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ベターマンの第1話


どこかの真っ暗な小部屋。
大掛かりな機器に全身を繋がれた少女、紗孔羅(さくら)

紗孔羅「ハ・ヤ・ク……ミ・ツ・ケ・テ……ス・グ・ニ……サ・ガ・シ・テ……」

急に紗孔羅が狂気の如く狂い始める。

紗孔羅「う……きゃああぁぁ──っっ!! ……ヤ……ミ……」


入道雲の浮かぶ青空の下。

どこかの小島の海岸。浅瀬に倒れている主人公の少年、蒼斧蛍汰(あおのけいた)
海鳥の声が響く。蛍汰が目を覚まし、起き上がる。
振り向くと、美しい少女が浅瀬の中に座り込み、こちらを見ている。
涙で潤んだ瞳。微かな笑みを浮かべ、唇を動かすが、声は聞こえない。

蛍汰「え……何……?」」


目覚まし時計の音。自室のベッドで蛍汰が目を覚ます。

蛍汰「ん……う〜ん……朝か……」


一 夜

- yami -


街中のTVスクリーンで、CMが流れている。

『地下200mの大遊園地ボトム・ザ・ワールド、いよいよ明日オープン!』

マスコットキャラクターの「チカちゃん」がおどけた仕草で手を振る。

チカちゃん『チカちゃんも、待ってるよ〜!』

その下を蛍汰が、スケーターバイクで走り抜けていく。

蛍汰「やっべぇ〜、遅刻だよぉ!」

愛用の携帯端末「くびてれび」を手にする。
シミュレーション対戦ロボットゲーム「デジロボ2006」が映り、ロボットの育成を促す。

『オイルの補給を急ぐのじゃ!』

蛍汰がそれに気をとられたとき、目の前にクラクションを鳴らしたトラックが。

蛍汰「わぁ〜っ、とととっ!」

すんでのところで蛍汰がトラックを避けたものの、見事に電柱に激突。


カモメ第2高校。
始業ベルと共に、蛍汰が教室に飛び込む。

蛍汰「良かったぁ〜! 先生、まだかぁ」

前の席には彼の親友の牛山次男、通称ウッシー。

牛山「おぉ蛍汰、転校生が来るらしいぜ」
蛍汰「へぇ?」
牛山「女だって噂だけどよぉ、ブスじゃなきゃいいなぁ」
蛍汰「ウッシー、またエッチなこと考えてんだろ〜?」
牛山「おぉ? 来たぞ、蛍汰!」

担任教師が、転校生の少女を連れて現れる。

蛍汰「あ……!」

その顔は紛れもなく、今朝の夢に現れたあの少女。
蛍汰が幼い頃、自分を「ケーちゃん」と呼んでよく一緒に遊んだ少女の姿がだぶる。
彼女は蛍汰の幼馴染み、(さい) 火乃紀(ひのき)だった。

火乃紀「あ……」
蛍汰「火乃紀……!」


一方、開場寸前のボトム・ザ・ワールド。
立入禁止の札が貼られ、何十体もの死体が安置されている。

捜査にあたっている刑事たち。

「オープニング・セレモニーの準備中だったってことだが……」「百人を超えてますよね」
「外傷のないホトケさんもいれば、ミンチ状態の被害者もいる」
「病院に収容された生存者は42名。お会いになりますか?」
「警部補、専門の方が到着しました」「ん?」

そこに現れたのは、まるで巨大重火器のような大掛かりすぎるセンサー類を供えた中年男、阿嘉松(あかまつ) 滋。

刑事「何だぁ、おい?」
阿嘉松「モーディワープが揃えた過去のデータと40%ほどだが、一致してるぜ」

続いて全身を防護服で包んだ女性、都古麻御(みやこあさみ)が現れる。

麻御「『アルジャーノン』に間違いなさそうですね。みなさん、急いで退避して下さい。これは単なる事故ではありません」
刑事「奥に入って行った自衛隊の連中はどうします?」
麻御「おそらく……手遅れでしょう」
阿嘉松「火乃紀を呼ぶか……」
麻御「お願いします」


