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仮面ライダーディケイドの第1話


切り立った崖に囲まれた荒野。乾いた風が吹きすさぶ。
泥まみれの白いドレス姿でただ1人立ち尽くす少女、光 夏海。

どこからか火の玉が飛来して地表に炸裂、爆炎が上がる。

夏海「きゃあぁっ!?」

次々に爆炎が轟く中、エンジン音とともに現れたのは、愛車に跨ったクウガ。
それを追うように、カイザの駆るサイドバッシャーが地響きとともに出現。
無数のライオトルーパーたちがそれに続く。

地面を埋め尽くす無数のライダーたちに、次々に攻撃が降り注ぎ、火柱が上がる。
空を舞うドラグレッダーとドラグブラッカーが、攻撃を浴び、咆哮とともに地面へ落ちて行く。

炎と煙と光が飛び交う中、カブト、G3、アギトが愛車で疾走する。
呆然と立ち尽くす夏海に見向きもせず、ライダーたちはどこか一点を攻撃し続ける。

空を見上げると、空中を駆けるジェットスライガー、サイガ、ブレイド、ギャレン。
キバと龍騎を乗せたキャッスルドランが炎を吐く。
どこからか飛来した光弾がサイガ、キャッスルドランを撃ち落とす。

墜落したキャッスルドランが崖を砕き、その向こうから、巨大ディスクアニマル・リョクオオザルが響鬼を乗せて姿を現す。
キャッスルドランから飛び降りたキバ、龍騎、そして響鬼が突進。
クウガ、ファイズ、ガタック、電王、ザビー、カリス、コーカサス、ライオトルーパーたちが続く。
彼らめがけて攻撃が降り注ぎ、次々にライダーたちが吹き飛ばされてゆく。

空を舞うデンライナー、ゾルダを乗せたゼロライナーが、攻撃を浴びて大爆発する。
地面にも爆炎が上がり、ライダーたちが悲鳴とともに、炎の中へ消えてゆく。

爆炎がやみ、周囲が静まり返る。
立ち尽くす夏海。数え切れないほどのライダーたちの屍が、地面に転がっている。

ひときわ大きな爆炎があがり、すべてのライダーたちが炎に飲み込まれる。

夏海「きゃっ!」

もうもうと立ち上る煙が次第に晴れ、すべてのライダーを滅ぼした者が姿を現す。
光に包まれた仮面ライダーの姿。カメラにも似たバックル。

夏海「ディケイド……」


第1話 ライダー大戦


光写真館。
デスクでうたた寝をしていた夏海が目覚める。

夏海「『ディケイド』…… また、あの夢。はぁ……、なんでいつも泣けるんでしょう?」

瞳に滲んだ涙を拭う夏海に、女性客が詰め寄る。

「ちょっと、寝てる場合!? 何よ、この写真!」

夏海の祖父、写真館の経営者・光栄次郎のもとに、何人もの客たちが押し寄せている。

客たち「ちょっとぉ!」「見て下さいよぉ!」
栄次郎「とにかく、その写真は……」
夏海「あぁ、おじいちゃん!」
客たち「どうなってんのよ!」「ひどすぎるじゃないですか!」
夏海「ちょ、ちょっと待ってください! もしかして、(つかさ)くんが撮った写真ですか?」
客たち「そうそう、『写真撮りましょうか?』なんて声かけてきて、モデルやってあげたわけ」「『世界で1枚だけの写真』とか言ってさぁ」「わざわざ受け取りに来てやったのに、これ?」

次々に写真を示す客たち。どの写真も、ピンボケの上に異様に歪んだ姿が写されている。

客たち「まったく」「写ってないし」「何よこれ!?」「どこ見てんの?」「ひどくない!」
夏海「ひどい! これはひどすぎます!」
栄次郎「いや、でも皆さん、これはこれでなかなか芸術的でいいじゃないですか? ねぇ?」
客たち「ひどぉい!」「わたしの顔って、こんなってこと!?」
栄次郎「いやいやいや、私はね……」
客たち「ひどいじゃないですか!」「ちょっと、謝ってくださいよぉ!」「どういうことよ!」「こんなものにお金なんて払えないわよぉ!」
夏海「今日という今日は!」
栄次郎「夏海、どこ行くんだい?」
夏海「士くんに文句言ってきます。どうせいつもの場所でしょ」

