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氷川へきる先生作の漫画「ぱにぽに」のアニメ版、「ぱにぽにだっしゅ!」の第1話です。



●プロローグ●

月が画面上を上に向かって通り過ぎ、中央に地球が現れ、更にその下から太陽が顔を出す。

その上に「PANIPONI DASH」の文字が重なる。

男と、馬に乗った女が荒野を歩いている。その傍らで無数の信号機の残骸が点滅している。

男が馬を止め一人で歩いたその先に、右腕を高く上げ、左手に出席簿を持った白衣姿の少女の石像が建っている。

しばらくすると、その足元から土煙がたった。

男「オオ!」



レベッカ宮本…




男「オオ…!!」

感涙と歓喜にむせぶ男。



アメリカ人の父と日本人の母を持ち、史上最年少でアメリカ・マサチューセッツ工科大学を卒業。




少女の像が立ち上がる。

男「オォォォォォォォ!!」

男が歓喜の叫びをあげながら少女の像に走り寄る。



その後日本に帰国し高校教師となる。しかし…




少女の像は突然出席簿を開き右足を高く上げ、そして足の下まで来た男を踏み潰した。



彼女はまだ11歳である。




どこからとも泣くチャイムの音が鳴り、同時に像に色がつく。彼女がレベッカ宮本(以下、ベッキー※)だ。

(※「ベッキー」と呼ばれるようになるのはもっと先ですが、これで統一させて頂きます。)

ベッキー「はぁ〜…だりぃ…」

気だるい表情を浮かべるベッキー。その後突然空が曇りだした。



(TV本放送では次回の第2話までOPがなく、ここまでのシーンの合間にスタッフクレジットが表示されました。)



●Aパート●

白い宇宙船が地球の衛星軌道上付近にいる。



無限に広がる、大宇宙…。




そのブリッジで宇宙人の艦長と部下が会話している。

宇宙人部下(以下、部下)「艦長、マザーコンピュータが地球人のサンプルを指名しました」

宇宙人艦長(以下、艦長)「おお、そうか」

画面が日本、東京、住宅街に次々とズームインする。

艦長「何だ、宮本さん家か」

部下「お知り合いですか?」

艦長「いや、別に」

部下「コンピューターが、内部を…」

艦長「おお、ちびっ子だ」

モニターにベッキーの部屋が映し出された。ベッキーは寝ている。

部下「はい。この子が、めでたく地球人の生態データ検出サンプルに選ばれた、宮本さん家の次女…レベッカです」

艦長「ほぉ〜、かわいい寝顔…。だがしかし、君にはさりげなく地球の運命がかかっていたりするぞ。何となくがんばれよ、宮本さん」

親指を立てて決める艦長。

*


ベッキー「ん…う〜…ふぁ〜ぁ…」

目を覚ましたベッキー。すると部屋の隅から誰かの泣き声が聞こえてきた。見ると1匹のウサギの様な生き物…メソウサがいる。

メソウサ「シクシクシクシク…シクシクシクシク…」

メソウサがベッキーの方を向いた。

ベッキー「もっかい寝よ…」

無視して2度寝しようとするベッキー。

メソウサ「シクシクシク…シクシクシク…」

しかしメソウサは泣き止んでいなかった。



何処かで風見鶏が叫ぶ。

風見鶏「全国的に朝ぁ〜!!」



第一話 「寒に帷子 土用に布子」



桃月学園外観。

「マァァァホォォォォォォ!!!大変大変!!ニュースニュース!!オメガ大ニュース!!!」

早朝から凄まじいまでの叫び声を学校中に響かせて廊下を突っ走る片桐姫子(以下、姫子)。勢いよくドアを開けた衝撃でガラスが割れた。

姫子「……ぁああっ!!……」

しかし、教室内に入った途端誰が仕掛けたとも判らないバナナの皮に足を滑らせ、勢いよくコケた。ガラスに顔面から突っ込んで衝突、姫子は倒れた。

上原都(以下、都)が広い額を光らせ、勉強の邪魔と言わんばかりに姫子に怒鳴る。

【上原 都/MIYAKO UEHARA】 でこ…5 視力…2 霊感…4 ミステリーハンター…5

都「ちょっとぉ!朝からうるさいわよ!!」

桃瀬くるみ(以下、くるみ)がゼリードリンクを一気飲みしている。

くるみ「ん…ん…」

【桃瀬 くるみ/KURUMII MOMOSE】 地味…5 寒さ耐性…2 空回り…4 バスケットボール…5

くるみ「はぁ…。いつものことじゃない」

ミステリー雑誌を読んでいる橘玲(以下、玲)が姫子に呼びかける。

【橘 玲/REI TACHIBANA】 情報収集…5 スタイル…5 情け容赦…1 アルバイト…週4

玲「どうした姫子、チュパカブラでも出たか?」

姫子「マホマホマホマホマホ…」

ノビている姫子。頭上にはバナナの皮が。更に揺れ動くアホ毛の周りで「まほ」の2文字が回っている。そんな彼女を見ながら、6号さんこと鈴木さやか(以下、6号)も続けて一言。

