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仮面ライダーアギトスペシャル 新たなる変身のオープニング


これは、3人の仮面ライダーの物語──

すでに仮面ライダーである男
津上翔一 仮面ライダーアギト
記憶喪失の青年 美杉家の人々と一緒に暮している
彼は本能的にアンノウンの出現を察知し
アギトに変身して戦う
さらにアギトは状況に応じ
最適な形態に変身することができるのだ

仮面ライダーになろうとする男
氷川 誠 G3-X
G3-Xとは 未知なる敵に対抗する為に
警視庁の小沢澄子が開発した戦闘強化服である

仮面ライダーになってしまった男
葦原涼 仮面ライダーギルス
ある日突然 変身能力を得る
だがギルスに変身するたびに
涼の体はダメージを受ける

未知なる敵アンノウン
科学では説明のつかない犯行を繰り返す
彼らの正体は未だ不明

3人の仮面ライダーの物語
今 時の流れが速まってゆく──


どこかのオフィス。
社員たちが次々に出かけ、2人の社員が机を並べて仕事をしている。
片方の社員が書類をめくった拍子に、彼の机の灰皿から灰が飛び、隣の社員の書類を汚す。
さらに彼のふかす煙草の紫煙が、隣の社員に絡む。

「ゴホ、ゴホッ。おい田辺くん、禁煙タイムだぞ? 煙草が吸いたかったら、喫煙所で頼む!」
「……すいません」

廊下の喫煙所にやってきた社員。
既に別の社員が煙草をふかしている。

「よぉ」
「おぅ、どうも」

オフィスに1人残された、文句を言っていた方の社員が、不機嫌そうに換気扇を回す。
再び書類をめくる。また灰が書類の上に落ちてくる。
灰をのけつつ、お茶を啜り、慌ててむせ込む。お茶にも灰が。
さらに書類に、大量の灰が降り落ちてくる。

「何だぁ〜!?」

ガラス窓に自分の顔が映る。
顔がみるみる、灰となって崩れ落ちている。


喫煙所。 さきほど一服しに来た社員の煙草、灰が今にも崩れそう。

「田辺、灰、落ちるよ」
「あぁ」
「ほら、崩れる、崩れる」


オフィス内。
先の灰化しつつある社員。手が、足がみるみる灰と化してゆく。

「く、崩れるぅ……」


後日。
灰化の事件のあったオフィスで、警察の現場検証が行なわれている。北條と河野の姿もある。

河野「おぅ、死体を見てくれよ。ひどいもんだ……頭から足の先まで、完全に灰になっちまってる。しかも現場に火の気の跡は全くない」
北條「人間技ではありませんね……不可能犯罪、アンノウンの仕業に間違いないでしょう。河野さん、被害者の身元は?」


警視庁アンノウン事件合同捜査会議。

河野「被害者は村野進43歳、新興商事に勤める会社員です。現場と死体の状況から、これはあり得べからざる犯行です」
上層「またアンノウンか……」
氷川「これがアンノウンの犯行だとすると、次にまた被害者の血縁関係者が狙われると思われますが」
河野「家族といえば、弟が1人。彼には既に護衛をつけてあります」
北條「ちょっといいでしょうか……G3-Xの装着員たる氷川主任に、お聞きしたいことがあるのですが」
氷川「何でしょう?」
北條「あなたは今までG3-Xを装着し、数々のアンノウンと戦ってきた……しかし、なぜ被害者は後を絶たないのか?」
氷川「それは……」
北條「そう。それはあなたたちG3ユニットが、常に後手に回っているからだ」
小沢「ちょっと! 何が言いたいのよ。はっきり言いなさい!」
北條「いや……あなたたちを責めるつもりはありませんよ。むしろ脆弱な装備で奮闘しているあなたたちに、拍手を送りたいくらいだ。しかし、いつまで際限のないモグラ叩きを続けるつもりですか!? どこかでその環を断ち切らなければならないとは思いませんか?」
小沢「その前に……あなたの舌を断ち切るべきじゃないかしら?」
上層「まぁ待ちたまえ」「我々としても北條主任の言うとおり、対処療法に終始している現状を、このまま座視するつもりはない」「要は、我々がアンノウンに対抗しうる戦力として、氷川主任のG3-Xに依存していることに限界があるのだ。近々、抜本的な解決プランを発表すべく検討している」
小沢「抜本的……解決?」


美杉家。
翔一、真魚、太一が食事中。食卓にはピーマンの野菜サラダが山盛り。

美杉「うん、うまい。さすがだな、翔一君。これならピーマンが苦手な私でも大丈夫だ」
翔一「そこらのピーマンとはピーマンが違いますからね。俺が愛情込めて育ててますから」
真魚「うん、ドレッシングもいいかも」
翔一「オリーブオイルに砂糖や酢を入れて作った翔一スペシャルです! 実は俺、ピーマンのサラダには思い出があってさ。俺が初めて食べた料理が、これなんだよね……」
太一「初めてって……産まれて初めて?」
翔一「じゃなくってさ、俺、去年海岸で倒れているところを発見されて、しばらく入院してたじゃない? 気がついてみると俺、記憶喪失で、何もおぼえてなくてさ。あの時はあまりのショックで何も食べる気になれなかったけど、国枝先生に無理矢理食べさせられたのが、このピーマンのサラダでさ」
真魚「国枝先生……?」
翔一「うん。病院でお世話になった先生なんだけど、バイク大好き人間でさ」
美杉「彼からの連絡を受けて、うちで翔一君を預かることになったんだ」
翔一「でも、どうしてるかなぁ……国枝先生」


街角を走るバイク。
運転しているのは、翔一が噂していた国枝先生。 後ろに老婆を乗せている。

国枝「お婆ちゃん……だから大雑把に言って、どっちなんですか?」
老婆「左……右! ……やっぱり左じゃ」
国枝「さっきも同じようなこと言ってたじゃないですかぁ……お婆ちゃん」


やがて、国枝が道端でバイクを止める。

国枝「お婆ちゃん、これ元の道じゃないですかぁ……もう……っとにもう、大雑把なんだから」
老婆「あ、そうだ!」
国枝「わかった?」
老婆「羊羹食うか?」
国枝「よ、羊羹ですか?」

老婆が鞄から芋羊羹を取り出す。

老婆「ほら」
国枝「わ、芋羊羹じゃないですか!」
老婆「嫌い?」
国枝「いや、大雑把に言って……大ちゅきです〜!」
老婆「あははっ!」
国枝「頂きま〜す!」




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