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アウタ〜ゾ〜ン


その世界では 現実を超えた あらゆる事が起きる
過去と未来が 同時に存在できる世界…
光より明るく 闇より暗い世界…
現実の範囲の外(アウター・リミッツ)にある世界…

― それが アウター・ゾーンなのです!

このセピア色の扉を開ければ
アウター・ゾーンに入ることができるでしょう

ただし「空想力」という鍵がなければ
開く事はできませんが……




〜 第1話 ママと悪魔 〜


エメラルドグリーンに輝く長い髪…
そこからのぞく、とがった耳…
美しい顔…だが、左目は前髪に隠れて見えない…
そんな、謎めいた一人の女が、
あなたに向かって、話し始める。


『この物語(シリーズ)は、アウター・ゾーンに関わった人間達の様々なドラマを…
毎回紹介してゆくものです。
ご案内及び解説は、この私がいたします。
私が何者なのか?
それはまだ明かす事はできませんが…
そのうち明らかにすることになるでしょう。
そして私の名は…
そう「ミザリィ」とでもしておきましょうか。
「ミザリィ」とは“不幸”という意味…
この物語に登場する人達は、
皆、なんらかの形で“不幸”を背負っているからです。
どうぞ、よろしく…』



ミザリィが、マンションの廊下を歩いてくる。
『今回ご紹介するお話は…とある平凡なマンションが舞台です。
しかし、今、このマンションの一室で…
恐ろしい事が行われようとしていました…
…そう、この部屋の中で!!』

一つのドアの前で立ち止まるミザリィ。

床に散らばる割れた皿、ひっくり返ったフライパン、倒れた椅子…
そんなダイニングの真ん中で、恐ろしげな細工の施された棒のような物と、
包丁を持った母親が、仁王立ちしている。
その目の前には、体をロープで縛られ、口にガムテープを張られた少年が、
床に倒れている。
「今、お前の体から悪魔を追い払ってやるからね、ひろし!!」
「んん…」
母親が振りかざす包丁に怯える少年、ひろし。

『この2人、実の親子です…いったい彼らに何が起こったのか?
それを知るために、時間を遡ってみましょう。』


一週間前…
一軒の家の玄関に立っている母親とひろし。
「お休みのところ失礼します。
あなたは悪魔の企みについてご存知ですか?」
突然の訪問に、迷惑そうなその家の住人。
「は…はあ?」
「さあ、ひろし、お話しなさい!!」
ひろしの頭をグイと押す母親。
「あ…、あの、この世には悪魔がはびこっていて…」
しかたなくそう話しながら、ひろしは心の中で思っていた。
(ぼくは日曜がイヤでたまらない。ママと一緒に
色んな家をまわらないといけないから…)
「宗教には興味ないよ!!」
バタン! ドアを閉める住人。
「この罰あたりが!!地獄に落ちるといい!!」
母親はそう怒鳴ると、ギロッとひろしを睨みつけた。
「お前の言い方が悪いんだ!!この役立たず!」
バシッ!!バッグで思い切りひろしの顔を叩く。
「あたしは、お前をそんな風に育てた覚えはないよ!!」
(違う…違う!ぼくをこんな風にしたのはママじゃないか!!)
赤くなった頬を押さえるひろし。
「さっさと来なさい、このグズ!!」
そこへ通りかかったのはミザリィだった。

『子供は生まれてくる時に、親を選べません。
もしタチの悪い親に当たれば、その家庭は牢獄になるでしょう。
この日、偶然見かけたこの親子に、私が興味を持ったのは、
彼らに不幸の影を見たからです…』