【6号さん(鈴木さやか)/SAYAKA SUZUKI】 よいこ…5 便利度…5 ポーカーフェイス…4 鈴木さんナンバー…6

6号「大丈夫ですかぁ、姫子さん」

姫子、起き上がる。

【片桐 姫子/HIMEKO KATAGIRI】 テンション…オメガ マホ…マッハ アホ…ジェット 集中力…0

姫子「……大ニュースよぉぉっ!!」

途端にハイテンションを取り戻す姫子。

突然のニュースに驚きの声を上げる一同。(ここで場面が何者かが撒いている水で隠れた、校長とおぼしき人物の胸像に切り替わる)

玲「担任の○○○○(ピー)が辞めた?!」

姫子「うん、昨日だってさ。大ニュースでしょ?!」

姫子の後ろでスタッフらしき人物達が掃除をしたり黒板を水ぶきしている。

くるみ「なにそれ〜」

都「予告も無く突然辞めるなんて、無責任だわ!」

6号「理由は何なんですか?」

姫子「え?さぁ…そこまでは知らない〜」

都「ぅぇ…」

コケる都。

後ろの方の席にいる学級委員の一条さん(以下、一条)に突然スポットライトが当たる。

突然席を立った彼女に、5人が一斉に注目する。

一同「?」

【一条さん/ICHIJO SAN】 委員長パワー:? メガネ…5 ふしぎ…5 運動能力…4

一条「…出家です…」

都「出家?」

くるみ「え、マジで?」

(突然、水をかけられてのけぞっている胸像に場面が切り替わる)