蛍汰の学校の休憩時間。火乃紀の美貌ぶりに、たちまち生徒たちが詰め寄っている。
人混みを乗り越え、蛍汰が声をかける。

蛍汰「あのさぁ、俺、蛍汰。憶えてるだろ?」

火乃紀の携帯が鳴る。

火乃紀「はい? ──はい」

携帯を切った火乃紀が、人混みを掻き分けて立ち去る。

火乃紀「ごめん、通して」


校長室。
担任教師のもと、火乃紀が校長に何か話している。

校長「そうか……わかりました」


教室。蛍汰が「くびてれび」でニュースを見ている。

『明日オープンが予定されていた、ここボトム・ザ・ワールドは現在、警察・自衛隊による調査が進められていますが、詳細はまだ発表されておりません……』

牛山「おい、転校生が帰ってくぜぇ」

蛍汰たちが窓から外を見ると、火乃紀が校門をくぐる。

外にトレーラーが停まり、火乃紀が乗り込む。
トレーラーには「アカマツ工業」とのロゴ。

牛山「引っ越しの途中かなぁ?」
蛍汰「アカマツ……工業?」


ボトム・ザ・ワールド。

『例のトレーラーは地下3階に到着しました。どうぞ』


雨が降り出した中、帰り道を蛍汰がスケーターバイクで走る。

蛍汰「ひゃあ〜、濡れるぅ!」

濡れた路面で滑ったバイクが、地下道への入口の階段を転げ落ちて行く。

蛍汰「わたたたたたっ!」

階段下でバイクから放り出された蛍汰が、したたかに体を床に打ちつける。

蛍汰「今日は厄日だなぁ〜何だよ、これ」

そばには「立入禁止」の札が転がっている。
見ると、通路奥にはボトム・ザ・ワールドへの入口がある。

蛍汰「ボトム・ザ・ワールド? 事故で閉鎖中だとか言ってたのに、このゲート開いてんじゃん……?」

入口へと足を運ぶ蛍汰。

蛍汰「だ〜れもいないんですかぁ〜?」

突如、マスコットキャラクターのチカちゃんが壁から飛び出す。

チカちゃん「チカちゃんカンゲキ〜! 体の前と後ろにあるのに、中と呼ばれるものはな〜に?」
蛍汰「あ!?」
チカちゃん「3、2、1、0、ブー! 答はオナカとセナカ。君は地獄行き〜!」

蛍汰がどこかの通路へ放り込まれる。
下へと続いてゆく通路を滑り落ちていく蛍汰。

蛍汰「うわぁ!? ちょちょ、ちょっとぉ!? ひゃ、ひゃぁ〜っ!?」

通路から放り出された蛍汰が、どこかに落下する。
周囲には遊園地の広い空間が広がっている。

蛍汰「痛痛痛……ひゃあ〜……広〜い! 地下って土地、余ってんだなぁ」

背後で物音。

蛍汰「ん?」

振り向くと、壁の陰から人間らしき手が見える。
全身から水滴を滴らせながら、人間女性らしき姿のものが、ゴム人形か何かのようにあり得ない動きで這って来る。

蛍汰「うわぁぁ〜っ!? やだやだやだやだぁ!!」

恐怖を感じた蛍汰が逃げ出し、突き当りのドアを抜け、ドアを閉めて鍵をかける。

蛍汰「はぁ、はぁ……ありゃ、人間じゃねぇ……」

「くびてれび」が鳴る。ゲーム「デジロボ2006」の画面が映し出される。

『敵が接近しておるぞ』

蛍汰が奥へと続く通路を、恐る恐る進む。
その先にあったのは、高校でも見たアカマツ工業のトレーラー。
コンテナのハッチが開いている。

蛍汰「あ……アカマツ工業? 火乃紀?」

コンテナの中に入る蛍汰。
無数の機器類に囲まれた中、大掛かりな機器に全身を繋がれた紗孔羅がいる。

蛍汰「火乃紀……じゃない」

物音で紗孔羅が目覚める。

紗孔羅「あ……」
蛍汰「あ……の……」
紗孔羅「痛いことするの……?」
蛍汰「え!?」

咄嗟に蛍汰が、首を激しく横に振る。

蛍汰「しないしない! 俺、ちょっと通りかかっただけの、ただの高校生だから」
紗孔羅「コーコーセー……?」
蛍汰「何か凄ぇなぁ〜……最新型軍事管制システムみたい。あ、これ、どうやって取ればいいのかなぁ……」

蛍汰が紗孔羅の全身を縛り付ける機器を拘束具と思い、手をやる。

紗孔羅「取っちゃ……ダメ……」
蛍汰「え?」

サイレンが鳴り、トレーラーがエレベーターで階下へと運ばれて行く。

蛍汰「やっべぇ! あ、あの……」
紗孔羅「早く逃げた方がいいよ……いっぱい死んでるから……」
蛍汰「死んでるぅ!? あ……君は?」
紗孔羅「私はこのままでいいの……心配してくれて、ありがと」
蛍汰「いやぁ……じゃあ俺、行くよ」
紗孔羅「うん……」
蛍汰「あ……元気でね」