写真館を飛び出した夏海が、町を行く。

夏海「(門矢(かどや) 士。フラッと町に現れて そのまま居ついたあの男。未だに、どこから来たのかも、何をしたいのかも、何も話さない) 本っ当ぉに迷惑な奴!」

そのとき。奇妙な音が響く。
周囲の建物の窓ガラスに映った光景が奇妙に歪む。

夏海のそば、道端に捨てられた鏡の中──仮面ライダー龍騎が姿を見せ、そして消える。


公園。
主人公の青年、門谷 士がトイカメラを手にし、写真を撮っている。

「おい、こっち向けよ!」

ガラの悪い男女3人が、士に詰め寄る。

「こんな写真に、金払えるか!」「こんな写真!」「どうやったらこんな写真撮れんのや」「お前言ったよなぁ?『俺のすべてを撮ってやる』って。それがこのトンデモ写真か!?」」

どれも写真館の客が持ち込んだのと同じ、異様に写った写真ばかり。

士「あ──、またダメか」
男「あぁ!? なんだと、こらァ! お前、ハナっからまともに撮るつもりなかったのか、この野郎!」

殴りかかる男。士はひょいと拳をよける。

男「なんでこんな写真を撮る?」
士「うまく撮れないからさ。俺はこの世界のすべてを写したいと思ってる。だから、うまく撮れるまで撮ってるだけさ」

そう言って士がカメラを男たちに向け、ファインダーを覗く。
ファインダーの中の光景が奇妙に歪み、その中に、白い服を着た青年の姿が浮かぶ。

「ディケイド…… 今日、あなたの世界が終わります」

青年の姿にだぶる、仮面ライダーキバの姿。

士「……ディケイド?」
男「な──にやってんの、お前は?」

そこへ夏海が駆けつける。

夏海「あの、すみませんでした! 士くん…… 光家秘伝・笑いのツボ!」

夏海が士の背後に回りこみ、彼の首筋に親指を突き立てる。

士「う!? あ、アッハハハハ! ハハハハハ! 夏、海…… てめぇ、また! ア、アハハハ、ハハハハハ!」
男女「バカ野郎!」「気持ち悪い…… もう帰ろ」
夏海「本人も泣き笑いで謝っておりますので。本当にすいませんでした!」
士「アハハハ、ハハハハハ!」

バカ笑いする士を気味悪がりつつ、男女が去って行く。
どうにかピンチを逃れた士たち。

士「笑いのツボって、こういう意味じゃねぇだろ!? 夏ミカン!」
夏海「これに懲りたら、反省してください! なんであんな変な写真ばっかり撮るんですか!?」
士「言ったろ? 俺はただ、俺の世界を撮りたいだけだ」
夏海「世界? それがどうして、あんな写真になるんですか?」
士「俺は、ただ撮りたい。だが世界が俺に撮られたがってない。勝手に歪んじまう」
夏海「え?」
士「街も、光も、人も、俺から逃げてく。ここも俺の世界じゃない……」
夏海「あなたの、世界?」
士「俺に写される資格を持った世界ってこった」
夏海「とにかく、これ以上うちの写真館を君の代理店扱いするのはお断りしますから。立て替えたフィルム代も、しめて……」
士「あぁ、大体わかった」
夏海「大体じゃなくてぇ!」
士「それより、今日はなんだか変な風が吹く」
夏海「……士くんも感じてましたか?」
士「早く帰ったほうがいいぞ」

夏海に向けてカメラのシャッターを切る士。
そのとき。一陣の風が吹いたと思いきや、空中からオーロラ状の壁が舞い降り、建物がみるみる消え去っていく。

士「え!?」

さらに、空の向こうから、奇声とともに飛んで来る怪物たち──魔化魍。
呆然と見上げる士たち。人々が逃げ惑う。
数匹の魔化魍が舞い降り、大地を引き裂くように地面スレスレを飛ぶ。