一同「…」

一条「…出家しましょう…」

くるみ「言い方が変わった…」

玲「知らないな、あれは」

再び教室が明るくなると、隣のD組担任のジジイ先生(以下、ジジイ)が突然教壇に立っていた。

ジジイ「当たらずと言えども遠からずじゃ」

姫子「あ、ジジイだ」

ジジイ「教師をジジイ呼ばわりするな!」

くるみ「先生、ここC組ですよ」

6号「先生のクラスはお隣ですぅ」

ジジイ「わかっておる。今の件の説明に来たんじゃい。ほれ席に着けぇぃ!」

*


ジジイ「というわけで、皆さんの担任だった○○○○(ピー)先生は残念ながら昨日付けでお辞めになりました」

都「辞めた理由は何ですか?」

ジジイ「○○○○(ピー)」

一同「えぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

ジジイ「でも本当はフフフフ…フヘヘヘヘヘ…ウハハハハハハ…」

ジジイの笑い声がどんどん怪しくなっていく。

一同「…」

玲「裏で何が起こってるんだ、この学校…」

ジジイ「え〜、そこで急遽、今日から新しい先生が来ることになりました」

一同「?」

ジジイが左を向くと、生徒達もつられてその方向に目を向ける。 しばしの沈黙の後…

ジジイ「まだ来ていません」

コケる一同。

玲「だったら振り向くな!紛らわしい!!」

くるみ「どんな先生ですか〜?」

ジジイ「フム、宮本先生といってな。フゥ」

カバンから何かを取り出したジジイ。

一同「?」

ジジイ「今日はしゃけ弁じゃ」

玲「あんたの弁当はいいから!」

姫子「あたししゃけ弁大好き〜!!…あ、しゃけ弁とヤケ弁って似てるよね!」

玲「ヤケ弁って何だよ」

姫子「マホ?」

くるみ「宮本先生の写真とか、無いんですかぁ?」

ジジイ「ああ、あるよ」

姫子「あ〜!見せて見せて!!オメガ見たぁぁぁぁい!!見たい見たい〜見たい〜見たい〜見たい〜見たい見たい〜」

玲「自分の写真を出すなよ」

ジジイがカバンから写真を出そうとしている。しかし突然手を止めて…

ジジイ「…チィッ」

玲「『チィッ』じゃない!!早く用を済ませて自分のクラスへ帰れっ!!」

ジジイ「これが…レベッカ宮本先生じゃっ!!」

ジジイの出した写真は何故か背後に幽霊等の落書きがあったり、更に黒枠に黒帯とまるで遺影の様だった。

都「いきなり殺すなっ!!」

玲「黒いの取れっ!!黒いの!!」

ジジイ「……チィッ」

くるみ「でも、写真は本物なんですよね」

ジジイ、額の黒帯を取る。

ジジイ「あ〜残念ながらな」

玲「『残念ながら』って何だよ」

一同「…」

くるみ「あ〜、外人だよ!」

都「しかも金髪!」

姫子「つかちびっ子だよ!ちびっ子!オメガかわいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

ベッキーの姿に驚き、はしゃぐ一同。

*


どこかのバス停。寝坊したベッキーと、何故かついてきたメソウサがバスを待っている。

ベッキー「初日から寝過ごした…」

【レベッカ 宮本/REBECCA MIYAMOTO】 天才パワー…5 ちびっ子パワー…4 体力…1 我慢強さ…2

メソウサ「何度も起こしたのに…」

ベッキー「…ん?」

突然自分に声をかけた何者かに目をやるベッキー。メソウサのことはここまで見て見ぬフリをしていた様だ(?)。

【メソウサ/MESOUSA】 なぞ…5 幸…1 打たれ強さ…5 美味しさ…2

メソウサ「す、すみません…。起こし方が悪かったですね…」

ベッキー「ふぁぁぁ〜ぁ…あぁ…」

メソウサ「あ、あの…カバン持ちましょうか?」

ベッキー「ん?ホントに?」

メソウサ「はぁぁぁぁぁ……」

顔を赤らめるメソウサ。…が、カバンを持った瞬間手から滑って落ちてしまう。

メソウサ「はぁぁぁぁぁ……も、持てない…」

涙を流して落胆するメソウサ。

ベッキー「ふぁぁぁ〜…」

バスが来た。

*


一方、ジジイが去ったC組では…

玲「はい、それでは自習時間を利用して、我らがちびっ子先生について話し合いたいと思います」

姫子「よっ、いいぞ玲ちゃん!!6号さんも頑張れ〜!!」

都「バカバカしい…」

玲「何だよ都」

都「話し合ってどうすんのよ!」

姫子「え〜!?だってちびっ子だよ!」

都「その「だって」の意味が判らない!」

姫子「ぇ?」

玲「いいから勉強蟲(むし)は黙って勉強してろ!」

都「『蟲』って言うな!!」

姫子「へぇ〜?都ちゃん蟲だったんだ!気付かなかっ…」

都「ちがぁぁぁう!!!」

姫子「マホッ」

都「大体、何で玲が仕切ってんのよ!そういうクラス単位のことやるときは、学級委員でしょ!?学級委員は一条さんでしょ!?ね〜一条さん?」

全てを一条に一任しようとする都。席を立った一条はお茶を飲んで一礼した。

都「…」

一条「…うふっ」

一条、もう一口お茶を飲んで笑う。

