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仮面ライダーアマゾンの第1回


仮面ライダー
アマゾン


この文明の今日こんにちでも
まだ 人の足を踏み入れたことがないという
大アマゾンの奥地──


アマゾンの密林の上空に浮かぶ、悪の軍団・ゲドンの首領、十面鬼ゴルゴス。
下半身は巨大な顔型の岩で、十面鬼の名の通り、その岩には9人の悪人の顔が埋め込まれている。

顔岩の口が不気味な液体を地表へ吐き出すと、密林が突如、燃え上がる。
密林部族の人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。


そこに起こった 恐怖 十面鬼の反乱
狙うは 長老バゴーの守る
強大なインカ科学の鍵“ギギの腕輪”

十面鬼に追われた 長老バゴーは
これを伝える一族もない 今
野生の日本人青年にその腕輪を移植し
改造人間に仕立てて これを守ろうとしていた


とある洞窟の中──

密林で育った野生児の青年・山本大介こと通称アマゾンが横たわっており、バゴーが改造手術を施す。
傍らにはインカ秘術の伝統なのだろう、古めかしい刃物らしき道具、妖しげな色の薬品の満ちた壷が並ぶ。
バゴーの手にした器具がアマゾンの左腕を裂き、そこに秘宝・ギギの腕輪が移植される。
そしてバゴーが壷の中の薬品の手を浸すと、その指をアマゾンの体へ──

やがて、アマゾンが目を覚まし、体を起こす。

バゴー「日本に行け……高坂に会うんだ! ……う……うぅっ……日本に……行け……」


その手術の成功を見届けたバゴーは
不思議な暗示を残して 息を引き取った


アマゾン「ワオォッ! ワオォォ──ッ!!」

獣のような唸り声をあげつつ、アマゾンが野獣を思わせる動きで密林を駆け回る。
その表情もまた人間のそれではなく、野獣を思わせる。
身につけているのは腰布、万能ベルト・コンドラー、そしてバゴーに託されたギギの腕輪のみ。

そして木々の間から顔を覗かせつつ、彼を付け狙う、奇妙な衣装の女たち……


山本大介 日本人 23歳
生まれて間もなく 両親とアマゾンで遭難
野獣の中で育ち 言葉も知らない

インカの守護人バゴーによって改造され
その秘宝の鍵 ギギの腕輪を託された

何のために襲われるのか 何も知らぬ彼は
バゴーの催眠暗示に従って
ただ走った


木々の間から微かに、怪物のような顔が見える。

アマゾン「ウワオォォ──ッ!! ワオォォ──ッ!!」

咄嗟にアマゾンは、木の蔦を手にし、ターザンのようなアクションで木から木へと飛び移ってゆく。


ようやく追っ手を撒いたかと思われたとき──空に浮く、十面鬼ゴルゴス。

十面鬼「フフフ……逃しはせぬ。逃がすものか!」

下半身の顔岩に埋めこめれた9人の悪人の顔たちも、次々に声をあげる。

顔岩「捕えろ!」「こ、殺せ!」「腕輪を奪え!」「その腕輪を奪って、我がゲドンは」「この十面鬼の力で」「世界を支配するのだぁ!」
アマゾン「ワァァ──ッ!! ウゥッ──ッ!」
顔岩「必ず捕えるぞ!」「この十面鬼がある限り」「逃がすなぁ!」

顔岩が不気味な液体を地表へ吐きかけ、アマゾンの周囲の木々が燃え上がる。

アマゾン「ワァァ──ッ!! ウワァ──ッ!」


果てしない逃走の末、遂にアマゾンは海岸へたどり着く。
バゴーの言葉が胸に甦る。

(バゴー『日本へ行け! 高坂に会え!』)

アマゾン「ワァァオォォ──ッッ!!」

海へ飛び込むアマゾン……


ひとじゅう?!
密林みつりんからすごやつ!