士「わぁっ!」

かろうじて、身をかわした士たち。
だが2人を隔てるように、オーロラの壁が突き立っている。

士「夏ミカン!?」
夏海「何これ!? 士くん!」
士「おい、夏ミカン!」
夏海「何なのぉ、これ!? 士くん!」

2人が必死に壁を叩くが、壁はビクともせず、2人は触れることができない。
突然、壁向こうの士の側が、昼間だというのにみるみる暗くなり、あっという間に夜同然となる。

夏海「士くん、聞こえないの!? 士くん!」

声に振り向く士。だが夏海の姿が次第に見えなくなり、声も聞こえなくなる。

士「おい!? 夏ミカン、夏ミカぁン!!」

必死に壁を叩く士。次の瞬間、壁を突き抜けて魔化魍が飛び出す。

士「わぁっ!?」

魔化魍がどこかへ飛び去り、後には士が残されたのみ。
周囲は夜の街。空には満月が浮かんでいる。

気配を感じた士が振り向くと、公園でカメラが捉えた謎の青年──紅 渡がそこにいる。

士「!?」
渡「ディケイド…… 今日がその日です」
士「お前、誰だよ!?」

渡が静かに夜空を指差す。
空に浮かぶ満月が、地球の姿となり、さらに9つの地球となる。

9つの地球が士めがけて舞い降り、その一つが士の頭上へ。
地球が、空が、夜の街が士に迫り、ビルが士めがけて倒れこんでくる。

あやうくかわした士。横倒しになったビルの下面を、渡は重力に逆らいつつ平然と歩いている。

士「危ねぇだろ!」
渡「バックルとカードはどこです?」
士「……? クレジットカードは作らない主義だ!」
渡「世界を救うためには、あなたの力が必要です」

士の周囲がオーロラの壁に包まれ、海、山、街と、目まぐるしく景色が変わる。
やがて景色の変化が落ち着き、士はどこかの建物の傍らにいる。

士「……夏海? どこだ、夏海!?」


その頃。夏海は突然の異変に驚く人々とともに、逃げ惑っていた。
突然オーロラの壁が現れ、人々の退路をふさぐ。
ビルが次々に消え去り、人々が悲鳴をあげる。

夏海「え……?」

突然の悲鳴とともに、1人の男性が倒れる。そこには刀を携えた怪人、アンデッドがいる。
驚いて逃げ出そうとする人々に人々に、次々にアンデッドが襲いかかる。
夏海や人々は必死に逃げようとするが、オーロラの壁が彼らを通り抜け、景色は一転、大雨の町角となる。

夏海「なんで!?」

1人の男性の首に2本の牙が突き刺さり、体が透明となり、倒れる。
悲鳴とともに逃げ惑う人々。彼らに襲いかかる怪人、ファンガイアたち。
襲撃の手から逃れ、夏海が走る。

再び夏海がオーロラの壁を突き抜け、周囲は荒野と化す。
地面から吹き上げた砂の塊が怪人の姿──イマジンとなる。

イマジン「お前の望みを言え…… どんな望みも叶えてやろう……!」
夏海「い、嫌…… やめてぇ!」

次々に群がるイマジンから逃れ、夏海が走る。
またもやオーロラの壁を突き抜け、そこはどこかの建物の傍ら。
巨大な魔化魍が建物を砕く。夏海が必死に、壊れかけた建物のそばに身を隠す。

そのとき。半壊状態の建物の奥に、何かがある。
カメラにも似た白いバックル、四角い形をした白い物体。

夏海「あれは!?」

その2つを手にする夏海。片方は、夢で見たライダー「ディケイド」のバックル。

夏海「私の夢の…… どうして!?」
士「おい、夏ミカン!」
夏海「士くん!?」

声のほうを見ると、オーロラの壁の向こうに士がいる。

士「聞こえるか!? おい!」

夏海が駆け寄る。

夏海「無事だったんですね! 良かった……」
士「無事って状況か、これ!?」

夏海の背後に迫る足音。振り向くと、そこにいるのは夏海自身。

士「夏海……!?」

もう1人の夏海が、蛹状の怪物に姿を変え、脱皮し──ワームとなる。

士「おい、夏海!? 夏海ぃ!!」

渾身の力で壁を殴りつける士だが、壁はびくともしない。

士「こんなもんなのか!? 世界が終わる日っていうのは……」

ふと士は、夏海の手にしている物体に気づく。

(渡『あなたのバックルとカードはどこです?』)

士「それか!? 夏海、それを渡せ!」
夏海「え!? でも……」
士「世界を救ってやる。たぶん……」

促されるままに、夏海の差し出したその2つが、壁を突きぬけて士の手に収まる。
数体のワームが夏海に襲いかかる。

夏海「きゃあっ!? 来ないでぇ! 嫌ぁっ!」

士がバックルを腰にあてがうと、ベルトが伸び、変身ベルト・ディケイドライバーとなる。
もう一つの物体・ライドブッカーから「DECADE」と書かれたカードを引き抜く。

