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Yes!プリキュア5 第1話「希望のプリキュア誕生!」


<<アバンタイトル>>
朝、少女は走っていた。学校行きのバスに乗るため、急いでいる様子だった。
ふと、少女は立ち止まった。
キレイな、ピンク色の蝶がひらひらと自分の前を横切ったからだった。
「うわぁー!」
少女は感嘆の声をあげ、自分が登校中であることも忘れて蝶を追いかけていった。
「あっ」
蝶は路地に入り込んでいった。少女も追いかけ、路地に入った。
少女が丁度路地に入った瞬間、たまたまそこに立っていた少年にぶつかった。
「うああっ!」
少女は体勢を崩し、倒れかけた。
その少年が少女を抱きとめた。少年は少女を庇ったのだった。
「ああっ」
その少年は整った顔立ちをしていた。少女はその少年にみとれていた。
「大丈夫?」
少年のその一言で、少女はハッと我に返った。
「うわぁ!」
少女は自分を抱えたままの少年を突き飛ばした。
「あ、あ…… ごめんなさい!」
少女はとっさに謝った。
「あっ」
先ほどの蝶が飛んでいる。
「行っちゃった……」
少年は蝶を見つめる少女を伺うと、微笑を浮かべ、指を蝶の方に突き出した。
「?」
少女は少年が何をやっているのか理解できないという顔をした。
すると、蝶が舞い戻り、その少年の指にとまった。
「ええー! ウソー!」
信じがたい光景だった。
「はい」
少年が少女の前に蝶が乗っている指を出した。
「うわぁー」
「ダメだよ」
少年は自分の指に止まっている蝶を触ろうとしている少女を諌めた。
「触ったら、消えちゃうんだ」
少女はポカンとしていた。
「蝶好きなの?」
「いえ」
少年の質問に少女は答えた。
「特に好きってわけじゃないけど、キレイなものを見ると今日一日、いい日になるような気がするの」
「きっといい日になるよ。君、名前は?」
少年は微笑んで、少女に名前を尋ねた。
「夢原のぞみです!」
のぞみ、と名乗った少女も笑みを返した。

ズゥンと何かの気配がした。
少年の指にとまっていた蝶が逃げた。
少年は後ろを振り向き、「奴らか!」と言って、路地から走っていった。
のぞみは慌てて少年の名前を聞いた。
「ちょ、ちょっと待って!名前を……」
そう言い、のぞみが少年を追い掛けて路地を出ると、そこに少年の姿はなかった。
「えぇっ?」
たった今出て行ったはずなのに……
のぞみはは辺りを見回したが、誰の姿も見ることは出来なかった。
「あれ……」

「おっかしいなぁ、確かに……」
「のぞみー!」
「りんちゃん?」
のぞみにりんちゃんと呼ばれた少女はバス停でのぞみに向かって手を振っていた。
「急いで急いでー!」
りんがそう言ったとき、丁度バスがバス停にやってきたところだった。
「うわぁ!」
「なにのんびりしてんのよ!」
「うわー! 完全に忘れてた! 遅刻しちゃう! そのバス、待ってー!」



<<Aパート>>
バスの中、のぞみは今日であった少年のことをりんに話していた。
「曲がり角でバッタリかぁ。なんか、それって運命の出会いっぽくない?
 ね、どんな人だったの?」
「めっちゃカッコよかった〜」
「マジぃ!?」
りんがそう言ったとき、バスが大きく揺れた。
「うわぁ、のぞみっ!」
りんは前に倒れこんだのぞみの手をつかんだ。
「ほえー、びっくりしたー」
「しっかりつかまってなよ、タダでさえのぞみは普段からコロッコロッコロッコロッよく転ぶんだから」
「私のせいじゃないもーん。揺れるバスが悪いんだもーん」
のぞみが唇を尖らせて言う。
「人の注意はぁ〜素直に聞くぅ〜」
りんはそう言いながら、望みのほっぺたを引っ張り、拳骨で頭をグリグリとした。
「はいはい〜」
のぞみは笑って答えた。
「返事は一回!」
「ふぁ〜い」
「何その返事!」
のぞみとりんのやり取りを見ていた、同じ学校の上級生らしい少女はそれをみて微笑んだ。
バスの横を、リムジンが通った。
中に乗っているのは、これもまた上級生のようだった。
「んで、運命の彼の名前は聞いたの?」
バスを追い越していったリムジンを眺めつつ、りんは聞いた。
「うぅん。すぐ行っちゃったから……また会えるといいな」

<<タイトルコール>>
希望のプリキュア誕生!