蛍汰がトレーラーから出るが、既にトレーラーは床ごとエレベーターで下へ運ばれて行く。
足もとにはなにもない。蛍汰が咄嗟に外壁の金網にしがみ付く。

蛍汰「わ、ちょっと待った待った! あ、行っちゃう行っちゃう! やべぇよぉ!」」

何かが近づいて来るような音。
本来遊園地のアトラクション用の、一つ目の鎧の騎士が何体も現れ、剣を繰り出す。
金網越しで、かろうじて剣先は蛍汰に届かない。

蛍汰「わああぁぁ──っっ!?」

無我夢中で金網を駆け下りる蛍汰。
降りた先にいたのは、これもアトラクション用の河童の着ぐるみ「カッパくん」。

蛍汰「わ、わ、わ!?」

さらに逃げ出す蛍汰。突き当たりのドアに飛び込み、ドアを閉める。
そこはエレベーター。
猛スピードでエレベーターが降下し、最下層で蛍汰が放り出され、巨大な何かにしたたかに股間をぶつける。

蛍汰「あ……ぐ……」

見上げると、そこにいたのは巨大ロボット・覚醒人(かくせいじん)1号。

蛍汰「ロボ……?」


その頃ボトム・ザ・ワールドの地上入口には、無数のパトカーが集まっている。

『地下層からの連絡は?』『一切取れません』『1人も帰って来てないのか? 1人も……』

その様子を見つめている謎の青年、ラミア。その肩には、鳥のような奇妙な生物が乗っている。


覚醒人の頭部コクピットに乗っていた火乃紀が、蛍汰に気付く。

火乃紀「ケーちゃん!?」
蛍汰「はぁ……? これ、人、乗ってるの? 軍事用か?」
火乃紀「どうしてここに?」

地面が揺れ始める。

蛍汰「何か……近づいて……?」」

どこからか黒い霧が噴出し、蛍汰を吹き飛ばす。

蛍汰「わぁぁ──っ!?」


先のトレーラーの中。
阿嘉松のもと、平也一穂こと通称へーちん、山じい、府中律子らアカマツ工業社員がモニターを監視している。
防護服に身を固めた麻御の姿もある。

へーちん「覚醒人の暗視スコープ、作動しました」
阿嘉松「あの黒い霧は何だ?」
山じい「成分グラフに毒性はないっスねぇ。アトラク用の黒色スモークじゃないっスか?」
阿嘉松「火乃紀、カクタスはどうした?」
火乃紀『なんか、大声で笑いながら出てっちゃった』
阿嘉松「出てった、だぁ?」
麻御「最終データによると、ドーパミンが通常の20倍、免疫機能は34%もダウンしてますね」
阿嘉松「アルジャーノンか!?」
麻御「ほぼ十割」
阿嘉松「なぜだ!? マニピュレートボックスにゃ、このバリヤーくん17と同じ、イオンシールドが装備されてんのに!?」

阿嘉松が自分の額に巻いたバンダナ状のバリヤー装置を指す。

麻御「それだけでなく、私のアミュレットスーツと同じ、プロテクト機能も備わっているはずです」
阿嘉松「それじゃ……」
麻御「恐らく、ニューロノイドに乗り込む前から、アルジャーノンに侵されていたということでしょう」
阿嘉松「どうする? 火乃紀だけじゃ覚醒人は動かねぇぞ!」
麻御「二次災害の危険性もあります。とにかくマイクロプラクチャーの測定を行なって下さい。メンテキャリアを下ろして、それからです」
阿嘉松「そんなモタモタしてて、間に合うのか!?」
麻御「先走ってはいけません。迂闊に動けば、全員死ぬのです。忘れないで下さい」
阿嘉松「それも過去のデータか?」
麻御「えぇ」


