断の結果よ。3人とも異常なし、至って健康!」
號「ちぇっ、残念だなぁ」
一同「えっ!?」
號「どこか悪いところでもあれば、メイのいるメディカルセンターに、ちょくちょく顔を見に行けるのになぁ〜」
由自「くくっ!」
メイ「フフッ。みなさん、いつでもお気軽にどうぞ」


格納庫に来た信一。
所長である父・橘博士と、その助手のDr.ポチ、Dr.タマ。

タマ「まずいニャア〜」
ポチ「まずいワン」
信一「父さん。プロフェッサー・ランドウと言えば……」
橘「ロボット工学、およびコンピューター開発の権威だ。5年前に忽然と学界から姿を消したと思ったが、世界支配などと!」
信一「当然、日本もターゲットに?」
橘「考えたくもない!」
ポチ「北極の多国籍企業ポーラ・ステーションが乗っ取られるとは……」
タマ「唯一あそこで採掘されるG(ジー)鉱石が、手に入らんニャア……」
橘「私たちのロボット製作に支障をきたすことは確かだ」

一同の前には、NISARが誇る宇宙開発用巨大ロボット・ゲッターロボがある。

橘「それで、G鉱石の備蓄はどれくらいあるのかね?」
タマ「もうほとんど、底をついてるニャア」
橘「そうか……」
声「父さん!」

橘博士の娘で信一の妹、翔が現れる。

信一「翔! ここでは公私混同をするなと言ったろ?」
翔「あ……」
ポチ「信一くんは人のことを言えないワン」
信一「あ!」
翔「ヒヒヒ! 人のことを言えないわ」
信一「コホン。用事はなんだ?」
翔「科学技術庁長官と防衛庁長官がお父さんに…… いけない、橘博士にお会いしたいと、お見えになりました」
橘「私に?」


2人の長官と謁見する橘博士。

橘「ゲッターロボを、戦闘兵器に?」
科学庁「はい。早急に改造していただきたいのです」
橘「ま、待ってください。私がゲッターロボを造ったのは……」
科学庁「あ、いや。あの、それはわかっています。宇宙開発の、平和利用のためだということは」
防衛庁「橘博士! ニューヨークをはじめ、世界の主要都市を破壊しているメタルビーストは、必ず日本にも攻撃して来るでしょう」
科学庁「ダイヤモンドおよびセラミックの数百倍の強度を持つG鉱石で造られたメタルビーストに立ち向かえるのは、同じG鉱石で造られたゲッターロボだけなんです! 博士、お願いします」
橘「ゲッターロボには、戦闘兵器は何一つ装備されておりません!」
防衛庁「ですから! ヤツが現れる前に急いで改造を……」
橘「お断りします! 今まで研究してきたことが戦闘に使われるなんて…… 失礼します!」


港。
作業員たちが見つめる海の彼方で、波がざわめく。

「おっ?」「なんだ?」

海中から突如、メタルビーストが出現する。

「わぁ──っ!」「か、怪獣だぁっ!」


NISAR。
東京で暴れ回るメタルビーストの姿を、スクリーンで一同が目にする。

一同「こ、こいつが!?」「メタルビーストだ」
タマ「東京に現れたんだニャア〜!」
信一「父さん、いや、博士!」
翔「ゲッターロボを出動させて!」
號「えっ、ゲッターロボを!?」
信一「このままだと、多くの犠牲者が出るだけです!」
橘「……」
剴「許可していただけるのなら、自分が行きます! いえ、行かせてください!」
信一「剴!?」
號「いや、俺が行く! 剴、お前はバトルヘリで援護してくれ」
剴「脇役に回れと言うのか!?」
號「ゲッターロボは、俺のほうが慣れているからだ!」
剴「慣れ、不慣れの問題じゃない! あいつを許せないという、気持ちの強さだ!」
號「どちらがヤツの動きを阻止できるかだ!」
信一「よせ、2人とも!」
號「だったら、このままヤツの好き勝手にさせておけって言うんですか!?」
翔「防衛庁の長官たちは、こうなる事態を恐れて……」
橘「……」
號「博士! たとえ使う目的が違ったとしても、多くの人々の命を守れるのなら、博士の造ったゲッターロボは、必ず活かされると思います」
信一「僕に任せてください。いや、任せてもらいます! 號、ゲッターロボに乗ってくれ」
號「はい!」
剴「自分は?」
信一「俺とバトルヘリに乗って、援護に回る! 由自! 君は大型ヘリで、ゲッターロボを運んでくれ」
由自「は、はい!」
信一「剴、それでいいな?」
剴「ここで言い争っていてもしょうがない。今回は、譲る」
信一「よぉし、出動だ!」

號や信一たちが出動する。

タマ「勝手に持ち出させていいのかニャア?」
ポチ「いいのかワン?」
橘「……」

(號『多くの人々の命を守れるのなら、博士の造ったゲッターロボは、必ず活かされると思います』)


號がゲッターロボに乗り込む。

號「ゲッターロボ、頼むぜ!」
信一「この出動はシミュレーションじゃない。実戦だ! 本当に大丈夫か!?」
號「はっ、任せてくださいって!」
信一「よぉし、その意気だ。バトル1、スタンバイ!」
剴「バトル2、スタンバイ!」
翔「了解。由自、OKよ」
由自「了解。行くぞ!」
操縦士「OK!」