<<Aパート続き>>
先ほどのリムジンが、学校に着いた。
中から容姿端麗な女子生徒が出てきた。
「ありがとう。今日は生徒会の会議で遅くなりますから」
少女は運転手にそう告げた。
「水無月先輩!」
「「「おはようございます!」」」
「おはよう」
髪をなびかせながら、その少女は答えた。
そこへ、のぞみとりんを乗せたバスが到着した。
「よっと」
りんはバスの昇降口から飛び降りた。
「余裕じゃん」
ふたりは遅刻せず学校前に到着できたようだった。
「よかった〜」
「おはよう」
のぞみとりんの前に、水無月と呼ばれた少女が現れた。
「「えぇ?」」
ふたりは困惑した。
「あっおはようございます!」
何かに気付いたのか、のぞみは慌てて頭を下げた。
「おはよう、かれん」
「おお」
「なんだ、私が挨拶されたかと思ったぁ〜」
バスでのぞみとりんの話を聞いていた少女だった。
「あっはは! そんなわけなしじゃん!」
りんは笑ってそう言った。
「生徒会長の水無月かれん先輩と、親友の秋元こまち先輩」
「学校中の憧れの的だよね」
「ま、あたしたちとは縁の無い人たちだよ」
りんはそう答えた。
「夏木さん!」
のぞみとりんの周りを、たくさんの生徒が取り囲んだ。
「来週の試合、また助っ人お願い!」
「その次の週はバスケだからね!」
「待って! 再来週はテニスよぉ!」
どうやら、部活の助っ人勧誘のようだった。
「はいはいわかったわかった」
りんはいつものことのように返事をした。
「りんちゃんモテモテだね」
「ゴメン、のぞみ先行ってて」
「うん……」
のぞみは歩き出した。
ちらりとりんの方を振り返った。
「やりたいこと、すぐに私も見つかるもん!」

のぞみは少し怒った様な顔をして、校舎への道を歩いている。
道の両脇には木が植えてあり、所々にベンチが設置してある。
「ぜぇーったいに見つかるんだから!」
「待ってるだけじゃダメ!」
急に声がした。
「えぇ!?」
「自分の道は自分で見つけるのよ!」
ベンチに座っていた少女だった。
「えぇ〜っ!?」
のぞみは驚いて後ろに一歩下がった。
「ああっ…… ご、ごめんなさい! 驚かしちゃって!」
その少女は誤り頭を下げた。
「あぁ… うぅん、平気」
のぞみがそう言うと、少女は頭を上げた。
「あれ? おおー!」
のぞみは少女の顔を知っていた。
「ポスターの!」
バスの中に貼ってあったポスターの少女だったからだ。
「えっとー、えっとー」
「春日野うららです」
のぞみが少女の名前を思い出そうとしていると、先に少女の方が名乗った。
「うららちゃん! うわぁー本物だー! 本物の芸能人だ!」
のぞみはかなり興奮しているようだった。
「握手握手!」
うららの手を取り、のぞみは握手をした。
「今日は撮影できたの?」
「いえ、私新入生で」
「へぇー、ウチの学校に入ったんだ。おお!」
のぞみはうららの手に握られているものを見て、嬌声をあげた。
「それ台本!? もしかしてドラマに出るの?」
「はい、小さな役ですけど」
「凄いねー、女優さんだー」
のぞみがそう言うと、うららは目線を少し落とし、台本をつかんでいる指に力が入った。
台本に少し、シワが入った。
「いえ、まだまだです。とても女優なんていえません!」
のぞみは感心したのか、呆けていた。
「それじゃあ、失礼します」
うららは頭を下げた。のぞみは笑みを浮かべた。
「うん、頑張ってね! 応援してるから! 私、夢原のぞみ。二年生なの!」
のぞみは歩いていくうららにむかってそう言った。
「何かあったら、いつでも来てね!」
うららは少し振り返り、笑顔を送った。
「よっしゃぁ! 私も見つけるぞぉ、やりたいこと!」