士「変身!!」

カードをディケイドライバーに装填する。

KAMENRIDE DECADE

合成音声とともに、一瞬の内に士の全身を装甲服が覆い、変身を遂げる。
変身の衝撃で、オーロラの壁が砕け散る。

夏海の見た士の姿は、まさしく夢で見た謎のライダー、「仮面ライダーディケイド」。

夏海「あ…… 士くん? どうして!?」

ワームたちに戦いを挑むディケイド。だがワームたちは超高速で走り去り、一瞬のうちに視界から消え去る。

ディケイド「チョコマカと!」

ワームたちを追いつつ、ディケイドが別のカードを、ディケイドライバーに装填する。

KAMENRIDE KABUTO

たちまちディケイドの姿が、仮面ライダーカブトと化す。

ATACKRIDE CLOCK UP

別のカードを装填するや、カブトもワームを追ってクロックアップ。
飛び散る瓦礫が超スローモーションのように見える超高速の世界の中、カブトがライドブッカーを剣に変形させ、ワームを次々に斬り捨てる。
ワームたちが緑色の爆炎に包まれ、消滅する。

ディケイドライバーからカードが飛び出し、ひとりでにカブトの変身が解け、ディケイドの姿に戻る。

ディケイド (なんで今、俺このカードを選んだ?)

今しがた彼の手の中に戻ったカードから、描かれていたカブトの姿が、次第に消えてゆく。

ディケイド (え……?)

夏海の目の前に、専用バイク・マシンディケイダーに乗ったディケイドが駆けつける。

ディケイド「来い!」
夏海「ディケイド……」
ディケイド「お前? なんでその名を知ってるんだよ!?」
夏海「……どこに行けば?」
ディケイド「帰るんだよ、うちへ」

ディケイドがバイクの後ろに夏海を乗せ、人々の姿のなくなった道路を走る。
オーロラの壁を突き抜け、景色が一変。破壊された建物が並び立つ荒れ果てた町並み。
息絶えて倒れている人々。その中には、士に写真の文句を言っていたガラの悪い男女の姿もある。
屍が次々に砂となって崩れ、その中から触手が伸びて夏海を捕まえ、引きずり落とす。

夏海「きゃあっ! 痛……」
ディケイド「おい、夏ミカン!」

地面に転がった夏海に、灰色の怪人・オルフェノクたちが群がる。

夏海「あ…… 来ないで、嫌ぁっ!」

KAMENRIDE FAIZ
ATACKRIDE AUTO VAJIN

ディケイドが別のカードをドライバーに装填するや、その姿は仮面ライダーファイズと化す。
マシンディケイダーがファイズのオートバジンへ姿を変え、バトルモードに変形、オルフェノクを蹴散らして夏海を救い出す。

ファイズ「離れてろ、夏ミカン!」

ファイズがオートバジンからファイズエッジを引き抜き、オルフェノクたちを斬り捨てる。
青い炎に包まれ、オルフェンクたちが消滅する。

安心したのもつかの間、頭上を巨大な怪物が飛び去る。
見ると、その先には巨大な魔化魍たちがはびこっている。

ドライバーから再びカードが排出され、ディケイドの姿が元に戻る。
カードに描かれたいたファイズの姿が、先のカブト同様に消えてゆく。

ディケイド「またか……」

KAMENRIDE HIBIKI
ATACKRIDE ONGEKIBOU REKKA

ディケイドが別のカードを装填、響鬼に姿を変え、音撃棒烈火を振るって魔化魍たちを倒してゆく、

(なぜだ? 俺は……戦い方を知っている?)

またもやカードがドライバーから排出され、響鬼としての変身も、ディケイド自身の変身も解除される。

士「帰るぞ、夏ミカン」

オーロラの壁が彼らを取り巻き、またもや周囲の風景が一変。
人々の逃げ惑う町並みに、サイレンの音が響き渡っている。

士「ここは……?」

改めて、手の中にあるこれまでのカードに目を配る士。
どのカードも、描かれていた模様が消えうせている。

士「どういうことだ? 力が、長く続かない」

(渡「それは、君がかつてすべてを失ったからだ」)

夏海「……士くん?」
士「夏ミカン!」

とっさに士が夏海をかばう。頭上を魔化魍が飛び去る。
その行く先を見ると、高層ビルに魔化魍やミラーモンスターが群がり、互いが互いに食いついている。

士「共食いしてやがる……」

1体の魔化魍が墜落。ビルが砕け、大爆発。
巨大ば爆炎が膨れ上がり、周囲の町や人々を際限なく飲み込んでいく。
悲鳴をあげて逃げ惑う人々。その中に、幼い子供を連れた母親もいる。
思わず夏海が、親子を救おうと駆け出す。

士「夏海!?」

次の瞬間。
親子の動きがピタリと静止。そればかりか、彼らを飲み込もうとしていた爆炎までもが静止。
時間が止まったかのように、士と夏海以外の、ありとあらゆるものが動きを止めている。

