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うる星やつら


TV第1話
「うわさのラムちゃんだっちゃ!」



川べりのグランドで、野球をしている少年達。
かきーん!
「レフト、バック〜!」
「ひゃあ〜、バカは当たるとデカいな〜」
ボールを追うレフト、
しかし、ボールはレフトの頭を越え、土手の方に…
そこへたまたま通りかかった少年、すれ違ったお姉さんにミトレて
よだれたら〜ん…
この、いかにもオンナにだらしなさそうな男が、
このアニメの主人公、『諸星 あたる』である。
「危ない!当たるぞ!あたる!アタル〜っ!」
「…ん?誰かオレを呼んだか〜?」
あたるが、でれ〜っとした顔で振り向くと、ボールがっ!
顔面にばしっ!その勢いで、後の電信柱にドカッ!
(お決まりの、電信柱が折れて傾くーーの図)
うつ伏せに倒れるあたる、泥だらけの顔をやっと上げ、
「う〜っ、クソ、厄日だ…」
そんなあたるの目の前に、いつの間にやってきたのか、
錫杖を手に、一人の旅の修行僧が立っていた。
…が、みょ〜に小さいおじいさん。
「ったくもう!何だ、お前はっ?」
あたるは、立ち上がって、その僧を見下ろした。
すると、僧はびっくり仰天!!
「が〜っ!!お、お、お主の顔…救いようの無いほど、悪いっ!」
どっかーん!倒れるあたる。

カァ、カァ…夕焼け空にカラスが飛んでいる。
「ワシが言いたいのは、お主の顔にとてつもなく悪い相が出ておるということ…」
あたるに、錫杖でぼこぼこにされたらしい僧…。
「はん!くだらねえ!オレは占いの類は信じないことにしてんのさ!あばよ!」
錫杖を放り投げ、去っていくあたる。
「待て!そっちの方角へ行ってはいかん!不吉なことが起こるぞよ。」
「こっちへ行かなきゃ、家に帰れねぇんだよ、ったく!」
ジャガイモみたいな顔になった僧の止めるのも聞かず、
あたるは、土手を登っていった。
「…不幸な若者じゃ、何事も起きなければ…と言いつつ、合掌。」
その後姿に、手を合わせる僧。


ポケットに手をつっこんで歩いているあたるを、
スコープで追う怪しい奴等。
「来ました。諸星あたるです。行動パターンも情報どおりです。
本人に間違いありません。」
高級車に乗った黒服の男が、隣に座るヒゲの老紳士に報告。
「…よし、やれ。」
老紳士の一言で、あたるのところまで素早くバックする高級車。
そして、あたるをあっという間に車に放り込んだ。
「なんだ?なんだ、なあんだ!?」
黒服の大男に抱えられ、あたるはじたばた…。
「放せ!放せ!オレは、男はキライだっ!」
「俺も嫌いだ…」
無表情で答える大男。
気付けば、あたるの乗せられた高級車の前後には、
武装した自衛隊のジープが走り、
上空には、ヘリがっ!!
猛スピードで走る高級車…、道のいたるところにも無数のジープが
銃を構えて待機中。
あたるはきょろきょろ…
「な、何が起こったんだ?…うわあああっ!」
突然の急ブレーキに、思いっきり前に吹っ飛ぶあたる。
「…降りたまえ、君の家に着いたぞ。」
老紳士が言った。
車から降りてみると、あたるの家の周りは、機動隊によって
取り囲まれ、何とも物々しい雰囲気だ。
老紳士と共に、玄関に入るあたる。
「あたるクンっ!!」
部屋から飛び出してきて、あたるに抱きつくしのぶ。
(三宅しのぶ…あたるの現時点でのカノジョ)
「しのぶ!お前、どうしてここに?」
「あたし、知らせを聞いて心配で心配で…」
「そうかそうか、何だかよくわからんが…」
でれっとして、しのぶを抱きしめるあたる。
父と母も、心配そうにあたるのところへやってきた。
「あたる!!」
「…どうしたんだい?二人共その顔は…?」
それを聞いて泣き崩れる母、父は直立不動のまま、
茶の間の入り口を指差して言った。
「な、中を、中を見てみろ…」
茶の間に入ってゆくあたる。
「…?いったい何がどうした……んぎゃぁ〜!!」
茶の間いっぱいの大きさほどもあろうかという巨大な、
全身トラ柄の服の…頭に角が2本…オマケに牙のはえた…
すんごい怖い顔の男が、あぐらをかいて座っていた!
「ほ、ほにょほにょ…鬼はソト…」
ほにょほにょになって、茶の間を出るあたる。
しかし… 「どこへ行こうというのかね、あたるクン。」
先ほどの老紳士に襟首をつかまれ、茶の間に戻されてしまった。
「話はこれからだよ。紹介しよう。銀河を越えて地球を侵略に来られた
インベーダーさんだ。」
「イ…?」 改めてインベーダーさんを見るあたる。
すると、インベーダーさんは、さっきとはうって変わった人懐っこい笑顔で、
にこやかに話し始めた。
「さいでんがな、あんさん、わいインベーダーでんがな。
ま、ひとつよろしゅうに。」
懐から名刺を出してあたるに渡すインベーダー。
「…いや、こらまたご丁寧に。」
なんとも可愛らしいイラスト入りの名刺を受け取るあたる。