「運動部の試合、一通り手伝うことにした。放課後はしばらく練習に出るから、先帰ってて」
「了解! 試合、応援に行くからね!」
「はぁ、人の応援より、のぞみはどうなの?」
「えぇ?」
「やりたいこと見つかったの? 先週手芸部に入ったって言ってたよね?」
「えぇーっとぉ、あ、糸がどうしても針の穴に通ってくれなくて……」
「先々週は演劇部にいたよね?」
「うーん、転んだ拍子にセット壊しちゃって、出入り禁止……」
「その前は吹奏楽部」
「演奏聴いてたら、熟睡しちゃったぁ〜 えへ……」
「えへ、じゃない!」
りんは、のぞみの方を向いて言った。
「まったく、次から次へ、コロコロと……」
「だってー、見つからないんだもん、これがやりたいってことが……」
のぞみもりんの方を見て、指を遊ばせながらそう言った。
「そんな調子で本当に見つかるのかねぇー」
「見つかるまで探すんだもん!」
呆れた様子でのぞみを見るりんにすこし怒った感じでのぞみは言い返した。
「はぁ、はいはい」
りんは立ち上がった。
「じゃね」
りんは教室を出て行った。
のぞみはしばらくりんの姿を見ていたが、立ち上がった。
「絶対見つかるもん!」
窓の側でそう言った。
「ん?」
ふと窓の外を見ると、今朝の少年が歩いていた。
「うわぁー!」
のぞみの顔がほころんだ。
少年は辺りを見回し、走り出した。
「ああ」
のぞみは教室を出て、少年を追いかけた。
少年の近くの木から、誰かが少年を見ているようだったが、のぞみも少年も気付かないようだった。

少年は、図書室に駆け込んでいった。
のぞみも続いて図書室に入る。
のぞみはカウンターのところまで走って来た。
「あの!」
カウンターにいた、かれんとこまちに声をかける。
「図書館では静かにしてくれない?」
かれんはのぞみの方を振り向き、そう言った。
「ごめんなさい。あの、今入ってきた男の人、何処に行きました?」
「男の人?」
こまちが不思議そうに答える。
かれんとこまちは顔をあわせた。
「ここにいるのは、私達とあなただけよ」
こまちがそう答えた。
「他は誰も入ってきてないわ」
「えぇ?」
のぞみは驚いた。
「そんなはず無いです。私見たもん。確かに男の人がここに……」
のぞみがそう言い掛けたとき、かれんが割って入ってきた。
「あなた、二年A組の夢原のぞみさんよね?」
「はい! あれ? 生徒会長さん、どうして私の名前知ってるんですか?」
「知ってるのはあなたの名前だけじゃないわ」
「かれんは、全校生徒の顔と名前を覚えているのよ」
こまちがそう教えてくれた。
「ほぇー、すごい!」
「私達はずっとここにいたから、確かよ。夢原さん、あなた以外誰も来てないわ」
のぞみは腕組みをして、考え込んだ。そして何かひらめいたかの様に、二人に尋ねた。
「あの、中を見て言っていいですか?」
「ええ、どうぞ。読みたい本があったら借りていってください。」
「あ、いえ。男の人を探すだけですから」
そう言うと、かれんの目元がピクリと動いた。
「誰も来てないって、言ってるでしょ」
少し怒っているようだった。
「でも、私。あの人が図書館に入るの見たんだもん。だから探します!」
のぞみは笑顔でそう答えた。
「それじゃあ!」
そういい残すと、のぞみは図書館の奥へと歩いていった。
「強情な子」
かれんはのぞみの後姿を見て、つぶやいた。
「うふふ」
こまちはクスクスと笑った。
「何?」
「あの子、かれんに似てるな、と思って」
「何処が!?」
かれんは驚いてこまちに聞いた。
「誰がなんと言おうと、自分が正しいと思うことは、曲げないところ」
のぞみの後姿を見ていたこまちは視線をかれんに戻した。
「かれんもそうでしょ?」
「……」
かれんはこまちから目をそらした。
それを見てこまちは微笑んだ。

「うわぁ〜本がいっぱーい。って図書館だから当たり前か。ん?」
のぞみがふと横を見ると、先ほどの少年が本棚を調べている姿が目に入った。
「あ!」
のぞみが駆け寄ると、そこに少年の姿は無かった。
「あれ?」
不思議に思ったのぞみはあたりを見回した。
ちらりと、少年がすぐとなりの本棚を調べている姿が目に入った。
慌てて振り返ると、そこに少年の姿は無かった。
「あれー? どうなってんのー?」
望みは訳のわからないまま、図書館の探索を続けた。
ドレスを着た女性の絵が飾ってある壁が見えた。
のぞみは、本棚の中に、一冊だけ光り輝く本を見つけた。
「何これ?」
のぞみはその光輝く本を手に取った。すると、たちまち光は消えた。
本の表紙には蝶の模様が描かれていた。

