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裂 天 使

第1話

地獄が静かにやって来る




20XX年 東京 ―

巨大ビルの一角に、一機の飛行物体が飛来。
かつて、高層ビルと呼ばれた建物群…
ひとつの廃ビルに、その飛行物体は着地した。

『NEW歌舞伎町』の看板から飛び立つカラス。
崩れかけたビルの谷間には、コンテナのゴミをあさる人々…。
指名手配書と、破れかけたポスターだらけの壁。
時代に逆行しているような、殺伐とした風景がそこにあった。
突然、先ほどのビルから、爆音と煙が立ち登り始めた。
落下する鉄骨や工事部材。
人々は、さして驚きもせず、その光景を見ていた。

ビルでは、武装したなんとも不気味な男に、立ち向かう一人の女。
男は、その女に向かってマシンガンをぶっ放し続ける。


渋滞する道路の路肩を走る一台のスクーター。
ボディに『大来飯店』の文字。
乗っているのは、立場無 恭平(たちばな きょうへい)。
中華料理のデリバリー真っ最中といったところか。
交差点に差し掛かった歩道に、人だかりが出来ている。
「あ?」
すると…
「ふざけんな、コノヤロウ!金払え!」
「うるせぇ!てめぇみたいなインチキヤローに、
金なんか払うかよ!」
吹っ飛ぶ鞄。
「カッコつけてんじゃねぇぞ。じじい!」
「おもしろい!やれるもんならやってみろ!」
「なんだと?この俺をなめんじゃねーぞ!」
男達の喧嘩。
どうやら、渋滞の根源はこれらしい。
新宿の車道の真ん中でもみ合っている…、先には進めそうもない。
恭平は仕方なく、ビルとビルの間の路地に、スクーターをねじ込んだ。
狭い上に、ビルは工事途中で両側がベニヤで覆われており、ますます走りづらい。
おまけに、上階部分には足場が組んであり、
それで太陽がさえぎられ、薄暗かった。
バリーーーーーンッ!!
ガラスの割れる音に、恭平がハッと見上げると…!!
銃を片手に、体中に傷を負った不気味な男が、
ビルの上から降ってきて、恭平をギョロッ。
「はっ…うわ……」
倒れたスクーターをそのままに、後ずさりする恭平。
バリーーーーンッ!!!
再びガラスの割れる音と共に、今度は銀色の髪の女が!!
恭平のスクーターを挟んで、
マシンガンを乱射する男と、
2丁のデザートイーグルを連射する女。
恭平は、ただ頭を抱えて地面にうつ伏して震えていた。
男の弾が切れた。
「うわぁー」
男が、銃を放り投げて逃げ出すと、
女は、恭平と、蜂の巣状態になってしまったスクーターを飛び越え、
男を追う。
ババーーン!!
爆発する恭平のスクーター。
「とぉうりゃ〜っ!」
「うわ…うっ!」
ベニヤの陰から、倒れてくる男。
倒れた男の襟元をむんずとつかんで、
もう一度ベニヤの陰に引っ張り込む女…。
真っ赤な手袋…その腕には、翼のような模様の刻印が…。


恭平の通うクッキングスクール、ロビー。
「いきなりババババ!!マシンガンで挟み撃ちだろ?
マジで死ぬかと思った。」
友人の一門寺に、あの体験を話す恭平。
「まぁ、法律が変わって、武器を携帯してもよくなったからな。
街で売ってる拳銃も、どんどん強力なやつが増えてるってよ。」
「はぁ…、ラプトの本部があるから、もっと治安がいいかと思ったんだけどな。」
すると一門寺が、ポケットから小さなモニターのようなものを出し、
「犯罪検挙率は上がってるけど、逮捕率は下がってるってさ。」
そこには『RAPT 今月の犯罪データ』の棒グラフが、
浮き上がるように映し出されている。
「検挙率が上がって…逮捕率は下がってる??なんで?」
「生きたまま捕まるヤツが減ってるってこと。ラプトのおかげでさ。」
そこへ、この学校の本郷先生がやってきた。
メガネをかけ、長い髪を後ろで一つに束ねた若い女の先生だ。
「恭平くん?またバイト探してるんだって?」
「はい…、前のところは辞めたんで。」
…察するに、『大来飯店』のことか?
「バイトもいいけど、授業はサボらずにちゃんと出なくちゃだめよ。」
「もちろん!わかってますよ。」
見ると、先生は一枚のビラ持っている。
「先生、何ですか?それ。」
「ああ、これ?ん…ネットでバイトの募集が来たの。
でも、最近いたずらが多いから本物かどうか…」
先生は、笑いながらその紙を恭平に渡す。
「…『オイシくてオッシャレーな料理を作ってくれるステキなお兄ちゃん大募集?
高給保証、待遇最高、早いモノ勝ち…今すぐアクセスしてね…』??
マジかよ、これ?」