空を飛ぶ自衛隊の小型ジェット戦闘機。
『第3飛行中隊より司令部へ…諸星家上空の電離度が異常に上昇中、オーバー』
『了解!そのまま警戒にあたられたし、オーバー』


茶の間に座るあたるとしのぶ、老紳士、そしてインベーダー。
「なんだってぇ!!オレがインベーダーと勝負っ!!??」
あたるはびっくり!
老紳士は、事の成り行きを話し始めた。
「その通り、彼らは地球を侵略するにあたって、一つの条件を出したのだ。
彼らのコンピューターが適当に選んだ地球人…つまり君と勝負して、
もし、負けたらば…」
「わいら、おとなしゅう帰りまっ!」
インベーダーは、にっこり言った。
「君の若い命を、地球のために捧げてくれ。」
畳の上に、手をつく老紳士。
「い、いやだっ!」 しのぶにしがみつくあたる。
「このとおりだ、地球を救ってくれ!」
老紳士は、今度は、頭を畳にこすり付ける程下げて頼んだ。
「断るっ!お、鬼と戦って殺されるくらいなら、
イスカンダルへ行った方がマシだっ!」
あたるのその言葉を聞いた老紳士は、
「…なんだとぉ…?貴様、それでも地球人かっ!
地球を愛する気持ちはないのかっ!
愛する者のために死ぬと、なぜ言えんのだっ!!
ろくでなし!悪党!エゴイスト〜ッ!
それでも恥ずかしくないのか?それでも男かぁ!!」
コブシを握り、立ち上がって絶叫〜!
あたるも負けてはいない。
しのぶと一緒に、すっくと立ち上がり…
「無論ですっ!有り余るほどにオレは男です!もてあますほどに!」
そして、しのぶをでれっと抱きしめた。
どーん!倒れる老紳士。
その時、地鳴りのような音と共に、みしみしと部屋が揺れ始めた。
天井を見つめ、インベーダーが言った。
「時間通りやな。あんさんの相手のお出ましや。」
空は紫色に染まり、不気味な雲の渦を巻いている。
その渦の中心から、オレンジ色の光が!
「ああ!何だ、あれはっ?」
銃を構える自衛隊に機動隊。
その目の前に、渦の中心からゆっくりと姿を現したのは、
黄金に輝く巨大な宇宙船だっ!
その宇宙船から、稲妻にようなビームが放たれ、
あたるの家の屋根をぶち抜いて、茶の間へ落ちた!
「うわああああっ!」
直撃は免れたものの、ふすまに吹っ飛ぶあたる。
その稲妻の中から現れたのは…!!
「お待たせ〜っ!ウチがお前の相手をする、ラムだっちゃ。」
トラ柄ビキニを着た、髪の長い可愛らしい…鬼!?
ナイスバディなのはいいが…やっぱ角がある。
「お、鬼の女の子!!」 怯えるしのぶ。
で、あたるはというと…早くもよだれがたら〜ん…
「な、なんちゅう美人かつグラマーなねえちゃ〜ん…」
なんとも情けない顔。
インベーダーの大男は、そのラムの父親だったのだ。
「はい、わいの娘のラムだす。このラムと鬼ごっこして
10日以内に角をつかめばあんさんの勝ちや。」
ルールについて説明する父親インベーダー。
「し、しかしそのぉ…角をつかむには必然的に身体をつかまないと…」
もう、でれでれのあたるに
「あたるっ!!」 怒鳴るしのぶ。
「ウチは、そう簡単にはつかまらないっちゃ。」
ラムは自信満々の様だ。
「そうはいかん!必ずこの手で力いっぱい抱きしめてやる!」
こっちはやる気満々のあたる…の顔面に、しのぶの爪が!
「この、女ったらし!!」
思いっきりあたるの顔を引っかくしのぶ。
「どうやら決まりやな。」 満足そうな父親インベーダー。
「ありがとう、動機は不純だがこの際目をつぶろう。」
喜ぶ老紳士だったが、突然足元の畳が持ち上がり、ずでーん。
床下から顔を出したのは新聞記者達。
「諸星くん、一言感想を!」「諸星くん!」
後から後から這い出して、あっという間にあたるを取り囲んだ。
「諸星くん、君に与えられた使命は極めて重大です。
今の心境を一言!」
質問とフラッシュの浴びせられる中、
ラムとしのぶの真ん中に立って、こぶしを握るあたる。
「地球のためです!ボクがやらねば誰がやる!」