「ドリームコレット!」
少年が叫んだ。
「えぇ!?」
のぞみが驚いて声のした方向を見ると、探していた少年が自分の方に駆けてくる姿が見えた。
のぞみは再会できた喜びで顔に笑みを浮かべた。
少年はのぞみの前まで来ると、立ち止まった。
「また会いましたね」
「ああ、君は今朝の」
少年はぶっきらぼうに言い放った。
「丁度よかった。それを渡してくれ」
「な、何その軽い反応。超ショック!」
「さあ!早く!」
「あなた誰?学校は関係者以外立ち入り禁止よ!」
「いや、怪しい者じゃない。それを探してたんだ」
「これは図書館のものよ、ここの生徒以外には貸せないんだから!」
のぞみは本を抱えた。
「違う。それはもともと、僕の世界の……」
「あなたの世界?」
「あ、いや…その……ごめん!」
少年は実力行使に出た。
のぞみの持っている本に手をかけ、奪おうとした。
「な、何するのー!?」
「頼む、返してくれ」
「んもー信じらんない!乙女をぎゅっと抱きしめておいて、すっかり忘れてたような言い方をして〜!」
「それは君が転ばないようにしただけで、このこととは関係ないだろう!?」
「私傷ついちゃったんだから!許せなーい!」
のぞみは引っ張り合いになっていた本に加えていた力を強め、思い切り引っ張った。
「うわぁ!」
少年の手が離れた。
「うあぁ!」
のぞみはしりもちをつき、本を取り落とした。
その表紙に本の表紙が開き、中身が見えた。本は何かのケースになっていたようであった。
「え、何これ?」
のぞみはしりもちをついたまま、本の中身を見た。
「うう〜」
のぞみは声のした方を見た。そこにはリスの様な生き物が転がっていた。
「ココ?」
「ええー!!」
そこに少年の姿は無かった。



<<Bパート>>
「ココ?」
「な…なぁぁ……」
不思議な生き物を見たまま、のぞみは声を失っていた。
「かわいいー!」
そういうとのぞみはその生き物にほお擦りし始めた。
「ふわふわでー気持ちいー!」
その生き物はあからさまに嫌そうであった。
「苦しいココー!」
「ああ、ごめん!」
「ココ!」
リスのような生き物はのぞみの腕からとび、逃げた。
「ねぇ、あなたタヌキ?タヌキって本当に化けるんだ!」
「ココ?」
本に収納されていたものを手に持ち、タヌキと呼ばれた生き物はのぞみを見つめた。
「朝自己紹介したけど、私は夢原のぞみ、のぞみって呼んでね。よろしく!」
のぞみはしゃがんで、そのタヌキの手をとり握手した。
「ココ!」
タヌキは手を離した。
「よろしくしたくないココ!」
「名前はなんていうの?」
のぞみはまったく話を聞いていないようだった。
「ココだココ」
「コケコッコー?」
「コーコー!」
「ココってかわいー!」
のぞみはココの額の毛をつまんで引っ張りながらそう言った。
「引っ張るなココ!ココ!なんか出たココー!」
急にココの毛が逆立ち、のぞみの背後の空間を見据えた。

ハハハハハハハ………

「えっ!?」
のぞみは驚いて後ろを振り返った。
「何?」
「ナイトメアの連中ココ!」
「ナイトメア?」
カツカツと通路を人が歩いてきた。
スーツのような服を身にまとっていた。
「コーコー!!」
歩いてきた男はのぞみとココの前で立ち止まった。
男は手に持っていたステッキで帽子の鍔をくいっと持ち上げた。
「見ィつけた」
「ええぇー?」
「それだ」
男はココが手に持っていたものを杖で指した。
「どんな願いも叶えるドリームコレット」
「どんな願いも叶える?」
「これだけじゃお前達の願いは叶わないココ!」
「ああ、それだけじゃあダメだよなぁ。ピンキーを集めればいいんだろう?」
「おお、お前達にはピンキーもドリームコレットも渡さないココー!」
「一体何の話?」
「じゃあ力づくでもらうぜ!」
男が構えると、あっという間にカマキリの様な姿になった。
「なんなのよ、一体!?」
のぞみはこの状況を理解できなかった。
「うああー!」
カマキリ男は両手についている鎌を構えた。
「ココー!」
「シャァー!」
ズン、と音がした。