都「……」

玲「はい。それでは進めます」

都「☆%$#@*〜…」

しぼむ都。

*


一方、ベッキー達を乗せたバスは海岸に停まった。

ベッキー「…海だね」

メソウサ「はい」

ベッキー「バス間違えたね」

メソウサ「はい。ぁぁ…」

ベッキー「帰りたくなってきた…」

波しぶきがあがる。

*


再びC組。写真に何者かが落書きした跡がある。 メソウサ、一条が転がしたボウリングの球に当たって吹っ飛ぶ

玲「では話し合うネタも尽きたので、レベッカ先生のあだ名でも決めましょう」

姫子「は〜はいはい〜!!」

玲「期待はしないが…はい、姫子」

姫子「レベ子!」

自信満々に言う姫子。アホ毛が花に変わっている。

玲「おかしい」

姫子「じゃあ、レぇベぇ子ぉ!!(英語っぽく発音)」

玲「…意味が判らん」

都「むこうだと、ステファニーならステフ、キャサリンはキャシーって言うわよ」

くるみ「なんだかんだ言って参加してるし」

姫子「ステフにキャシーか…。なるほど判った。…は〜い!!」

玲「勝手にどうぞ」

姫子「レッベー」

玲「帰れ!」

唐突にスポットライトの当たった一条が立った。

玲「…一条さん?」

一条「…」

一同「…」

お互い、しばしの沈黙の後…一条は着席した。

都「立っただけかい」

姫子「レヴェシー!!」

玲「だから早く帰れ!!」

(また場面が変わって)首を掻いている胸像。顔の下からオオサンショウウオが落ちてきた。

オオサンショウウオ「ウッ」

*


その頃、ベッキー達は未だに迷っていた。

ベッキー「ここどこぉ?」

メソウサ「森ですねぇ…」

ベッキー「何で…?」

メソウサ「さぁ…」

困っているベッキー。ふと正面を見ると…

ベッキー「…?」

目の前に自販機が。

ベッキー「…ま、ジュースでも飲んで考えるか」

メソウサ「うんうん」

ベッキー「あ〜あ何やってんだかな〜。…わ!温(ぬる)っ!」

手に取った缶ジュースは、何だか生温かった。

メソウサ「まだ入れたばっかりで冷えてなかったんじゃないですか?」

ベッキー「ただでさえイライラしてるってのにぃ…なめんなぁぁぁぁ!!!」

色々あって怒りが溜まっていたベッキーは全力で自販機を蹴飛ばした。

メソウサ「#☆$*!!」

衝撃で倒れるメソウサ。すると突然自販機が開く。

ベッキー・メソウサ「!?」

その中には沢山の缶ジュースを抱きかかえたネコが座り込んでいた。ネコ神様(以下、神様)だ 。

神様「…体温ですにゃ」

ベッキー「…誰?」

神様「神様ですにゃ」

ベッキー「…」

脳裏に選択肢が浮かぶ。下から1.ねこ? 2.神様 3.食料(このうち1・2に間違いの「ピン」の印が付く) 。

神様「お近づきにもう一本…」

無視して去っていくベッキー達。

神様「あ、閉めていってくださいにゃ…」

ベッキー「知るか」

缶を投げ捨てた。が、捨てた筈の缶が空から降ってきてメソウサに当たる。

メソウサ「ふぎっ」

すると草むらからお茶を持ったからくり人形が現れる。

ベッキー・メソウサ「!?」

人形の口から紙が勢いよく飛び出して湯呑みを真っ二つに切った。紙にはこう書かれている。

『お迎えにあがりました レベッカ宮本先生』

ベッキー「あ…」

人形の背中から扇子が現れ、開くと桃月学園の校章が描かれていた。更に電球が出て光りだした。

周りで風俗店風の看板が立ち、ネオンサインが派手に光っている。

ベッキー「あ、桃月学園の。よくここが判ったね」

人形の口から出た紙が勢いよく飛び出してメソウサの頭に突き刺さり、続けて新しい紙が出てきた。今度はこう書かれている。

『桃月学園をナメて貰っては困ります。 by 校長』

更に人形の首が上空に向けて発射され…

ベッキー「?」

宇宙まで飛んでいった。横から出てきた人工衛星にも桃月学園の校章が描かれている。

その後、ベッキー達は「広島県警」と書かれたパトカー(の様な桃月学園からの迎えの車)に乗せられた。画面手前の看板に「下井草森林公園」と書かれている。

ベッキーが後部座席に乗り、メソウサは後ろのトランクの上に縛りつけられている。

メソウサ「ふぇぇぇぇ…」

そして車が向かった先は桃月学園。

職員室でくつろいでいる教師2人。そのうちの一人が向こうから聞こえてきたサイレンの音に振り返ると…パトカー、もといベッキーを乗せた車が職員室に突っ込んできた。

教師一同「うぁぁぁぁぁ!!」

宇宙から見た地球の、日本の辺りで爆煙が上がる。

*


着いたとはいえ、浮かない顔のベッキーにメソウサが声をかける。

メソウサ「やっと着きましたね」

ベッキー「あぁ…」

メソウサ「あれ、どうしました?」

ベッキー「初日から遅刻じゃ、バカにされるだろうなぁ…」

メソウサ「じゃあ帰りますか?」

ベッキー「今更そうもいかないって」

ベッキー、意を決して立ち上がる。そして、そっと教室を覗く。