ひろしと母親がマンションに帰ると、隣に住んでいるゆうこが、
ちょうど玄関に入ろうとしているところだった。
ひろしの母親とは違い、若くてやさしそうな女だ。
「奥さん、今日も御近所をまわられたんですか?」
ゆうこの言葉にあいさつを返すわけでもなく、
ひろしの母は、ゆうこの前を黙って通り過ぎる。
(ごめんなさい、お隣のおばさん…)
ひろしがそんな気持ちでゆうこを見ると、
ひろしの気持ちを察したゆうこが、ニコッと笑った。
ひろしも、嬉しそうに笑顔を返す。
(隣に住んでるおばさんは、近所の幼稚園で先生をしてるそうだけど…
とても優しい目をしていて、きれいな人だ!)
「何してんの、さっさと家に入んなさい。」
「は、はい。」
母親に怒鳴られ、急いで家に入るひろし。
ゆうこは心配そうにそれを見届け、自分の部屋に入る。
「おかえり、ゆうこ。隣のヒステリー女と話してたのかい?」
部屋で、パソコンのキーボードを叩きながら、
夫が声をかけた。
「あなた聞こえるわよ、このマンション、壁が薄いから。
でも、ご主人が2ヶ月前亡くなってから、
ますます意地が悪くなったみたい。ひろし君がかわいそう…」

『母親の夫は、深夜酔って帰宅し、6階のべランダから誤って落ち、
死亡したのです。普段から家には居つかず、
ほとんど別居同然でしたが…』


「不公平だわ!あんな女にかわいい子ができて、あたしには…」
「おいおい、それは言わない約束だったろう?」
抱きつくゆうこを、やさしく支えて慰める夫。

その日の夕方…
ダイニングテーブルに着くひろしと母親。
「何してるの、お祈りが済んだらさっさと食べなさい。」
「う…うん…。」
「返事は『ハイ』でしょう、『ハイ』と言いなさい『ハイ』と!!」
突然の母の怒鳴り声にビクッとして、
ひろしは、お茶碗をひっくり返してしまった!
「あ…」
すると、母親は烈火のごとく怒り出し…
「何してんだ、この子は!!」
ガッシャーン!!
テーブルの上の皿や茶碗を、ひろしにぶつけるように払った。
その激しい音は、隣のゆうこ達にも筒抜けだ。
ガッシャン、ゴンッ…
「またヒステリーが始まったか。」
「……………」
ゆうこは、ひろしがかわいそうで思わず耳をふさいだ。
「あやまりなさい、神様に!!あやまれ!!」
「神様、お許しください…」
いやいや手を組んで祈るひろし。
「お前は、あたしの料理が食べたくなくてわざとご飯をこぼしたね!
え!?あたしにゃわかってるんだよ!!
そんなにあたしの料理が欲しくないなら…」
そう言いながら、ひろしの部屋へ入ってゆく母親。
そして、すぐ鳥かごをぶら下げて出てきてこう言った。
「ほら!お前の大事なインコを焼き鳥にして喰わせてやろうか!」
ピー、ピー…バサバサ… インコもただならぬ雰囲気に怯えている。
「ピー助!!やめて!!やめてよママ!!」
必死に止めようとするひろし。
「なに本気になってんのさ、冗談だよ、冗談!バカな子だねェ。」
母親は薄笑いを浮かべて、ひろしを見下ろした。
(ママならやりかねないと思った…
何故なら、ぼくはママの秘密を知ってるから…)

その夜…
ひろしが布団に入り、ピー助を指に乗せている。
「オハヨウ、オハヨウ」
「違う違う、今は夜だからコンバンハだろ。」
「チガウ、チガウ」
「いや、そうじゃなくてー」
うれしそうにピー助と話すひろしだったが…
「うるさいわね、さっさと寝なさい!」

次の日…
ベランダで洗濯物を取り込んでいるゆうこと、隣で布団を叩くひろしの母。
(お隣もベランダにいるようだけど…声をかけない方がいいわね)
ゆうこは黙って作業を続けていた。
そこへ…
「ママ、ママ!!」
学校から帰ったひろしが、急いでベランダに駆け込んできた。
「うるさいわね!!ただいまくらい言いなさい。」
「ただいま!これ見てよ。」
ひろしは、手に持っていた一枚の絵を母親に見せた。
そこには、車がまるでホンモノのように上手に描かれていた。
「それ、図画の時間に描いたんだ!先生が学校でも一番うまいって
ほめてくれたんだ。他にも何か描いて、
コンクールに出してみないかって言ってたよ。」
頬を紅潮させて、笑顔で語るひろし。しかし…
「お前なんかに出せるわけないだろ。」
ビリッ!!
母親は、あろうことかその絵を破いてしまった!
「あ!!」
「それに、誰が車の絵なんか描けって言ったの!?
描くんなら神様の絵を描きなさい!!」
そして、破いた絵をベランダから捨てる母親。
「で…でも写生なんだから、見えるものしか…」
「お前には、神様の姿が見えないのかい!?
あたしには見えるよ、ちゃーんとね!!」
ベランダの境越しに、その話を聞いているゆうこ。
(なんてひどい事をするの…)