鬼ごっこ当日
空を飛ぶヘリコプター。
道を埋めるたくさんの見物人。
『さあ、いよいよ地球人類40億人の運命を賭けた、
今世紀最大の鬼ごっこが今、武蔵小金井駅前通りで始まろうとしています』
通りの真ん中で屈伸運動をするあたる。
その前で、軽〜くウォーミングアップのラム。
(イヒヒ…『抱きつきのあたる』と言われたこのオレの実力をみせてやる)
あたるの目がランランと輝いた。
「位置について、よーい…」
バキューン!
老紳士のピストルの合図で、一目散にラム目掛けて走り出すあたる。
「や〜〜〜っ、もらったぁ!!」
一歩も動かないラムの足に飛びついたが、ラムはふわ〜んと空中へ。
そして、華麗に回転しながら着地。
「卑怯だ〜!飛べるなんて聞いてなかったぞっ!」
「ああ、単なる研究不足だっちゃ。きゃは、あははっ!」
あたる、がーーーーーん!
さて、それからが大変!
あれこれと手を変え品を変え、ラムに挑むあたるだったが、
いつもあとちょっとのところで、身をかわされてしまう。
何度、担架で病院に運ばれたことか…
あたるの傷だらけのアタックは、何日も何日も続いていった。

諸星家 居間
TVニュースを観ているあたるの父と母。

キャスター
『地球の存亡を賭けた、あたるくんとラムちゃんの鬼ごっこも、
残すところあと1日。あまりに不甲斐ないあたるくんに各界の非難が
集中しております。』
政治家
『まぁ、この…あたるくんが悪い。全責任は彼にあるっちゅーことだな。』
野球選手
『あたるくんが負けて、宇宙人に戦略されると、
野球が出来なくなるじゃないかと、心配だなぁ…』
あたるの友人
『あたる〜、殺される前に金返せ〜!』
キャスター
『なお、明日負けた場合には、あたるくんはじめ一族郎党は、
全て処刑すべきであるという投書が、局の方へも殺到しており、
諸星家周辺では、リンチの準備に入ったとの情報も入っております。』