夏海「もう…… 何なのよ!?」

さらに、爆炎の中からゆっくりと、何者かが姿を現す。
それは士の前に何度も現れている謎の青年、渡。

士「お前!?」
渡「まだ、少しは時間があります」
士「俺が、世界を救えると言ったよな?」
渡「えぇ」

渡が指をパチンと鳴らすと、たちまち周囲が暗闇に閉ざされる。
星空の中、無数の地球が漂っている。唖然とする士。

渡「凄い光景ですね。何か、思い出しましたか?」
士「いや、戦い方だけだ。あれは何だ? 地球に見えるが」
渡「えぇ、地球です」
士「どうして…… 地球が?」
渡「9つの世界に9人の仮面ライダーが生まれました。それは独立した別々の物語。しかし今、物語が融合し、そのために世界が一つとなろうとしています。やがて、全ての世界は消滅します」

漂っていた地球が互いにぶつかり合い、砕け始める。

渡「ディケイド、あなたは9つの世界を旅しなければいけません。それが世界を救う、たった一つの方法です」
士「……なぜ俺が?」
渡「あなたはすべての仮面ライダーを破壊する者です。創造は破壊からしか生まれませんからね…… 残念ですが」


気がつくと、そこはもとの光景。
爆発も、逃げ惑う人々も、凍りついたように止まったまま。

渡「あなたが旅を終えるまで、僕と僕の仲間たちが、もう少しだけこの世界を生き長らえさせておきます」


夕暮れ時の光写真館に、士と夏海が帰って来る。

栄次郎「あれ? テレビ、全然映んないね…… ──あ、お帰り」
夏海「つまり、あなたがこの世界を救うんですね?」
士「あぁ、なんだかそういうことらしいぜ。9つの世界か…… 撮ってみるか、全ての世界を。そうすれば……」
夏海「(もしあれが、ただの夢じゃないなら…… 士くんも、いつか?) わかりました。行きましょう!」
士「なんで夏ミカンまで行くんだよ!?」
夏海「士くん、当てになりませんから。それに……」
士「?」
夏海「それに、この機会に借金を踏み倒すつもりかも!」
士「……」
夏海「それで? どうやって別のライダーの世界に行くんですか?」
士「聞いてない」
夏海「忘れたんでしょ!?」
士「いや、聞いてない! あいつ、肝心なことを……」
栄次郎「人はさ、みんな旅人だよ」

写真撮影用の背景ロールを操作しようとする栄次郎。

栄次郎「あら、おや? う〜ん…… よいしょ」

なかなか降りないロール。栄次郎が力をこめると、勢い良くロールが降りる。

栄次郎「おぉ、おぉ?」

背景ロールに描かれた光景が光を放つ。
険しくそびえ立つ山。そのふもとへと続く道を走る、何台ものパトカー。
何かを直感した士が、写真館を飛び出す。

外にはこれまでとは違う、見たこともない町並みが広がっている。

『警邏中の各移動に連絡。富士見2丁目の北見倉庫にて、未確認生命体の出現を確認』

気づくと、いつの間にか士は警察の巡査の服装に変わっており、身につけている無線機から声が流れている。

士「なんだ、これ?」
無線『事件現場の指揮は、警視庁未確認生命体対策本部員が担当する。現場にて対応する署員は、対策本部員の指示に従い、未確認の接近に注意』

サイレンを鳴らしつつ、何台ものパトカーが士の目の前を横切って行く。
行く先に目をやる士。

険しくそびえ立つ山。そのふもとへ続く道を、何台ものパトカーが走る光景。
それは、写真館の背景ロールに描かれていた光景とまったく同じだった。

倉庫街の一角に、パトカーがたどり着く。
すでに何人もの機動隊員たちの姿。グロンギ怪人が暴れまわっている。

パトカーから降りた1人の女性刑事が、無線機を手にする。

「未確認生命体7号確認。ユウスケ、聞こえる?」

怪人が車を投げ飛ばす。

「危ない!」

そこへ、バイクに乗った1人の青年が駆けつける。
女性刑事が怪人に銃を向けるが、倉庫の壁をぶち破ってもう1体の怪人が出現、女性刑事に襲いかかる。

青年「あねさん!? 変身!!」

青年の腰にベルトが出現。その体はみるみる赤い生体甲冑に覆われる。
仮面ライダークウガに変身を遂げた青年が、怪人に殴りかかる。


士「クウガの……世界か!」


(続く)
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