蛍汰が吹き飛ばされた先。足元は水浸し。
またもや「チカちゃん」が飛び出す。

チカちゃん「チカちゃん、カンゲキ〜!」
蛍汰「ひえぇぇ! 冷てぇ……」

そのそばを、狂ったように笑いながら、誰かが歩いて来る。

蛍汰「ひゃぁぁ〜っ! もうやだよぉ、こんなとこぉ〜っ! はぁ、はぁ……!」

逃げ出す蛍汰。


火乃紀「阿嘉松さん」
阿嘉松『何だ?』
火乃紀「さっき、クラスメートに会ったんだけど……」
蛍汰『火乃紀!』

見ると、蛍汰が覚醒人の股間のコクピットに身を躍らせている。

火乃紀「ケーちゃん!?」
蛍汰「やっぱり火乃紀だ、良かったぁ〜! そうそう、小さい頃の火乃紀は、俺のこと『ケーちゃん』って呼んでたよなぁ!」
火乃紀「そこにじっとしてて。セリブヘッド・ロック!」

蛍汰の乗ったコクピットのハッチが閉じる。
阿嘉松たちがトレーラー内のモニターの変化に目を見張る。

麻御「カクタスが戻った?」
阿嘉松「いや、違うぜ……」

スクリーン上に火乃紀と共に映し出される、コクピット内の蛍汰の姿。

阿嘉松「こいつ人間だろうな?」


蛍汰「凄ぇ……ロボん中ってこんなになってんだぁ……」

何者かが近づいて来る。

蛍汰「ひえぇぇ〜!」

先ほどのカッパくんが、蛍汰のコクピットのキャノピーに取り付く。

蛍汰「カ、カッパくん……!?」
火乃紀「大丈夫。結構頑丈だから」

火乃紀のコクピットの方には、剣を構えた騎士たちが何人も襲い掛かる。

蛍汰「火乃紀ぃ、これ、どうやって操縦すんだぁ!?」
火乃紀「普通の人には無理よ!」
蛍汰「無理よって……このままじゃ胃に穴が開きそうだよぉ……このロボ、自衛隊の極秘兵器とかじゃないのかよぉ!?」

無我夢中で操縦装置に手を触れる蛍汰。カプセル状の機器に、粘液質の物体が満たされている。

蛍汰「うわぁ、気持ち悪い……ヌルヌルしてるぅ」

それに手を触れたとき──蛍汰の脳裏で何かが目覚める。

麻御「デュアルインパルスがこんなに!? セリブヘッドに乗っているのは誰なんですか!?」
火乃紀「動く……!? よし、ウェイク!」

ボイスコマンドにより、覚醒人1号が起動する。

阿嘉松「動きやがった!?」
麻御「信じられません……」

次々に遅い来る騎士たちを、覚醒人が両腕のマニピュレーターで捕え、砕く。
蛍汰のもとには依然、カッパくんが貼り付いている。

蛍汰「やだぁ、くっ付いてるぅ!」

覚醒人はカッパくんも無理やり引っぺがす。

蛍汰「す、凄ぇパワー……」

蛍汰のコクピットのスクリーンに、阿嘉松の姿が映る。

阿嘉松『おい! お前、誰だぁ?』
蛍汰「蒼斧……蛍汰ですけど。あ、おじさんテレビで見たことあります! 『日本の名物社長』って番組で」
阿嘉松『あぁ?』
蛍汰「あ、そうかぁ! アカマツ工業って、社長さんの会社だぁ! こんなでっかいロボ作っちゃうなんてすんげぇ〜! さっきのトレーラーから通信してるんスね? このロボ、なんで2人乗り……」
阿嘉松『やっかましいっ!! とにかく、お前さんは黙ってそこに座ってろっ! 生きていたけりゃなぁっ!!』
蛍汰「は……はい……」
阿嘉松『火乃紀、ジェルの限界が近づいてる。一旦引き揚げろ』
火乃紀「カクタスはどうするの?」

そのとき、外でネオンが輝き、噴水が吹き出す。

蛍汰「パレードでも始まんのぉ? へへ、結構綺麗じゃん……」

噴水の中から、先ほどの奇妙な女が襲い掛かる。

蛍汰「げげげっ!?」

覚醒人はその女も掴み上げ、放り投げる。

阿嘉松『急げ、火乃紀!』
火乃紀「わかったわ」

地面が大きく震え始める。

蛍汰「何か……近づいて来る!?」

地響きと共に彼方から突進してきたのは、これもアトラクション用の巨大ドラゴン。
覚醒人がドラゴンの体当たりで吹っ飛ばされる。

蛍汰「うっひょぉ、ぶっ倒れたのに衝撃がほとんどない! このコクピットのショックアブソーバー、どういう仕組み!?」
火乃紀「アボイド!」

覚醒人が攻撃を回避する。

阿嘉松『火乃紀、分析できるか?』
火乃紀「アナライズ!」

覚醒人の調査・分析機能が作動する。

へーちん「レセプター作動。構成成分値、転送されます」
山じい「外装は強化プラスチック、内部は金属と電気配線の塊っスねぇ」
阿嘉松「要するに、ロボットってことかい」