「ん。何? 今の……」
カウンターにいたかれんとこまちにも聞こえたようだった。

カマキリ男の一閃を、ココはかろうじてよけた。
「うわぁぁー!」
のぞみは悲鳴をあげた。
「ココ!」
ココもしりもちをついた。
「ドリームコレットを渡せば、逃がしてやってもいいんだぜ?」
「渡さないココ! どうしても叶えたい夢があるココー!
 このドリームコレットで、ふるさとをよみがえらせるんだココー!」
「ココ……」
「ハハハハッハッハ! 夢だって? くだらない!」
のぞみはカマキリ男をにらみつけた。
「せっかく人が親切で言ってやってんのに困った奴だなぁ、君は!」
のぞみは取り落とした本に手をかけた。中身は無い。
「けど安心しな、コレットにはかすりもせずに、スッパリ切ってやるからね」
「コーコー……」
「ふん!」
「うわぁ!」
カマキリ男が振りかぶった瞬間、のぞみは本を投げつけた。
「! シャァ!」
カマキリ男は投げられた本に気付き、鎌で本を真っ二つにした。
カランと本の残骸が落ちた瞬間、のぞみはココとドリームコレットをつかんで逃げ出した。
「ぬっ!」
「ココー!」
「はぁ、たく何なんだよ」
カマキリ男はシュンとその場から姿を消した。
丁度その時、かれんとこまちが現れた。
「な、何これ!?」
こまちは床じゅうに散らばる本と、鋭い刃物で傷つけられたような床を見て、声をあげた。

「うわぁー!」「ココー!」
のぞみはカマキリ男の襲撃をかわしつつ逃げていた。
「うわぁー!」
のぞみは角に追い詰められた。
「いい加減にしろよ…あんたには関係の無いことだろう?」
「ココ?」
カマキリ男の側をピンク色の蝶が羽ばたいた。のぞみが朝見た蝶と同じ蝶だった。
「そいつとドリームコレットを渡せば、見逃してやるからさぁ。さっさとよこせよ!」
「嫌だ!!」
「あぁん?」
「アンタ、嫌い!」
「クッ…フン、おやおや人を見かけで判断しちゃいけないねぇ。
 私は君が思ってるほど悪い人じゃないんだよ」
「嘘! アンタはココの夢を馬鹿にした! 絶対悪い人よ!」
「夢? ッハ! くだらない!」
「夢は、とっても大事なものなんだよ! 自分がボロボロになっても、叶えたい大切なものなんだよ!?
 それを馬鹿にするなんて、サイテー! だから絶対渡さない」
「のぞみー……」
ココは目に涙を浮かべていた。
「あ、そう。じゃあそいつと一緒に消えるんだなァ!」
「あっ…!」
「すごーく痛いよ…?」
カマキリ男は鎌のついた左手を掲げて、そう言った。
その時、カマキリ男の目の前を、ピンク色の蝶が横切った。
「…!」
蝶はのぞみの方へ飛んできた。
「なぜここに来たココ?」
「蝶?」
のぞみが手を差し出すと、蝶はのぞみの手にとまった。すると、蝶が光り輝き始めた。
「えっ!? あぁー!」
「ココー!」「うわっ!」
蝶の形をした光はのぞみの腕に巻きつき、腕時計の様なものになった。
「えぇー!?」「ココー!」
ココはのぞみの腕から飛び降り、のぞみを見上げた。
「ま、まさか…!とにかくそのピンキーキャッチュで変身するココー!」
「こ、これで変身するって……どういうこと!?」
「なんでもいいから早くピンキーキャッチを構えるココー!」
「は、はぁーい」
「ココ!」