日 本


東京都内、とあるビル街──

無数の蜘蛛の糸が突然、空から地表へと舞い降りてくる。
物陰からそれを見張っている、アマゾンを追っていた謎の女たち──ゲドンの女スパイ、赤ジューシャだ。

何気なしに道を歩いていた女性の頭上に、糸が降りかかる。
糸が体に絡みつき、動きが取れなくなる。

女性「あ? あぁ──っ!?」

すかさず赤ジューシャたちが女性を捕えにかかる。

同様にあちこちで、糸に捕われた人々が、赤ジューシャたちの手に落ちてゆく。


既に 東京地区にも
ゲドンの魔手は密かに伸び
謎の失踪事件として 多数の人々が
誘拐されていた


インカ文明の研究家・高坂博士と、研究仲間の松山が路地裏を歩いている。

「きゃあっ!?」

突然の女性の悲鳴に、高坂たちが駆けつける。
だがそこには誰もいない。

松山「消えた……?」

高坂が周囲を見回すと、近くの金網に、蜘蛛の糸が貼りついている。
地面に転がっている木の枝を拾い、その糸を絡め取る。

高坂「松山くん、これだ。これを見たまえ」

2人の見ている前で、糸が忽然と消え去る。

松山「消えた!? 高坂先生、消えました!」
高坂「うむ。わかったかね? これが、ゲドンの不思議なやり方だよ」
松山「しかし不思議だ……」
高坂「あぁ、不思議だ……私も、あのアマゾンでバゴーという老科学者の話を聞いていなければ、信じられない。でも実際に、この日本の東京で、ゲドンは動いているんだ……早く手を打たないと!」
松山「これは誰に言っても無駄ですよ……誰も信じやしません! 警察だって自衛隊だって……」
高坂「だから私は待っているのだよ。この日本を守ってくれる人物……バゴーが送ってくれた、若者をね」

ふと松山が空を見上げ、糸を吐きながら空を舞う怪物を目にする。

松山「先生、あれは!?」
高坂「行こう!」


一方、港にフェリー船が到着。
密航していたのだろうか、ロープを伝ってアマゾンが降りてくる。
すかさず襲い掛かる、密林でアマゾンを襲おうとした怪物──クモ獣人。

港から倉庫前へと場所を移しつつ、2人の戦いが続く。
そこへ、「空を舞う怪物」を追ってきた高坂たちがやって来て、物陰からアマゾンたちを目にする。

アマゾンがクモ獣人に噛み付き、獣人がひるんだところへ倉庫内に逃げ込む。
倉庫内には高坂たち。

アマゾン「ハァァ……ハァァ……?」

高坂が両手の指を組み合わせたサインを作ってみせる。
それを見たアマゾンも、同じサインを作ってみせる。
頷く高坂。

高坂「味方だ。これは味方の印だ」

倉庫内に侵入してくるクモ獣人。

高坂「危ない! 行こう!」

高坂たちがアマゾンを連れ、倉庫奥へ。

目の前に蜘蛛の巣が張られており、進路を塞ぐ。
アマゾンが蜘蛛の巣を払いのける。
油断をつき、高坂たちの頭上から蜘蛛の糸が降りてくる。

松山「先生!?」

糸をかわし、3人が逃げ出す。

松山を先頭に、3人が倉庫内を逃げ惑う。
通路の角を松山が曲がり、同じ角を高坂とアマゾンが曲がった時──

松山「わぁ──っ!?」
高坂「どうした、松山くん!?」

見ると、松山が蜘蛛の糸でがんじ絡めにされ、天井から吊り下げられている。

松山「先生──っ!?」
高坂「松山くん!?」
松山「先生──っ!?」

高坂の目の前で、松山が息絶える。

高坂「松山くん……? しっかりしろ!」

再び蜘蛛の糸が降ってくる。
咄嗟にアマゾンが高坂を抱え、逃げ出す。

倉庫外へ逃げ出した2人。
そこへクモ獣人が襲ってくる。再びアマゾンとクモ獣人の戦い。
高坂は獣人の襲来の際に傷を負ったらしく、頭から血を流している。


一方ここは、高坂教授の親戚の岡村家。
電話が鳴り、小学生の岡村マサヒコが電話に出る。

マサヒコ「はい、岡村です。……え、おじさんが!? 姉ちゃん、おじさんが怪我をしたって」

姉のリツコが受話器を受け取る。

リツコ「おじさんが? もしもし? ……はい、港病院ですね。すぐ行きます」

家を飛び出す2人。

マサヒコ「姉ちゃん、早く!」


岡村姉弟がタクシーで病院に到着。
高坂教授の病室へ。
高坂は頭に包帯を巻いているものの、ベッドから身を起こしており、意識は正常なようである。

マサヒコ「おじさん」
リツコ「おじさん、大丈夫?」
高坂「運が良かったんだ、まったく……」
リツコ「本当、私もう、心臓が止まるかと思った」
高坂「会えたんだよ……あの男に……!」
リツコ「……怪我の話じゃないの?」
高坂「間違いない……アマゾンから来たあの男に会えたんだよ……! アマゾンで死んだ山本教授に似ていた……きっと山本くんの息子だよ」
マサヒコ「おじさん、これやった?」

