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バタフライ

第1話  この世の亡霊全て

銀次……

銀次:
 消えろ…

銀…

銀次:
 消えろって!!
 俺には何も見えねーよ!!

―――――――――――

銀次:
 (幽霊なんかこの世にいない…!!)

女生徒A:
 ねえねえ こないだの心霊写真すごくなかった?
女生徒B:
 あー あれは本物よね。間違いないわ!
女生徒A:
 実はさー 私も時々 撮っちゃうんだよねー。
女生徒B:
 マジで!? 霊感強すぎーー!
銀次:
 (いっぺんカメラと眼鏡 買い換えろ!!)

女生徒C:
 昨日のさー 「超霊体験ワンダホー」見た?
女生徒D:
 見たよ。霊能者の古敷先生が―――
銀次:
 (バラエティ番組かぶりつきで見てんじゃねえ!!)

女生徒E:
 今日 運勢悪くて〜。怖いからラッキーカラーの小物つけて来た〜。
女生徒F:
 でもさ〜 風水的に言うと…
銀次:
 (占いに踊らされてる方が怖えーんだよ!!)

山口:
 石川君〜〜。
銀次:
 や…山口!
山口:
 すっごくいい相性占いのサイト見つけたんだ。
 そしたらね うちら最高のカップ
銀次:
 相性最低みたいだな俺達。

―――――――――――

畑山:
 山口にフラれた?
 だってお前…付き合って何日よ?
銀次:
 2日。
畑山:
 最短記録じゃねーの それ?
銀次:
 お前が ろくでもねー女ばっか連れて来るからだろ!!
 ホラー映画好きとか!
 転生信じてたりとか!
 守護霊 居るとか!
 ミサンガつけてるとか!
 部屋に塩盛ってる奴とか!
畑山:
 お前のオカルトアレルギーはわかるけどさー。
 占いとかぐらい許せねー?
 だいたい女の子はそういうの好きなわけだし…
銀次:
 許せねーものは許せねーの!
畑山:
 じゃ もう誰とも付き合うな。
 少なくとも女はあきらめろ。
銀次:
 畑山〜〜。
畑山:
 ………
 あと一人…
 ラスト一人 紹介してやる。
 それでうまく行かなかったら あきらめろ。
銀次:
 ありがとう畑山!!

―――――――――――

高松:
 えと…高松奈知です。
銀次:
 (い……いいかも…)

高松:
 うわ…遊園地って小学生以来…
銀次:
 (もっと気の利いた所 選べねーのかよ!)
明石:
 今日のデートも石川のお守りか。
 でも何かうまくいきそうじゃん。あの二人。
畑山:
 まあ…今まで引き合わせた女とちょっと事情が違うし……
明石:
 どういうこと?
畑山:
 あの高松って子。向こうから石川を紹介してくれって言って来たんだよ。
 俺と同じなんだ。石川銀次に負い目がある…
明石:
 ちょっと! 負い目って何?
 それで一生懸命あいつに女 紹介してた訳!?
畑山:
 幸せになってもらわないと困るんだよ。
 石川銀次には。

―――――――――――

明石:
 そういや昔入ったことあったかも。
高松:
 なつかしい〜。
銀次:
 (お化け屋敷かよ………
 この世で一番 興味ねー)
高松:
 入ってみたいかも……
銀次:
 高松さんて こういうの好きな方?
高松:
 ううん別に。
 でもなんか子供の頃とか思い出しちゃって。
明石:
 いいかもよホラ 暗闇って男女の仲深まるし。
畑山:
 じゃー 俺達 先入るぞー。
銀次:
 なんだよお前らまで。
畑山:
 石川ぁ 実はお化け怖いとか言うなよ!
銀次:
 何をぉぅ!?

銀次:
 (あんなん言われたら入らねー訳にいかないだろーが)
高松:
 ごめん石川くん。もしかして こういうの嫌いだった?
銀次:
 別に。
 (こーいうのを好きな女が嫌い。
 お化けとかって人間の妄想の中でも最も下らねー)
高松:
 あーもうっ。お化けより暗い所に人が潜んでんのがビックリするよ。
銀次:
 (まー 小学生とかには いいデートコースかもしんねー)
高松:
 …あの……実はここ入ったのは…
 石川くんと二人っきりで話したいが事が……
明石:
 バカ畑山!! 急に触ってこないでよッ。ビックリするでしょうが!!
畑山:
 ゴメン。
銀次:
 (下らねー!! あいつらが一番下らねー!!)
高松:
 覚えてる? 石川君。
銀次:
 何…?
高松:
 私は覚えてる。
 私達が小学生の頃。
 女の子が一人 駅のホームから転落して死んだ…
お化け:
 呪い殺すゥ〜。
 呪い殺すゥゥゥ。

高松:
 キャアアァァッ。
畑山:
 おー 派手に楽しんでるな あいつら。
明石:
 結構怖がりだったんだね。あの高松ってコ。
高松:
 やめて石川君!!
畑山:
 どした? 何かあった…!?
 石川!!

右の拳から血を流す銀次。
その足元には、お化け役の男性が気絶していた。
畑山の声に気付くと、銀次はその場を走り去ってしまう。

―――――――――――

畑山:
 はー 何で俺が頭下げなきゃなんねーの。
 まー 警察沙汰にならなかっただけマシか……
明石:
 えー? なるでしょ普通。
畑山:
 事情はちゃんと説明したから。
 家と学校にはさすがに連絡するつもりらしいが…
 あと金払えって。
明石:
 人殴って逃げて許される事情って何?
畑山:
 怖い顔すんなよ。別に許されてねーよ。
高松:
 「呪い殺す」って。
 あのお化け役の人 言ったんだ。
明石:
 ん? だって あれって ただのセリフでしょ?
 言われて私なんか思わず笑っちゃったけど……
畑山:
 明石。お前 小中学校は別の学区だっけ?
 石川に兄貴 居た事知ってる?
明石:
 亡くなったっていうのは聞いたけど…
 ずいぶん昔の話でしょ…?
高松:
 ……これは噂なんだけどね……
 石川君のお兄さんて悪霊に呪い殺されたんだって………

―――――――――――

銀次:
 痛て…
 相手の歯に当たりまくったからな右手……
 ………
 俺ってムチャクチャ…
 こんなんじゃ彼女なんか出来る訳ねーよ………
 側に誰か居てくれたらフツーでマトモな人生 送れるかもしんねーと思ってたのに…

腰を下ろして独り言をつぶやく銀次。
その目の前に、一人の少女がやってくると
不意に銀次の口元に自らの唇を重ねてきた。

少女:
 側に居てあげようか?
 二人で
 殺しに行こう。
 この世の亡霊全て。


TO BE CONTINUED

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