都・姫子・くるみ・玲・6号「?」

5人がベッキーを見る。

ベッキー「ひっ…」

緊張してまた廊下へ。

メソウサ「帰りますか?」

ベッキー「ぅぅ…ぅあ〜もう!!」

ベッキーはやけっぱちになってドアを思いっきり開き、ふと様子を見たら5人と目が合った。少々の沈黙の後…

姫子「あはっ」

他の4人も笑う。

ベッキー「ひっ…」

都・姫子・くるみ・玲・6号「Hello!ベッキー!!」

緊張しっ放しのベッキーを満面の笑顔で出迎える5人。しかし緊張に耐えられず…

ベッキー「ふぇっ!」

突然画面が白黒になって、

ベッキー「…CM〜!!」



【アイキャッチ】

玲「ベッキー!」

くるみ「ベッキー!」

姫子「ベッキー!」

ベッキー「ベッキーって言うなっ!!」



●Bパート●

ベッキー「ぅ…」

落書きされた自分の写真を見て唖然とするベッキー。都・くるみ・姫子の3人と得体の知れない触手が黒板に落書きをしている。

が、ベッキーの様子を見た途端落書きをやめた。

ベッキー「…?」

後ろを振り返るベッキー。

ベッキー「…帰りたぁぁぁい!!」

くるみ「ねえねえ、あの後ろにいるの何だと思う?」

玲「は?」

くるみ「あれ、ウサギなのかなぁ?」

玲「まあ、その類だと思うけど」

玲、教卓にしがみついているメソウサを棒でつつく。

くるみ「食べられるのかなぁ?」

メソウサの両耳を引っつかんで持ち上げているくるみ。

メソウサ「きゃううぅぅぅぅぅ…」

玲「試してみれば?」

震えっぱなしだったベッキーが、やっと前を向いた。

ベッキー「えっと…それでは遅くなりましたが…出席をとります。…その前に…その前に…」

極度の緊張と遅刻に対する罪悪感からどんどん萎縮していくベッキー。

姫子「マホ?」

ベッキー「今日は遅刻して…ごめんなさい」

たどたどしく謝るベッキー。

姫子「マホォォォォォ!!オメガかわいいぃぃぃぃぃぃ!!!」

ベッキー「オメガ?」

姫子「は〜い!ちびっ子先生にしつも〜ん!!」

ベッキー「ちびっ子言うなっ!!」

姫子「ねえ?何でハーフなの?」

ベッキー「は〜?」

玲「いきなり答えにくい質問だな」

くるみ「ねえそれより、生まれたのはアメリカ?日本?」

姫子「しゃけ弁好き?」

都「教員免許は正規に取得できたの?」

一条「学級委員の一条です」

一条、またお茶を飲む。

6号「好きな食べ物は何ですか?」

姫子「ヤケ弁好き?」

一条「学級委員の一条、かも知れません」

姫子「は、は、しゃけ弁!」

姫子、頭上から離れて飛んでいった「マホ」の2文字を追っている。

『どこがどう天才?』

『その服どこで買ったの(※途中で消えるのでここまで)』

『なんで金髪?』

『今日はいい天気〜』

『お母さんは綺麗?』

『思い浮かばない…orz』

『しゃけ弁食べた?』

『夕飯はそのうさ(※途中で消えるのでここまで)』

容赦も節操もない生徒たちの質問の嵐がベッキーを襲う。一条、↑の質問郡と一緒に流れてきた「マホ」を掴んで投げて姫子に直撃。

その騒動が他のクラスにも響いていた。

A組。

頭に氷のうを乗せて居眠りしていた担任の五十嵐先生が目を覚ました。

五十嵐先生「…ふぁ、何だ?」

このクラスの生徒の双子姉妹、柏木優奈(妹)が優麻(姉)をうちわで扇いでいる。

顔写真は順に桃瀬修(くるみの双子の兄)、優麻、優奈、来栖柚子。

B組にも。

早乙女先生「C組か、元気だなぁ」

右からズーラ、秋山乙女、白鳥鈴音、綿貫響、ヤンキー。

そして、D組にまで…。

左上側で芹沢茜、南条操、犬神つるぎ、宮田晶、佐藤千夏、北嶋由香、磯辺、とそれぞれの顔が順に回転しながら変わっていく。

右ではベホイミの頭上で、3機の戦闘機が合体変形したロボットのシルエットが彼女自身(?)のシルエットになる映画が(彼女自身が映写機)銀幕に映し出されている。

左下から最後に「1−D」。

ベホイミ「到着したッスね!噂の先生!!見に行くッスよぉ!!」

生徒達はベホイミに誘われ、C組に見に行こうとする。が、

ジジイ「フン…!」

ギロチンのイメージが挿入される。

ジジイ「動くな!動いたら夜な夜な枕元に立つ!!」

ジジイの注意と同時に、花瓶に挿された枝から1枚の葉が(そこに何もないのに)切り落とされ、落ちる。

注意を恐れ、生徒達は一斉に席に戻る。

ジジイ「フン、臆病者共め…!」

*


再びC組。質問攻めどころか自分を完全に無視してはしゃぐ生徒たちに、とうとうベッキーも我慢の限界を超えてしまった。

強く握って折れたチョークが飛んで、画面左下で沸騰したやかんを弾き飛ばした。

彼女の様子に気付いていない姫子・都・一条・6号・くるみ・玲。すると…

ベッキー「こらやかましいぞ虫ケラ共ォォォォォォォォ!!!ガキだと思ってなめるなァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