高坂がアマゾンに見せた「味方」の印を、マサヒコも指で作ってみせる。

高坂「やったさ……敵に襲われていたんだ」
マサヒコ「敵?」
リツコ「敵……?」

マサヒコが何気なく、窓から外を眺める。
そこには、倉庫ビルの非常階段を昇るアマゾンの姿。

マサヒコ「ちょっと遊んで来る」
リツコ「気をつけてね、マサヒコ」

マサヒコが病室を去る。
思いつめた様子の高坂教授。

リツコ「どうしたの、おじさん?」
高坂教授「私の目の前で……松山くんを死なせてしまった……」


アマゾンがとある倉庫内に入り込む。
積み上げられた段ボール箱を見つけ、クンクンと鼻を鳴らす。
段ボールを引きちぎると、そこにはバナナの山。たちまちバナナを奪い、かぶりつく。

ふと、気配を感じてアマゾンが箱の陰に身を潜める。
何者かの影が近づいてくる……
すかさず飛び出すアマゾン。

アマゾン「ガアァァ──ッ!!」
マサヒコ「うわぁっ!」

それはマサヒコであった。

マサヒコ「誰だ、お前!?」
アマゾン「ガッ!?」

本能的に敵意がないことを感じたのか、アマゾンが身を屈め、マサヒコと視線を合わせる。
マサヒコがもしやと思い、手で「味方」の印を作ってみせる。

マサヒコ「君……これ、わかる?」

アマゾンも同じ印を作って返す。

マサヒコ「君! 君だったんだね!」

互いに仲間同士であったことを認めたか、2人がはしゃぎ合う。
仲間に合えた喜びか、アマゾンがロープで倉庫内のコンテナからコンテナへと自在に飛び回る。

マサヒコ「わぁ……凄げぇ!」

アマゾンがマサヒコの元に舞い降りる。

マサヒコ「兄ちゃん、凄いね!」
アマゾン「アマ、ゾ……ン」
マサヒコ「アマゾン?」
アマゾン「アァ、アマゾン」
マサヒコ「アマゾン? そうか、アマゾンから来たんだ。きっとそうだ、だから言葉がわからないんだ」
アマゾン「ア、マ、ゾーン……」
マサヒコ「僕が教えてあげるよ。僕の名前はマサヒコ」
アマゾン「マ……?」
マサヒコ「マ・サ・ヒ・コ!」
アマゾン「マ……サヒコ?」
マサヒコ「兄ちゃんはアマゾン!」
アマゾン「アマゾン……!」
マサヒコ「そう。マサヒコとアマゾンは友達!」

マサヒコが指で「味方」の印を作ると、アマゾンも笑顔で印を返す。

アマゾン「アマゾン、マサヒコ!」

そのとき──奇声。

アマゾンが振り向くと、クモ獣人が倉庫内に飛び込んでくる。
再び獣人に立ち向かうアマゾン。
獣人の爪がアマゾンの体を裂き、鮮血が迸る。

アマゾン「ウゥ──ッ、ウガァァ──ッ!!」

なおも果敢に獣人に挑むアマゾン。
鮮血が壁に飛び散る。
アマゾンが万能ベルト・コンドラーからロープを引き抜き、天井の柱に投げつけて巻きつけると、ターザンのようなアクションで獣人にキック。
その隙にアマゾンがマサヒコを物陰へと逃がす。

尚も獣人がアマゾンを襲う。
物陰からじっと見守るマサヒコ。
獣人を睨みつけるアマゾンの目が、怒りに燃える。

アマゾン「ハァァ……ハァァ……ガァァ──!! ア──マ──ゾォォ──ン!!」

アマゾンの目が赤く光り、閃光が迸り、激昂と雄叫びと共に変身を遂げる──
緑色の肢体に斑模様。背と手足にはヒレ、指先には鉤爪、赤い目、口には牙。それはマダラオオトカゲの超人の姿であった。

