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HELLSING

 (月夜に佇むひとりの男。なにやら通信を受けている)

?「こちらヘルシング!! こちらヘルシング本部 状況を説明しろ!!アーカード」
アーカード「ん・・ああスマン 月を見てた」
?「しっかりしてくれアーカード!! お前だけが頼りなんだぞ!!」
アーカード「わかってる あんまりにいい夜だったから」



第一話 VAMPIRE HUNTER



「英国北部の小村 チェーダース村 6月14日 水曜日」
「この村の小さな教会に一人の牧師がやってきた」

 (ゆっくりと坂を上がる牧師。不吉な笑みを浮かべて)

「奇妙な牧師だった」
「昼間ほとんど外に出ることは無かった いつもうす暗い礼拝堂にいた」
「たまに出る事があったとしてもその日は雨やくもり そして夜間だけだった」
「外に行く時はフード付きの修道服を目深く着込んでしまう」
「まるで太陽を嫌っているかのように」

 (ドアの影から顔をのぞかせ怪しく笑う牧師)

「最初の事件が起きたのは一週間後のことだった」
「となり村につかいに行った青年が次の日になっても帰ってこなかった」

 (血のついた青年のものと思しき靴が転がっている)

「その後も事件は続いた」
「10日間の間に次々と 村民10名が消えた」
「村は恐怖のどん底におとしいれられた」

 (汗を浮かべながら協議する村人たち)

「そんな中 命からがら近くの家に逃げこみ助かった少年が警察に証言したのだ」
「暗闇の中そいつは立っていたと」
「最初は暗くてわからなかったが雲がはれて月が照ると はっきりと見えたのだと
くちから血を滴らせた牧師様を」

「警官と村人達はすぐさま牧師を問いただそうと教会におしかけて来た」
「運の悪い事に夕方 それも夜近くに」

 (警官らに詰問される牧師が、牙をむき出しにして飛び掛る)

「そして二日後」


「7月5日 チェーダース村への街道上」

 (警官が大勢で詰めている現場にスーツ姿の女性が近づく)

警官「お待ちしておりました『HELLSING』局長ヘルシング卿」
ヘルシング「報告は受けている 司令官は?」
警官「こちらですヘルシング卿 我々ではもはや手に負えません!!」

 (テントに案内され司令官と対面する)

司令官「!! 君が……ヘルシング卿……か!? 一体何があの村で起きているんだ!!」
ヘルシング「ご心配にはおよびません ここからは我々の『仕事』です」
司令官「3時間前突入した警官隊が連絡を絶った 所持カメラで映した映像見てもらったと思うが…
あれは一体!?」

 (林の中、血を流してさまよう兵士たち)

ヘルシング「喰屍鬼(グール)です 村の中は喰屍鬼でいっぱいですよ」
警官「…一体何の話だ?」
司令官「話が見えんのだが……」
ヘルシング「あれは吸血鬼に襲われた非処女 非童ていの人間の末路です 吸血鬼(バンパイア)に
操られているゾンビ共そんな所ですか ですからあの村には吸血鬼がいると考えられます」
司令官「喰屍鬼!? 吸血鬼だと!?」

 (驚きの声をあげる司令官)

ヘルシング「はあ」
司令官「そんなバカな話があるか!? そんなオカルト話を信じろと!?」
ヘルシング「事実ですよ でも信じなくてもぜんぜん結構 あなた方の『仕事』は終わったのですから」

 (愕然とする一行にさらに説明を続けるヘルシング卿)

ヘルシング「あなた方の様な木っ端役人は知らなかっただろうし知らなくていいんですが 我々
『英国国教騎士団』通称『HELLCING機関』はずいぶんと昔から化物共と戦ってきたんですよ
大英帝国と国教(プロテスタント)を犯そうとする反キリストの化物共をほうむり去る為
我々は組織された特務機関ですから」

 (不敵な笑みを浮かべながら状況の説明に入るヘルシング卿)

ヘルシング「村の中にグールを操っている吸血鬼がいます 相手はバケモノです 普通の軍隊や警官を
いくら投入した所でやつらにエサを与えているにすぎません」

 (タバコを取り出して説明を続ける)

ヘルシング「男吸血鬼(ドラクル)は処女を女吸血鬼(ドラキュリーナ)は童ていの血液を吸ったときのみ
吸血鬼として『繁殖』しますが それ以外はただのエサにすぎず食人鬼(グール)となって吸血鬼の下僕
になってしまう
母体である吸血鬼本体を殺れば全滅する 吸血鬼(ヤツ)は我々(ヘルシング)が殺ります」
警官1「……………………!!」
警官2「ばか…な…ッ」
ヘルシング「すでに我々の中でも特に対吸血鬼のエキスパートをチェーダース村に向かわせてあります
数時間でケリがつくでしょう」

 (返す言葉も無い警官たち)

司令官「………一体どんな奴なのだ? 大丈夫なのかねそいつは」
ヘルシング「彼の名前はアーカード 化物…特に吸血鬼に関してなら…そう 誰よりもエキスパートで
すよ」

 (月夜を歩くアーカード。帽子を被りコートを着込み、サングラスをかけている)

アーカード「本当にいい夜だ こんな夜だ血も吸いたくなるさ 静かで本当にいい夜だ」


 (場面変わって、ひとりの婦警が牧師とグールに襲われている)