公園…
ひろしが一人、ブランコに乗っている。
そこへやって来るゆうこ。
「こんにちは。」
「あ…、お隣のおばさん!」
ニッコリ笑うひろし。
「こら!おばさんとはなんだ!あたしはまだ20代なのよ。
これからは…ゆうこおねえさんって呼んでくれる?」
「わかったよ、おねーさん。」
「それでいいわ。じゃ、ごほうびに…これ、あげる!!」
ゆうこは、背中に隠し持っていたひろしの絵を出した。
さっき母親が、破って捨てた、あの車の絵だ。
もちろん、丹念に敗れた部分が修復してある。
「ぼくの絵だ!どうして…?」
「ベランダで立ち聞きしてたの。」
「ありがとう!ゆうこおねえさん。」
「ひろし君って絵がすごくうまいのねー」
「ホント?ホントにそう思う?」
目をキラキラ輝かせるひろし。
「うん!きっと将来はイラストレーターとか
マンガ家とかになれるわよ。」
「そ、そうかな。」
うれしそうに微笑みながら、ひろしは思った。
(この人がママだったらいいのに…)
ベンチに腰を下ろす二人。
「いつも一人で公園にいるのを見かけるけど、友達はいないの?」
「え…学校にはいるけど…ママが友達とは付き合っちゃいけないって言うから…」
「どうして?」
「神様と悪魔の存在を信じない人は、堕落した人間だって…
一度うちに遊びに来た子を、殴って追い返した事もあるし…
それに…最近はそのうわさが広まって、学校でも
ぼくを避けるやつや、いじめてくるやつが多いんだ。」
「それで…ひろし君はママの言ってる事信じてるの?」
「わ…わからないよ。神様も悪魔も見たことないし…」
そう言ってひろしは、悲しそうに下を向いた。
(素直で賢い子なのに…なんて悲しそうな目をしてるの…
あたしなら、この子にこんな悲しそうな顔はさせないわ。
あたしなら…!!)
その時!
「ひろし!!こんなとこで何してんだい。
さっさと家に帰りなさい!」
買い物帰りに通りかかった、ひろしの母親だ!
意を決し、母親に近づいて行くゆうこ。
「奥さん!!あなたにお話があります!」
「子育てがどうこう言うんなら、聞く耳持たないよ!!」
「どうして…どうしてそんな事言うんですか!?」
「ふん!!何言ってんだ!!もう30になるっていうのに、
まだ子供ができないじゃない!!まったく情けない!!
そんなあなたに、どうこう言われる筋合いはないよ!!」
母親は、ゆうこを指差しながら、ゆうこの心を
土足で踏み荒らすような言葉を吐いた。
「ひ…ひどい…ひどいわ!!」
顔を両手で覆い、走り去るゆうこ…
「二度と口出しするんじゃないよ!!」
母親は、その後姿に、なおも雑言を浴びせた。
その様子を見ていたひろしの心は、ズキン!
(胸が痛い…こんなに胸が痛いのは初めてだ…)
「さっさと来るんだよ。」
「…………」
ちょっと母を睨みつけたひろしの頭をバンバン叩く母。
それを黙って見ているミザリィ…

その夜…
ゆうこは、胸が締め付けられる思いでシャワーを浴びていた。
思い出す、公園でひろしの母に言われた言葉…。
夫に、その思いを打ち明けるゆうこ。
「あんな女の言った事なんか、気にすることないさ。」
「でも、あんなにはっきり言われると…」
「いいから、気にすんなって。」
(あたし…幼稚園にいる時は、大勢の子供に囲まれて楽しいけど…
子供達が親に連れられて帰る時はとても空しい気持ちになるの。
最近は特にね…)