ベッキーの怒りが大爆発。教卓に両手を叩きつけ、絶叫。と共に教室中に強風が吹き荒れる。

椅子に掴まっている吹っ飛ばされそうな姫子、前に伏している6号、耳を塞ぐ都、傘でしのぐ玲、後ろに倒れそうなくるみ、全く動じていない一条。

関係ないものまで吹っ飛ばされている。

一同「…」

ベッキー「質問するのはいいけどなぁ、もう少し頭使って聞いて来い。お前等のはどれも短絡的過ぎるんだよ!」

歩いている何者かの足元。何故か2人(実は玲)。

ベッキー「この下等動物共!!」

ベッキー、中指を立てて生徒を挑発。

一同「はぁ…」

ベッキー「ヘン!」

画面左上に悪魔の様なちびベッキーが現れ、ほんの少し遅れてちび玲が出てきた。ちび玲は突然野球のバットを出し、ボールをノックしてちびベッキーに直撃。

同時にベッキーの脳天に玲の拳骨が炸裂。

ベッキー「ふぇ」

玲「言うに事欠いて何てことを!」

ベッキー「ぅ…ぅ…」

くるみ「あ、泣いた」

姫子「玲ちゃんだめだよ泣かせちゃ!相手はちびっ子なんだからぁ!!」

玲「ちびっ子とはいえ教師は教師だ!生徒に対して言っていいことと悪いことがある!ワールドレベルの天才だかなんだか知らないけど、場のルールは…」

後ろで猫が黒板にしがみついている。

都、玲にベッキーを見るように合図する。ベッキーは教室隅のカーテンにしがみついて泣いていた。

玲「ちゃんと…」

ベッキー「……」

ベッキーを見てメソウサも一緒に泣く。

メソウサ「…シクシク…」

玲「普通にちびっ子か…」

ベッキー「何すんだよぉ!!先生だぞぉ!!」

玲「やれやれ…」

ベッキー「はう!はうう!はう!はう!!」

子犬の様に吠え立てるベッキー。

玲「わかったよ、私が言いすぎたよ。もうあんなこと言わないからさ、だからそんなとこにいないで、出ておいで」

玲、ベッキーを説得しようとする。

ベッキー「…」

玲「もう怒ってないから」

ベッキー「…」

玲「大丈夫」

ベッキー「…ホントに?」

玲「ホントよ〜」

ベッキー「…」

玲「うふふふふふふ〜」

満面の笑顔。

くるみ「あ、出てきた」

玲「みんな珍しいモンだから、色々聞きたいのよ。それは判るよね?」

ベッキー「うん、うん」

玲「よし。そしたら、一人ずつ順番に質問を聞いていこう。嫌な質問には答えなくてよし。OK?」

ベッキー「…OK」

先程まで泣きっ面だったベッキーに、笑顔が戻ってくる。

玲「うん。じゃ、まず私からね。先生ってアメリカの大学出てるんだよね。何て大学?」

しゃがんでいた玲が立つ。

ベッキー「…MIT」

玲「MIT…へぇ。それって何の略なの?」

ベッキー「マサチューセッチュ工科…あれ?…マサチューチェッチュこ…ま、マチャチューチェッチュ…まちゃちゅーちゅちゅっちゅ…ちゅ…はっ?」

年齢の所為なのかうまく発音できないベッキー。振り返ると、玲が怪しい笑みを浮かべている。

玲「ぷっ…ふふふふふふふふ…!」

ベッキー「はぁ?…?」

一同もクスクスと笑う。するとベッキーはまた泣いてしまった。

姫子「きゃはははっ、オメガかわいぃ〜!!」

ベッキー「うぇぇぇぇぇん!!!」

その場から走り去り、またカーテンにしがみつくベッキー。怯えた表情の後…

ベッキー「べー!先生だぞ!!バカぁ〜!!」

ベッキー、カーテンの中にうずくまる。

都「あの質問、わざとでしょ?」

玲「愛情表現よ」

都「悪魔…」

姫子「しょうがないな〜!じゃやっぱりここは私だね!ほ〜らベッキー出ておいで〜!一緒に蜂の巣つついて遊ぼ〜!」

カーテンから顔だけ出して、ベッキーが一言。

ベッキー「バカだろお前」

姫子「ガァァァァァン」

玲「蜂の巣はないわな」

くるみ「確かに」

6号「これは長期戦になりそうですね〜」

一条「じゃあ、これで…」

一条が串団子の乗った皿を持って間に入る。

くるみ「あ、お団子だ」

都「なるほど、それはイケるかも」

姫子「いいもの持ってるじゃない、一条さん」

一条「…はい。これでイチコロです」

笑顔の一条。

姫子「…え…」

玲「まさか…」

後ずさる都と6号。

くるみ「一条さん…それって…」

玲が教卓の上のメガホンを取り、耳に当てて一条のひそひそ声を聞き取る。

