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プレイボール第1巻

野球かサッカーか!?の巻



都心を西にのぞみ、荒川がきょうも重く流れる………


東京湾から北にのびるその荒川の左手におびただしい数のエントツが立ちならぶ工場地帯がある…………


おわゆるゼロメートル地帯である


この物語はそんな工場や小さな家いえのひしめきあった下町からはじまる



雨の中、谷口タカオが登校途中自転車に乗って走っていると中学時代の後輩に出会う>>
 後輩「谷口さん!」
 谷口「やあ…… どうだみんな元気でやってるか」
 後輩「ええなんとか…  そんなことより谷口さん 指どうなんですか?」
 谷口「だいぶよくなってんだ じゃあがんばれよ!」  >>谷口走り去る
 後輩「……………………」

放課後、雨もあがり、谷口が野球部の練習をフェンス越しに見ている>>
 部員A「見ろよ、あいつまた来てるぜ よっぽど野球が好きなんだなあ」
 部員B「なんだおまえやつをしらないのか?」
 部員C「やつは谷口ってな 全国大会で優勝した墨谷ニ中でキャプテンをやってたんだぞ」
 部員A「あ… そうか どうりでどこかで見た顔だと思ったよ!じゃなんでうちの部にはいんねえんだよ?」
 部員C「てめえはなんにも知らないんだなあ」
 部員B「やつは全国大会で指を骨折したのに無理をしちゃってよ ゆびがまがったきりでボールがなげられねえのよ」
 部員A「へーっ そいでもっていつもああしてみてるのか かわいそうにな………しかしおしい… もし指がなんともなきゃあ…………」

部員Aが谷口の近づく>>
 部員A「きみ谷口くんだってなあ!」
 谷口「は…はあ」
 部員A「いまはじめて聞いたんだけど指がまがっちゃったんだって!」
 谷口「え…ええ」
 部員A「どれ、どうなっちゃったの? ちょっとみせて」

谷口が指を見せる>>
 谷口「これ以上のびないんです」
 部員A「これじゃあな……… 気の毒に……だけどさ もしかしたらこの指で魔球なんか投げられたりっしてさ!」
 部員D「山本(部員A)バッティングの準備をしとかないかっ!!」

部員A(山本)がバッティング練習に戻る>>
 部員D「気にせんでくれ 別に悪気があるやつじゃないんだ」
 谷口「い…いえそんなこと………」

部員A,B,Cがヒソヒソ話をしている>>
 部員C「バカが」
 部員B「余計なこといいやがって」

チャイムが鳴る>>
 谷口「も…もう帰らなくちゃ…」

野球部の隣のグランドでサッカー部が練習をしている>>
 サッカー部員A「またやっこさん野球部を見てたんだな!」
 サッカー部員B「やっぱりあきらめられねえんだよ」

突然サッカー部のキャプテンが立ち止まり、谷口に近づく>>
 キャプテン「谷口くん」
 谷口「は…はあ?」
 キャプテン「サッカー部の相木というものだ」
 谷口「あの――なにか……?」
 キャプテン「噂できみのことは知っとる 野球にうちこんできたきみだ 野球が忘れられんのも無理はない しかしできんものはしかたがないんだしいいかげんに諦めろ いつまでもフェンスにしがみついてるのなんかみちゃいられんぞ」
 谷口「諦めてます でもぼくは野球を見てるのがすきなんです」
 キャプテン「しかし毎日毎日野球見物でからだがなまらんか?」
 谷口「ええ そりゃあ……」
 キャプテン「どうだうちへはいらんか? なにも野球だけがスポーツじゃなかろう!」
 谷口「でも……ぼくサッカーは全然知らないし…………」
 キャプテン「最初は誰でもそうさ」

ほかのサッカー部員達が話をしている>>
 部員「いったいなにをはなしてんだ?」
 キャプテン「誰が休めといった!!」
 部員「い…いけね」

 キャプテン「ちょっと部室にこんか?」
 谷口「は…はあ」
 部員「あれ部室に入っちゃった……」

野球部員達が谷口達について話している>>
 部員D「おいサッカー部に勧誘しようってのかね そういやサッカーは指が曲がってても関係ねえからな」
 部員B「そりゃいい考えだ」
 部員C「だけど…あれだけ野球につかれたやつが すぐサッカー部に入部するとは思えんがな」
 野球部キャプテン「やいやいてめえら練習中になにやってんだ!!」
 部員B「例の谷口がサッカー部のキャプテンに勧誘されてるようなんス」
 野球部キャプテン「どれどれ どこ?」

 サッカー部員A「おそいな なにやってんだろね?」
 サッカー部員B「おいランニング続けてないとぶっ飛ばされるぞ!」
 サッカー部員C「お…おい」

サッカー部の部室からユニフォームを着た谷口とキャプテンが出てくる>>
 キャプテン「なかなか似合うじゃないか」
 部員C「やる気だぜあいつ」
 野球部キャプテン「これで気がねなく野球ができるぜ まったく」

 キャプテン「今日からうちの部に入部することになった谷口くんだ 彼が中学時代野球でならしたことは諸君を噂で知っとるだろう しかしサッカーに関してはズブの素人だ みんなめんどう見てやってくれ」
 谷口「よろしくお願いします」  >>拍手が起こる
 部員「一緒に頑張ろうぜ」
 キャプテン「よし みんな練習をつづけろ!」

パスの練習>>
 キャプテン「どうだおまえもやってみんか?」
 谷口「え…ええ……」
 キャプテン「小山 谷口の相手をしてやれ さあ体でうけて足でかえせばいいんだ」
 谷口「は…はいっ」

 小山「さ…いくぞ」

胸でトラップしようとするが横に逸らしてしまう>>
 谷口「い…いけね そらっ」  >>谷口ボールを蹴る

蹴ったボールが右に逸れる>>
 谷口「す…すみません」
 キャプテン「いいんだ いまに慣れるさ」
 小山「そらもういっちょ!」  >>小山ボールを蹴る

谷口がボールをうまく胸でトラップする>>
 小山「そうだその調子だ!」  >>谷口がボールを蹴り返す
 谷口「すいません」  >>小山がボールを蹴り返す

小山が蹴ったボールが谷口の左に逸れる。しかし谷口はこのボールに反応し、地面につく前にトラップし蹴り返す>>
 谷口「い…いけねまたやっちゃった」
 小山「………………」

小山がさっきの反応を見て今度は谷口の右に蹴る。しかし谷口はこれにも反応して胸でトラップし蹴り返す>>
 小山「キックはなっちゃいないが さすが野球でならしただけあってボールを追うカンは抜群だ こいつはどうだ!」
谷口の後方にボールを蹴る>>
谷口はこのボールにも反応し蹴り返す>>
 キャプテン「これはひょっとすると………」





野球かサッカーかの!?の巻 終わり

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