マサヒコ「ライダー!? 仮面ライダーみたいだ」

変身したアマゾンがクモ獣人と戦いを繰り広げる。
倉庫外へと戦場を移し、戦いが続く。
機敏な野生の動作でクモ獣人を翻弄するアマゾン。

アマゾン「ケェ──ッ!! トワァ──ッ!!」

その爪が、クモ獣人の脚の1本を切り裂く。

敵わないと見なしたか、クモ獣人が糸を放ち、どこかへと逃げ去っていく。


マサヒコ「アマゾン!」

駆け寄るマサヒコを、アマゾンが抱き上げる。

マサヒコ「アマゾン……アマゾンライダー!」


高坂教授の病室。

リツコ「マサヒコ、どこ行っちゃったのかしら……?」」

天井の通風口から、蜘蛛の糸がたれ下がっている……


一方のアマゾンたち。
変身を解いたアマゾンを、マサヒコが高坂教授のいる病院へと案内している。

マサヒコ「こっちだよ、早く! おじさん、君のことをよく知ってるし、とっても頼りになるんだ。教授で探検家で、高坂っていうんだ」
アマゾン「コー……サカ?」
マサヒコ「あれ、知ってんの? 高坂だよ」
アマゾン「……コーサカ!」

彼の胸に、バゴーの今際の際の言葉が甦る。

(バゴー『日本へ行け! 高坂に会うんだ!』)


高坂教授の病室。
通風孔から、クモ獣人の爪が飛び出す。

高坂「出た! 危ない! 逃げろ!」

高坂は必至にリツコを逃がそうとするが、自らはクモの糸に絡め取られてしまう。

高坂「うわぁ──っ!!」
リツコ「きゃあ!」
高坂「逃げろ、逃げるんだ! リツコ!」
リツコ「先生! 誰かぁ──っ!」

リツコが病室を飛び出す。


マサヒコ「あ! おじさんの声だ」

アマゾンはマサヒコの肩を抱き「ここにいろ」というような仕草をし、自らは非常階段で高坂教授の病室へ向かう。

病室。クモ獣人が高坂教授を襲っている。
アマゾンはようやく病室前に辿り着いたものの、前面は窓ガラス。いくら引っかいても足掻きようがない。
傍らにあった鉢植えでガラスを叩き割り、病室内に飛び込む。
しかし、クモ獣人はあっという間に通風口へ姿を消してしまう……

後に残された、大量のクモの糸の塊に目を見張るアマゾン。
それは糸に絡まれて息絶えた、高坂教授の亡骸だった……

アマゾン「コーサカ……コーサカ……ウウゥゥ──ッッ!!」


アマゾンはいかった
たった1人 手を差し伸べてくれた日本人を
無残にも消し去った ゲドンの残虐さに対して
堪えきれぬ怒りを燃え上がらせた


病院を飛び出すアマゾン。
リツコがクモ獣人に追われている。

リツコ「助けてぇ!」

そこへマサヒコが合流する。

マサヒコ「姉ちゃん、どうしたの?」
リツコ「早く!」

資材置き場まで追い詰められる姉弟。
蜘蛛の糸がリツコを絡め取る。

リツコ「この糸に触っちゃ駄目!」
マサヒコ「姉ちゃん!」

そこへクモ獣人が次第に襲い来る。
獣人の爪が姉弟の迫ろうかというそのとき──アマゾンが登場、クモ獣人に襲い掛かる。

アマゾン「ワゥゥ……!! ア──マ──ゾォォ──ン!!」

アマゾンの目が赤く光り、再びにマダラオオトカゲの超人へと変身を遂げる。
アマゾンのヒレがクモ獣人の脚を裂く。
そしてその爪が獣人の胸を裂き、不気味な黄色い体液が滴る。

実力では敵わないと悟ったか、クモ獣人がビルの彼方へと姿を消す。


ゲドンのアジトへと帰還するクモ獣人。

十面鬼「クモ獣人、よくもおめおめと戻って来おったな。たかが1人の人間の、始末もできんとは……失せろ!」
クモ獣人「お待ち下さい!」

十面鬼の顔岩の口が炎を吐き、クモ獣人に浴びせられる。

クモ獣人「わぁぁ──っ!?」

クモ獣人が燃え尽きる……


戦いの終わった資材置き場。

マサヒコ「アマゾーン! どこ行ったの、アマゾン!」
リツコ「マサヒコ!」

アマゾンを探すマサヒコに、リツコが駆け寄る。


その頃アマゾンは、夕焼けの照らす海岸で孤独に、雄叫びを上げていた──


戦いは勝った

だが なぜ襲われるのか
教えてくれる者は誰もいない

アマゾンは1人戦うことの悲しみに
耐えて 吼え続けた


つづく
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