一条「こそ…こそこそ…」

玲「…緊急撤去!」

くるみと6号、同時にうなずき一条を連れて画面外へ。団子には毒が入っていた様だ。前をスタッフが通り過ぎる。

スタッフ「お疲れーっす」

一条「あ〜れ〜」

都「何を考えてるのよ。学級委員のクセに」

玲「学級委員は…関係ないと思うな」

…とそのとき。スキを見つけたのかベッキーが教室を飛び出してしまった。

ベッキー「…ふぎっ!」

姫子・玲・都:「?」

少々混乱する3人。

玲「あ?」

姫子「あ、ベッキー!」

都「あ〜らら、出て行っちゃった」

姫子「みんなでいじめるからだよ」

都「このままじゃまずいよ、どうする?」

メソウサ「シクシクシクシクシクシクシク…」

3人の会話を他所に、メソウサが教室の隅で泣いている。

玲「う〜ん…」

メソウサ「どうやら既に僕は、あの人達の中ではいないことになってます…」

退場するメソウサ。何故か全身に操り糸がくっついている。

*


宇宙船内。モニターに映るC組の見下ろし図。

部下「いやはや、地球人は難しいですなぁ…艦長?」

艦長は寝ていた。

部下「あの、艦長?」

部下が艦長の顔の前で手を振る。

艦長「…んご〜…んん、あ、な、何?何何?寝てないよ!全然寝てなぁぁぁぁい!!」

部下「…もう少しマシな言い訳してください」

モニターにベホイミの絵が出る。

*


空。雲の上に神様がいる。屋上に仰向けに寝そべっているベッキー。

姫子「マッホ?」

くるみ「泣いてる?」

都「泣いてはいないみたいよ」

姫子「マホォォォォ!ベッキーかわいそぉぉぉぉ!!」

姫子はベッキーを心配して大泣きしている。曲がりくねっていた頭のアホ毛が真っ直ぐになり虹に変わる。

6号「こちらは泣きまくりです…」

玲「それは放っとけ」

都「何を考えているんだろう?」

くるみ「いじめられたから、もう辞めちゃおっかな〜、とか?」

姫子「え〜!それダメ!!」

玲「私も、今辞められると…ちと気分悪いなぁ」

6号「何か解決策はないものでしょうか?」

一条「一挙解決…」

また毒団子を出す一条。

玲「撤去!」

くるみと6号、一条を抱えて画面外へ。

都「あ…ねえ!状況に変化あり!」

ベッキーの傍にメソウサが。

玲「ベッキーのウサギだ」

6号「何か話しかけてますね」

都「説得?…ベッキー反応なし…終了…」

すぐに去っていってしまう。

玲「何か物悲しい風景だなぁ」

ベッキー、起き上がる。後ろの雲の上では神様が釣りをしている。

ベッキー「……よし!」

神様「…げふ」

神様、釣り上げた魚を丸呑み。傍に「大漁(ハートマーク)」の立て札が。

都「あ、起きた」

6号「辞めるの、決めちゃったんでしょうか?」

姫子「え〜!やだ〜!!」

都「あ、こっち来る!」

玲「撤収!」

玲の号令で、全員教室へ退却。が、姫子はまだ残っていた。

スタッフ(の様な人)「お疲れでした〜!…あ!」

通り過ぎたスタッフの後頭部にメガホンが当たる。

姫子「ベッキ〜!!姫子ちゃんの腕に飛び込んでおいで〜!!」

ベッキーに走り寄る姫子。しかし…

玲「はい!どうどうどうどう…」

玲、姫子の鼻をつまんで引っ張りつつ退散。

姫子「まほまほ…まほまほまほ…」

*


教室でベッキーを心配するくるみ・都・玲・姫子。

くるみ「ベッキー、戻ってこないね」

都「どこ行っちゃったんだろう…もしかして、辞めるって言いに、校長室?」

玲「それは宜しくないな…」

すると廊下から6号が走ってきた。

6号「来ました!」

一同「!」

*


ベッキー「…」

ベッキーが生徒達を見ていると、突然誰かが手を挙げた。

ベッキー「…ん?」

玲「あのさぁ…さっきは、悪かったよ。謝る。つい、調子に乗っちゃってさ。ごめん!」

ベッキー「…え?」

都「笑ったりして、ごめんね」

くるみ「ごめん、ベッキー」

6号「ごめんなさい」

ベッキー「…」

姫子「だから辞めるとか言わないで!お願いベッキー!!」

ベッキー「あ?」

姫子「うぅぅぅぅぅぅぅぅ…」

ベッキー「辞める?…何で?」

都・玲・くるみ・6号「へ?」

みんなベッキーが辞めてしまうのかと思っていたが、勘違いだった。