『新番組 摩天楼極道物語』の番宣が、街頭テレビに映し出されている。
ちなみに、主演は町肩弘鬼(まちかた ひろき)と牙 新一(きば しんいち)
ヒロインは、ハリウッド女優ユカ・サーモン…。
引き続きニュース。
そこへ、キョロキョロしながらやってくる恭平。
その目の前に止まる、真っ赤なスポーツカー。
中には、とびきりのいい女!!
「ラブ&ハッピークッキングスクールの立場無恭平さん?」
「はい、そうですけど…」

そのいい女が、恭平の新しい雇い主になるらしい。
恭平を乗せて走る車。
「留学費用を貯めたいんですって?」
「オレ、パティシエの勉強してるんです。
あ、パティシエっていうのは、お菓子職人のことなんですけど…」
「パティシエ…?ううん、知らなかったわ。」
「やっぱり、本格的に手に職つけるには、本場で勉強しないと。
でも今、海外に出るのって、すっごい税金かかるでしょ?
ボクの家は、親に頼れないんで、それで。」
「ステキね。若いのに、ちゃんと目標持ってるのね。
そういう人って、好きよ。」
「い、いやあ…」
照れて頭をかく恭平。

まず、やってきたのはスーパーマーケット。
野菜売り場の二人。
「専攻はお菓子だけど、選択で和、洋、中華やイタリアンも習ったから、
一応一通り作れるんです。」
…と、手に取ったチンゲン菜を見て、
「へぇ?!これ、ゼロ一つ多いんじゃ…?」
ピピピピピ…
その時、女の携帯電話が鳴った。
「はい。」
『セイ?今どこにいるの?』
「新しいコックさんと一緒に食材を買ってるの。
もう少しで着くから待ってて。」
すると、電話の向こうのから聞こえる声が、
ちょっとかわいらしい声に変わった。
『早くしてよ〜、もう、お腹ぺこぺこだよ〜』
「はぁ…。」
ため息をついて、電話を切る女(名をセイというらしい)。
そして、恭平に向かってニッコリ笑う。
「急ぎましょう!」
「はあ。」

後ろの座席に、食材を詰めたポリ袋をいっぱい積んで走り出す車。
「こんなにいっぱい材料買って、何人分の食事を作ればいいんですか?
…よっぽど大きいお屋敷とか?」
ちょっと不安になる恭平。
「そんなところ。今までのコックさんが、急に帰国することになってね。」

…で、着いたところは、巨大なトレーラーの前だった。
「ここ…?」
確かに大きいことには違いないのだが…。
「セイよ。新しいコックさんを連れてきたわ。」
「今行くわ!」
ドアからではなく、トレーラーの上から飛び降りる少女。
しかし、その顔を見て恭平はギョッ!!。
なぜなら、黒いパックをしていたから。
「おかえんなさ〜い!その人が新しいコックさん?」
と言って、入り口から出てきた女の子もまた…黒パック真っ最中。
「そうよ。」
セイの後ろで、戸惑いながらアイサツする恭平。
「ど、どうも。」
笑顔が、引きつっている。
「ん?」
恭平をじっと観察する髪の長い少女と、
ペロッと舌を出す髪を二つに縛った女の子。