<<のぞみ、変身シーン>>

「プリキュア、メタモルフォーゼ!
 大いなる希望の力、キュアドリーム!」
「何ィ!?」
「うーわ、なんじゃこりゃ!?私どうなっちゃったの?」
のぞみは変身した自分の姿を確認しようと、衣装のあちこちを見ていた。
「し…信じられないココ、のぞみが伝説の戦士・プリキュアになったココ!」
「プリキュア…?」
「プリキュアだと…? 何者か知らないが、邪魔するなー!」
カマキリ男が両手を構えてのぞみに襲い掛かる。
「えぇっ!」
「ハァッ!」
のぞみは飛び上がった。
「シャアッ!」
のぞみは普通では考えられないほど遠くに飛んだ。
「何ッ!」
「うわっ、飛んでる飛んでる!」
のぞみは無事に着地し、構えて言った。
「すごいぞ私!」
しかし、カマキリ男がとてつもない速さでのぞみの前に立ちはだかった。
「えっ」
「少しはやるようだな。いいだろう。遊んでやるぜ」
そう言うと、カマキリ男は仮面のようなものを壁にかけてある女性の絵に投げた。
仮面は女性の顔に当たった。
「え?」
仮面をかぶるようにして絵から女性が現れた。
「ええー!」
「コワーイナー」
「ひええー!オバケー!」
のぞみは一目散に逃げた。女性の絵もそれを追う。
「ひえぇー!」「コワイナー」
「ドリーム!」
そこへココが飛んできた。
「ドリーム、プリキュアの力で立ち向かうココ!」
「えぇ〜!?」
のぞみは後ろをちらりと見た。
「コワーイナー」
「ええー!無理ー!」
「自分を信じるココー!」
「えぇ!?」
「夢を叶えるためには、自分を信じて立ち向かわなければならない時もあるココー!
 ドリームも頑張るココー!」
「……!」
ドリームは逃げるのをやめた。
「ドリーム……」
「そうだね…ココの言うとおり! 私、やってみる! ココ、さがってて」
「ココッ!」
ココを逃がすと、のぞみは構えた。
「さぁ、来い!」
「コワイナー!」
女性の絵は、持っていた傘を振りかぶり、突いてきた。
のぞみはそれをかわした。
「やああー!」
カウンターで蹴りを食らわせた。ズゥンと、女の絵は倒れた。
「わぁ、私ってすごい!」
「ドリーム、後ろココー!」
「えっ!? うわ!」
のぞみはカマキリ男に後ろから羽交い絞めにされた。
「おい、ドリームコレットを渡せ。こいつがどうなっても知らねぇぞ!」
カマキリ男はのぞみの首に鎌を当てた。
「くぅぅ、卑怯ココ!」
「あーあ、俺は卑怯者さ、早く渡せ!」
「ココ……」
「渡しちゃだめ…!」
「ココ!?」
「叶えたい夢が、あるんでしょ。叶えるために、それが必要なんでしょ。
 だったら、絶対渡しちゃダメ……」
「でも、ドリームが!」
「こんな奴に、人の夢を馬鹿にする奴なんかに、絶対負けないもん!」
のぞみのピンキーキャッチュが光った。
「やぁあああ!」
のぞみはカマキリ男を投げ飛ばした。それと同時に女性の絵が復活した。
「コワイナー」
「あんた達なんかに、絶対負けないんだから!」
「そうだココ! プリキュアの力でやっつけるココー!」
「夢見る乙女の底力、受けてみなさい!
 プリキュア、ドリームアタック!」
のぞみは一羽の蝶、ピンク色の輝く蝶を飛ばした。
女性の絵にそれがあたると、爆発した。仮面がとれ、女性の絵は元通りになった。
「クゥ! まさか、あんな奴に…! キュアドリームだと? 俺の仕事の邪魔をしやがって!」
カマキリ男はそう叫ぶと消えた。
床に散らばった本も、傷つけられた床も、全てが元通りになった。

「ふぅー、信じらんない、今のはなんだったの!?」
「のぞみー! やったココ! すごいココ、すごいココー!」
ココは大喜びで飛び跳ねている。
「うふふ、なんかよくわかんないけど、喜んでもらえてよかった!」
「まさかのぞみがプリキュアになれるとは思わなかったココ!」
「もう無我夢中で…どうしてもココを助けたかったの」
「ありがとうココ! その強い心があったからのぞみはプリキュアになれたココ!」
「あー! やりたいこと見つかった!」
「ココ?」
「よーし! 私、プリキュアになってココの夢を叶えてあげるぞー! けってーい!」
のぞみは大きく振りかぶり、空を指差した。
「ホントココー!? じゃあ早速仲間を集めるココ!」
「え? 仲間?」
「プリキュアは五人いるんだココ!」
「ええー! 私一人じゃないの!? うっっそ――――!」



<<次回予告>>
「りんちゃん! 私と一緒にプリキュアやろう!」
「ハイ? プリ…? 何?」
「絶対ピッタリだと思うの! 運動神経バッチリだし! しっかり者だし!」
「おぉーう、いいこと言うじゃない」
「それによく食べるし!」
「…! それは関係ないだろう…」
「もー、りんちゃんに決定!」
「ちょっと、何勝手に決めてんの!? プリキュアってなんなのよ!」
「Yes!プリキュア5 情熱全開キュアルージュ! 見て見て見てね!」




Yes!プリキュア5 第1話 おわり

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