ベッキー「そんなことより!」

都・玲・くるみ・6号「?」

ベッキー「もう子供扱いはさせないぞ!」

隣で唖然としている姫子。4人も同様だ。

都・玲・くるみ・6号「?」

ベッキー「私はもう子供じゃないんだ!コーラだって飲めるんだからぁ!!見てろ!」

どこからともなくコーラの缶を出して、一気飲みをはじめたベッキー。

ベッキー「……んぐ…んぐ…んぐ…んぐ………げふ〜…」

呆然と見つめる一同を前に、コーラを全部飲み干した。

ベッキー「ど…ど…どうだぁぁぁ!!!…いでで」

一気飲みを終えてガッツポーズするベッキーに姫子が抱きついて頬擦りする。感激の余り姫子は涙目だ。

姫子「マキシマムかわいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

ベッキー「うわっ!こら!離せ!先生だぞ〜!!」

姫子「先生〜!!ちびっ子先生〜!!」

ベッキー「…離せってば!こらぁ〜!!」

姫子「マ〜ホ〜!!」

都「え〜と…一件落着?」

玲「かな?」

6号「ふぅ…」

くるみ「やれやれ…」

姫子「マホ〜!マホ〜!マホ〜!!」

ベッキー「離せ!!この下等動物!!離せ!!触るなぁぁぁ!!…ギャピ〜!!」

*


一方その頃…。

ウサギ小屋でいじけているメソウサ。それを草陰から神様が覗いている。中でエサを食べているウサギ達。

と、そこに一条が歩み寄る。

一条「大丈夫ですか?」

メソウサ「ええ…まぁ…」

一条「気を落とさないでくださいね」

メソウサ「すみません…」

一条「心ばかりですが…」

一条、(毒入り)団子を差し出す。

メソウサ「わ…何から何までありがとうございます…。丁度お腹が空いてたんです…」

一条「おいしいですよ…」

*


ベッキー「はい。それでは最後になりましたが、1年C組の出席を取りま〜す!!上原都!」

都「はい」

ベッキー「鈴木さやか!」

6号「はい」

ベッキー「片桐姫子!」

姫子「マホ〜!」

ベッキー「橘玲!」

玲「はい」

ベッキー「桃瀬くるみ!」

くるみ「は〜い!」

ベッキーの呼びかけに返事するそれぞれの生徒の絵が次々と出てくる。

ベッキー「んで、残りその他!」

メソウサ、神様、磯辺(顔から下だけ)、伴。(関係ない人がいるのでは、というツッコミはなしで)

伴「アウト〜!!」

玲「おいおい」

夕日に染まった桃月学園の真上からの見下ろし図。屋上の床には大きく明朝体で「ぱにぽに」と描かれている。

ベッキー「ほんじゃ今日はこれまで!」

べッキー、手拍子を一つ。続けて画面いっぱいに決めポーズ。

ベッキー「また明日な!愚か者諸君!!」

…一方、メソウサは毒団子にあたって倒れていた。



エンディングの後、Cパートへ。



●Cパート●

何かの秘密基地の様な場所。金色のマシンがリフトに乗って上昇している。

一方、授業を終えて職員室に戻ろうとするベッキー。すると…

ベッキー「ふぁぁあぁぁ…終わった終わっ…あっ!…地震か?…!!?」

窓の外には巨大な金色のライオン型ロボットが。咆哮するライオンロボ。

ベッキー「…ロボ!?」

その頭に立つ男(校長?)が高笑いする。

謎の男「ぅわははははははは!!!」



つづく




【次回予告】

予告ではハイライトシーンがなく、代わりに氷川先生自身の描き下ろしによる「氷川へきる劇場」という4コマ漫画をやっています。

ナレーターはベッキー。



【1コマ目:一条「アニメ1話記念で手品をします」姫子「さっすが一条さん、ステキ(>。<)」 】

1年C組担任の、レベッカ宮本だ。

【2コマ目:(鉛筆を取り出した一条)】

メガネザルのあのでっかい目玉は、脳みそよりおっきいんだって。

【3コマ目:一条「はい(鉛筆を曲げている)」姫子「アニメなのにダイナシだよ一条さん(´Д`)】

知ってたか?

【黒バックに白地で「第二話『紅は園生に植えても隠れなし』】

因みに、私のメガネはダテじゃっ!次回も絶対見ろよ。おやすみ!

【4コマ目:(上昇していく一条)姫子「あー一条さんどこ行くのー??」 】


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