そのトレーラーは、広い駐車場の一角に止まっているのだった。


入ってみると、トレーラーの中は、キャンピングカーというより、
むしろ、本物の家の中といった感じだ。
ただ、キッチンには、空き缶やゴミの袋が山積み…。
「ここがあなたの職場よ。仕事は、この子たちに食事を作ること。」
散らかり放題のキッチンに、あ然とする恭平。
「あ…、あはっ…もしかしてピクニックですか?この車で。」
「いいえ…、ここがこの子たちのお家なの。」
ソファーに座る恭平、向かい側にセイと、髪を二つに縛った女の子。
「みんなここで暮らしてるのよ。」
「みんなって、家族の人たちも?」
「ほっとくと、ジャンクフードしか食べないの。
まともな食事作ってくれるまかないさんが必要なのよ。」
そこへ、パックを落とした少女がタオルで顔を拭きながらやってきた。
「カノジョはメグ。」
メグ…黒いパックの下には、こんな美しい顔が隠れていたのか。
「この子はエイミー。」
セイの横で、ストローでジュースを飲むエイミーは、
まだほんの子供だ。
「回って。」
恭平のことが気に入らないのか、メグはぶっきらぼうにそう言った。
「はぁ?」
「回る!180度ターン!」
「は、はい…こう?」
仕方なく立ち上がって向こうを向く恭平。
「ふうん…、若すぎんじゃないの?」
メグの言葉に、セイはたしなめるように言った。
「失礼なこと言わないの。
これでもちゃんとした料理学校に通ってる優秀なコックさんなのよ。」
「いやぁ、優秀ってほどでもないけど…」
エイミーは、頭をかく恭平のそばへ行って、体の匂いをクンクン。
「あ!!ケーキの匂いがするー!」
「ああ、さっきまで実習やってたから。」
「ねぇねぇ、あのチラシかわいかったでしょ?」
ニッコリ笑うエイミー。
「あれ、キミが書いたの?」
「うんっ!どんな人がくるかと思ったけど、おもしろそうな人でよかったぁ。
ちょっとぐらい痛い目にあっても、長持ちしそうだもん!」
「…はぁ?」
それを聞いて、恭平はちょっと不安に…。
「そうかなぁ?なーんかヘタレな顔してるし、線も細いし、
続かないんじゃない?」
メグは、あくまで恭平がお気に召さないらしかった。
「恭平さんは、留学費用を貯めてるんですって。
彼の夢をかなえるために、私たちも手助けできたらうれしいじゃない?」
メグとエイミーは、セイの言葉を聞いて、一瞬カタマり…
そして大笑い!
「あっはっはっは…!!セイ姉が他人の手助けぇ?」
「夢をかなえるためにぃ??…おっかしい!!
セイ!だんだんジョークのキレがよくなってきたんじゃない?!」
なんだか、ますます不安になる恭平…。
しかし、セイは特に気に留める様子も無い。
「気にしないで。で、どう?働いてもらえるかしら?」
「…あ、はい!そりゃもちろん、雇ってもらえるなら!」
恭平の答えを聞いて慌てるメグ。
「ちょっと待ってよ!ジョウの意見は?」
「は?ジョウ?…」
誰だろう…?
「ジョウいるの?」
「さっき戻ってきたの。フリーで頼まれた仕事、一つ片付けてきたって。」
「まぁたどこかでビデオ観てるんじゃない?
仕事の後は、いっつもそうだから。」
その時、どこかのドアをノックする音が…。
「いた!」
「ちょっと待っててー!」
メグは、ノックの聞こえたドアに向かってそう言った後、
恭平をにらみつけた。
「あっち向いて!」
「へ?」
「あんた…『へ?』とか『は?』しか言えないの?」
そう言いながら、メグは棚からトイレットペーパーを取り出して、
それをノックの聞こえたドアの方へもってゆく。
わけもわからず後ろを向かされた恭平に、
「ごめんなさい。口は悪いけど、根は優しくて
面倒見のいい子なのよ。」
と、声をかけるセイ。
しかし、それを聞いたエイミーが再び笑い出す。
「メグがやさしいぃ??フフッ…!
セイ姉ったら、ホント今日はジョークが冴えてるぅ!クックック…」
「あのう…みなさん、姉妹なんですか?」
恭平の質問に、セイはちょっとうつむいて…それでもすぐ顔を上げ答えた。
「…いいえ、たまたま一緒にいるだけ。」
その時、さっきのドアが開いて、中からボサボサの銀色の髪の…?
なんともユニセックスな風貌の少女が、ノソノソ出てきた。
「ジョウ、この人が新しいコックだって。
どお?使えると思う?」
メグが尋ねると、ジョウは眠そうな目で恭平をちらっ見て、
「…男か。ま、別にいいよ。」
とだけ言って、ノソノソ恭平の前を通り過ぎ、
床に座り、壁にもたれて目を閉じた。
それを聞き、改めてセイは言った。
「決定ね。立場無恭平くん、よろしくお願いするわね。」
「は、はあ…」
ピピ…ピピ…ピピ…
「ごめんなさい、ちょっと失礼するわ。」
セイは、電話とは違う、何かの携帯通信機のようなものを取り出し、
別の部屋に入っていった。
確かめるように、その場に残った三人の顔を見る恭平。
「うふふん…」
幼いくせに、人をくったような笑みで恭平を見つめるエイミー…
相変わらず、ふくれっ面でにらんでいるメグ…、そして、
床にペッタリ座り、大あくびしながら眠っているジョウ。
…??
ジョウ…、この子は…?!
恭平の脳裏に、新宿の路地での出来事がよみがえる。
男と銃を撃ち合い、最後には男を片付けてしまったあの…?
確か、あの子も銀色の髪をしていた…。
ハッとする恭平。
「あ、あのさ、キミ…、もしかして…」
すると、メグが恭平の耳を引っ張った。
「キミぃ?ちょっと!いきなり口説く気じゃないでしょうね!!」
「…そうじゃないよ!」
(…まさか…だよ…な…)