ドラゴンが覚醒人目掛け、次々に弾丸を放つ。煙が昇り、花火が舞う。

山じい「こりゃあ、スモーク弾に花火っスねぇ」
へーちん「ジェルの限界まで、あと数分しかありません」
阿嘉松「メンテキャリア、降ろせ!」

火乃紀「ダメ、うまく動けない……ケーちゃんお願い!」
蛍汰「ん?」
火乃紀「少しだけ、手伝って」
蛍汰「あ……うん」
火乃紀「ユー・ハブ・コントロ──ル! ケーちゃん、『アイ・ハブ・コントロール』よ、叫んで!」
蛍汰「わ、わかった……アイ・ハブ・コントロ──ル!!」

覚醒人の両腕が両脚となって地を支え、胴体が天地逆向きの逆立ち状態となる。
2人を乗せたコクピットが上下逆に回転、これまでの両脚が両腕となる。
たちまち覚醒人は、蛍汰のコクピットを頭部に頂いた形態へと変形したのだ。

蛍汰「す……すっげぇ……!」
火乃紀「ブレイク・シンセサイズ、急いで!」
蛍汰「え……ブブ、ブレイク、シ、シンセサイズ!」

覚醒人の胸部が、空気中の物質を取り込み始める。

阿嘉松「強酸性の物質……しかも、この合成スピードは!?」
麻御「カクタスを遥かに上回っている!」

火乃紀「ジーセット!」
蛍汰「ジ、ジーセット!」

覚醒人が脚に装備された車輪で突進。
しかしドラゴンが、長い体を覚醒人に巻きつける。

蛍汰「ひゃ、ひゃあぁ〜っ!? これじゃあ動けねぇよぉ!」
火乃紀「ケーちゃん、シナプス弾撃よ!」
蛍汰「え!?」
火乃紀「シ・ナ・プ・ス・弾撃!」
蛍汰「えぇいもう、よくわかんねぇけど……シナプス弾撃いいぃぃ──っっ!!」

覚醒人が腕をドラゴンにめり込ませる。
内部で合成された物質がドラゴンの体内に炸裂。
ドラゴンの長い体のあちこちから、煙が吹き出す。

阿嘉松「金属を分解する酸で漏電を誘発し、システム本体をも破壊するってことまで計算してたのか……」
麻御「時間差で反応するケア物質により、環境の正常化さえこなしていますね」
阿嘉松「完璧だ……!」

ドラゴンの機能は停止し、ひとまずの危機は去る。

火乃紀「ありがとう、ケーちゃん……」
蛍汰「こ、このロボ……見た目は今イチだけど、結構強ぇじゃん!」
火乃紀「ロボじゃないわ。ニューロノイド、覚醒人1号よ」

紗孔羅「来るよ!」

蛍汰「カクセージン……?」

再び地面が揺れ、今度は天井を砕いて巨大な何かが現れる。

蛍汰「う……うわぁ、何が落ちて来たんだぁ!?」

それは、巨大なチカちゃん人形であった。

チカちゃん「チカちゃん、カンゲキ〜!」
蛍汰「チカちゃん……!?」

チカちゃんが次第に覚醒人に迫る。

蛍汰「さっきの技をもう一度! ……って、どうやるんだっけ、火乃紀?」
火乃紀「タイムオーバー……リンカージェルを透析しないと、覚醒人はもう一歩も動けない……」
蛍汰「それって燃料切れってことぉ!?」
阿嘉松「火乃紀! おい、聞こえるか、火乃紀、火乃紀!」

その様子を遠くから、ラミアが眺めている。

「我らのキボウ、危険……」
「ネブラの実、使うしかないようだな……」

紗孔羅「来たよ!」

覚醒人のすぐ目の前に迫るチカちゃんの前に、ラミアが降り立つ。
懐から木の実らしき物を取り出すと、ガリガリと噛み砕く。
素顔を隠していたサングラスを外す。その下から現れる、赤い瞳。

火乃紀「はっ……!?」
ラミア「ウオオォォ──ッッ!!」

たちまちラミアが光と竜巻に包まれ、その体が変貌を遂げてゆく。

阿嘉松「あれは……!」

ラミアが変身した姿──それは太古の恐竜にも似た容姿の、巨大な超人の姿であった。


麻御「ベターマン!!」


次の回までサヨヲナラ…

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