一方、ひろしの母親は、スヤスヤ眠りについていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
白いモヤの中を一人歩いている母親…
「ここは…ここはどこだい!?なんであたしはこんなとこに…」
『ここはあなたの夢の中よ…』
「誰!?」
母親が振り向くと、そこにはミザリィが立っていた。
『あたしが誰かなんて事は、どうでもいい事だわ…
実はあなたに…受け取って欲しい物があるんだけど』

「あ…あなたはもしや、神様のつかいでは!?
あたしが毎日、よい行いをしているから、そのご褒美ですね!!」
母親は、すっかり喜んで、ミザリィの前にひざまずいた。
『あなたは、悪魔をこの世から追い払いたいんでしょう。』
「そうです、その通り!!」
『では、これをあげるわ。これを使えば、人間にとりついた悪魔を、
追い払えるの。使い方は簡単よ。ただ、それを高く掲げて、
悪魔を倒す事を念じればいいだけ…』

そう言ってミザリィが差し出したのは、なんとも恐ろしげな悪魔の頭の付いた、
長さにして30センチくらいの棒状の物だった。
「あははは、神様からの贈り物だ!!」
それを受け取り、大喜びの母親。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ミザリィが、ベッドでスヤスヤ眠る母親の枕元に座っている。
『私は、この女に、アウター・ゾーンからささやかな贈り物をしました。
それをどう使うかは、彼女自身が決める事です…』

それからミザリィは、そっとひろしの部屋に入っていった。
ひろしは…眠っている。
ミザリィの気配を感じたピー助が、机の上の鳥かごの中から言った。
「オハヨウ、ダレ?」
『しっ!あたしはミザリィよ、ミザリィ…』
それを聞いて、ビクッとするピー助。
「みざりぃ…!」

そして次の朝…
ガバッ!飛び起きる母親。
「夢!?いや…夢じゃない…!!」
確かに「悪魔の棒」は、母親の手の中にあった。
「お告げだ!お告げがあった!!あはははは!!」

昼、母親がひろしの部屋を掃除していると…鳥かごから??
『「オ前、医者ニ見テモラッタ方ガイイゾ!」
「何ヲ言ウノ!!アタシノ頭ガオカシイトデモ言ウノ!?アンタ!!」
「アア、ソウダ!朝カラ晩マデ神ダ悪魔ダッテ…
イイカゲン、ウンザリダ!!神様ナンテイルモンカ!!」
「コ…コノ罰当タリィィ、アンタハ悪魔ニトリ憑カレタンダナ!!」
「ナ…何ヲスル!?ヤ…ヤメロー
ワアァァァァ」
ひゅ〜〜〜〜……どさっ』
汗びっしょりになりながら、ピー助を睨みつける母親、そして…
バサ、バサッ…ピー、ピーッ…バサ…

「ただいま。」
学校から帰ると、ひろしは真っ先に自分の部屋へ行った。
「おいピー助、元気で……? !!!」
見ると、床にたくさんの羽をばら撒いて、ピー助が死んでいる!!
「ママ、ママ!!」
ひろしは大急ぎで、キッチンの母親のところへ行った。
「なんだよ、うるさいねえ。」
振り向きもせず、包丁でイカを切り続ける母親。
「ピー助が死んでるんだ!!」
「それがどうしたの?寿命でしょ。」
「ちがうよ、握りつぶされてるんだ!!」
「ふん、どういう事だい…」
「ママが…、ママが殺したって事だよ!!」
ガッ!!母親は、まな板を砕きそうな勢いで包丁を下ろした。
「なんて事を言うんだ、この子は!!」
「大きな声を出したって、ごまかされないよ。
もう嘘はつかせないからね。」
「なんだって?あたしがいつ…」
いつもと違う強いひろしの態度に、母親の手はワナワナと震えた。
「ぼくが子供だからって、ママの嘘がわからないと思ったら大間違いだ!
ママがぼくの腕を折った時、近所には階段から落ちたって言いふらした事も、
命を大切にしろと言いながら、自分の手をかんだ犬を川に捨てたり、
それに…それに…
パパをベランダから突き落とした事もわかってるんだ!!
ぼくは、あの晩眠れなくて…全部見てたんだよ。
ママは、嘘つきの人殺しだ!!」
「母親に向かってなんて事を…ああ神様…この子には…」
突然、母親の顔つきの変わった。
「この子には、悪魔がとり憑いた!!」
カッと目をむき、包丁を振りかざす母親。
!!!!!
玄関から逃げようとするひろし。だが、チェーンがなかなか外れない!
「待ちなさい!!言う事を聞かない子は…こうだよ!!」
ブン!!母親は、包丁をひろしに向かって振り下ろした。
「わあ!!」
なんとか身をかわすひろし。そして、玄関を飛び出し、隣のドアへ!
「待て!!」
「おばさん、助けて、助けて!!」
ガンガンガン!!ゆうこの部屋のドアを叩くひろし。
「なんだ!?」 「ひろし君の声だわ!」
ゆうことゆうこの夫が、急いで玄関を出ると、
ひろしの母親が、ひろしの襟首をつかんで引きずり、
部屋に入るところだった。
ドンドン! 「奥さん、開けて下さい!!奥さん!!」
しかし、ドアには鍵がかけられ、開かない。
「あなた、あの人何をするかわからないわ!」
「あの窓を破ろう!!」
ゆうこの夫が、玄関の横にある小窓を指差した。