別の部屋では、セイが何かの画面を見ている。
そこに浮かび上がる写真、マップ、データ…、
そして大きく『務必奪取該物』の文字。
みんなの部屋に戻るセイ。
「仕事が入ったわ。みんな準備して。」
「仕事?」
仕事って…、いったい何なのだろう?
「え〜っ?お腹すいてるのにぃ…」
え?こんな幼いエイミーも?
「わがまま言わないの!ここにいるのは何のためよ!」
メグが、エイミーをたしなめる。
ますますわけのわからなくなった恭平。
「仕事が終われば、欲しがってた部品も買えるわよ。」
「そっか!うん!早く仕事しよっ!仕事!仕事!仕事!」
セイの言う、その『部品』がよほど欲しいのか、
エイミーは素直に立ち上がり、屈伸を始めた。
「あのう、ボクの仕事は…」
「ごめんなさい、せっかく来てもらったけど、
今日はこのまま帰ってもらえる?」
セイの言葉に、恭平はがっくり…。
「ジョウ!仕事よ!仕事。」
メグに起こされ、ジョウは無意識にTシャツを脱ごうと…
「ジョウ!ストップっ!!ほらっ!!早く出てってよお!」
今まで以上に怖い顔で恭平をにらむメグ。

「うわぁ〜っとっとっと…」
トレーラーの階段を落ちるように降りる恭平。
「明日、学校が終わったら来てちょうだい!」
「は、はあ…」
「じゃあね!」
セイは軽く手を振って、トレーラーのドアを閉めた。
恭平は、もうなにがどうなっているのかさっぱり…。
その閉じたドアをボケーっと見ていた。すると!
「何ボケッとしてんのっ?さっさと行って!!」
突然顔を出したメグに、恭平はびっくり!
「うわっ!
………わけわかんねぇ。」
トボトボと駐車場の中を歩き出す恭平。
(よっぽど金持ちなのかな…。どういう関係なんだろ…。
みんな美人だけど、なんか怪しいっつーか、仕事っていったい…)
そこへ、突然現れたサングラスの男たち。
恭平を取り囲んだかと思うと…!!
「??ちょちょっと…何を?ん、んぐぐぐ…ん…ぐ……!!!」