由自の輸送用大型ヘリが、ゲッターロボを積んだコンテナを下げて出動。
信一と剴のバトルヘリも出動。管制塔で翔が見送る。

翔「気をつけて、兄さん……」


夜の東京。暴挙の限りを尽くすメタルビースト。

ヤシャ「フフフ。メタルビースト・ギルガ! 徹底的に破壊しつくせ! 我らの産みの親、プロフェッサー・ランドウ様の偉大な力を、日本中の者どもに見せつけてやるのだ!」


號「今、どの辺りですか?」
信一「東京へ入った。相当暴れているな」
剴「ひどいもんだ……」
號「何か、見えますか?」
信一「街が炎上している。空は真っ赤だ。號、いつでも降り立てる準備をしておけ」
號「了解! ふぅ……」
信一「剴! 防衛庁から預かっているこのバトルヘリには、確かに武器はある。だが装甲のすべてがG鉱石で改造してあるわけじゃない。そのことは、絶対に忘れるな」
剴「はい! ……これ以上、勝手なマネはさせんぞ!」

東京では、逃げ惑う人々がパニックに陥っている。

『警察官の指示に従って、速やかに避難してください!』
『ドライバーの皆さん! 車を右の片側に放置して、ただちに避難してください!』


会議室で頭を抱える、防衛庁長官ら首脳陣。

防衛「街の中では、打つ手も限られてくる。なんとかしなくては……」

部下の1人が電話を受ける。

部下「わ、わかりました。伝えます。ありがとうございます! ──長官! ゲッターロボが間もなく、現場に到着するそうです!」
長官「えっ!? ゲッターロボが!?」


號「落ち着け、落ち着け…… こっちだって、同じG鉱石でできているんだ。それだけを信じろ……」
信一「メタルビースト発見! こっちに進んで来る。通りに降りるぞ」
號「了解!」

炎上するビル群の中、ヘリのコンテナから投下されたゲッターロボが、地上に降り立つ。
危うく転倒しそうになるものの、なんとか踏みとどまる。

信一「號!?」
號「冗談、冗談です!」
信一「號、よく聞け。ヤツの目をできる限り、俺たちのほうに引きつける。ヤツの武器は腕の主砲だ。隙を見て、それを使えなくしろ」
號「OK!」

目の前の爆煙の中から突如、メタルビーストが姿を現す。

號「うぅっ!?」

メタルビーストの先制攻撃。砲弾を食らい、ゲッターロボが後ろにひっくり返る。

由自「號さん!?」
號「だ、大丈夫だ! 装甲はどうなってる!?」
由自「見たところ、無傷です!」
號「ふぅ…… よぉし!」

信一と凱のバトルヘリが銃撃を加えるが、効果はない。

剴「ビクともしない!?」
信一「そんなことは最初からわかっているはずだ。いいか、剴? 俺たちの役目は、ゲッターロボに接近のチャンスを与えることだ」

メタルビーストの放ったミサイルが、信一機をかすめる。

信一「おわぁっ!?」
號「行くぞぉっ!」

メタルビーストの隙をついてゲッターロボが攻撃を加えようとするが、敵の主砲をまたも食らってしまう。

號「うわぁぁっ!」

NISARでその様子をスクリーンで見ている一同。
Dr.ポチがあまりの光景に、タマの髭で目を覆う。

ポチ「あぁ〜っ! 見ちゃおれんワン!」
タマ「痛痛痛! 何するニャア!?」

果敢に攻撃を挑む剴のバトルヘリに、メタルビーストの攻撃が次々に突き刺さる。

剴「わぁぁ──っ!?」
號「今だ!」

メタルビーストの攻撃が凱機に向けられている間に、ゲッターロボが突進。
またもメタルビーストの攻撃が降り注ぐが、ゲッターロボはそれをかいくぐって真下に回り込み、砲口に右手を突っ込む。
メタルビーストが主砲を発射。ゲッターロボの右拳が砕け散る。

號「うわぁっ!」
信一「號!?」

ゲッターロボは右拳を失ったが、メタルビーストも暴発で主砲が砕け散っている。

號「くっ、完全に動きを止めてやる!」

ゲッターロボがメタルビーストと取っ組み合い、怪力で胸の装甲を引き剥がす。
鋭いメタルビーストの爪がゲッターロボを襲う。

號「うわぁっ! くそぉ!」
信一「號、胸を狙え!」
號「胸を!?」
信一「それで、とどめが刺せるかもしれん! 由自!」
號「はい!」
信一「コンテナを落として、来てくれ!」
由自「了解!」

由自のヘリが飛来。ゲッターロボがそれにつかまって空へ舞いあがり、メタルビーストの攻撃をかわす。
メタルビースト目がけ、ヘリにぶら下がったゲッターロボが一気に急降下。

號「くたばれぇぇ──っっ!!」

ヘリから飛び降りたゲッターロボが飛び蹴りを繰り出し、メタルビーストの胸の傷跡を貫く。
メタルビーストが大爆発。ゲッターロボは初勝利をおさめた。


戦いの模様を監視していたヤシャ。両肩にある2つの顔が、互いに言い合う。

ヤシャ「お、おのれぇっ! 何者だ!? このヤシャが、八つ裂きにしてやる!」「待て。プロフェッサー・ランドウ様の指示を仰ぐのだ」


翔「お父さん!」
橘「……」

大泣きし始めるDr.タマ。

タマ「フンニャア〜っ!」
ポチ「どうしたワン、Drタマ?」
タマ「わしらが手塩にかけたゲッターロボが、日本を救ったニャア! これが泣かずにいられるかニャア〜!」
ポチ「Drポチも男だワン! 付き合ってやるワン! ワァ〜ン!」

Dr.ポチとDr.タマが声をそろえて泣き続ける。


戦いを終え、東京の街は夜が明けている。
ゲッターロボから降りた號のもとへ、信一たちが駆け寄る。

信一「號──っ! よくやったな!」
剴「大した腕だ!」
由自「尊敬しちゃいます!」
號「いや。何もかも、ゲッターロボのおかげさ……!」

朝日を浴びて輝くゲッターロボの雄姿を、號たちが見つめ続ける。


(続く)
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