婦警「ハア ハア ハア」
牧師「はははははは 走ってもムダだぞ」

 (銃を撃つ婦警だが、高速で接近してきた牧師に抑えられる)

牧師「銃なんぞ撃ったってムダだ 吸血鬼は銃なんかじゃ死なん」
婦警「くっ」

 (近寄ってくるグール達。警官の服を着ている)

婦警「!!」
牧師「お前の仲間はみんなオレのものになった おまえも仲間に入れてやろう オレは忠実なドレイが
欲しいだけでな自由意志の女吸血鬼なんぞ作りたくもない 今時その年で処女ってことは無いだろうが」

 (怪力で婦警を締め上げる牧師)

婦警「くっ」
牧師「犯してやろう その後ゆっくりと吸ってやる グールの仲間入りをさせてやろう」
婦警「いやあああっ」

 (婦警の叫び声が響く。とその時)

アーカード「待て いいかげんにしておけよおまえ」
牧師「!?」

 (いつの間にか牧師の背後にいたアーカード)

アーカード「最近の若造どもはまったく…下衆だ モラルもへったくれもあったもんじゃない
町のチンピラと変わらんな」
牧師「何だおまえは まぎれ込んだおのぼりさんか?」
アーカード「俺の名前はアーカード 特務機関『HELLSING』の手先のゴミ処理係だ おまえら
みたいなの専門の殺し屋だ」
牧師「殺し屋? 殺し屋だ? 本気か? 正気か? おまえ? クククククク 殺せ」

 (パチンと指を鳴らす牧師。警官のグールが発砲しアーカードを銃撃する)

ドンドンドンドン ドカドカドカドカ

 (あっという間に蜂の巣になったアーカード)

牧師「もう終わりか殺し屋!! はははははははは!!」

 (高笑いする牧師だが、アーカードは・・・・)

アーカード「クク………ク……ククククククハハハハハハ 銃なんぞ撃ったってムダだ 吸血鬼は銃な
んかじゃ死なん!!」

 (霧が集まるように再生するアーカード)

アーカード「ムダだ」
牧師「!!」
アーカード「ただの銃ならな」
牧師「!!」

 (懐から取り出した大きな銃でグールを撃つアーカード)

ドンドンドンドン ドカドカドカドカ

 (弾丸を食らったグールは血を噴き出して倒れる)

牧師「何だとおおおおおおおおお!?」
婦警「・・・・・・!?」
牧師「なッなぜッ何故貴様……ッ!! 何故貴様吸血鬼(なかま)が人間に味方を」

 (震えながら問う牧師に対し、冷徹に答えるアーカード)

アーカード「おまえ達みたいなクソガキがな 好き勝手絶頂に暴れられると困るんだよ 倍々ゲームで
人間なんぞすぐ絶滅して共倒れだぞ先の見えんガキめ それに俺は人間共には逆らえんのだ イロイロ
とこみいった事情でな
ランチェスター大聖堂の銀十字錫溶かして作った13mm爆裂鉄鋼弾だ こいつ喰らって平気な
化物(フリークス)なんかいないよ 死ね」

 (銃を構えるアーカードだが、牧師は婦警を押さえつける)

牧師「動くな殺し屋!! そこまでだッ たった一人の生存者だぜ生かしておきたくないのか!!
たいしたことじゃない俺の脱出に手を貸せ!! 目をつぶるだけでもいい!!」
アーカード「お嬢ちゃん 処女か?」
婦警「!!」
 
 (真っ赤になって驚く婦警)

牧師「何を…何をいってやがる!?」
アーカード「処女かと聞いている!! 答えろ!!」
婦警「なッ えッ あ」
牧師「野郎!! ふざけるんじゃないッ」
アーカード「答えろ!!」
婦警「はッはッ はいッ!!」

ドンッ (婦警ごと牧師を撃ち抜いた銃弾)

牧師「何いいぃ!!?」
アーカード「ああああああああああああああ」
 
ドン (アーカードの手刀が牧師の胸を貫通し、跡形も無く消し去った) バシュウ


 (虚ろな表情で倒れる婦警。側に立つアーカード)

アーカード「奴の心臓を射つためにおまえの肺を射った 悪いが大口径の銃だ長くは持たん」
「どうする?」

 
(そして場面が変わり・・・・・・)

警官1「帰って来たぞ!」
警官2「ヘルシングの……!?」
ヘルシング「良くやったアーカード しゅびは?」

 (婦警を抱えたアーカードが答える)

アーカード「母体は倒した 生存者はなしだ」
ヘルシング「あれ?……その娘は? 婦警の生き残りじゃないか」
アーカード「死んでるんだなあこれが」
婦警「す…すいません…」

 (謝る婦警の口にキラリと光る牙が)

ヘルシング「!!」
警官たち「あああああああああ」
ヘルシング「何やってんのよバカーーーーーッ」
アーカード「しかたがなかったんだ」
婦警「すいません〜ッすいませんッ」
ヘルシング「プラマイ0じゃないのーーッ」
警官たち「うああああああ」

 (チェーダース村への街道上で、大騒ぎする声がこだまする)

「めでたし めでたくもなし」



第一話/完

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