「ひろし!!お前の体から、悪魔を追い出してやるからね。」
ここで、最初のダイニングのシーンにたどり着いたわけである。
縛られて、床に倒れているひろし。
悪魔の棒と包丁を持って、ひろしを睨む母親。
母親はおもむろに、悪魔の棒をひろしに向かってかざした。
「悪魔よ、立ち去れ!!」
怯えるひろし…しかし、何も起こらない。
「なんだ!?何も起こらない!?」
母親が、あらためて悪魔の棒をみつめたその時だった。
ビキビキビキ…ベリッ!!
棒を握った母親の腕がひび割れ始めたかと思うと、
皮膚を突き破って、中から悪魔の手が!!

ガッシャーン!ゆうこの夫が小窓を椅子で破り、
「あたしが入るわ!!」
その小窓から、部屋の中へ入るゆうこ。

ビキ!!
今度は、母親の顔の真ん中に亀裂が入る。そして…
バリバリ…バグワァァ!!
まるで、母親の着ぐるみを破って脱ぎ捨てるかのように、
半分に裂けた母親の中から、悪魔が姿を現した!!
「!!」 「ああ!!」 驚くひろしとゆうこ。
「グルル…!!」
体からビキビキ音をさせながら、悪魔はうごめいている。
ひろしに駆け寄るゆうこ。
「大丈夫!?ひろし君!!」
と、その時、
ボン!!
悪魔の体が爆発!!その体は、粉々に飛び散った!!
「きゃっ!!」
ゆうこは、ひろしを悪魔の破片から守ろうと、かばうように抱きしめる。
「ああ…なんて事…」

ミザリィは、マンションの廊下に立っていた。
『バラバラになった怪物の破片は、すぐ消え去ってしまいました…
少年の母親が主張していたように、悪魔は実在したわけです!
しかし、皮肉な事に、悪魔は彼女自身だったとは…
あれは彼女の歪んだ心が生み出した怪物だったのか…?
それとも、知らないうちに、悪魔にとり憑かれていたのか…?
その答えは、アウター・ゾーンの彼方にあるのです。
…それではまた来週、別の登場人物による、別の物語でお会いしましょう。
…最後に、今回の物語のエピローグをどうぞ。』



病院…
「すっかり元気になったわね、ひろし君。」
「うん!もういつでも退院できるってさ!」
ベッドの上にひろしが座り、その横にはゆうこがいる。
「色々調べてもらったけど、ひろし君を引き取ってくれる
親戚の人は、いないらしいわ。」
「それじゃ…ぼくはどうなるの…?」
「ひろし君のような子を預かってくれる施設に行くか…
どこかの家族の養子になるしかないわね。」
「あ…あの…(ぼくを養子にして欲しいんだ…)」
ひろしは、急にもじもじして口ごもった。
「え?」
「な…なんでもないよ、おばさん…」
そして、真っ赤になるひろし。
「こら!おばさんじゃないって言ったでしょ!
これからは…
ママって呼んでくれる…?」

「―――ママ!」


〜 第1話 おわり 〜

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