「かあさん…」 うなだれる父…
母も一言…「生むんじゃなかった…」

あたるの部屋
立って窓の外を見つめるあたると、床に崩れるように座っているしのぶ。
「オレが馬鹿だった…ラムが空を飛べることも聞かずに勝負を始めるなんて。」
「そうよ、あたるくんが悪いのよ…ラムの色香に迷って引き受けるから…
なによ、あんなコ!ちょっとグラマーなだけじゃないっ!」
「く〜、そうだったのだ…グラマーでも敵は敵。ぐわぁぁ〜!
いやだっ!これからの人生を敗北者として過ごすなんて…」
壁にすがりつき、泣き崩れるあたる。
そんなあたるを見て、しのぶは立ち上がり言った。
「…あたるくん、勝ったら結婚してあげるっ!」
どて〜ん!ひっくり返るあたる。
「んけっこぉんっ??…うそだ、うそだうそだ。
お前は自分が助かりたい一心で、うそをついてるんだ。」
すると、しのぶははらはらと大粒の涙をこぼし始めた。
「ばかっ…私、あなたが一生日陰者で暮らすのが耐えられないのよ。
…わからないの!?」
「しのぶ…しのぶっ!!」 「あたるっ!」
月明かりの差し込む部屋で、ひしと抱き合うあたるとしのぶ。
…が!
調子に乗ったあたるの手が、しのぶのおしりにのびてきた…
その手首をサッとつかみ、
「その淫乱さが、全ての原因だということが…わからんのかぁ!」
ちょいとひねって、思い切りあたるを投げ飛ばすしのぶ。


鬼ごっこ最終日 駅前通り
たくさんの観衆が道の両側に詰め掛けている。
気合の入った表情のあたると、余裕のラム。
『お聞きください、この大歓声。いよいよ最終日であります。
しかしどうしたのでしょう?あたるくん、全く動く気配を見せません。
こんなやけくそは許されていいもんでしょうかっ!』
(結婚じゃ、結婚するんじゃ…結婚のためなら、
どんな卑劣な行為も許されるのだ…)
額から汗がたら〜ん、ごくり!とつばを飲み込むあたる。
「ん?」 そんなあたるを見て、首をかしげるラム。
「結婚じゃあ〜!」
あたるは突然踊りだし、そしてピストル型の「吸盤つきマジックハンド」を発射!
吸盤は、不意を付かれたラムのビキニのブラジャーに命中、
「あ〜、こら、何するっちゃ!」
見事、ブラをゲットしたあたる、誇らしげに 「やった〜っ」
慌てて胸を隠すラム。
「返せ〜、ウチの一張羅返せ〜!」
ラムは夢中で、あたるのさし上げたブラに飛びつく。
しかし、あたるはサッとそれを引く。
ラムがバランスを崩したその隙に…
「結婚に…ゴール…インっ!!」
と、後からラムのかわいい角を…つかんだぁ!
バーン!くす球が割れて、紙吹雪が舞う。
『やりました!ついにやりました!偉大なる救世主、諸星あたるくん、
ついに地球を最終日にして守り抜きました!
あまりにもあっけない結末であります。』
ラムの角をつかんだまま、大満足のあたる。
「にゃはは…これでやっと結婚できるんだ…」
あたるの心はもう、しのぶとの結婚でいっぱい!
と、ところが…!!
「そうか、わかった。お前がそこまで言うんなら、結婚してやるっちゃ。」
…と、ラムはにっこり。
「えぇっ!!??」 あたるはびっくり。
集まる報道陣。
「諸星くん!ラムちゃんと結婚するんですか?」
「い、いや、あのオレ…」
「そういえば、試合中結婚、結婚って騒いでましたよね?」
フラッシュの中、あたるに抱きつくラム。
あたるも、無理やり振り払わないあたり、性格が出ている…。
「いやぁ、こりゃあいい!最高の友好結婚だ。」
そこへ… 「あたるっ!」
現れたのは、しのぶ…当然、怖い顔。
「し、しのぶ!違うんだ、誤解だ!誤解だ!」
「ふん!なにさ、いつまでも抱き合っちゃって!
せっかくだから、その人と結婚したら?
この浮気者っ!!」
プイッとむくれて、去っていくしのぶ。
「しのぶ〜!!」 手を伸ばすあたるだったが…
そんなことはおかまいなしにピッタリくっついたまま、
「ダ〜リンっ!」 甘くささやくラム。
「だありん?」
「ウチの星では、プロポーズは神聖だっちゃ。
ウチは一生ダ〜リンと添いとげるっちゃ!!
…もし、浮気したらぁ…」
バチバチバチバチッ!!ラムから電流が!
「うわあああああっ!」 あたる、感電。
それを見ていた、あの小さな修行僧… 「さだめじゃ…」
観衆も報道陣も、みんなあ然!

ふぉげふぉげ…ふがふが…
黒こげ寸前のあたるを、ラムはぎゅっ!と抱きしめた。

「ダ〜リン…そんなに嬉しいのか?カワイイ人だっちゃ!」


第1話 おわり

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