トレーラーでは、ジョウが身支度を整えていた。
あの、ビルの谷間で恭平の前に現れたときと同じ、
イカした戦闘服。
両太ももには、2丁のデザートイーグル。
その肩に、上着をかけるメグ。
「ねぇねぇ、さっきの子、あたしたちの仕事のこと知ったらどう思うかなぁ?」
幼いながら、恭平を「さっきの子」呼ばわりするエイミー。
「逃げ出しちゃうでしょう。根性なさそうな顔してたもん。」
当たり前のような顔で答えるメグ。
「ククククク…!」
そこへ、セイが外から声をかけた。
「ジョウ!準備出来た?」
「オーケー…」
走り出す真っ赤なスポーツカー。
運転するセイ。助手席にはかったるそうなジョウ。
後ろの座席にメグ。
「仕事は簡単。晴海の倉庫で、武器密売組織の取引があるの。
そこで売買されるディスクがターゲットよ。」
「ディスクの中味は?」
「さあ…?白蘭(バーレン)が欲しがってるってことは、
コピーして大量に売るつもりかもね。」
その時、コントロールパネルのあたりに、
エイミーの顔の映像が浮かび上がった。
『さっきからつけてる車がいるよ!
今、お空からの映像送るね!』
どこか?に寝そべって、数台のモニターを前に、
コンピューターを操作するエイミー。
すると、エイミーから送られてきた謎の車の映像が!
「尾行?どうするの?」
「ここで騒ぎを起こすのはまずいわ。
ほっときましょう。どうせ何もできないから。」


晴海のとある倉庫では、男たちが取引を始めている。
スーツ姿の男たちと、相手は、全員ロングのガウンのようなものを
身につけた、なんとも不気味な連中だ。
その様子を、上階に隠れて見ているメグとジョウ。
「情報どおりよ。商売の真っ最中!」
車で待機するセイに通信するメグ。
『いいわ。仕事にかかって。』
コントロールパネルの映像を見ながら指示を出すセイ。
「みんな片付けちまっていいか?」
『ダメよ。騒ぎにならないように、穏やかに。』
「チェッ。」
「うっふ…」
舌打ちするジョウに笑うメグ。

「確認した。」
「こちらもだ。」
取引が成立しかけた、その時、
男たちの足元に、黄色い小さなボールがコロコロ…。
「ん?」
すると、そのボールは、ネズミのような形に姿を変え、
ちょろちょろと男たちの間を走り回りだした!
「なんだ!?」 「くっそう!!」
慌てだす男たち。
と、いきなり目のつぶれそうなまぶしい光が!
「動かないで!」
銃を構えて男たちの前に立ちはだかるメグ。
「後ろにもいるぜ!」
振り返ると、そこにはジョウ。
ディスクはすでに、金の入ったアタッシュケースとともに、
ジョウの腕の中だ。
ジョウに駆け寄るメグ。
「狙うの、ディスクだけじゃないの?」
「ついでだ。」
作戦成功、任務完了と思われた時、
ブレーキ音を轟かせながら、倉庫に飛び込んできた一台の車!
そう!セイたちの後をつけていた、あの車だった。
車から降りてきた男たちが言った。
「白蘭の一味だな?おまえたちがディスクを狙っていることは
わかってたぜ。」
「だが、あいにくだったな。こんな時のために、
おまえらの仲間を抑えてある。」
「仲間?誰のこと??」
「セイのやつ、ドジったのか?」
「まさか…」
わけのわからない二人の前に、車から転がされて出てきたのは…!
ミイラ状態にぐるぐる巻きにされた恭平だった。
「なんでアイツが?!」
「誰だ?」
「さっきのコックよっ!」
恭平の頭を踏みつけ、その頭に銃を突きつけて男は言った。
「さあ、カバンを返しな!でないと、コイツのドタマが吹っ飛んで、
脳ミソがおまえのところまで飛んでいくぞ!」
「あ…」
言葉を失って、ジョウの顔を見るメグ。
しかし、ジョウは慌てた様子も無く、銃口を男たちに向けたまま言った。
「撃ってみろよ。」
「な、なにい?!」

外から、別の何かが、メグの抱えたディスクをサーチしている。
ターゲット発見の模様。

男の靴の下で、汗だくの恭平…。
「いいのか?本当に撃つぞ!!」
一瞬の静寂…
次の瞬間、コンマ何秒というスピードで、
太もものデザートイーグルを引き抜き、
銃口を、恭平に銃を突きつけている男の顔面に向けるジョウ。
「…撃ってみろよ。」
「うっ…」
…と、その時!!
ガッシャーーーン!!
??!!
突然、天上をぶち破って降りてきた謎のサイボット!
どうやら、男たちのモノとは違うらしい。
サイボットは、いきなり銃を乱射!
応戦する男たちを、次々撃ち殺していく。
「なに?あれ!あんなの聞いてないわよ〜!」
「なんでもいい、今の内だ!」
ディスクを抱えて逃げるメグとジョウ。

「何がどうなってるんだ??」
やっと猿轡だけは外せたものの、
恭平は、その場に倒れたまま…。

サイボットは、猛スピードでメグとジョウを追ってくる。
「アタシから離れるな。」
ジョウはメグにそう言うと、ソイツに向かって銃を構えた。
だが、転がったままの恭平が気になり、
メグは一人、恭平のところへ!!
「あっ!!メグっ!!!!!」
サイボットは、ジョウに向かって4つのミサイルを発射!
「うおーーーーーーっ!!」
その真ん中に飛び込むジョウ。
そして、反対側へ回ると、ミサイルを全て銃で打ち落とす。
破片が、恭平の顔にも飛び散った。
「う!アツッ…」
身をよじる恭平に、銃を向けるメグ。
「動くなっ!」
「わ!撃たないで!」
バキューン!
メグは、恭平の体を縛ってあるロープの金具を銃で壊すと、
「後は自分で逃げて!いい?」
そう言い残し、ジョウの元へ走っていった。
「あ、ありがとう…」
意外な展開に、ちょっと驚く恭平。

必死に走るメグ。
しかし、サイボットの手につかまれてしまった!
「メグ!!」
メグを握って歩き出すサイボット。
横を走りながらジョウが叫んだ。
「メグ!ソイツから飛び降りろ!!」
しかし、ガッチリつかまれていて、身動き一つできない。
「ダメ!逃げられない!!」

車のセイは、中の様子をモニターしていたが…
「メグ!何があったの?状況を知らせて!!
そのサイボットは何??」
すると、聞こえてきたのはジョウの声。
『おまえも知らないのかよ!』
「…とにかく敵ね。」

デザートイーグルを撃ち続けながら、サイボットを追うジョウ。
「メグが捕まった!ジャンゴを出してくれ!」
外へ出たサイボットは、姿の見えなくなったジョウをサーチ。
その時、サイボットの顔面部にジョウが飛び降りた!
サイボットの顔面に、激しくデザートイーグルを撃ち込むジョウ。
しかし、体をつかまれ、瓦礫に投げつけられてしまった!
「ジョーーーーッウ!!」

一方、エイミーは、ジャンゴの発進準備をしていた。
素早くキーボードを打つ小さな指。
「起きるのよ、ジャンゴ。ジョウが待ってるわ。」

どこかの格納庫が開き、姿を現す人型ロボット『ジャンゴ』!

かなりのダメージを食らったジョウだったが、
立ち上がり、銃を構えてサイボットをにらみつける。
「…いい気になるなよ。鉄くずヤロウ!」
すると、ジョウの腕に、紫色の翼のような模様の刻印が浮かび上がった!
「あ!あれは、新宿で見た…」
それを、物陰から見ている恭平。

ジョウに向かって突進してくるサイボット。
両手を広げ、それを待ち構えるジョウ。

「…連れてってやるぜ。地獄へな!!」


第1話 END

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